豊田通商入社前夜 働く醍醐味を知った金融機関時代
経済学部に在籍していた学生時代は、経済・経営学を幅広く学んでいました。マクロ経済を専攻し、経済全体を俯瞰しながら、「社会の仕組みがどう動いているのか」「企業や金融がどのように社会と関わっているのか」を考えることに興味を持っていました。専門的な知識を習得するだけでなく、論理的な思考やデータに基づいた分析力を養うことに注力した時期でもあります。この頃に培った「情報を整理して結論を導き出す」という分析の基礎は、現在の環境情報開示や戦略立案の業務においても、私の大きな強みとなっています。
また、プライベートではバンド活動に打ち込み、チームで一つの目標に向かって努力する経験も積んできました。学生時代を振り返ると、特別な実績があるというよりも、「一つひとつを真面目にやり切る」ことを大切にしていたと思います。授業や課題にはきちんと向き合い、ライブハウスでのアルバイトでも自身のマンスリー企画の実行に奔走するなど、与えられた役割を最後までやり切ることに必死に取り組んでいました。その積み重ねが、後の社会人生活での基礎になっていると感じています。
就職活動を始めた当時は、「将来どうなりたいか」が明確だったわけではありませんでしたが、軸として持っていたのは大きく二つあります。1つめは、社会や経済の根幹に関わる仕事ができるかという点です。企業活動の裏側を支え、長期的に社会に影響を与える仕事に携わりたいと考えていました。2つめは、専門性を積み上げられる環境かどうかです。若いうちから幅広く経験することも大切ですが、同時に「この分野なら自分に聞け」と言われるような軸となる専門を持ちたいという思いがありました。そうした考えから、金融業界に魅力を感じ、国内生命保険会社に入社することを決めました。
生命保険会社勤務約13年間の中で、保険営業、株式アナリスト、資産運用ストラテジスト、ESGリサーチャーなどを経験しました。主に機関投資家としての資産運用業務を担当し、数兆円の資産を扱う責任感に社会への影響度を感じながら、投資分析・ESG分析など経済の専門性が必要な役割を担うことで、自身のめざしてきたキャリアを一つ叶えることができたと感じています。
また、上記キャリアと並行して労働組合中央執行委員長など組合執行部役員を長く務めるなかで、現場一つひとつを自分の目で見て、職場環境や仕事のやり方を交渉してきました。自身の手で手触り感をもって改善の活動に取り組んでいくなかで、働く意義を強く実感することができ、自分の仕事を通じてより良い未来を実現していく醍醐味を味わうことができました。
豊田通商DNAとの邂逅
金融機関で経験した仕事の醍醐味・手触り感をもっと強く味わうべく、私が次なる挑戦のフィールドに選んだのが豊田通商でした。
そして、入社後すぐに受講したのが、キャリア入社者向けの研修でした。この研修では、豊田通商グループの価値観やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)。企業が掲げる経営理念や行動指針を示すもの)について、時間をかけて共有するプログラムが用意されていました。単なる会社説明ではなく、「なぜこのMVVを掲げているのか」「日々の仕事や意思決定にどう落とし込まれているのか」を、具体的な事例を交えながら議論する形式だったことが印象的でした。同じタイミングで入社したキャリア採用の仲間が全国から一堂に会し、大人数で一緒に研修を受けたことも心強かったです。業界や職種、年齢もさまざまなメンバーが、「それぞれが何を大切にして転職してきたのか」「この会社で何を成し遂げたいのか」を率直に語り合う時間は、入社初期において大きな支えになりました。前職では約3カ月の新入社員研修がありましたが、豊田通商のキャリア採用での研修は、より「マインドセット」や「豊田通商の流儀」の理解に特化した短期集中的な内容でした。新卒の研修が「社会人としての基礎」や「商社マンとしての土台づくり」に重点を置いているとすれば、キャリア入社の研修は、価値観のすり合わせと、会社の判断軸を理解することに重点が置かれていたと感じます。
