PETボトルのリサイクル材を分析・検討し、未来の技術開発につなげる
現在、伊藤はテクニカルセンター 基盤技術開発部のプラスチック素材開発グループに所属しています。
「東洋製罐グループホールディングスの綜合研究所がいわゆる『0→1』の研究を手がけるのに対して、『1→10→100』の技術開発を担い、自社工場に新しい技術や材料を導入することがテクニカルセンターの役割です。中でも私は基盤技術開発部内のプラスチック素材開発グループに在籍し、PETボトルを扱うチームで活動しています。
PETボトルには製造段階からリサイクルを想定した厳しい規格が設けられ、分別回収と再利用が制度化されてきました。しかし、リサイクルの過程ではどうしても不純物が混入してしまいます。そこで、品質が低下したリサイクル材をどう活用していくかを検討し、新しい技術開発につなげていくことが私のミッションです」
PETボトルの材料を担当するチームメンバーは、副主査を筆頭に計5名のメンバーから構成されます。PETボトルを扱う難しさとおもしろさについて伊藤はこう話します。
「SDGsの取り組みでは、悪者扱いされることが多いプラスチックですが、中でもPETボトルはリサイクル率が高く、『リサイクルの優等生』と言われるほど技術開発が進んでいます。リサイクルの先頭を走るがゆえの難しさがある一方、将来的にほかのプラスチック容器が直面することになる問題にいち早く取り組み、環境問題の解決に貢献できていることにやりがいを感じています」
リサイクル技術の最前線で開発に携わる上で、伊藤にはとくに大切にしていることがあります。
「綜合研究所との連携強化に努めてきました。テクニカルセンターが工場向けの技術開発を行う一方、綜合研究所では材料に特化した研究を行っています。それぞれ得意分野がありますが、両者間の交流はこれまであまり活発ではありませんでした。
テクニカルセンターと綜合研究所は近距離に位置しているので、両施設を行き来する私が橋渡し役となって情報交換を促進することで、より高い成果をあげることができると考えています」
「広く浅く」をモットーに培ってきた多様な知識と経験が強みに
愛好するRPGゲームの影響もあって、幼いころからチームワークを発揮することに価値を見出していたと話す伊藤。大学院では酵素の研究に従事していながら、「狭く深く」より「広く浅く」学ぶことを心がけ、東洋製罐に興味を持ったのも、ふとしたことがきっかけでした。
「就職活動中に大事にしていたのは、時間をかけすぎないこと。研究科から推薦されて東洋製罐と出会い、飲料メーカーがつくっているとばかり思っていた容器づくりに特化する企業があることを知って興味を持ちました。縁の下の力持ちのような存在に魅力を感じたのを覚えています」
入社後、伊藤が最初に配属されたのは川崎工場製造第二課。当時の経験がいまの業務に生きていると言います。
「川崎工場では、食用油や洗剤などに使われるオレフィンボトルを担当していました。そのおかげで、テクニカルセンターではオレフィンボトルの担当者とも対等に意見交換ができています」
伊藤がテクニカルセンターに異動したのは2017年のこと。さまざまな業務を担当してきた中で、とくに印象に残っていることがあります。
「初めの数年間は、他メーカーが開発する低コストのPETボトル材料の導入を担当しました。その後、将来を見据えた新たなリサイクルのプロジェクトへの参加を経て、現在に至っています。
このプロジェクトでは、研究所出身の上司のもとで働くことになり、材料に関して多くを教わりました。また、加工メーカーさんのところに出張する機会が増えたことで、経験の幅も大きく広がりました。
何より、綜合研究所とのやり取りを通じて、工場と研究所の両方の視点や知識が身についたことが自分の強みになったと感じています。独自の知見をチームメンバーと積極的に共有し、より効果的な業務運営に役立てたいと考えているところです」
育休と組合活動を通じて高まった働き方への意識
第一子の誕生にともない、2021年に育休を取得している伊藤。働き方を見直す良いきっかけになったと振り返ります。
