革新的な電池材料開発で未来のモビリティに貢献する仕事
私は現在、研究開発部門の電池材料開発チームでグループマネージャーを務めています。私たちのチームのミッションは、革新的な電池材料を開発し、モビリティの進化に貢献することです。この使命感を胸に、日々最先端の技術開発に取り組んでいます。
具体的な業務内容は多岐にわたります。新規材料の合成からプロト設備の設計、そして新規材料の電池としての使いこなしの提案まで、開発の川上から川下まで幅広く担当しています。とくに力を入れているのは、世の中の最先端材料をキャッチアップし、競争優位性を保つ開発です。毎日最新の論文を調査し、最近では生成AIも活用して特許情報や海外プレスリリースの収集も行っています。
グループマネージャーとして、5名のメンバーをマネジメントしており、勤怠管理、予算管理、進捗管理といった管理業務に加え、グループ間の橋渡しや技術的な助言も重要な役割です。チーム全体の戦略を統括し、各メンバーが担当するプロジェクトの進行をサポートしながら、電池事業室などの他グループとの連携も積極的に行っています。
仕事を進める上で最も大事にしているのは、データに基づいた意思決定です。材料合成において計算科学を駆使して新規材料を予測することもできますが、やはり実験を通して得られた材料物性の傾向を重視しています。その結果をもとに改良の方針を策定するのが私のスタイルです。また、最新材料の情報をキャッチアップすることも常に心がけており、過去の開発で得られた経験をもとに、先端材料の設計思想を理解し、自分たちの開発に生かすことをモットーとしています。
研究者として歩んだ道のりと企業への転身を決めた理由
私のキャリアは、大学での研究者としてスタートしました。前職では、ポスドクとして2年間、その後助教として数カ月という期間を過ごし、無機粒子の精密合成に関する研究に従事していました。とくに結晶形状制御という分野に深い興味を持っており、立方体や球状、異方性を持つさまざまな無機粒子の合成に取り組んでいました。単なる材料の合成にとどまらず、結晶形状と光触媒特性や電池特性との関係についても研究を行い、基礎研究から応用まで幅広く探求していました。
研究者として過ごした期間で最も印象に残っているのは、複数の企業と大学が合同で成果を出すプロジェクトに携わった経験です。その中でも特に、ロボットスーツ向けの電池を考えるプロジェクトでは、私たちが材料を提供する立場として参画していました。企業の方々とのディスカッションを通じて、自分たちでは気づかなかった結晶材料の新たな価値を発見することができました。当時、結晶形状制御のために単結晶材料を作製していましたが、世の中の主流は多結晶材料であり、単結晶であることに特別な価値があるとは考えていませんでした。しかし、企業の方々との議論を重ねる中で、高密度な電池セルを作製する上で単結晶という特徴が大きく活きることを知り、研究の新たな可能性を見出すことができました。
この経験を通じて、さまざまな人とコミュニケーションをとることの重要性を強く実感しました。プロジェクト採用という性質上、多くの人と会話する機会があり、自然と説明するスキルが身に付きました。また、学生を指導する機会も与えられ、人を育てる楽しさも味わうことができました。電池はセルを作るだけではなく、パックや使い方も含めて設計するものだということを初めて知り、材料研究の奥深さと実用化への道筋を理解することができました。
そうした経験を積む中で、次第に転職への想いが芽生えてきました。自分たちが設計した材料が実際に世の中で使われるようになれば、研究者としてより大きな喜びを感じることができるだろうと考えるようになったのです。材料合成から電池セルやパックまで作製している企業への転職を真剣に検討し始めました。周囲は私が研究職を続けるものと考えていたため、転職の意向を伝えた時は驚いたと思います。企業への転職には迷いもありましたが、ダメでも3年程度であれば取り返しがつくと考え、新たな挑戦への一歩を踏み出すことを決意しました。
実用材料の合成成功と企業研究開発の醍醐味を知る
入社後最も印象に残っている成功体験は、リチウムイオン電池向けの材料で実用に耐えうる材料を合成できたことです。結晶材料はただ作るだけでは意味がありません。利用しやすい形や生産しやすい形で提供する必要があり、パイロットスケールまでですが、そのような理想的な状態で活物質を作製できました。特許も取得することができ、非常にやりがいを感じることができました。
この成功の要因は、株式会社豊田自動織機が材料開発だけでなく電極開発やセル開発などを行っていることによって、後工程で困ることをすぐにヒアリングできる環境があったことだと考えています。電極作製時に必要な要件を材料合成にすぐにフィードバックできることで、違う方向へ開発が進むことを回避できるのです。
もちろん苦労もありました。多くの人が連動して動くことが常で、日程がタイトになりやすく、十分な試作回数を稼ぐことができない場合も多々あります。材料合成の検討では、複数の合成パラメーターをいじる必要があるときに、ひとつずつパラメーターを変更し、数十回の試作をしたうえで適正なパラメーターを設定する必要があります。しかし、日程がタイトな開発においては、数回の試作から最適な条件を提案することも必要となります。そのような場合には、計算科学や過去の知見を最大限活用し、最小の試行回数で目的のものを合成します。
入社してから技術力や専門性も深まったと実感しています。材料合成はスケールアップして初めて世の中に出ていくものなので、スケールアップを経験できることは自分の技術力が高まっていると感じられ、成長を実感できます。パイロットスケールでの試作では、人の手をあまり入れることができないので、ある程度自動で材料合成が進むようにする必要があります。この辺りは研究職出身だと感覚がない部分でしたが、周りの転職組に材料合成企業出身の方が多くいたため、いろいろと勉強させていただき、前に進めることができました。一方で、一つのことに圧倒的に時間を費やしたという大学での研究経験は重要で、アカデミックでの経験しかない状態での入社でしたが、気後れすることなく他のメンバーと技術について議論することができました。
技術者として人として成長し続ける、挑戦への想い
短期的な目標として、現状のセルの性能向上に貢献できる技術の創出に取り組んでいきたいと考えています。とくに注目しているのは急速充電技術です。車両向けの電池として急速充電できることの魅力は非常に高く、そのための電解液や活物質などの開発に力を入れていきたいと思っています。これは単なる技術開発ではなく、実際の産業車両や自動車に搭載される製品につながる重要な取り組みです。
中長期的には、もっと大きなビジョンを描いています。自分たちがデザインした材料やセルが実際に産業車両や自動車に搭載されるよう、チーム全体の力を底上げしていきたいのです。そのために重要なのは、社内にいるさまざまな専門家とのコミュニケーションです。一人ひとりが持つ専門性に加えて、プラスαの価値を持った人材を育てていくことで、組織全体の技術力向上を図りたいと考えています。
採用候補者の方々には、ぜひお伝えしたいことがあります。過去の経験やこれから経験することは、すべて財産になるということです。失敗も含めてさまざまなことを経験し、それを発信できるようにしておくことが大切だと思います。私自身もさまざまな経験を通じて成長してきましたし、豊田自動織機という環境がそれを後押ししてくれました。
入社を検討されている方の中には、愛知での生活に不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、近くのモールに行けば必要なものはすべて手に入りますし、高速道路も近く日本中どこへでも移動しやすい環境です。夏の暑さだけは少し大変ですが、慣れることができます。
最後に、私にとって豊田自動織機で働く魅力を一言で表すなら、「技術者としても人としても成長できる環境がある」ということです。ここには電池に関するすべてのことにアクセスできる環境があり、働く環境を良くしようとする雰囲気があります。柔軟性と好奇心、そして意思決定できる力を持った方であれば、きっと活躍できる場所だと確信しています。

