頼り、頼られる関係性の中で、専門性を磨いていく
東洋製罐株式会社(以下、東洋製罐)のテクニカルセンターで、食品衛生性の分析・評価を行う網屋。彼の所属する製品アセスメントグループでは、容器の内容物適性、安全性の評価を主な業務としています。
「私たちのチームは、容器に充填された食品や飲料を安心・安全に、そして美味しく届けるために必要な評価をしています。私自身は分析評価を担当していて、機器分析だけでなく官能評価も実施し、製品開発に必要なデータを取得しています。
評価は新しい容器が開発されたときだけでなく、既存の容器に対して内容物を変更する際にも必要なため、さまざまな案件で評価は常に必要な業務です」
網屋の1日の仕事は、主に分析評価と報告書作成で構成されています。
「分析評価と聞くと、黙々と実験をしているイメージがあるかもしれませんが、仕事中は意外と汗をかいている場面が多いです。機器分析で使う機器のメンテナンスや、サンプルの前処理がすごく大変だったりします。ジュースのような液体から微量の成分を分析することは難しく、どうやって不純物を減らして、測りたいものを測っていくか。さまざまな検討を行いながら、結果の考察や報告書の作成をしています。
私は、こうした分析評価の仕事にプライドを持っています。『測れていない』ことと『そもそもない』ことは違うんです。その判断を下すことは難しいですが、とても意義を感じています」
自身の仕事に誇りを持って取り組む網屋。周囲との関係性もモチベーションにつながっていると話します。
「部署は大きく、メタルの専業、プラスチックの専業、というように容器種や材料で分かれますが、分析評価ではすべての種類の容器を取り扱っているんです。その分、いろんな人とコミュニケーションを取る機会があり、日々の刺激になっています。
私はお互いに頼り、頼られる関係性が理想的だと考えているのですが、東洋製罐には専門性の幅がとても広いと感じています。自身の知識や経験が役立つこともあれば、人から教えてもらうことも多いんです。お互いギブアンドテイクができる、とてもいい環境だと感じています」
迷ったときは困難な方へ。折れない心によって見出だせた学び
網屋の分析との出会いは、大学時代にさかのぼります。農学部で食品化学について学んでいた際、目に留まったのが分析の授業でした。
「当時は自分の将来像のイメージがつかず、研究室選びにも悩んでいたのですが、一番授業の中で難しいと感じたのが分析だったんです。だからこそ、そこに進むべきだと感じました。
過去の自分を振り返っても、悩んだときは困難な方に進んだほうが後悔しないタイプだったんですよね。理系が不得意だから理系に進んだところもあり、苦手なことに取り組めばその分、新しい世界が開けると考えました」
自身の価値観に沿って分析という道を選んだ網屋。それが天職へとつながっていきます。
「分析について深く学んでいくと、自分の中でしっくりと当てはまるような感覚がありました。『分』も『析』も、細かく分けるという意味なんです。物事をどんな困難なものでも小さく少しずつ分けていけば、自分が咀嚼できる内容になる。
化学的なこともそうですが、日常的な悩みなども細かく分ければ理解できたり、スムーズに物事が進められたりするんです。分析というフィールドの奥深さに、どんどんのめり込んでいきました」
就職活動の時期となり、分析経験を活かせる仕事を探しはじめた網屋は、東洋製罐と出会います。
「学部3年生の時に職場を訪問し、東洋製罐って容器屋さんだけど、逆になんでもできるんじゃないかと思ったんです。特定の商品だけを一生研究し続けるよりも、幅広い挑戦ができる点に魅力を感じ、入社を決めました」
入社後、網屋は1年間の製造現場研修を経験します。
「この時期は私にとっても大きな学びとなりました。正直なところ、工場での業務を続ける中で『分析をしたかったのに、自分は何をしているんだろう』とモチベーションが下がった瞬間があったんです」
研修中、挫折しそうになったという網屋。しかしそこから、奮起していきます。
「とにかく、小さなことからでも学んでいこうと心がけました。任される業務は細々とした仕事が中心だったのですが、工場の掃除をする際、床の汚れ方一つとっても、偏在性があったり、落ちやすさが違ったり。なぜそうなるのか考えることで、現場の理解につなげていきました。
ゴミ捨てでも、増減のパターンから現場の動きが見えてくることも。どんなことでも捉え方次第で大きな学びになると気づいたんです」
新たな気づきを得た網屋は、学びを形にしていきました。
「現場の人々からも教えていただきながら、PowerPointで製造ラインの資料を作り、どの機械が、どんな動きで缶を作っているのかなどをまとめていきました。
