一次産業、地域を活性化したい。素朴な想いが、農林中央金庫への道しるべに
スポーツに汗を流す活発な少年時代を過ごした山舘。何かとまとめ役を任される場面が多かったといいます。
山舘「小学生のときにスポーツ少年団に入ってサッカーをはじめ、中学生になってからも続けていました。キャプテンをしていましたが、自分から買って出たわけではなく、まわりから推されたのが理由です。そうやって周囲から請われてリーダーを務める機会は多かったかもしれません」
高校、大学では柔道部に所属。やはり責任のあるポジションを務め、周囲と協調しながら結果を出すことにやりがいを感じていたといいます。
山舘「高校・大学と7年間、柔道部に所属していました。大学では、先輩がケガで戦線を離脱するなどの諸事情から、2年生で副部長に。自分たちの代になっても副部長をしていましたが、やはり部長がケガをしてしまって。以来、自分が部長代理というかたちで部を仕切っていました。
もともと私は、自分のために何かをしたいというよりは、自分のしたことがチームの成果となって表れることに喜びを感じるタイプ。小さな大会で入賞する程度でしたが、とりわけ団体戦にはかなり気持ちを入れて取り組んでいました」
就職活動をする中で、地方で生まれ育った自身の出自を振り返ることになった山舘。地域活性化に貢献したいという想いが芽生えていきました。
山舘「就活の軸を定めようと自己分析し、生まれ育った岩手でのことを思い返すうちに、地域のためになるような仕事がしたいと思うようになっていったんです。地域活性化といってもいろいろな方法がありますが、地場の企業にお金が流れ、地方で大企業が育つようになれば、自然に雇用が生まれ、人が集まる。そうやって地域経済の規模が拡大していく仕組み作りが必要だと考えました。
では、地方特有の強みは何かと考えたとき、当時の自分に思い浮かんだのが、“食”。そこから農業をはじめとする一次産業に目が向くようになっていきました」
業界や業種への理解が進むにつれ、農林水産業に関わる人たちに資金供給ができるような仕事がしたいと思うようになっていった山舘。就職先として、農林中央金庫に的を絞るのに時間はかかりませんでした。
山舘「資金供給ができる企業で、なおかつビジネスマッチングや経営戦略の立案もできる企業となると、おのずと候補が数社に絞られました。数ある銀行の中でも最終的に農林中央金庫を選んだ理由は、農林水産業が抱える課題にもきちんと向き合っている印象を受けたこと。産地や生産者に寄り添う姿勢に共感し、入社を決めました」
窓口業務から法人営業まで幅広い業務を担当。裁量の大きな仕事で成長を実感
入社後は本店での業務を希望していたという山舘。ところが、実際に配属されたのは仙台支店でした。
山舘「まずは本店の営業部で、貸し出し業務の流れや手法など、金融に関する基本的なスキルを学びたい。現場に出るのはその後だと考えていたんです。配属された仙台支店は、2店目に行きたいと思っていた場所でした」
とはいえ、山舘がアサインされたのは、農林中央金庫の4つある部門の中でも、希望していた食農部門。さまざまな業務に前向きに取り組みながら、着実に成長を重ねてきました。
山舘「最初に取り組んだのは、貸し出し処理などの窓口業務。社内のマニュアルを読み込みながら、事務的な作業の基本を叩き込んでいきました。続いて担当したのが、融資事務です。財務の分析など、金融の知識の習得に努めました。ただ、対外的に農林中央金庫は投資会社のイメージがとても強いんです。そのため、貸し出し業務だけでなく、投資の領域にも勉強の範囲を広げて、証券アナリストの資格を取得しています。
その後、着手したのが、農林水産業についての情報収集。農作業の年間スケジュールや肉牛の生産流通過程のほか、輸出事業に関する農林水産省や自治体の統計資料など、関連性の高いものから順に手をつけていきました」
事務部門のOJTが中心だった1年目とは一転、2年目からは担当を持って法人営業のフロント業務に就くことになった山舘。スキルが業務に追いつかず苦労した場面もありました。
しかし、それ以上に、支店に配属され、現場に身を置いたからこそできる経験から学ぶところが多いといいます。
山舘「仙台支店には比較的若手が多く、若手のうちから大きな裁量を持たせてもらえるのは、支店ならでは。本当に自由に仕事ができていて、支店振り出しで良かったと思っています」
輸出支援に尽力。「農林中央金庫としてのバリューを発揮したい」という想いが原動力に
2022年8月現在、宮城県および山形県の約15社のお客様を担当している山舘。これまで法人営業に関わってきた中で、とくに印象に残っている仕事があります。
