株式会社豊田自動織機は、1926年に創業者・豊田佐吉氏が設立したトヨタグループの源流となる企業です。繊維機械からスタートし、現在ではフォークリフトや自動車部品、繊維機械など幅広い分野で事業を展開。特にフォークリフト、カーエアコン用コンプレッサ、エアジェット織機は世界トップシェアを誇ります。売上高は約4兆円、従業員数は7万人以上とグローバルに成長し、世界各国の産業と暮らしを支えています。「発明と挑戦」のDNAを受け継ぎながら、環境配慮や自動化といった新しい時代のニーズに応える技術開発を続けています。
技術統括センターのFCプロジェクトでは、燃料電池(FC)向けコンプレッサの設計・開発を担っています。安城工場では機械領域の設計・開発から製造・組立までを、共和工場では電気領域の設計・開発を担当し、両拠点が連携しながら開発を進めています。豊田自動織機が手がけるFC用デバイスは、トヨタ自動車株式会社の燃料電池車「MIRAI」にも搭載されています。
今回は、機械部門の加藤・楳山、電気部門の伊藤様・吉井に、燃料電池車におけるコンプレッサの役割やFCプロジェクトならではのやりがい、そして挑戦を後押しする風土について聞きました。
4人はなぜFCを選んだのか——背景と決め手
左から、
技術統括センター FCプロジェクト 開発第十一室 楳山 亮
技術統括センター FCプロジェクト 開発第十一室 加藤 弘晃
左から、
技術統括センター FCプロジェクト 開発第十二室 グループ長 伊藤 啓太
技術統括センター FCプロジェクト 開発第十二室 吉井 俊祐
――まずは、皆さんの経歴を教えてください。
加藤: 新卒で入社して以来、FC領域一筋です。今年で24年目になります。
4人のうち新卒入社は私だけで、ほか3名はキャリア入社です。
楳山: 2002年に入社しました。前職では、航空エンジン用の軸流圧縮機の研究開発を担当していました。製品が大きく、設計から評価までが数年単位で進むため、複数案件を並行すると自分の作業の輪郭が見えにくくなる感覚があって。加えて、シミュレーション中心で実物に触れる機会が少ないことにも、もどかしさがありました。そこで「もっと開発サイクルが短く、実機を相手にできる環境で働きたい」と考え、自動車業界へ。地元が名古屋なので、このエリアのメーカーを中心に検討しました。入社後はいったん空調側の部署に配属され、半年〜1年ほど経った頃に「FCでターボを担当してほしい」と声をかけてもらい、現在に至ります。
吉井: 昨年8月に入社しました。2015年に二輪車メーカーへ新卒入社し、6〜7年ほどモーターサイクル開発の実験業務を担当。その後はコストや進捗管理といったマネジメント寄りの業務を担当していました。
その中で「もう一度、技術を軸にしたい」という思いが強くなり、転職を検討しました。あわせて、まだ世の中に多くない新しい技術領域に挑戦したい気持ちもありました。そのときにFCという分野を知り、「市場に広く出回る前の技術に、早い段階から関われる」と感じたことが入社の決め手です。
伊藤:2013年入社です。前職は家電メーカーで液晶テレビの設計担当でしたが、拠点が全国にあり転勤も多い環境でした。子どもが生まれたことをきっかけに「生活拠点を落ち着かせたい」と思うようになり、愛知県内で働ける会社を探して豊田自動織機へ転職しました。 入社後は約8年間、エレクトロニクス事業部でインバーターや車載充電器設計を担当。その後、FCでコンプレッサとインバーターを一体開発する構想が立ち上がったタイミングで、FCへ異動しました。
車を走らせ続ける“要”を作る——FCコンプレッサの使命と開発の最前線
――FCプロジェクトの組織構成についてお聞かせください。
加藤:安城工場には、70名が在籍しています。年齢構成は20代~60代まで幅広く万遍に在籍しています。このうちキャリア入社は5名です。
一方、共和工場は40名ほどです。社員の年齢構成は、20代~50代が偏りなく在籍しており、このうちキャリア入社は3名です。
――機械部門・電気部門のミッションと役割を教えてください。
