歴史あるトヨタで挑む業務革新。デジタル活用で変える、組立SEの未来
私が所属している製品化製造技術部の組立SEを担当するチームでは、組立工場でクルマを作るために必要な要件を図面に織り込み、いいクルマを早く・安くつくれる車両構造にすることをミッションとしています。
SEとはサイマルテニアス・エンジニアリングのことで、設計・製技・工場などの関係部署が一体となって、同時並行で開発を進める手法のこと。企画の段階から試作・量産までの長い期間、クルマが形になる過程に深く関わることができる仕事で、図面を描く設計とクルマをつくる工場をつなぎ、クルマづくりに携わる人たちの「こうしたい」を量産できる形に落とし込む役割をしています。
組立SEはその立場上、さまざまな部署とやり取りする機会があり、相反する要望を受けることも多々あります。全員が満足する最適解を導き出すのはとても難しいですが、なんとか形にしたクルマや新技術が世間で話題になった時、いいクルマづくりに貢献できたのかなとやりがいを感じます。それに何と言っても、自分が提案した構造や工法でクルマがつくられるというのは、SEの醍醐味ですね。
その中での現在の私の役割は、組立SEの仕事のやり方を変えるため、デジタルを活用してメンバーが付加価値のあるSE業務に集中できる環境を提供することです。歴史あるトヨタでは古くから使われているシステムが多くあるほか、それらの情報を仕事で活用するのにアナログな管理をしていることも多いので、デジタルの活用シーンは多岐にわたります。
具体的には、クルマの電動化や知能化に伴って増えた検討作業の自動化や、SE検討する車両データの精度を上げる取り組みなど、すぐできる小さなことから全社的な活動までいろいろと取り組んでいます。
この業務において私がとくに大切にしていることは「今やっていることが誰にとってどれだけうれしいか」を考えることです。デジタルを活用しようとすると、「こんなこともできそう」というアイデアが次々と浮かびますが、実際にSEで活用するメンバーにとってそれは有益なのかを一度立ち止まって考え、常に「誰かのために」なっていることを意識しています。
先輩のいきいきとした姿に惹かれて。海外工場立ち上げにプリウスのモデルチェンジまで
学生時代は電気自動車研究室に所属し、空力性能を研究していました。コンバートEVで各地のEVラリーに参戦したり、EVカートを製作して走らせたりと、手を動かして試行錯誤を重ねる過程が楽しくて製造業を志望するように。その中でも、お客さまが使っているところが見えるモノづくりがしたいなと思い、自動車業界への道を考えるようになりました。
中でもトヨタへの入社を決めた決定的な理由は、働いていた先輩方がいきいきとしていたことです。大きな失敗談や苦労話も成長ややりがいにつながると、とても楽しそうに仕事の話をする姿に惹かれて入社を決めました。
入社後は、工場に近いところでクルマづくりを支えたいと考えて生産技術部門を志望し、組立生技部に配属されました。当時はまだまだ女性技術員が少ない部署で、「女性だから」と言われて悔しい思いをしたこともありましたが、自分達で道を切り開いていくしかないという気概で仕事に取り組んできたことで、徐々に周囲の見る目も変わってきたと思います。その後も女性技術員が増え続け、職場の風土が変わっていくのを肌で感じてきたので、女性が当たり前のように活躍している今のトヨタを見ると非常に感慨深いです。
配属されてすぐは、締結や液物注入といった要素技術の開発業務で組立の知識を増やし、4年目には組立設備の生産準備担当としてインドネシアやタイの新工場の立ち上げに携わりました。建屋だけの工場に組立ラインをつくりあげる仕事で、日本でつくった大きな設備をばらして船で送り、現地で再び据付・調整をしました。日本と海外では、工場フロアの精度やサポート体制など勝手が違うことだらけでしたが、現地メンバーと協力しながら調整と改善を繰り返し、なんとか設備の稼働を安定させることができました。
その後は国内でもプリウスのモデルチェンジやLEXUSの新ライン立ち上げなどさまざまなプロジェクトに従事し、産休・育休を経て現在の部署に異動。設備の仕事は工場での早朝や夜の勤務もあるので、「子育てと両立するためにも組立SEをやってみないか?」と上司が声をかけてくれたんです。要素技術開発や設備生準で長年積んできた経験を活かしながら組立SEをやることで、自分の見識がさらに広がると感じ、その誘いをありがたく受け入れました。
