スピード感と柔軟さで働きやすい環境を作っていく──“人”に寄り添うHRBPの現場
2つの課に分かれている横河電機のHRBP部は、それぞれが事業部における人財に関する課題を見つけ、解決策の提案から実行までを一貫して行う部署です。各事業部の事業計画達成に向けて、幅広い領域でサポートをするのが主なミッション。たとえば、ラインマネジメントの強化や後継者育成、さらにはイベントの企画や労務相談、採用戦略策定のサポートなど幅広い領域をカバーしています。
私が所属するHRBP1課は、課長を含め5名で構成されています。メンバーはそれぞれ多様なバックグラウンドを持っています。特徴的なのは、経験や背景よりも創造性や積極的な意見交換ができる能力を重視している点です。各メンバーは法律や人事制度などそれぞれ得意分野が異なり、自然と役割分担ができています。
先に述べたような課題への取り組みにおいては、HRBPが5人いれば5通りのアプローチがあってよいと考えています。それぞれがコスト意識を持ちながら、必要に応じて軌道修正を行い、メンバー間で密に情報共有を行うことを大切に広い視野を持って、柔軟かつ前向きに業務を推進する、そんなチームです。
また、私は組織横断的な「技術人財分科会」のメンバーとしても活動しています。この会では、さまざまな事業部から技術者が集まり、技術者がより働きやすい環境を作るための施策を検討し、実施しています。HRBPとしては人事部門の窓口的な役割を担っており、育成部門などと情報共有しながら人事メンバーも巻き込んで課題解決策を考えています。
仕事をする上で私が大切にしているのは、できるかどうかに関係なく「やりたいことを声に出す」ということです。目の前の課題に対して最短での解決をめざし、恐れずやってみる姿勢を心がけています。やりたいことを表明するとさまざまな専門性や価値観を持った人が「おもしろそう」と共感し、より良い成果を出すために一緒に取り組んでくれます。
DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)推進において、障がい者の「キャリア形成」はHRBPにとって非常に重要な関心事の一つです。
当社では、採用面接において、障がいのあるなしに関わらず候補者のご経験やご希望と求人ニーズとのマッチングを図るため、募集要項を明確にし、面接時には双方向のコミュニケーションを重視することで、ミスマッチの防止に努めています。
また当社には、定期的な通院への配慮やテレワークなど、働く場所を柔軟に選択できる制度が整っており、性別、国籍、障がいの有無に関わらず、誰もがいきいきと働ける環境づくりを進めています。こうした制度は、必要とする方に積極的に活用いただきたいと考えています。
知的や発達に障がいのある社員が活躍し続けるためにゼロからつくった横河ファウンドリー
生まれも育ちも武蔵野市だった私は、横河電機のことは幼少の頃から知っていました。当時はYOKOGAWAのグラウンドで「武蔵野まつり」も開催され、私の家族が営んでいたお店も商工会を通じて出店。周囲の大人たちからは「いい会社だ」という評判をよく耳にしており、会社に対する安心感と親近感が自然と育まれていました。
そして、就職活動当時は「ライフイベントと仕事とを両立しつつ長く働き続けられる企業」と「将来を見据えて実家に近い立地」の二軸を重視する中で横河電機を選択しました。会社見学をする中で人事の方々が他部署の方と親しげに接している様子をみて気持ちが和んだことも入社を決めた理由の一つです。
入社直後は新卒採用を担当。その後、上司の判断でキャリアを広げるため、グループ会社の人材紹介会社(現在は事業終了)に出向し、派遣の営業やコーディネーターとして経験を積む中で「適材適所」の大切さを実感しました。
キャリアの大きな転機となったのは、障がい者雇用率の設定対象に「知的障がい者」が加わることになった1998年の障害者雇用促進法の改正実施でした。知的障がいのある方と接したことがなかったため、日本経営者団体連盟(現在の経団連)の会議で知り合った企業の取り組みを見学させていただきました。
すでに、横河電機では聴覚に障がいのある社員や車いすを使用している社員をはじめ、障がいのある社員が活躍していましたが、職場実習を通じて、知的障がいのある方に活躍していただくためには、現状を変えるのではなく、全く新しい仕組みが必要だと感じたのを覚えています。
