農家の経営課題と向き合った学生時代から、総合商社という選択へ
学生時代は農学部で農業経営学を専攻し、研究室活動に力を注いできました。財務諸表や市場の分析を通じて農家の経営課題を明確化し、実際に経営者とともにフィールドで課題解決につながる活動を実行する日々でした。
農業生産物は、生鮮品のまま販売しようとすると、農家の売上は市場価格の影響を大きく受けることになります。もともと利益率の低い産業である上に、そういった販売価格の不安定性が農業者の経営状態を圧迫していました。質の良いものが適正な価格で、買いたいと思ってくれるお客さまに届いていない。そんな現実を目の当たりにして、何とかしたいという思いが強くなっていきました。
そこで、農業者と一緒に現場調査を行い、例えば廃棄していたトウモロコシやサツマイモを一次加工して地元の菓子屋に販売するなどの取り組みを実施しました。結果的に、一次加工・二次加工につながる糸口を見つけたことで、売上の出口が多様化され、収益構造が安定し、三次加工、六次産業化などへの多角化に向けた資金確保に成功したのです。さらには、市場価格の予測モデルを構築し、農業経営者が生鮮品として販売する量と加工に回す量の最適配分ができるようなツールを提供したことで、安定的・長期的な農業経営を可能にする取り組みを進めてきました。
こうした経験を通じて、将来的には食・農分野において日本の生産者がもっと収益性を上げることができ、世界中の人が日本の食・農をいつでもどこでも楽しめる仕組みづくりがしたいという思いが明確になっていきました。そのためには、複数産業におけるお金が落ちる仕組み、つまり収益構造やビジネスモデルを学び、事業企画・開発・推進ができる人材になりたい。そう考えた時、産業横断的にビジネスを展開している総合商社、さらには社内でさまざまな経験がしやすい、本部間異動できるような企業を探すようになりました。
周囲が高学歴な中で、本当に私なんかが商社に合格するのかという不安はありました。それでも、豊田通商には、現地現物という考え方が根付いていたり、世の中のためになる仕事をしたいという想いを持った社員、目の前の人のために一生懸命になれる社員が多い会社だという印象を持ち、さらには、他総合商社と比べて規模感の小さい事業が複数あり、比較的事業運営に関わるチャンスは多そうだと感じていました。最終的には、就活の軸(産業横断的なビジネス展開・社内でさまざまな経験がしやすい環境)に一番マッチしていた点と、社員の人柄の良さが決め手となり、入社を決めました。
入社後の試練と成長、そして現実とのギャップを乗り越えて
2019年の入社後、私が配属されたのは東京本社のトヨタアフリカ自動車部でした。アフリカ・サブサハラ地域の正規代理店向けに新車販売営業やマーケティング支援、そして貿易実務を担当することになったのです。ここで私が直面したのは、想像以上に大きな壁でした。もともと英語がそれほど得意ではなかった私にとって、代理店とのコミュニケーションが100%英語という環境は、まさに試練そのものでした。毎日WEB英会話に通い、必死に努力を重ねる日々が始まりました。
また、入社後に感じたギャップもありました。配属された部署がトヨタ自動車から営業業務の移管を受けていたこともあり、想像していたよりもメーカー文化が強く、最初は戸惑うこともありました。商社らしい自由闊達な雰囲気を期待していた部分もあったのですが、実際にはトヨタグループとしての規律や考え方が色濃く残っていたのです。ただ、そこから学ぶことも多く、商社としての柔軟性とメーカーとしての堅実さの両方を経験できたことは、今振り返れば貴重な財産となりました。
2020年8月からはフランスのトゥールで語学研修を受け、その後パリのCFAOという豊田通商100%子会社に出向となりました。ここでの約2年間は、私のキャリアにおいて大きな転機となる経験でした。サブサハラ地域向けのトヨタ新車販売とマーケティングサポート、そして同地域向けの集中在庫需給オペレーションスキームの運営を担当しました。考え方も働き方も異なるフランス人と会話を重ね、彼らに寄り添いながら最も良い方法を考え、オペレーションづくりをした時間はとても貴重な経験となりました。何たび衝突しても英語やフランス語を使って、決して対話を辞めずにやり切った仲間たちとは、今でのプライベートで連絡を取るほどの仲で、人生の宝物です。また、この2年で培ったビジネスパーソンとしてのスキルは今の私のキャリアの土台となっています。