研修の中で最も印象に残っているのは、価値観の共有に非常に重きを置いているという点です。キャリア入社の場合、前職での経験や考え方がすでにしっかりと形成されているからこそ、「スキルよりも、何を判断軸に仕事をする人なのか」を大切にしていると感じました。「Gembality(現地・現物・現実)」や「Be the Right One」といった考え方について、自分自身のこれまでの経験と照らし合わせながら考える機会が多くあり、「正解を早く出すことよりも、正しい問いを立て続けることが重要」「短期的な効率より、長期的に信頼される判断を積み重ねる」といった、豊田通商らしい思考スタイルを学ぶことができました。また、e-ラーニングでは「価値観カード」を使ったワークが非常に印象的でした。多くの選択肢の中から、自分が最も大切にする価値観として「情熱をそそぐ」「未来」「成長」を選び出したことで、自身の行動原理が明確になりました。とくに、「未来が良くなるのであれば、今がハードでもやる意味がある」という「未来重視」の考え方や、「働くことを通じて自分自身を常にアップデートし続けることがアイデンティティになる」という「学び続ける・成長」への意欲は、私にとって大きなエネルギー源であることを再認識しました。
一方で、入社後には戸惑いもありました。前職では、投資家として企業を「評価する側」の立場でしたが、現在は「自分たちで事業を動かす側」です。この立場の違いは、想像以上に大きいと感じました。金融業界ではロジックがきれいに整理されていれば物事が進んでいくことが多いのですが、事業の現場では、必ずしもデータや理論だけで割り切れない判断が日常的に求められます。価格、納期、現地事情、取引先との関係性など、さまざまな制約条件の中で「今できる最善」を探る必要があります。とくに苦労したのは、「自分一人で動かせる仕事はほとんどない」という現実です。サステナビリティという正解のないテーマにおいて、他部署やチームメンバーを巻き込み、同じ方向を向くための「話す・説得する力」の重要性を痛感しました。また、豊田通商特有の業務知識や取り組みを迅速にキャッチアップし、現場の立場を理解しながら調整を進めることの難しさも、入社直後の大きな課題でした。しかし、上司からは「先輩同僚に配慮はしても、遠慮はしなくていい」という力強い言葉をもらい、現在では自分らしさを出しながら主体的に動けています。また、良い意味でのギャップとして、「想像以上に若いうちから任される」という点があります。手を挙げればきちんと任せてもらえる文化があり、挑戦しがいのある環境だと感じています。
ネイチャーポジティブの中心に
豊田通商に入社後は、環境管理の統括部署である環境推進室の一員として、豊田通商の環境取り組みについて情報開示を担当してきました。投資家をはじめとするステークホルダーが求めている情報をわかりやすく発信し、企業価値向上につなげていくことが役割になります。中でも、昨今関心が高まりつつある「ネイチャーポジティブ」や「生物多様性保全」に向けた施策を主に担当してきました。
印象に残っている成功体験としては、外部評価の大幅な向上が挙げられます。CDPの2年連続トリプルA獲得やFTSEの環境スコア5.0(満点)など外部評価をトップレベルまで改善できたことは、情報開示の質という観点から大きな成果だと考えています。
一方で、苦労も多くありました。事業部門との調整には常に難しさがあり、環境課題は正解がなく、各本部の利益や実情とぶつかることも多いためです。とくに、TNFD分析において営業サイドの納得感を得ながら指標を策定・開示内容を決定していくプロセスは、非常にハードルが高いものでした。関係者の皆さんと粘り強く交渉を重ねた結果、豊田通商らしい開示情報の拡充につなげることができたと考えています。 時にはうまく理解いただけない時もありましたが、社内で誰もまだ経験したことのない未踏の領域だからこそ、自身の頭で何が適切かを考え抜き、相手の立場に立って噛み砕いた資料に仕立て直し、各営業本部へ丁寧に説明して回ることで、最終的には納得感のある分析結果と開示案を導き出せたと自負しています。この経験から、「まず相手の立場を理解する」「相手の言葉で説明する」ことの重要性を、あらためて学びました。自分本位の正論を押し通すのではなく、相手の立場に立って「全体最適な解決方法」を提案できるか、今も日々試行錯誤を続けています。
また、この過程を通じて得た最も大きな学びは、リスク管理は「守り」ではなく「事業を前に進めるための土台」だということです。リスクを理由に止めるのではなく、「どこに注意すれば安全に挑戦できるか」を示すことこそが、環境リスク管理の役割だと考えるようになりました。複雑で正解のないテーマほど、一人で抱え込まず、周囲を巻き込みながら考え続ける、という姿勢は今では自身の強みになっていると感じています。