「21年の12月から翌月にかけて、年末年始の休暇とあわせて育休を取得しました。私が育休を取得した数カ月後に妻が職場復帰したのですが、それがちょうど私の忙しい時期と重なってしまって、早く出社し遅い時間に帰宅する日が続いたため、子どもの送迎や育児のほとんどすべてを妻に任せていました。
ふたりめを検討中ですが、当時の反省から、次は長期の育休を取ると決めています。職場に私の代わりはいくらでもいますが、子どもの世話ができるのは妻と私のふたりだけ。家のことが最優先だと思っています。
育休を開始してから180日目までは、休業前の賃金の67%の育児休業給付金が支給されますし、2022年の10月からは2回までの分割取得が可能になりました。男性もできるだけ長く取得すべきだといまは考えています」
東洋製罐の男性育休取得率は90%を超えています。しかし、課題もあると言います。
「私の周囲でも全員が取ってはいるはずです。ただ、中には数カ月の人もいれば、1週間程度の人も。職場ごとの事情や仕事内容に左右される部分があるとはいえ、全員が育児に本格参加するのに十分な日数を確保することをめざす必要があるでしょう」
伊藤は5年間にわたって組合執行部の中央執行委員としても活躍してきました。働き方への意識が高まると同時に、思いがけない副産物も。
「当社の労働組合は専従ではなく、通常の仕事を兼務しながら活動する非専従が原則です。先輩に頼まれて始めたことでしたが、社員の生の声を聞く中で職場で起きている問題への理解が深まり、自身の働き方についても考えるようになりました。
社内のネットワークが広がったことも収穫でした。全国に点在する15の事業所から集まったメンバーのほとんどが工場の製造課の有望な若手たち。どの工場にも顔見知りができたことで、新しい材料や技術の導入の相談がとてもしやすくなりました。
また、現場の中心となっている方にも中央執行委員の経験者が多く、社内の調整ごともずいぶん円滑に進むようになっています」
持続可能なビジネスモデルの構築を視野に入れ、これからもリサイクル技術の開発に挑む
組合執行部の中央執行委員として責任ある立場を任された伊藤。東洋製罐で働く魅力をこんな言葉で表現します。
「私はまだ30代前半なのでテクニカルセンターでは役職を与えられていませんが、組合活動では大きな裁量権を与えられました。普段の業務では会う機会のない、さまざまな方とお会いする機会に恵まれ、多くを学べたと感じています。社内の交流が広がるにつれて、ますます会社への愛着が強まりました。
現在も支部のナンバー2のポジションを務めさせてもらっていますが、会社と組合とがうまく作用し合って、より良い組織になっていくことを願っています」
そんな伊藤のいまの目標は、綜合研究所とテクニカルセンターや工場との距離を縮めていくこと。次のように続けます。
「綜合研究所の装置を使えば簡単に試験できることがあったり、逆にテクニカルセンターに知見の蓄積があることが綜合研究所に伝わっていなかったり。ナレッジ共有が不十分なために、非効率が生じていると感じる場面が少なくありません。
最近は綜合研究所とテクニカルセンター間で交流会が実施されていますが、担当者レベルでのコミュニケーションの機会はまだまだ限定的です。グループ全体のパフォーマンスを最大化するためにも、両部門が協力して課題を共有し、一丸となって解決策を見出していくことが重要だと考えています」
また、現在携わるリサイクル技術の開発をビジネスにつなげていくことも伊藤の目下の課題のひとつです。
「PETボトルのリサイクル技術の開発が当社の事業にどのように貢献できるのか、現時点ではまだ見えていません。これを価値ある事業へと育てていくことも私たちの重要な役割です。持続可能かつ利益を生み出すビジネスモデルの構築をめざして、これからも取り組んでいきたいと考えています」
これまで培ってきた知識と経験を糧に新しい技術の開発にまい進する伊藤。目の前の課題に真摯に向き合い、現場と研究所の架け橋となる存在であり続けようとする姿から伝わる誠実な想いは、リサイクル技術の新しい未来を築いていくことでしょう。
※ 記載内容は2023年11月時点のものです