「誰かのために」が根付く職場で──感謝の言葉に支えられたトヨタでのキャリア
入社してから数え切れないほどの出来事を経験しましたが、中でも印象に残っていることが2つあります。
1つめは、インドネシアの工場立ち上げに関わった時のことです。4カ月にわたる出張を終えて日本に戻り、次の仕事に取り掛かって数カ月経ったころ、たまたま見ていたテレビで「トヨタ自動車のインドネシアの工場で自動車の生産を開始しました」というニュースが流れたんです。
そこには、私が据え付けた設備も映っており、一緒に仕事をした現地メンバーが実際に組立ラインでクルマをつくっている様子も見ることができました。海外新工場の仕事はラインオフした後の様子を見られることがあまりないため、このような形で見ることができて本当に感慨深かったですし、こみあげてくるものがありました。
もう1つ忘れられないのは、新しい意匠のバンパーのSEをした時の出来事です。デザインの強いこだわりは理解しつつも、組立SE担当としては、組付方法や作業時間だけでなく、傷付きや搬送中の変形がないかなど検討しないといけないことが山積みでした。工場のメンバーからもさまざまな要望がありましたが、後に続く車両への影響や海外の生産工程も考慮すると、どうしても要望に応えられないことも。申し訳ない気持ちなりつつ説明に行くと、「いつもしっかり検討してくれているA.Kがそう言うならわかった」と快諾してくれたんです。悩みながらも精一杯やってきた姿を見ていてくれた人がいたことに、胸が熱くなりました。
こうした経験を通じて、自分自身の成長も実感しています。いろいろな役割や立場の人たちと仕事をするうちに、多角的に物事を考える癖がつき、先回りして動けるようになりました。また、自分が橋渡しとなって部門横断的な連携ができ、チームで全体最適となる解を導き出せた時、技術者として成長できている実感があります。
私がトヨタでやりがいを感じる瞬間は、決して大それた話ではありませんが「ありがとう」と言ってもらえた時です。現在の仕事では、立場上さまざまなメンバーの要望を耳にすることが多いですが、それを自分の中でしっかり咀嚼して最適解を出すと、多方面のメンバーから感謝の言葉をもらえ、うれしく思います。
出産で気づいた「今しかない時間」の大切さ。後悔しないキャリアをトヨタで歩む
前述の通り、女性社員の少ない部署に配属された私ですが、産休・育休については非常に取りやすかったと感じています。組立生技部では女性技術員として初めての産休取得者でしたが、報告した時は当時のチームリーダーがとても喜んでくれて、「復職後も見据えて、産休までこんな仕事はどう?」など、体調だけでなく、今後のことも一緒に寄り添って考えてくれる雰囲気がありがたかったです。
また出産・子育てを経てキャリアへの考え方も変化しました。入社直後は「子どもが生まれた後も仕事一筋で頑張りたい」と思い、「産休・育休後も頼ってもらえるよう、さまざまな経験をしておこう」と奮闘していました。
しかし実際に子どもが産まれてみると「今しかない子どもとの時間も大切にしたい」と言う気持ちが大きくなり、自分でも意外だったんです。ライフスタイルによってキャリアに対する思いも変わってくるので、後悔しないように常に自分に問い続け、仕事と子育ての両立に励みたいと思います。
その点、トヨタにはそれぞれの思いやライフスタイルに合わせて柔軟に働ける環境があります。上司との距離が近く、今後の働き方について相談する機会もありますし、いろんな人がいて、いろんな仕事があるので、多くの人が自分に向いている仕事を見つけられると思います。私は組立分野一筋でやってきましたが、グループ会社に出向する人や社内公募に応募して別の部署に異動する人もいて、一人ひとりのキャリアプランに合わせた働き方ができていると感じます。
私自身の今後のキャリアについては、まだ小さい子どもがいるため、この先どれくらい仕事に打ち込めるかわからないところもあります。そんな中でも組立分野で長年働いてきた経験を活かし、「困った時はA.Kさんに聞くといいよ」と言ってもらえるような存在でありたいと思っています。よりよい組立工場、組立SEにしていけるように、精一杯取り組んでいきたいですね。
※ 記載内容は2025年8月時点のものです
