日本の高品質鋼材を世界の自動車産業へ。チームをリードしながら、輸出の司令塔を担う
日本の鋼材を海外の自動車メーカーではなく、日系自動車メーカーの海外生産工場向けに輸出するモビリティ素材海外事業部。インド、インドネシア、タイをはじめ、欧州や北米などグローバルに事業を展開しています。その中で田桐は、インドチームのリーダーを務め、デリバリー管理から新車種の立ち上げ調整まで幅広い業務を担っています。
「インドは自動車の生産台数が右肩上がりで伸び続けている成長市場です。そこへ日本の高品質・高機能な鋼材を輸出しています。毎週数百個のコンテナという規模を扱っており、日々のデリバリー管理に加え、新モデルの立ち上げに向けた調整も行っています。現地の駐在員やナショナルスタッフ、日本の鉄鋼メーカーとの間に立ち、調整を進めるのが私の役割です」
輸出業務に加えて、田桐は人財育成や新規事業開発にも携わっています。
「毎年インドから、将来の幹部候補として研修生が派遣されてきます。日本でデリバリー業務や鉄鋼メーカーとのやり取り、プロジェクトの進め方を1年半かけて学ぶのですが、私はそのOJTリーダーを務めています。帰任後も現地で活躍できるよう、カリキュラムの設計や、毎月の1on1ミーティングによるフォローアップなどに取り組んでいます」
新規事業では、カーボンニュートラルの潮流の中で注目される還元鉄(※)の輸送についても検討を進めています。
※ 還元鉄とは鉄鉱石から酸素を取り除いて製造される鉄鋼原料で、従来の鉄の製造方法では製造過程で大量のCO2が排出される方法であったが、還元鉄を用いることでCO2の発生を抑えることができ、カーボンニュートラルの流れで注目されている
「私の部署では、現業に加えて重点的に取り組みたいテーマをタスクフォース形式で推進しています。私が今期所属しているのは輸送タスクフォースで、テーマは還元鉄の安全な輸送手段の確立です。還元鉄は通常の方法で輸送すると発火のリスクがあるため、船会社や鉄鋼メーカーと連携しながら最適な方法を模索しています」
こうした多岐にわたる業務を行う上で、田桐が大切にしている価値観があります。
「入社前から変わらず持ち続けているのは、『人脈は財産』という考えです。一緒に仕事をした仲間との関係は、その場限りにせず大切にしようと、後輩や研修生にも伝えています。
実際、以前担当していた商材の取引先と再び仕事で関わり、新規事業の提案につながる機会はこれまでに何度もありました。そうした人との縁に助けられてきたので、人脈を大切にしています」
人と人をつなぎ、化学反応を起こしたい。留学で芽生えた想いをかなえるため豊田通商へ
大学時代、工学部で材料化学を専攻し、レアメタルの回収に関する合金の研究に取り組んでいた田桐。周囲の8割が大学院に進学する中、学部卒での就職を決断します。
「大学3年生のときにアメリカへ短期留学をしました。もともと海外で働くことに興味があったのですが、現地で日本人駐在員の方に話を聞く機会を得たことで、想いが固まりました。人と人をつなぎ、新規事業を創出する仕事のおもしろさに触れ、自分も商社で働きたいと考えるようになったのです」
海外で活躍したいという想いを胸に、田桐は商社に絞って就職活動を展開。そして数ある商社の中から、豊田通商への入社を決めます。
「日本には優れた技術を持つ会社が数多くありますが、マッチングがうまくいかないケースも少なくありません。技術と技術、人と人を結びつけ、自分がいなければ出会わなかった会社同士に化学反応を起こし、日本の優れた技術を世界に売り込んでいく。そんな仕事がしたいと考えていた中で、魅力を感じたのが豊田通商でした。
豊田通商はトヨタグループとして海外に多くの拠点を持ち、現場に強い商社です。技術営業的な仕事もできると感じ、入社を決めました」
そして2017年に入社した後は、グループ会社への出向からキャリアが始まりました。
「最初の2年間はグループ会社に出向し、自動車部品メーカー向けの銅のデリバリーを担当しました。その後はアルミパネルグループに異動し、自動車のボデーに使用されるアルミパネルのトレーディングを3年間経験しました。
2022年からは豊田通商ヨーロッパのチェコ支店に駐在することになり、欧州市場向けの自動車鋼板やアルミのトレーディング、新規事業開発に携わりました」
銅、アルミ、鉄と数年ごとに担当する商材が変わった田桐。新たな知識やスキルを習得するのは容易ではなかったものの、キャリアに大きなプラスになったと振り返ります。
「さまざまな商材を経験したことで視野が大きく広がり、商習慣の違いを学ぶ中でお客様との交渉力も磨かれました。部署としては一つの商材のみを担当してキャリアを歩むケースが多い中、非鉄と鉄の両方を経験している強みは、現在の仕事にも大いに活かされていると感じます」
