人の力で価値を生む商社への志望動機
寮生活を送っていた私が学生時代に最も力を入れたのは、下級生指導を通じた組織運営の改善です。集団生活を送る環境では、ルールを守らせるだけでは組織はうまく機能せず、下級生が受け身になってしまう場面も少なくありませんでした。そこで私は、単に指示や注意を与えるのではなく、「なぜその行動が必要なのか」という目的まで言葉で伝えることを意識しました。また、一人ひとりの性格や理解度に応じて声のかけ方を変え、日頃から相談しやすい関係づくりにも取り組みました。その結果、下級生の主体性が高まり、生活面や行動面での改善につながりました。この経験から、組織を前に進めるには、厳しさだけでなく、相手の納得感をつくりながら働きかけることが重要だと学びました。
もう一つ、私の価値観に大きな影響を与えたのは、防衛大学校に留学してくる外国人士官候補生のホストとして異文化交流に携わった経験です。4年間の在学中に、韓国、英国、インドや中国から来た、将来その国の安全保障を最前線で支える士官候補生の寮生活を支えるホストを務めました。有事には第一線の現場に立つ立場でありながら、自国の代表として世界情勢や政治、歴史に関する考えを率直にぶつけ合う中で、異なるバックグラウンドを持つ相手と向き合い、理解し、尊重し合う過程そのものが信頼関係につながることを学びました。
これらの経験を通じて、私は就職活動において二つの軸を定めました。1つめは、グローバルな視座で仕事ができること。2つめは、防衛大学校での厳しい4年間の寮生活で培った協調性と、人を巻き込みながらチームを前に進める力を武器にできることでした。この2つの軸から、自前の製品に縛られず、グローバルな環境で人を財産として事業を広げていく商社業界を志望しました。
大手総合商社としてグローバルに仕事ができることに加え、トヨタグループで培った知見やネットワークを生かしながら、モビリティ領域をはじめとする社会変革の最前線で新しい価値を生み出せる環境がある。私は豊田通商に、そんな魅力を感じていました。複数の商社の中からこの会社を選んだのは、会社規模や業界における立ち位置に加え、採用面接を通じて感じた社員の人柄の良さが決め手でした。質問への答えを親身に聞いてもらえたことに加え、その場で率直なフィードバックをもらえたことで、自分の表面的な受け答えだけでなく、人柄そのものを理解しようとしてくれていると感じました。自分が熱を込めて話した内容に対して「熱いね!」と言ってもらえた瞬間は、今でも強く印象に残っています。従来の商社機能にとどまらず、モノづくりに近い現場まで踏み込み、主体的に事業を形にしていく仕事に携われることも、入社を決めた大きな理由でした。
事業共創の現場で知った商社の真価
入社後の研修期間は2日間と短期間でしたが、その中身は非常に濃密なものでした。トヨタグループの歴史を学ぶとともに、キャリア入社のメンバー同士で、それまで各自が経験してきた職場と比較しながら、豊田通商の良い点や改善点を共有するグループワークも行いました。この研修を通じて最も印象に残ったのは、参加メンバーの多様性です。さまざまなバックグラウンドや経験を持った人材が集まっていることで、組織が同質化にとどまらず、常に変革を志向している企業姿勢を強く感じることができました。
配属先はモビリティ本部KD事業部でしたが、実際に担当することになった業務は、入社前に思い描いていたものとは大きく異なっていました。入社前は、新興国におけるトヨタ自動車の車両組み立て事業の立ち上げや管理運営をイメージしていたのですが、実際には、豊田通商がマイナー出資しているディープテック系スタートアップとの事業共創を任されることになりました。具体的には、次世代型太陽電池を研究開発している企業と協働し、日本のエネルギー課題やカーボンニュートラルの実現に向けて、新しい技術の社会実装を推進する役割です。私たちは単なる株主という立場にとどまらず、社会変革をめざす事業パートナーとして、事業検討のためのPoCや多様な業界・業種の企業との連携、学術機関との理論構築、そしてそれらすべてをつなぐインテグレータとして機能することが求められました。
加えて、ディープテック系スタートアップとの事業共創ならではの難しさもありました。次世代型太陽電池のような領域では、事業の話を進めるうえでも、前提となる技術や業界構造への理解が欠かせません。とくに経営層や技術サイドのメンバーと対等に議論するには、表面的な知識では足りず、太陽電池の方式ごとの特徴や発電・制御の仕組み、モビリティへの搭載時に生じる論点まで、自分なりに咀嚼したうえで会話に臨む必要がありました。短期間で専門知識を吸収し続けることには大きなプレッシャーがありましたが、事業共創に携わる以上、避けて通れないプロセスだと感じています。
このギャップは、私にとって大きな挑戦でした。すでに確立された自動車生産という事業を理解し展開していく仕事と、まだ形のない事業そのものを企画・構想し、具現化していく仕事とでは、求められるスキルもマインドセットもまったく異なります。とくに、0から構想する新規事業の難しさは想定以上でした。さまざまな事業を束ねるインテグレータという立ち位置にある総合商社だからこそ、定型化されていない課題にも一つひとつ向き合わなければなりません。さらに、それぞれの立場で動く協働先を束ね、視座を高めながら全体を俯瞰し、全体最適となるよう当事者同士を導いていく作業は、想像以上に難易度の高いものでした。