山舘「中国やロシア、東南アジア向け食品の輸出業務を手がける地元の物流会社さんと、国内の生産者さんや卸業者さんをマッチングするお手伝いをさせていただいています。一昨年、コロナ禍の影響で、物流の動きが緩慢となり、思うように結果が出せない時期が続いていたんです。
ところが昨年、ホタテなどの海産物が中国を中心にたいへんな人気を集め、コンテナ単位で輸出するような大規模な商談が成約しました。輸出支援の取り組みの一環として、その物流会社さんやJETROさんらと連携し、農林中央金庫の北海道と東北6県の支店の職員や取引先を集めて、ロシア向けの食品輸出セミナーを開催したんです。スピーカーとして、物流会社で働くロシア人スタッフの方、JETROの職員の方のほか、農林中央金庫からもゲストとして招きました。
農林中央金庫はもちろん、東北では珍しい取り組みということで地方紙で取り上げていただいたことが、とても印象に残っています」
当時、仙台支店では輸出支援の取り組みはほとんど前例がなく、白紙の状態から手探りで進めていったという山舘。原動力となったのは、「農林中央金庫としてのバリューを発揮したい」という強い想いでした。
山舘「東北という土地柄なのか、『お金を借りたい』という企業さんはそれほど多くありません。しかも、貸し出し業務は内部で完結する事務作業が多く、農林中央金庫としてのバリューが見えにくい。社内にはいろいろ真剣に考えてる人たちがいて、実際にやれることが多いにもかかわらずです。
わかりやすいかたちでバリューを示せるような取り組みができないか——そんな想いで、行政や経済団体といった輸出に関わる組織に定期的に顔を出して情報交換を行なってきました。ネットワークを広げることで、農林中央金庫が輸出支援にも積極的であることが伝えられると思ったからです。
直属の上司はもちろん、本店で輸出業務を一手に担う営業企画部からも全面的に支援してもらいました。同部署の部長代理には、セミナーで登壇もしてもらっています。会社から手厚い後押しが得られたのはありがたかったですね」
地道な取り組みを続けてきた山舘。目に見えて成果が表れはじめているといいます。
山舘「宮城県と連携して輸出支援を行っていた水産事業者さんから、この輸出支援がきっかけで、ホタテの加工施設にかかる新規の資金相談をいただいいたんです。草の根的な活動をはじめて約1年、農林中央金庫のバリューが少しずつ浸透して、ようやく目に見えるかたちで実を結びはじめました。短期的な収益にはつながっていないかもしれませんが、中長期で見たとき、これまでやってきたことが間違っていなかったと思うことができています。
また、それが地場の水産業者さんの利益につながるとなれば、入社時に思い描いていた、一次産業、地域の活性化に貢献できたことになります。微々たるものとはいえ、うれしいですね」
大学や行政との共同研究に参画。農林中央金庫だから、自分だから提供できる付加価値を
2022年6月からは、東京大学と農林水産省との共同研究に客員研究員として参画している山舘。
山舘「“持続可能な食料システム”をテーマに、温室効果ガスやCO2、メタンなどの削減など、環境負荷の軽減につながるような稲作と畜産のあり方を考えようというもので、最終的には国際的な提言を行うところまで見据えた壮大なプロジェクトです。私が担当するのは、バリューチェーン分析。生産者にとって有益で、持続可能な食料システムを作るには、農産物・食品をどんな経路で流通させるべきかなどについて研究していく予定です」
いまの目標は、当プロジェクトに参加してできるだけのことを吸収すること。そして、そこで得た知見を農林中央金庫の業務に落とし込んでいくこと。
山舘「持続可能性は、今後数十年にわたってあらゆるビジネスにおいて鍵となる論点のひとつです。しかも、今回の共同研究では、農林中央金庫とは切っても切り離せない、食料システムがテーマになっています。
研究への参加をとおしていろいろな方の意見に触れ、目指すべき食料システムのあり方について、自分なりの考え方を構築できたらと思っています。その上で、農林中央金庫として何をすべきかを考え、具体的な施策や業務に落とし込んでいければいいなと」
やりたいことができているのは、農林中央金庫だからこそという山舘。次のように続けます。
山舘「入社当時から関心があった一次産業や地域の活性化について、若いうちから企画やアイデア出しの段階から取り組ませてくれること、それを後押ししてくれる上司や他の部署の方がいること。こんな環境はそうないと思っています」
入社以来一貫して大切にしてきた想いを、“現場に寄り添う”という、いかにも農林中央金庫らしいやり方で、地道に、そして着実にかたちにしてきた山舘。今後、食農の領域でどんなイノベーションを起こし、地域経済にどんな価値を提供していくのか、楽しみでなりません。

