「企業は人なり」。約400人の従業員一人ひとりの名前を覚え、目を見て会話する
東海・北陸・関西を中心に展開しているVドラッグ。村澤は全27エリア中、最多となる19店舗の統括を任され、およそ400人の従業員を束ねています。
「私の仕事はまず、情報の収集と分析です。実際に店頭に立っている従業員から『最近はこのような商品が売れている』という話を聞いて流行を把握したり、競合店の動向をチェックしたりしているほか、Vドラッグ全店舗の売上を毎日確認しながら担当エリアの改善につなげています。
売上が振るわなかった際の原因調査も大切な仕事です。たとえば好調だった店舗の売り上げが急に落ち込んだ場合、天候や競合店のセールなどの外的要因が影響しているのか、それとも商品の欠品などの内的要因なのか、などと理由を探ります。さらには各店舗の運営サポートのほか、本部と店舗のパイプ役として本部の方針を浸透させたり店舗の声を本部に届けたりと、業務は多岐にわたります。
とくに心がけているのは、従業員のやる気を引き出すようなマネジメントです。エリアマネージャーになってしばらくの間は、私が発案した内容を各店舗に取り組んでもらう形でしたが、それでは従業員の本質的なやる気を引き出せず、成果も限定的にとどまると気づいたんです。そこで私が従業員一人ひとりを信頼し、従業員から主体的に提案してもらう形に変えたところ、大きな成果が出始めました」
試行錯誤を経てマネジメントの手法を確立させてきた村澤。普段仕事をする上で、大事にしている価値観があると言います。
「小売業では従業員こそが大切だと再認識して、彼らとのコミュニケーションに力を注いでいます。意識しているのは、約400人の従業員一人ひとりの名前を覚え、目を見て会話することです。
かつては従業員から『エリアマネージャーは雲の上の存在』と思われていたようで、心の距離がありました。でも、自分から歩み寄る姿勢に変えてからはしだいに打ち解け、従業員からも声をかけてくれるようになったんです。ある従業員から『名前を呼んでもらえてうれしかった』と言われたことがあり、こちらまでうれしくなりましたね。
40歳になったのを機に本をよく読むようにしているのですが、松下 幸之助氏の『企業は人なり』という言葉が今、いっそう胸に響いています」
「あなたのことが大嫌い」。パート従業員からのひと言に衝撃を受け、自らを変革
村澤は2007年に中部薬品に入社。これまでの道のりを振り返り、挫折から学びを得た2つの出来事について話します。
「1つは、入社間もない頃の話です。店舗運営の基本となる発注業務で、本当は30個のところを300個発注してしまったんです。他の店舗にひたすら電話をかけて『商品をもらってくれませんか』とお願いし、自分の足で運んで回りました。たった1つのミスがこれほど大きな労力を生むのかということを、身をもって実感しました」
もう1つは、初めてエリアマネージャーに就任した当時のこと。10年間のエリアマネージャー歴の中でも、一番心に突き刺さった出来事だったと言います。
「当時は若くしてエリアマネージャーに就任したというプライドから、従業員一人ひとりと会話するという考えも持たずにふるまっていました。
するとある日、パート従業員の方から『あなたのことが大嫌いです』と言われたんです。衝撃を受けました。私の何がダメだったのかわからず、ご本人に『その理由を教えてくれませんか。自分も変わっていきたいので』とお願いして面談を設けさせてもらったところ、『私にはあいさつしてくれなかったから』とのことでした。
そこで気づいたんです。私にとっては数多くいる従業員の1人かもしれないけれど、相手にとってエリアマネージャーは私1人だけだと。
当時、尊敬していたエリアマネージャーの先輩に相談したところ、『自分が原因でそのような事態を招いたのだから、自分から歩み寄らないといけないんじゃないか』とアドバイスされました。
確かにそれまでの私は『唯我独尊』というか、自分の力だけでエリアマネージャーになったという傲慢な考え方が根底にあって、横柄な態度につながっていたんだと思います」
この経験が、村澤のマネジメントスタイルを大きく変えることになります。
「このままでは絶対にダメだ、自分を変えなければと思いました。それからは従業員一人ひとりにこちらからあいさつするように心がける中で、従業員との関係性が徐々に変化していきました。
『本部と店舗のパイプ役』という私自身の役割もいっそう意識するようになりましたね。『従業員の意見を本部に届けられるのはエリアマネージャーである私だけだ』と責任を持って伝えるようにしています。従業員から『村澤マネージャーに言えばすぐに解決してくれる』と言ってもらえるようになり、信頼関係の深まりを感じています」
担当エリアで弱点だったカウンセリング。立て直しへ3カ年計画を立て、大幅に改善