そして2026年4月からは、安全・環境推進部 環境リスク管理室に所属しています。環境リスク管理室は、環境に関する取り組みをいっそう強化すべくこの4月に新設された部署で、私は室長として豊田通商グループ全体の環境リスク管理に関わる施策を統括しています。私たちのミッションは、単に机上の空論でルールを作るのではなく、現場の実態に即した環境マネジメントシステムを構築することです。とくに特徴的なのは、単にルールや規程を整えることが目的ではなく、「現場で本当に使われ、機能する仕組みになっているか」を重視している点です。営業部門や海外拠点と日常的に対話を重ねながら、実態に即したリスク管理の在り方を模索しています。
具体的には、環境デューディリジェンスや海外拠点を含む環境リスクの把握・評価、事故やトラブルを未然に防ぐための仕組みづくり、発生時の再発防止に向けたルール整備などを所管しています。これまでは、主にTNFD・CSRDなどのサステナビリティ開示対応や、CDP、S&P、FTSEといった外部評価対応を担当してきましたが、こうした社外の求める高いレベルの管理視点を、社内の環境リスク管理の仕組みに組み込むべく、取り組みを進めています。
室長として心がけているのは、「個人の頑張りや属人的な対応に依存しない組織を作ること」です。一人ひとりが自分の判断範囲や役割を理解し、迷ったときに立ち返れる判断軸やプロセスを整えることで、結果として組織全体の対応力を高めていきたいと考えています。入社当初はプロジェクトマネージャーとして、主に情報開示チームの「要」を担ってきましたが、現在はラインマネージャーとして、チームのマネジメントだけでなく、環境マネジメントシステムをより高度な次元へと引き上げることに挑戦しています
そして、いい未来で会いましょう
個人としての短期的な目標としては、自身が携わってきたネイチャーポジティブの視点を新しいテーマではなく、豊田通商の当たり前のアイデンティティに上昇させていきたいです。豊田通商グループ全社員がネイチャーポジティブの実現に向けて取り組む、そんな会社にしていきたいと考えており、自身が起点になりたいと考えています。また、環境リスク管理室としては、リスク管理業務を通じて現場の実情に深く触れ、本社側の視点だけでなく、真に現場に寄り添った環境マネジメントシステムを確立したいです。新設された環境リスク管理室のメンバーとともに、新しいチャレンジを楽しみながら、組織としてのパフォーマンスを最大化させていきたいと考えています。
中長期的な目標としては、5年後に「豊田通商が環境分野で先導する際の要であり、牽引者」として活躍していたいです。リスク管理と情報開示の双方に精通したプロフェッショナルとして、組織を力強く引っ張っていく存在をめざしています。多種多様なバックグラウンドを持つ7万人の仲間とともに先導者をめざすなかで、自身が専門性と現場感覚の両方を備え、事業と環境の架け橋になれる存在でありたいと思っています。
豊田通商に関心のある皆さんに最もお伝えしたいのは、豊田通商は主体的で前向きな会社だということです。「未来の子どもたちにより良い地球を届ける」というミッションのもと、他に類を見ない異能を発揮する「7万人の大旅団」全員が、持続的な成長の実現に向け日々汗を流しています。
だからこそ、常に自分をアップデートし続け、変化を「成長のチャンス」と捉えられる方と一緒に働きたいと思います。私自身、追い込まれた時こそ、いよいよ「おもしろくなってきた」と考えてしまうような思考回路を持つ人間なのですが、豊田通商にはそうしたスピリットを持った方がとても多いと感じています。変化を楽しみ、おもしろがれる人に是非仲間になっていただければと思います。
また、私自身もこの数年で子どもができたことで「子どもたちにより良い地球を残したい」という想いがなおいっそう強くなってきたと感じます。今はまだ正解のない課題に向き合い続けなくてはならず、おそらく苦労も多くあるかもしれません。その苦労を超えることに意義を感じられるような熱い想いを持った人に、ぜひジョインしていただきたいです。次世代のために、持続可能な社会を共に創り上げていく情熱を持った方を待っています。共にいい仕事をして、いい未来で会いましょう。