予期せぬ壁を、チームの力で突破する。困難の中で磨かれたリーダーとしての胆力
田桐にとって、念願だった海外経験が実現したチェコでの駐在。しかし赴任直前、予期せぬ事態が起こります。
「ロシア向けのアルミデリバリーを担当する予定だったのですが、赴任直前にウクライナ侵攻が始まったのです。結果的に最初の業務は、ロシア事業のクローズに向けた調整となりました。当初の業務内容とは大きく変わったものの、お客様との最終調整や在庫処理、メーカーとの交渉など、貴重な経験を積むことができました」
言語の壁や文化の違いに苦労しながらも、新規開拓営業やプレゼンテーションの経験を重ね、大きく成長した田桐。チェコでの駐在を経て、2024年に現在のモビリティ素材海外事業部に帰任し、インド向け業務を担当することになりました。
「欧州から帰任して間もなくインド担当になり、正直驚きはありました。先輩方から苦労話を聞いていたため不安もありましたが、チームメンバーや現地スタッフに支えられ、現在は順調に業務を回せています。ただ、昨年はインド政府が海外からの鋼材すべてにライセンス管理を導入し、大きな転換点となりました」
ライセンス発行の遅延や政府の急なルール変更が重なり、デリバリーが危うい状況に陥ったこともあったと言います。
「毎日対応に追われる日々でした。その中で鉄鋼メーカーの方、現地の駐在員やナショナルスタッフ、チームメンバー、さらには現地の弁護士事務所も巻き込み、日本連合として交渉を進めました。
大使館や政府関係者とやり取りをしたのも、その時が初めてです。チームリーダーとして、担当者だけでは解決が難しい問題に対して冷静に次のオプションを提示し、To Doを整理しながらグループリーダーとも連携して対応しました。最終的にお客様のラインを止めることなくデリバリーをつなぐことができ、大きな達成感がありましたね」
成長を続けるインド市場に日本の高品質な鋼材を届け、その発展に貢献できていること。田桐はそこにやりがいを感じながら、人財育成にも大きな意義を見出しています。
「以前はプレイヤーとして自ら動くことが中心でしたが、今は後輩や研修生の成長を見届ける立場になりました。お客様の前で的確なプレゼンができるようになったり、イレギュラーな対応もこなせるようになるなど、変化していく様子を見るとうれしくなります。人の成長を支えられることに、新たな喜びを感じています」
次の目標は、海外事業体の経営。支えてくれる仲間と共に、新たな挑戦を続けていく
インド向けの鋼板輸出業務を通じ、チームを率いるおもしろさを知った田桐。その知見を活かし、再び海外駐在に挑戦したいと目標を語ります。
「前回はプレイヤー寄りの立場でしたが、次は組織マネジメントや人財育成の経験を活かし、海外事業体の経営に携わりたいと考えています。現地事業体の売上に貢献し、スタッフの育成やモチベーションの向上にも取り組んでいきたいですね。
駐在先の国やエリアに対するこだわりはとくにありません。インドのアサインも当初は驚きましたが、良い縁に恵まれたので、置かれた環境で成果を出していきたいと思います」
目標の実現に向けて、田桐は今できることを着実に積み重ねています。
「まだ自分の人財育成スタイルが確立していないため、グループリーダーの姿を見ながら学んでいるところです。後輩やメンバーがいかに成長し、力を発揮できるか。サポートの仕方を模索しながら、マネジメントスキルを高めていきたいと考えています」
マネジメントスキルを磨く上で、身近な上司の存在は大きい──そう語る田桐は、豊田通商の特長として「人」の魅力を挙げます。
「就職活動の時からずっと感じていることですが、人間的に魅力のある社員が多い会社です。困っていると何も言わずとも助けてくれる、いわばおせっかい力のある仲間がたくさんいます。自分の労力を惜しまずサポートしてくれる上司や同僚とチームを組み、新規事業の開発に挑戦できるのは、とても楽しく幸せなことだと日々感じています」
人が魅力的なだけでなく、若手に大きな仕事を任せてくれるのも豊田通商の特長です。田桐自身、チェコ駐在時にスロバキアで新拠点を設立するプロジェクトを任されました。
「結果的にその事業は実現しませんでしたが、現地の自治体やゼネコンと交渉し、採算性を細かく詰めていく貴重な経験ができました。若いうちからゼロベースで事業を構想する機会を得られたことは大きな財産であり、その経験は現在の新規事業開発にも活きています。やりたいと手を挙げたことを尊重し、背中を押してくれる組織だと感じています」
どんな環境でも、出会いを力に変えていく──「人脈は財産」を胸に、田桐は次のステージへ向かって挑戦を続けていきます。

