山梨中銀金融資料館の学芸員として、金融リテラシー向上に向けた館内企画や授業を担当
総務部に所属する亀井。同課の業務を手がけるかたわら、山梨中銀金融資料館の企画業務を担当しています。
「山梨中銀金融資料館は、当行が運営する金融関係資料の展示館です。創立50周年事業の一環として、1992年7月に開設されました。
館長を中心とする3名の常駐スタッフが来館者に対応し、私は主に企画業務を担当しています。例えば、最近では低年齢層でも楽しく体験しながらお金の知識を身につけられる『金融教育コーナー』を2023年11月に新設したり、2024年1月には東京証券取引所の協力を得て、シミュレーションゲームやボードゲームを通じてライフプランや株価の変動について学べる金融教育イベント『ゲーム×Money』を開催するなどしました。
また、教育機関での出張授業『マネースクール』にも携わっています。学校を訪問して金融教育を行うもので、対象となる学年に合わせた切り口で授業をしています。最近では、2024年2月に山梨県立農林高等学校で『社会を生き抜くための第一歩』をテーマに授業を行いました。投資の概要やライフイベントに必要な金額など、話題のコンテンツも扱いながら、金融に興味を持って知識を深める出発点となるような授業を目指しています。
ほかにも、市町村などが主催する体験イベントに参加して講義することもあります」
一連の活動を通じて山梨中央銀行が目指すのは、金融リテラシーの向上です。取り組みの背景にある想いについて、亀井はこう話します。
「過去、全国を対象に実施されたある調査の結果、山梨県民の金融リテラシーが非常に低いことが分かりました。また、全国においても2022年度から高校において金融教育が必修化されるなど、金融に関する知識やスキルの重要性がますます高まる中、当行では金融リテラシー向上に向けて、早い段階からさまざまなアプローチで金融教育に取り組んでいます」
入行以来、あらゆる世代に向けた金融教育に携わってきた亀井。一貫して大切にしてきたことがあります。
「金融に対して難しいというイメージを持つ方が少なくありません。いかに平易に面白く教えるかを常に心がけてきました。『面白い』には、『interesting』と『funny』の二つの側面がありますが、まずは『funny』で引き付けたうえで、『interesting』な内容を伝えるよう努めています。
また、社会の関心がどこにあるかも常に意識して情報収集してきました。例えば現在なら、キャッシュレスや、2024年7月に控えた新紙幣の発行など、誰もが興味を持つようなテーマを選定するようにしています」
教壇から金融業界へ。歴史と教育への関心が導いたキャリア
地元である甲斐国(現在の山梨県)が誇る戦国時代の名将 武田信玄に魅せられて歴史に興味を持ち始めた亀井。やがて、学ぶことから教えることへと関心を移していきました。
「歴史的な出来事の背景にある物語など、学校の授業では教えないことを友人に話すと、彼らがとても喜んでくれるのがうれしくて。高校生になるころには教職に就くことを目指すようになっていました。
大学と大学院で専攻したのは日本史学です。大好きな歴史と教育に携わりたくて、卒業後は地元の学習塾に就職しました」
その後、知人を通じて山梨中銀金融資料館が人員を募集していることを知った亀井。まさに自分がやりたいと考えていた仕事でした。
「資料館の存在は以前から知っていました。文化財を活用しながら人に伝えられることが、教員や講師にはない魅力です。加えて、生徒だけでなくあらゆる世代の方と接する機会があるところにも強く惹かれて転職を決めました」
2015年4月の入行後、亀井は総務部へ。山梨中銀金融資料館の企画業務を担当してきましたが、コロナ禍がキャリアの転機となりました。
「多くの方が不要不急の外出を控えるようになったことで、資料館の来館者が大幅に減少しました。そこで、これまでに培ってきたノウハウを館外活動に役立てられないかと考え、着手したのがマネースクールです。
金融教育への社会的な関心が高まったのも、ちょうどその時期。自ら手を挙げて出張授業を担当し、館内の企画展と二軸で取り組んできました」