そこで考えたのが、新会社の設立でした。既存の制度を変えていくよりも、ゼロから作る方が柔軟な対応ができると思ったのです。グループ会社の業務効率化と知的障がいのある方の活躍の場を実現し、環境保全にも貢献するという計画を立て、人事担当役員と共に戦略を練って資料を作り役員会に臨みました。
幸いにも提案は通り、こうして知的障がいのある社員が活躍し続けられる会社として「横河ファウンドリー」が設立されたのです。同社は設立直後に障害者雇用促進法に基づき「特例子会社」に認定されました。
その後、障がい者雇用をテーマとした講演依頼も増え、著書『チャレンジする心』の出版のチャンスにも恵まれました。横河ファウンドリー設立以降、文部科学省の特別支援学校の職業教育に関する委員会や厚生労働省の障がい者雇用に関する委員会に参加する機会も増えました。
そして、2006年、障害者自立支援法施行に伴い新設された就労支援専門官への就任を厚労省から打診されたのです。オファーの理由をたずねたところ「新感覚での就労支援を実施するためには、企業サイドから専門職を招くのが最も有効と判断した。あるシンポジウムで横河電機の話をきいて、障がいの有無、性別、国籍などに関わらず、社員を一人の人間として尊重しつつ、社員を成長させている企業理念を素晴らしいと思った。障がい者雇用についても同じ理念で推進しているあなたの話しに共感した」とのことでした。
上司に相談したところ「行ってみたいなら行ってみればいい」と背中を押していただき、特別休職を取得し国家公務員として厚生労働省での業務に従事することができました。当時、法施行の渦中において、共に奮闘した方々とは、現在も交流を続けています。
多様性があたり前の環境で、新しいことにチャレンジする社員を応援
私が横河電機で長年働いてきた中で感じる魅力は、社員のチャレンジを支援する環境があるということです。たとえば、上司に横河ファウンドリーの設立を提案した際も、共感とともに後押しをしてくれる前向きな反応があり、すぐに実現に向けた検討が始まりました。
社内にはさまざまな専門性を持つ人財が揃っており、プロジェクトチームを柔軟に組んで課題解決にあたることができます。会社設立に向けて、法律や人事制度設計、ビジネス展開など、それぞれに長けているメンバーによるプロジェクト活動を推進した結果、提案から数か月で会社設立までたどり着きました。
新会社の役員就任に快諾いただいた方々とともに推進した事業展開において、知的障がいのある社員が新しいことに前向きにチャレンジし、成長し続けました。その結果、会社設立の提案書に記載した「3年で黒字」を実現することができました。
また、当社には多様性を受け入れる文化が自然な形で根付いています。私が入社した当時から、性別や年齢、障がいの有無、国籍に関係なく能力と意欲のある人財が活躍できる環境がありました。本社や国内拠点の人事・総務担当の部・課長にも女性が複数名いたことを覚えています。
とくに印象的だったのは、聴覚に障がいのある社員や車いすを使用している社員が様々な職種で活躍している姿です。障がいのある社員の中にも管理職として活躍している社員が現在も複数名います。特別視されることなく、むしろ個人の魅力によって周囲との自然な交流が生まれていました。
知的障がいのある方の雇用に関しては、当初、就労支援関係者から「できない」ことばかりを強調される場面が多くありました。たとえば、「読み書きができないからパソコンは使えない」といった先入観です。
しかし、私たちは「やったことがないからこそ、まずやってみよう」「できるようになる環境や仕組みをつくる」という姿勢で取り組み、適材適所を重視しながら「できない」既成概念を取り除く。そして、小さな成功体験の積み重ねから自己肯定感を高め、チャレンジ意欲を引き出しつつ必要なスキルを育成する仕組みづくりに取り組みました。
また、入社後は、「自己肯定感を高めるためにスモールステップで目標を設定し、達成の成功体験を積み重ねること」、「新しいスキルを習得する機会を提供すること」、そして、「他者からの建設的なフィードバックを得る機会を意識的に設けること」によりすべての社員が自信をもって活躍できる環境を整備しています。
その結果、読み書きが苦手で、入社前にはアルファベットを習得する機会やパソコン操作を学ぶ機会がなかった社員も、横河ファウンドリーの社員として、パソコンを使った業務においても活躍し続けています。