加藤: 機械部門は、FCコンプレッサ本体を中心とした機械構造の設計を担当しています。試作レスのV字開発を目指しつつも、実際には「まず作って試す」という文化が根っこにあり、トライ&エラーを重ねながら精度を上げていきます。バーチャルだけに頼らず、現地・現物で検証しながら開発を進めるのが、私たちの役割です。
ミッションとしては、トヨタ自動車のマルチパスウェイの取り組みに対して、FCコンプレッサで価値を出し続けること。MIRAI向け開発をベースに、高効率化や小型・軽量化を進化させることに加えて、こちらからより良い提案ができる力も磨いていきたいですね。
伊藤: 電気部門は、FCコンプレッサのモーターを制御するインバーターの設計・開発を担っています。高効率・省電力を大前提に、搭載性を意識した小型化やユニット全体の容積低減にも取り組みながら、モーターの最適制御を突き詰めていくのが私たちの役割です。
使命は、トヨタ自動車の技術課題に対して提案するところから製品立ち上げまで、一連のプロセスを完遂し、確実に形にすること。効率化や小型化に加えて、車両の「走る」機能に直結する領域なので、信頼性・耐環境性を高いレベルで満たすことが特に重要になります。
――燃料電池車におけるコンプレッサの役割を教えてください。
加藤: 空調用と同じ“圧縮技術”でも、役割はまったく違います。空調用は車室環境を整える役割が主です(近年は電池温調も役割付加されてきてはいます)が、FCコンプレッサは燃料電池に空気・水素を供給する要の部品です。ここが止まると車が動かないので、壊れない設計を徹底しています。「自分たちの製品が止まると車が止まる」という意識が常にありますね。
さらに効率向上や小型化、コストの改善がそのまま車両性能・車両コストに反映されます。影響範囲が広い分、手応えも大きい領域です。
技術統括センター FCプロジェクトが手がけているコンプレッサ
――FC向けならではの設計上の工夫や難しさはどこにありますか?
加藤: 機械側は、車両の安全性に直結します。万が一コンプレッサが故障しても車両を安全に停止できるよう、フェールセーフまで含めて考える必要があります。また、商用展開では乗用車以上の長寿命が求められ、耐久性・信頼性の確保がより重要になっています。
伊藤: 電気側は出力が大きく、電流も発熱も空調用とは違うので熱設計がシビアです。製品サイズも大きく、パッケージングの難易度が上がる中で、熱も踏まえて高い出力密度を実現しなければならない。そこがFCならではの難しさですね。
――面白さや、やりがいを教えてください。
楳山: 私の担当部品はシステムの効率や消費電力に大きく関わります。特にFCコンプレッサは消費電力が大きいため、その改善は車両全体の燃費に直結する。責任は重大ですが、それが大きなやりがいになっています。また、アクセル操作に合わせてコンプレッサが作動し発電が始まるので、ダイレクトに「車の走り」に貢献できる面白さもあります。
吉井: 新しい領域を開拓している実感があります。インバーターの消費電力を1%改善するだけでも、車両全体で見たときのインパクトが大きい。工夫が数字に表れ、車両性能に直結する——その点に、大きな手応えを感じています。
伊藤: 一般的な電動製品は電気を“使って動く”ものですが、FCは“電気を生み出すプロセスの一部を担う”ところが違います。そこにFCのコンプレッサならではのやりがいがあります。
――MIRAI第1世代から第2世代にかけての進化を教えてください。
加藤: 方向性は一貫して、小型化と高効率化です。トヨタ自動車さんの燃料電池の性能向上に合わせて、「どの領域の効率を優先したいか」という狙いが変わってきました。私たちもその変化に合わせて、効率を高める方向で型式を最適化してきました。
第1世代は容積型を採用しましたが、第2世代では「第1世代のときに整えた設備と体制が十分活かしきれない」といった課題も見えてきました。
今は効率だけでなく、コスト・量産性・拡張性まで含めて、開発から生産までを一貫して“全体最適”で考えることを強く意識しています。
――今後、重視していきたい技術テーマは何でしょうか?