教えていただいたことに自分の知識や考えを加えて資料を作りましたが、その後、工場に入った後輩も私が作った資料を見て勉強してくれたと聞き、取り組んで良かったと感じています」
こうした経験は、網屋にとって貴重な財産となりました。
「製造現場の仕組みを知れたことはもちろん、人とのつながりも得られました。今、分析の仕事をしていても、製造現場の先輩たちへの感謝の気持ちを忘れません。いただいた恩は直接返せないかもしれませんが、自分の仕事を通じて別の形で恩を送っていきたいと思っています」
クリエイティブと技術の融合、越境活動が生む新しい視点
研修によって学びを得た網屋。テクニカルセンター配属後は情熱を持って分析業務に取り組みながら、社外活動にも力を入れています。
「私の職種としては研究開発なのですが、東洋製罐の可能性を広げていくため、社外活動にも積極的に参加するようにしています。
得意先である飲料メーカーのセミナーに参加して、商品を通して実現したい世界観について話を伺ったり、ファッション業界のセミナーに参加し、環境意識や産業モデルを学んだりしています。空間設計をする会社のセミナーに参加して、デザインとアートの違いについて勉強をしたこともあります。
一見遠い世界に見えても学べることは多く、とくにデザインについては刺激が大きかったですね。世の中のことは意外と理詰めではなく、人は『なんかいい』から物を買うんです。でも、その『なんかいい』は緻密に設計されていることを知りました」
別の業界へ越境しながら視野を広げていった網屋。直近では、クリエイティブについて勉強をしています。
「ビジネスとクリエイティブについて社会人向けの学校に通いながら学んでいます。既存のサービスの見せ方を変えてどのように届けていくか。それがクリエイティブだと私は解釈しているのですが、この考えは、容器というサービスを扱っている東洋製罐にも必要なものだと思うんです。
受講者は名だたる広告業界の方や起業家がゴロゴロいる中、毎月のコンペの課題ではまだまだ歯が立たないことばかりではありますが、自分の未熟さを知れたことをチャンスと捉えながら取り組んでいます」
これらの活動を通じて得た知見を、網屋は社内へと還元しています。
「外に出て、ショックを受け、学んだことを翌朝に職場で共有する。そういう小さな変化から新しい会話が出てきて、アイデアが生まれて、いずれ大きな変革につながると信じています。技術を磨くことも大切ですが、研究開発者もある種のクリエイターなので、外部とのつながりや交流をもとに、アクションをしてくことも重要だと考えているんです」
意志があればなんでもできる、東洋製罐で広がる挑戦のフィールド
会社の成長に向けて、俯瞰した視点でキャッチアップを続ける網屋。東洋製罐で働く魅力について、このように語ります。
「東洋製罐の魅力は、志ある人を後押ししてくれる環境があることです。上司も私が興味を持ちそうなセミナーを紹介してサポートしてくれているんです。そのおかげで、さまざまな業界の人と交流する機会を得られました。
先日はセミナーをきっかけに知り合った方と一緒に、スペインの料理学校に行くという機会も得ました。世界的に権威のある料理学校だったため、東洋製罐の容器によって新しいコラボレーションができないか可能性を探しに行ったんです。
普段は研究開発をしている人が、業務とはまた別の角度から海外に行くことはなかなかないと思います。でも、東洋製罐であれば、意志さえあれば、チャンスはいくらでもあるんです」
こうした機会は網屋だけでなく、やる気のある人全員に開かれています。デジタル系のセミナーに参加したり、地域連携やキャリアについて学べる社会人学校に通い始めたり、さまざまな形で学びを広げるメンバーが増えているのです。
「東洋製罐は容器の会社ですが、だからこそなんでも関われるし、つながっていくと思っています。容器を作る上で蓄積してきた技術的なノウハウもあるため、それを軸に別の形で事業を広げていくこともできるんです。
いろんなカテゴリーの人たちとセッションしていくことで、自分たちでは気づいていないような価値を見出すこともできるだろうと考えています」
最後に、網屋が今後の展望について語ります。
「私の目標は、どれだけ外の業界やトレンド、考え方を容器の世界に翻訳していけるか。容器の解釈をどれだけ拡大できるか。そのトランスレーターになることです。これは1年や2年では難しいかもしれません。技術だけでなく、クリエイティブな領域も大切だと考えています。
アートとサイエンスの間にあるデザイン、アートとビジネスの間にあるクリエイティブ。これらを理解し、東洋製罐がさらに価値を発揮できるようにしていきたいです」
容器を通じて、社会に新しい価値を提供し続ける。東洋製罐のめざす姿がそこにあります。
※ 記載内容は2024年9月時点のものです