このような取り組みを推進できる原動力となっているのは、私自身の「新しいことへの興味・関心」「やってみなければわからない」「想定外の結果こそ楽しむ」「なければつくる」「ダメでもともと。とりあえず声に出してみる」です。同じことを繰り返すよりも、誰も取り組んでいない領域に挑戦することに魅力を感じます。それは、当時まだ社内でできる人が少なかった手話を習得したことにも表れています。
プライベートでは、中学生のときに「1つの活動に特化するのではなく、毎週好きなことにチャレンジするクラブ」を発足し、なかなか好評でした。現在でも、毎週末、愛犬の五郎丸(トイプードル)と一緒に美味しいグラスワインと美味しい食事ができるお店を開拓しています。
私が入りたいと思ったお店のドアを全てノックし、一度NGと言われても「今日はイケるかも?」と何度もチャレンジしているお店もあります。愛犬同伴をご快諾いただいたのは70%くらいとなかなかの高確率で、「言ってみるものだな~」という経験は数知れずあります。
以前、あるシンポジウムに登壇したときに「今までで1番大きな失敗体験は?」という質問が出たときに「失敗したことはありませんが、想定外の結果は山ほど経験しています。どの想定外も、なるほど、そうなるのか~と楽しんでいます」と返答し、会場の皆さんに笑顔を届けることができました。
周囲からは「情熱がある」、「楽しそうに仕事をしている」とよく言われますが、私自身はそれほど意識していません。ただ、本当にやりたいことだからこそ自然と熱意を持って取り組めているのだと思います。
その都度、目の前にあるクリアしたいこと(目標)に向かって「この方法がダメなら次の方法」「誰に相談したら協力してもらえそうか」と、思いついたことを声に出して周囲を巻き込みながら必要に応じて軌道修正しつつ最後までやり抜く姿勢が周りから楽しそうに映るのかもしれません。
私は多くのチャンスに恵まれ、やりたいことを実現できる環境にいることを実感していますが、これは私だけに与えられた特別な機会ではありません。社内外にたくさんのチャンスがあり、それに気づいて行動すれば、必ず良い方向に進むと思っています。社員の挑戦を応援し、多様な価値観を受け入れる企業文化こそがYOKOGAWAの最大の魅力だと考えています。
互いに配慮しつつも特別扱いせず、多様性を尊重し、誰もが自分らしく成長できる未来へ
今私たちが取り組んでいることが、女性活躍推進や障がい者雇用促進の施策がなくても、また、各社で特別な対応をしなくても自然に多種多様な人財が入社し、それぞれが活躍し、成長し続けている未来につながってほしいと願っています。
とくに、障がい者雇用については、YOKOGAWAでの実例を積極的に伝えていきたいと考えています。たとえば、外部での講演依頼を受けた際にも障がいのある人に対する固定観念が未だに根強く残っていると感じることは少なくありません。
これからも、技術者として活躍している聴覚障がいのある社員のエピソードや、新卒で入社し、マネージャーになった社員が複数名いるという実例を通じて「障がいのある方は常にサポートが必要である」という固定観念を払拭していきたいです。環境や仕組みを整えることで、障がいの有無に関わらずさまざまな可能性を持った人財が活躍できるということを、機会があるごとに発信していきたいと考えています。
私は「仕事をする上で障害はない」と思っています。これからYOKOGAWAで共に働く方々には、障がいの有無に関わらず、自律性や向上心はもちろんですが、「○○だからできない」ではなく、「やってみたい!」という気持ちで経験のないことにもチャレンジしていただきたいです。
また、一人で完結しようとせず、他者と協力関係を築くことも重要です。私は「頼ること」は良いことだと考えています。自分にできること、得意なことを持ちつつ足りない部分は他者に頼るというギブアンドテイクの関係が築けるとより大きなチャレンジができたり、早期に課題解決ができたりすると思います。新しい価値観をスムーズに受け入れられない人もいるかもしれませんが、そこは相手の特性や価値観を理解しながらコミュニケーションを図っていくことが大切です。
YOKOGAWAには、社員一人ひとりの挑戦をサポートし、その可能性を最大限に引き出そうとする文化があります。
チャンスは日常の中に潜んでいます。チャンスを見つけて、それを実現するために行動すれば、応援したり、協力したりしてくれる仲間がきっと現れます。
これから出会う皆さまにとっても、YOKOGAWAでの新しい挑戦が素晴らしい一歩となることを心から願っています。
※ 記載内容は2025年8月時点のものです