新規事業の最前線で挑む社会実装
現在私が担当しているのは、KD事業における新規事業です。次世代型太陽電池を研究開発しているスタートアップと共創し、モビリティと次世代型太陽電池を掛け合わせた構想を社会実装するため、課題抽出やPoCを通じた事業検討を進めています。新規事業には私一人がアサインされており、これまで培ってきた経験も生かしながら、細かな社内の経理処理から大きな事業構想の立案まで、幅広く担当しています。
この仕事で最も大きな成功体験となったのは、神奈川県の助成プログラムを活用し、県内を走る路線バスに次世代型太陽電池を設置できたことです。太陽電池から発電された電力をバッテリーに供給することで、使用燃料の削減効果があるかを検証する実証実験を始めることができました。この取り組みが多くのメディアに取り上げられ、世の中に広く届けられたことは、大きなやりがいにつながっています。
ただ、実証実験の開始までには約半年間の準備期間があり、多くの課題と向き合う必要がありました。国内でも検証事例の少ない実証実験であり、実際に運行している路線バスという環境下で、いかに確実かつ安全に実施するかが最大の課題でした。課題のつぶし込みやMOU締結をはじめとする契約の取りまとめには苦労しましたが、一つひとつ丁寧に対応していくことで、無事に実証実験をスタートすることができました。
一方で、失敗も経験しています。車載太陽電池キットの納入・施工を、太陽電池製造元である企業を介さずに行う現場を担当した際、発電量が確認できず、車載太陽電池キットとして機能しない事態が発生しました。太陽電池製造元の企業に問い合わせ、車載太陽電池キットを統合的に診断できる人員を派遣してもらい、対処しました。全国的にも実証事例が少なく、制御機器単体や太陽電池単体など部分ごとに見られる人はいても、システム全体を統合的に見られる担当者は限られています。この経験から、不測の事態への初動の速さと、普段から身の回りの事業者との関係構築を着実に進めておくことの大切さを痛感しました。
学生時代と比べて、社会を構成する一人の人間としての自覚と、こういう社会を実現したいという想い、そしてその責任感は大きくなったと感じています。私がめざしているのは、環境負荷の少ない脱炭素・低炭素化を実現できる技術や事業が、一つでも多く社会に実装されている姿です。これまで化石燃料によって生み出されてきた電力を、太陽光という自然由来のエネルギーによる電力で代替していく。その技術の社会実装と事業の確立が、現在の私の担当です。業務を推進した先に、世の中のためになる変化を生み出し、「自分が携わった、自分だからこそできた」と実感できるように、めざす社会の実現に向けて取り組んでいます。
これからの「当たり前」をつくる。未来を切り拓く仕事へ
短期的な目標として掲げているのは、前年度の実証実験から得られた知見をさらに深化させることです。事業化検討を進めるためには、より粒度の細かい情報が必要になります。そのため、東京都や中央省庁が助成するような大規模な実証実験の企画と実現にチャレンジしたいと考えています。より社会で実際に運用されている状態に近い環境での実証を行うことで、普及にあたっての本質的な課題を抽出できると考えているからです。また、ホームマーケットである日本においては、首都であり、モビリティの数も多い東京都という市場の攻略が最重要課題です。ここへの商品適合なしでは、日本市場へのアクセスは限定的になってしまうという危機感を持っています。
中長期的には、車載太陽電池の事業化検討領域において第一人者となれるようなポジションをめざしています。モビリティの脱・低炭素化に貢献できる技術の社会実装を実現したい。そのためには、まだ足りないと感じているスキルや経験があります。とくに必要だと感じているのは、車載太陽電池を商品化するにあたって、技術と事業の両面から統合的に語れる知識です。次世代型太陽電池、電力を制御・最適化するパワーコントローラー、モビリティでの発電・消費メカニズムなど、車載太陽電池システムを体系的に理解し、自分の言葉で語れるレベルまで高めていく必要があると感じています。
今後、仲間として迎えたいのは、好奇心が強く、物事に広く関心を持ちながら、自ら考えて意欲的に行動できる人です。 当社で活躍できるのは、周囲と協働する力と、自分の考えを持ってやり切る力の両方を備えた人だと考えています。
豊田通商の仕事は、トヨタグループをはじめとする多様な仲間と連携しながら、大きな構想を具体的な事業として社会に実装していくことにあります。だからこそ、全体との調和を意識しながら前に進める力が欠かせません。 一方で、求められるのはそれだけではありません。豊田通商ならではの視点と機能を発揮し、より良い社会の実現に向けて、新しい価値を生み出していく意思と実行力も必要です。
入社後に大切にしてほしいのは、素直に学び、周囲を巻き込みながら成長していく姿勢です。新規事業には、正解のない課題や想定外の出来事がつきものです。そんな環境では、学ぶ姿勢がある人ほど周囲の力を引き出しやすく、知識や経験の吸収も早い。結果として、自らキャリアの幅を広げていけると考えています。 当社には、若いうちから裁量を持って挑戦できる仕事と、率直に意見を交わせる風通しの良い組織があります。さらに、モビリティの最前線に深く関わりながら、構想を事業として形にしていける環境があります。 ぜひ、私たちと一緒に未来をつくっていってほしいと思います。