楳山:普及にはまず低コスト化が重要です。加えて高効率化、特に消費電力量をいかに減らすかです。従来のエンジン用ターボのように、タービン側のエネルギーを活用してモーター消費電力を抑えるという発想は、今後FCを広げるうえで必須になっていくはずです。社内の既存技術を取り込みながら、それを新しい機能としてFC製品に落とし込んでいきたいですね。
――他事業部との連携は多いのでしょうか?
加藤:多いと思います。生技開発センターや碧南工場のエンジン部門と連携しています。また、コンプレッサ事業部に基幹システムを使わせてもらうなど、広く連携しながら進めるテーマが多い部署だと思います。
伊藤:材料選定で素材系の部署に相談したり、共和工場のエレクトロニクス事業部と技術情報を共有したり、日常的にやり取りがあります。行き詰まったときに他部署の取り組みからヒントを得られるのは大きいですし、こちらのノウハウを返すこともあります。互いに刺激になりますね。
――大変だった局面はありましたか?
加藤: 第1世代・第2世代を量産まで持っていったときです。期日が近づくほど緊迫度が上がってきます。試作で不具合が出たり、狙った性能が思うように出なかったりすると、責任も重く、精神的にも負荷が大きい。製品化直前が一番大変ですね。
伊藤:トラブルが出た瞬間に一気に厳しくなります。スケジュール通りに進めていても、トラブルが起きるとスケジュールがタイトになります。限られた時間で解決策を見つけ、最後までやり切るプレッシャーは大きいです。
必要があれば他チーム・他部署にも協力をお願いしながら進めますが、協力を求めるときも「何に困っていて、いつまでに、何が必要か」を伝えれば一緒に考えてくれる人が多いです。部内でも、みんな自分ごととして捉えて協力してくれます。
設計に集中でき、フレキシブルに働ける——開発の現場
――働き方や1日のスケジュールを教えてください。
加藤:私はマネージャー職なので、会議が中心です。判断したり調整したりするのが主な役割です。一方で、これからお迎えするキャリア採用の方には、現場の技術的な課題に直接向き合い、解決に導く役割を期待しています。私のように会議室にいる時間よりも、実際に現場やデスクで設計検討に向き合う時間が中心になるはずです。 私とは役割が異なりますが、その分、最前線でモノづくりの手応えをダイレクトに感じていただける環境です。
楳山:渋滞を避けて朝6時頃に出社することが多く、退社は17~20時頃です。会議は週4〜5時間程度で、それ以外の時間は自分の担当領域の設計検討に充てています。集中して技術と向き合える、ありがたい環境です。
吉井:私も時期によっては、朝6時過ぎに出社しています。退社は17〜18時頃が多いですね。製品の信頼性試験を主に担当しており、午前はデスクでの検討、午後は試験の準備・実施を行う、という流れです。外部の試験サイトに直行直帰することもあります。
――通勤や出社形態、拠点間の往来はいかがですか?
加藤: 車通勤が多いですが、JR安城駅から社用バスもあります。在宅勤務も可能で、業務や家庭事情に合わせて週2〜3回リモートの方もいます。拠点間のやり取りはTeamsを基本に、必要なときに対面での往来も行っています。
伊藤: 設計は共和工場、試作や立ち上げは安城工場という割り振りなので、フェーズによってはメンバーが安城工場に来る機会が増えますね。
――出張の頻度についてはいかがですか?
吉井:少ない方だと思います。行くとしても近郊が中心ですね。
――月あたりの残業時間や休日出勤の有無を教えてください。
加藤:残業は平均で月40時間程度です。休日出勤はほとんどありません。
――フレックスは実際に活用されていますか?育児との両立も柔軟でしょうか?