生徒たちに、「投資」の概念を。現場で手にした成果、見えた課題
塾講師の経験を活かしながら金融教育に取り組んできた亀井。特に印象に残っていることがあります。
「初めて小学生向けのマネースクールを実施した際、授業の最後に、『皆さんは自分の教育にどれくらいのお金がかかっているか知っていますか?』と尋ねたんです。ひとり当たり1,000〜2,500万円もの教育費がかかると説明しました。生徒たちが、私たちの予想よりはるかに驚いていたことをよく覚えています。
それからは、生徒たちの家族がどれだけ彼ら、彼女らに期待しているかを授業内で伝えるべきだと考えるようになりました。そして、家族に感謝することの大切さと、生徒たちにはお金以上の価値があることを伝えようと努めてきました」
出張授業に携わってきた亀井。生徒や教員らとの交流を通じて、確かな手ごたえを感じていると言います。
「授業後のアンケートでは、生徒たちから『新しいことを知ることができてとても勉強になった』『将来必要になる金額を把握でき、計画的な準備の重要性が理解できた』と、とても前向きな感想を多くもらっています。
先生方からも、『亀井さんのおかげで、生徒たちが難しい専門用語を覚えることができた』と評価していただいたことがありました。『おかげで金融教育の進め方のイメージをつかむことができました』とうれしい言葉をいただいたことも。金融についてどう教えるべきか悩む先生方は少なくありません。皆さんの役に立てている実感があり、大きなやりがいを感じています」
一方で、銀行として金融教育に取り組むからこそのこんな課題も。
「銀行や金融には、どうしても資産運用のイメージが伴います。『金融商品の売り込みではないのか』と警戒する先生方がいらっしゃるのも事実です。もっと学校現場とも連携して相互理解を深める必要があると感じています。
私の一方的な考えの押し付けにならないよう、チームメンバーや取り組みを統括する広報・サステナビリティ推進室とも連携しながら、より良い授業のかたちを目指したいと考えています」
金融知識を育み、誰もが安全に自分の資産を管理できる社会に
山梨に根ざす地域密着型の山梨中央銀行の一員として、亀井はこれからも金融リテラシー向上に貢献していくつもりです。
「皆さんに銀行や金融をもっと身近に感じていただくことが目標です。何か困ったことがあればすぐに相談していただけるよう、当行とお客さまとの距離をさらに縮めていけたらと思っています。
また、現在、国内では金融に関するトラブルや犯罪が多発していますが、その原因の一つとなっているのが、金融リテラシーの不足です。収支の話や資産運用などの一般的なお金の話が家庭内でもっとオープンにされるような環境づくりが必要だと感じています。
そのために、金融の面白さを伝えることが、私の役割です。お金の管理や賢い増やし方など、皆さんが金融の知識を身につけるためのきっかけづくりをしていきたいと考えています」
一方、共に金融教育に取り組むメンバーをけん引できる存在になりたいと話す亀井。その先に、実現したい社会像があります。
「先行きが不透明な現代において、投資の観点がとても大切ですが、その投資に関するトラブルも増えています。高齢者を狙った詐欺だけでなく、成人年齢の引き下げに伴い、近年は若年層を狙った金融犯罪も増えてきました。トラブルに巻き込まれ大きな代償を払わざるを得ないケースも多く、各自が大切な資産を守るためには、金融知識を早急に身につけることが欠かせません。『金融教育を受けたことで金融への意識がとても高くなった』と言われることを目指して、注意喚起を続けていきたいです」
それを実現するためには、地元の組織や企業との連携が不可欠です。パートナーとなる教育機関に向けてこう呼びかけます。
「子どもたちの金融教育には、段階に応じた知識の提供が必要です。学校だけでなく、金融の専門家である私たちが一丸となって情報交換しながら、教育のための仕組みを整えていくべきだと考えています。金融リテラシーの向上のために、手を取り合って進めていきましょう」
※ 取材内容は2024年2月時点のものです
