近年、耳にする機会が増えた「配属ガチャ」という言葉。新入社員として入社する際に、あらかじめ部署や勤務地などの配属先がわからないことを表したものです。希望や想定と異なる場合、「配属ガチャ 失敗」と表現されることもあります。
転職を見据えて就職活動をするなど、キャリア形成を意識している方も増える中、希望通りの配属でない場合は計画が崩れてしまうと不安な方も多いでしょう。また、もしも希望通りの配属ではなかった場合、退職を検討するという話もよく耳にします。
しかし、希望や想定と異なる配属だったからといって、必ずしも失望する必要はありません。思わぬ配属先での経験が、その後のキャリアを切り拓くきっかけとなった方や、最初の配属先で成果を出し、希望の配属先へ異動した経験を持つ方も多くいます。
そこで本記事では、入社後の配属は希望や想定とは異なったものの、そこでの経験を活かし活躍している方々をご紹介していきたいと思います。
学生は「配属」についてどう考えている?
まずはレバレジーズ株式会社が実施した、入社後の配属先に関する調査結果から、24年度に入社した方々の配属についての考え方を紐解いていこうと思います。
2024年4月に新卒入社を予定する大学生を対象に、「入社後の配属先(エリアや部署)は決まっているか」を聞いたところ、2月時点で約半数が「すでに配属先は決まっている(50.4%)」と回答しました。また、配属先については、9割以上が「希望通りだった(95.5%)」と回答しています。
一方、入社後の配属先が決まっていない学生に対して「配属先が希望と異なる場合に入社辞退や早期退職を検討するか」を聞いたところ、約4人に1人が「入社辞退・早期退職(※)を検討する(24.6%)」と回答しました。
「配属先が希望と異なる場合でも、入社辞退や早期退職を検討しない」と回答した学生に理由を聞いたところ、1位は「スキルをつけたいから(19.2%)」、2位は「仕事内容に興味があるから(17.2%)」「せっかく希望の会社に入社したから(17.2%)」となりました。
◼️調査概要
・調査対象:「キャリアチケット」に登録している2024年卒業予定の大学生
・調査時期:2024年1月26日(金)~2024年2月16日(金)
・調査方法:Webアンケート調査
・有効回答者数:131人
・調査主体:レバレジーズ株式会社キャリアチケット
希望外の配属もチャンスに!6人の経験談
ここからは、入社当時、想定や希望とは異なる部署に配属されたものの、その部署で経験を積み成果を挙げている方や経験を積んで別の部署へ異動された方などのコンテンツをご紹介していきます。
※ 掲載内容は記事公開当時の内容であり、現在各社で運用されている配属の仕組みや制度とは異なる場合があります
▶︎JX金属株式会社
事業内容:非鉄金属に関する資源開発、製錬・リサイクル、先端素材の製造・販売
・仕事内容:総務部で新しいITCツールの導入や障がい者が末永く働ける環境作り、社員の健康増進などを担当
一方、2015年に新卒でJX金属に入社した福躍さん。就活時期にJX金属が所有するチリの銅鉱山の新聞記事を見て、そのスケールの大きさに感銘を受け、入社を志望したと言います。
福躍さん 「入社当時は人とのコミュニケーションを重要視される営業を志望したのですが、結果総務へ配属されました。ただ、今では、総務も社内の営業みたいなものだと感じています。入社当初は、仕事も何もわからなかったので、とにかくコミュニケーションを積極的に取ること、笑顔でいることを心がけ、周囲の皆さんから教えてもらえるように意識していました」
→ストーリー:境界を作らず、攻めの姿勢で社員に貢献する──新しい時代に求められる総務のカタチ
▶︎アルプスアルパイン株式会社
事業内容:コンポーネント事業、センサ・コミュニケーション事業、モジュール・システム事業
・仕事内容:品質マネジメントシステム業務を担当
森さん 「多くの人と関われる仕事がしたいと思っていたので、入りたいと思っていた部署は総務部でした。ところが入社して配属されたのは品質企画部。予想外の配属先に驚きました(笑)。新卒配属が初めての部署でもあったので当時はとても不安でしたが、私の武器であるコミュニケーション力で同じ部署の人には積極的に声をかけ、関わりを大切にしました。
品質企画部に配属が決まった時は、もしかしてあまり人と関わらない部署なのでは……と思ったのですが、実際は真逆で多くの人に支えられながらも、会社全体を指揮する重要な部署だと思っています。
近年、オンラインが普及していますが利便性にとらわれず、多くの部署と関わるからこそなるべく直接会話をし、人と人とのつながりを大切にしています」
→ストーリー:人と関わる仕事がしたい。コミュニケーション力を活かす環境で発揮される実力
▶︎池田糖化工業株式会社
事業内容:中間原料品メーカーとして新たな加工用原料や食品素材の開発研究を行う
・仕事内容:デザートソースなどを製造するアセプティックラインの品質管理を担当
安達さんは学生時代、短期大学に通い栄養士の資格を取得。学校のキャリアセンターで池田糖化工業(以下、池田糖化)を勧められたことをきっかけに、入社試験を受けました。(中略)
募集要項に記載があった「開発」や「品質管理」という職種を見て、当初安達さんが興味を抱いていたのは「開発」。実際に配属されたのは品質管理室でしたが、業務に携わる中で品質管理の楽しさを実感したと語ります。