伊藤:かなり柔軟に働けると思います。送り迎えや通院対応なども含めて調整している人が多いです。育休も性別問わず取得されていますね。
前例がないから、まず動く——FC領域ならではの当事者意識
―普段のチームの雰囲気やカルチャーについて教えてください。
加藤様: 一言でいうと自由です。放任ではなく、個々が裁量を持って動ける。安城工場では、事務所は落ち着いていて、実験室は活気があるなどメリハリがあります。
楳山様: 新しい提案をすると「じゃあやってみよう」と背中を押してもらえることが多いので、“自由さ”を感じますね。自分の提案が通るのはありがたいですし、「良いな」と思うポイントです。
吉井:電気側も挑戦に前向きな雰囲気があります。入社直後から意見を求められる場面も多く、きちんと聞いてくれる環境だと感じました。
加藤:分野が新しいので「この人に聞けば全部分かる」が成立しないんです。だからこそ前例に縛られず、まずやってみようという空気感が強い。自分たちで作り上げるという当事者意識が根づいていると思います。FCという新しい領域ならではのカルチャーでもありますね。
――会社全体としては、どんな風土がありますか?
加藤: 全体として、「目の前の課題を自分ごととして捉えて、何とかしよう」という意識がとても強い会社だと思います。任されたことを最後までやり切る、責任感の強い人が多いのも当社の特徴ですね。
――中途で入社してみて、プロパーの方との違いを感じる瞬間はありますか?
吉井: 仕事の中で「この人はキャリア」「この人は新卒」と意識する場面は、ほとんどありません。皆さん自然に馴染んでいます。あえて言うなら、キャリア入社だと“同期”のような存在がいない点でしょうか。ただ、研修や社内講座を通じて、業務外のつながりができることもありますね。
――転職後のやりがいや成長実感について教えてください。
吉井:いずれ街中で「自分が関わったコンプレッサが載っている」と思える瞬間が来るはずで、今はそれを楽しみにしています。
転職で、前職の完成車メーカーから現在のサプライヤー側に移り、不具合が起きたときに自分たちの技術で解決する責任が増えました。未知の領域も多く悩みますが、原因究明から対策、再評価までを主導して回し、解決できたときはやりがいを感じますね。
また、他部署連携が多い分、コミュニケーションや調整のスキルはかなり鍛えられました。ミーティングでは、「地に足のついた進め方」が求められるので、データを解析し正しく認識した状態で議論に臨む力が身についたように思います。
――教育・サポート体制についてお聞かせください。
吉井:教育専用拠点で技術講座が頻繁にあります。上司も「興味があれば受けてみて」と後押ししてくれているので、主体的に受けに行きやすいですね。必須研修も含め学ぶ機会は多いです。相談に時間を取ってくれる方も多く、自然に支えてもらえる感覚があります。
車を走らせる“要”を守る仕事——水素社会を止めないコンプレッサをあなたと
―水素社会の実現を目指すモノづくりに関わるという観点で、どんな志向性の方が向いていると感じますか?
加藤: 向上心がある方なら、技術的なマッチングが完璧でなくても問題ないと思っています。前向きに何でも吸収して取り組める方であれば、きっとすぐ馴染めるはずです。また、内燃機関分野でターボチャージャーなどを手がけてきた方は、FC領域とも技術的に相性が良く、活躍の幅は広がると思います。
――採用の場面で、責任感や、やり切る姿勢は重視されていますか?
伊藤: はい。すべてを一人で抱える必要はありませんが、チームで協力しながらでも、最後まで責任を持ってやり切れることは大事なポイントですね。
――社内で特に活躍している方の共通点があれば教えてください。
吉井: 面倒見のいい人が多いのはありがたいですし、そういう方ほど活躍している印象があります。こちらの話をきちんと聞いてくれて、答えがすぐ出ないテーマでも時間を取って相談に乗ってくれる。そうした姿勢を見ていると、「スマートに仕事をしているな」と感じます。――最後に、応募を検討されている方にメッセージをお願いいたします。
加藤:コンプレッサが止まれば、燃料電池への供給が止まり、車は走れません。私たちは、それくらい重要な役割を担っています。水素社会を止めないコンプレッサを、一緒に作りましょう。