村澤が現在のエリアを担当するようになって3年。当初は他の地域と比べて医薬品のカウンセリングが弱かったと言います。カウンセリングとはお客さまに声をかけ、悩みや要望をうかがいながら商品を販売していくことです。
「カウンセリングの改善に向け、3カ年計画を立てて実行しました。以前は医薬品の販売構成のうち、時期やトレンドによって変化する着目品目の占める割合が全エリアで最下位だったのですが、最終的に1位を獲得するまでになりました。
まず、カウンセリングが苦手な従業員からその理由を聞き取ることから着手。そもそも接客が苦手なのか、それとも商品の知識が足りないから声をかけづらいのか。その上で勉強会を開いて接客のロールプレイングを重ね、一人ひとりが活躍できる環境づくりを進めました。
とくに苦労したのは情報の伝え方ですね。伝えたいことが従業員に伝わらないことがよくあったんです。『伝えた』と『伝わった』は違うということを意識しながら、相手が理解して実践できるまでフォローするように心がけました。
これまで1人にしか声をかけられなかった従業員が10人にできるようになれば、たとえ売上につながっていなくても『10倍になったね、すごいよ』と進歩を褒めるようにしています」
医薬品以外の分野でも、新商品などの展開方法について工夫を重ね、大きな実績を残してきた村澤。
「他のコンビニやスーパーマーケットで新商品や話題の商品をチェックし、自店にも取り入れて陳列に工夫を凝らしたところ、全エリアで一番の実績を出すことができました。こうして自分の発想次第で利益を伸ばすことができるのは、エリアマネージャーという仕事の醍醐味ですね。
一方で、従業員から『この商品がよく売れているので、多く陳列してみました』という話を聞き、その内容を店長から周辺店舗に共有してもらうなど、従業員の意見を活かす機会も多いです」
これらの取り組みを通じて、村澤はチームワークの重要性をあらためて実感しています。
「ドラッグストアの運営は個人の能力だけでなく、チームワークが非常に重要です。誰かが和を乱せばチーム全体にひずみが生じ、十分な成果を上げることができなくなります。私自身はリーダーとして威圧的な強さではなく、チームを支えるための強さ、つまり傾聴力と伝達力が必要だと学びました。
また先日は、ある店舗で従業員がお客さまから『店の雰囲気がとてもよくなったね』と声をかけられ、『とても楽しんで仕事ができています』とお答えしたそうです。それも、いいチームワークが育まれている証しなのかもしれませんね」
会社が抱える課題を解決し、従業員に「ここで働いてよかった」と思ってもらえる職場に
エリアマネージャーとして10年間歩んできた村澤。自らの強みは「コミュニケーション力と洞察力」だと語ります。
「学生時代に飲食店でアルバイトをし、バイトリーダーを務める中でコミュニケーション力を培ってきました。そして、いつも相手のささいな変化、たとえば髪形や体調の変化を敏感に察知し、相手が何を考えているのかを推測するようにしています。
自分を変えることに対して抵抗がないのも、自分の強みかもしれません。入社当時はふてくされたような態度をとり、上司に『学生気分が抜けていない』としかられたこともありますが、そこできちんと反省した上で、仕事に臨む姿勢を変えてきました」
今では、若手のエリアマネージャーをけん引する存在へと成長。これから挑戦したいことについて熱っぽく話します。
「より視座を高めて会社が抱える課題を解決し、従業員に『この会社で働いてよかった』と思ってもらえるように職場環境を整えていきたいです。
今、いくつかのプロジェクトに参画しています。お客さまへのおもてなしの質向上をめざした『接遇会』でブロックリーダーを務めているほか、労働人口の減少を見据え、AIを活用した自動発注システムなどの仕組みを考えるプロジェクトには営業部のリーダーとして加わっています。
自動発注システムでは私の担当エリアで試験的に導入し、社内のシステム部門と連携しながら改善を図ってきました。このような日常業務以外の取り組みにも積極的に関わり、会社としての強みを増やしていきたいです」
多忙な日々を送る一方で、ワークライフバランスも重視していると言います。
「忙しいからと言って、休みを削るべきではないと思っています。決まった時間内での仕事の進め方を模索し、シビアに計画を立てて進めています。私にも家庭があり、休日には子どものサッカーの試合観戦に行きたいですし、そのために仕事をしているとも言えますから」
そして自身の将来像についてはこのように思い描いています。
「企業が人をつくるのではなく、人が企業をつくるという考え方をこれからも大切にしていきたいです。その上で『村澤さんのような人になりたい』『ああいうふうにやれば会社を変えていけるんだ』と思ってもらえるような存在をめざし、チャレンジすれば成果を残せるということを後輩たちに伝えていきたいですね」
※ 記載内容は2025年2月時点のものです