正解のないプロジェクトでつかんだ、成長の手応えと挑戦の日々
現在、私はアフリカ企画部に所属し、アフリカ本部全体の管理や新規案件の推進をミッションとしています。その中で私が担当しているのは、THE TOYOTA TSUSHO CFAO African Art Awardの立ち上げ・運営です。少数精鋭のチームで、アワードの設計から展示会の企画、物流アレンジ、PR企画まで、すべてのことに一人称で取り組んでいます。プロジェクトマネージャーから雑務まで、とにかくすべてを自分事として推進する日々です。
この仕事における成功体験として、何より第1回目のアワードの開催が実現できたことは大きな達成感がありました。受賞したアーティストをWEBやSNSで発信できたとき、そして受賞アーティストから感謝のメッセージが届いたときには、プロジェクトが着実に前進している実感を強く感じました。この成功の要因は、社内でも初の試みであり、誰も正解がわからないプロジェクトだからこそ、とにかくやってみる姿勢、自分で責任をもって推し進める覚悟、そして妥協しないという強い信念を持ち続けたことだと思います。
一方で、苦労も絶えません。弊社や子会社のCFAO、アート関係のステークホルダー、受賞者、キュレーター、審査員と、関係者が社内外含めて多岐にわたり、適切なコミュニケーションや承認の取り方には本当に苦労しています。まだ模索中ではありますが、相手目線を徹底し、相手が判断しやすいような情報提供やコミュニケーションを心がけるようにしています。また、どんなに初めてのことでも、慌てずいったん立ち止まって考える、俯瞰してみる力をつけたいと思い、最近では何かアクションをする前には必ず一度立ち止まるようにしています。
こうした経験を通じて、プロジェクトマネジメント力、ビジネスだけではなくアートという特殊な業界においてもフラットにコミュニケーションをとる力、契約書推敲および締結をアレンジする力、PRコミュニケーション力など、さまざまな具体的なスキルが身についたと感じています。学生時代と比べると、効率重視でアウトプットができるようになったことや、本質的に大事なことを考えた上で物事を判断するようになったことが、大きな成長だと思います。仕事をする上では常に、人のため、未来のためになる仕事であるか、自身がやっている目の前のタスクが本質的な目的に沿っているかを判断基準として意識しています。
産業の垣根を越えた経営企画力と、食と農で世界を変える夢
短期的には、どんな産業においても経営企画・推進ができる人材をめざしています。そのために、今担当しているAfrican Art Awardというプロジェクトを通じて、企画推進力をはじめとしたプロジェクトマネジメントに必要な力を養っていきたいと考えています。このプロジェクトは、まさに企画を形にし、多様なステークホルダーと協働しながら推進していく実践の場です。ここで培った経験が、将来どんな産業でも通用する経営企画力の基盤になると信じています。
一方で、長期的には食や農に関わる分野で、未来のためになるような事業に携わることが私の夢です。この想いの原点は、高校生のときに訪れた北海道での体験にあります。そこで食べた農産物のおいしさに心から感動しました。しかし、ちょうどその頃、TPP発動等の動きがあり、日本の農業界に漠然とした不安が立ち込めていました。そんななか、「こんなにおいしい日本の誇れる農産物を、必ず世界中に発信したい」という強い思いが、私の中に芽生えたのです。
具体的には、日本の農産物が世界中どこでもおいしく食べられるような仕組みづくりに挑戦したいと考えています。それを通じて農家が収益性を確保し、消費者も生産者もハッピーな状態を達成することが目標です。単なる輸出ではなく、品質を保ちながら世界中の食卓に届けられる持続可能なスキーム構築できたらと考えています。
最後に、これから入社される皆さんへメッセージをお伝えします。私たちの会社の魅力は、グローバルな環境で経験ができる点と、社員の人の良さや志の高さにあります。ビジネスを通じて本当に世の中を良くしたいと思っている人、想いを実現するためにあきらめずやり遂げられる人が活躍できる環境です。明るく元気で、一緒に世の中のためにビジネスを作りたいと心から思っているポジティブな方と、ぜひ一緒に働きたいと思っています。皆さんとお会いできる日を楽しみにしています。