安達さん 「味やにおいを確認する官能検査を含む検査項目がこんなにも多岐にわたるのかと驚きました。品質管理室には細菌検査部門と理化学検査部門の2つがあり、私が所属する理化学検査部門では水分値や塩分値などの検査や官能検査を実施します。そこで世に出回っている食べ物は多種多様な検査をクリアしないと流通しないことを目の当たりにし、おもしろいと感じました」
入社試験では官能試験があり、味を判別できることが品質管理の業務には不可欠。11年目となる今も、官能検査は安達さんが緊張する業務のひとつです。
→ストーリー:女性も多く、働きやすい職場。品質の「最後の砦」を守る
▶︎農林中央金庫
事業内容:食農ビジネス、リテールビジネス、投資ビジネス
・仕事内容:法人営業に携わるかたわら、食農の取り組みの一環として、事業者らと連携しながら、輸出バリューチェーンの構築にも注力
入社後は本店での業務を希望していたという山舘さん。ところが、実際に配属されたのは仙台支店でした。
山舘さん 「まずは本店の営業部で、貸し出し業務の流れや手法など、金融に関する基本的なスキルを学びたい。現場に出るのはその後だと考えていたんです。配属された仙台支店は、2店目に行きたいと思っていた場所でした」
とはいえ、山舘がアサインされたのは、農林中央金庫の4つある部門の中でも、希望していた食農部門。さまざまな業務に前向きに取り組みながら、着実に成長を重ねてきました。(中略)
しかし、それ以上に、支店に配属され、現場に身を置いたからこそできる経験から学ぶところが多いといいます。
山舘さん 「仙台支店には比較的若手が多く、若手のうちから大きな裁量を持たせてもらえるのは、支店ならでは。本当に自由に仕事ができていて、支店振り出しで良かったと思っています」
→ストーリー:農林中央金庫としてのバリューを発揮するために。企画力を活かして活躍する若手社員
▶︎富士通株式会社
事業内容:テクノロジーソリューション、ユビキタスソリューション、デバイスソリューション
・仕事内容:生命保険業のお客様を担当し、基幹業務システムの導入や更新プロジェクトに携わる
澤田さん 「FJJS(富士通Japanソリューションズ東京、当時:株式会社平和情報センター)が開発した蔵書検索エンジンが、私もよく知る大規模図書館でも採用されているということを知って。当時、卒業論文を書くためにその図書館にはよく通っていたので、とても親近感がわきました。
普段図書館を利用していて、その検索システムがどこの会社の何という製品を使用しているかなんて、誰も気にしないと思います。でも、読みたい本を探すためにはなくてはならない仕組み。そんなところに惹かれました」
入社後に配属になったのは、官公庁や国の外郭団体を担当する部署。学生時代の想いとは異なる部署に配属された澤田さんでしたが、前向きに捉えていたといいます。
澤田さん 「蔵書検索エンジンは会社を知るきっかけであって、配属先に不満はなかったですね。たまたま選択した副科目をきっかけに情報システムに興味を持ったように、たまたま配属された部署で、また違う興味が湧くかもしれないと考えていました」
そんな澤田さんは、配属先の部署にてお客様業務の電子化プロジェクトに参画します。
澤田さん 「官公庁や関連する外郭団体の業務には、申請を受け付け、許可書や通知書などを発行するものがたくさんあります。また、受け付けた申請書はすべて適切に管理しなければなりません。私が入社した当時は、紙での受付や管理を行っている業務も多く、そういったものをひとつずつ電子化していきました」
→ストーリー:父の言葉で育まれた好奇心。「とりあえずやってみよう」が切り開く世界とは
▶︎本田技研工業株式会社
事業内容:二輪、四輪、汎用製品の製造・販売事業以外にも、ロボットや航空機などの新規事業
・仕事内容:BEV(バッテリー式電気自動車)やリカーリングをはじめとするHondaの将来にかかわる戦略策定に携わる
マーケティングや営業の仕事を希望していた安さんですが、入社後配属されたのはIT本部(現在のデジタル統括部)でした。最初はそこまで強い興味を持っていない分野だったといいますが、コツコツと知識を身につけ経験を積んだ結果、マーケティングや営業を支えるシステム部門に配属されることになったのです。
安さん 「最初は販売会社の会計システムを担当しました。簿記という日本語も知らないくらい経理に無知だったので、社内資格を取るなどして勉強しましたね。その後は販売会社の営業領域のシステムに携わったり、マネジメント領域の機能を開発したりしました。徐々に営業領域の仕事に近づいていって、今に至る形です」
→ストーリー:専門外の知識を次々と身につけた“努力のDX人材”が描く、Hondaの未来に向けた戦略
企業にとっても新入社員の配属は難しい課題でもあります。未経験の新入社員の適性や能力を見極め、より活躍できる場所へ配属したり、経営戦略や事業戦略に沿った人員配置が必要であったりと、考慮すべき事柄がたくさんあるのです。
もちろん、配属については、本人の希望を最優先する企業もありますし、近年では、ジョブ型雇用を導入する企業も増えています。また、社内公募制度や社内FA制度、社内複業制度など、挑戦する機会を提供している企業も少なくありません。
第二新卒として転職するにしても、働き続けるにしても、自身のキャリア観に加えて自社の制度などもしっかり調べた上で検討することが望ましいでしょう。
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