全社に向けてDXリテラシー教育を実施。めざしたのはDX人材育成のための土台づくり
住友重機械グループでは、グループ一丸となったDX推進の取り組みの一環として、 2022年9月から翌年1月にかけて、国内の社員約8000名を対象としたDXリテラシー教育を実施しました。
「人」「データ」「プラットフォーム」「技術」「組織・プロセス」といったDXイネーブラーのうち、同社がもっとも重要な存在と位置づけているのが「人」。新たな顧客価値を創出するべく、DXリテラシー教育では、社員全体の能力の底上げを図ることをめざしています。
同社がDXリテラシー教育を実施するに至った背景には、DXを推進するに当たっての下地づくりをする狙いがありました。
T:DXに関するスキルを積極的に身につけようとする社員がいる一方、DXに対して無関心な社員が多いことが問題になっていました。どんなに優秀で良質なアイデアを持っている人材がいたとしても、上司をはじめ周囲がその有効性を十分に理解できていなければ、DXプロジェクトはうまく推進できません。
とくに重要なのが部長・役員クラスの社員の理解。上層部を含む全社員が危機感を持ち、事業の進め方や組織を大きく変革していかなければならないという認識を共有する必要があると考え、DXリテラシー教育を実施する運びとなりました。
Tが籍を置くのは、ICT本部 DX推進グループ グランドデザイン統括チーム。DXリテラシー教育のプロジェクトに参加する以前は「DXグランドデザイン」の社内浸透、対外発信に携わっていました。
T:DXリテラシー教育の実施に先立ち、住友重機械グループではDXミッションやDXビジョンを含むDXグランドデザインを2022年に策定しています。広告会社や社内のメンバーと共にDXグランドデザインのイメージ図制作を担当しました。そこでは、DXビジョンの実現に向けて歩む姿を登山にたとえて表現しました。
DXリテラシー教育に関わるようになってからは、社長とICT本部長が出演する動画を制作するなど、受講への動機づけを高める活動にも従事したT。現在は、DXリテラシー教育で得た成果をもとに各事業部門と対話する活動に取り組んでいます。
T:実施する過程で受講者にDXアイデアを出してもらったところ、9,000件以上のアイデアが集まりました。各事業部門の集計・分析結果をまとめた報告書の内容をもとに、この数カ月は各事業部門の幹部の方とディスカッションを繰り返しています。
一方のKが所属するのは人事本部 人事戦略部 人材開発グループ。入社以来、住友重機械グループの社員教育を担当し、現在は各種研修の企画運営を担う傍ら、キャリア形成支援策およびDX人材育成策の企画に携わっています。
K:プロジェクトを推進させていくことが、DXリテラシー教育における私たち人材開発グループの役目。階層別研修の企画・運営などに関わる中で培ったノウハウを活かしながら、ICT本部が立案した企画をどう社員に浸透させ定着させていくかを考えています。
両部門の連携が功を奏し、約8,000名の社員が受講。プロジェクトで得た確かな手応え
DXリテラシー教育を実施するに当たって、ICT本部がまず取り組んだのがコンテンツの選定でした。
T:DX人材を育成するのに使われている教材を集め、データとデジタル技術を使ってビジネスモデルを変革していくことを社員が自分事として捉えられるかどうかを軸に評価する試みを行いました。
DXリテラシー教育の概要が見えてきたところでICT本部長の許可を得て経営戦略会議にかけ、承認されたのが2022年の4月。その後、人事本部や事業部門も巻き込んで議論を重ねながら、教材を絞り込んでいきました。
ICT本部は設立されたばかりの組織。人事本部の存在なくして、DXリテラシー教育の全社展開は実現しなかったとTは言います。
T:私とKの上司が以前同じ部署に所属し、次世代の技術リーダーを育成する研修などを共に運営していた関係で、人事本部とは元々協力関係にあり、「DXリテラシー教育事務局」としてプロジェクトが始動しました。
各事業部門からの信頼が厚い人事本部の存在感は絶大です。住友重機械グループ全体に向けた説明や進捗管理などは全面的に人事本部が担ってくれています。
K:DXリテラシー教育は、社員教育の一環として行われるべきもの。人事本部、とくに人材開発グループがこのプロジェクトに参画するのは当然の流れだったと思います。
教材の選定後に事務局が取り組んだのが、DXリテラシー教育の受講への動機づけを高める活動。ボトムアップとトップダウンの2軸でDXリテラシー教育を推進する意図がありました。
T:社員がそれぞれ個人的な目的意識を持って取り組むだけではなく、組織側にもDXを推進する強い意志があることを社員に伝える必要があると感じていました。社長とICT本部長によるメッセージ動画を制作・配信したほか、DXリテラシー教育を受講する意欲を高めてもらおうと、各事業部門の幹部やライン長らからも部下に対してメッセージを直接発信してもらっています。
2022年9月、3カ月間に及ぶeラーニングとしてスタートしたDXリテラシー教育。先行受講者とそれ以外の受講者に分けて受講を実施したため、実施期間は約5か月。周到な準備の甲斐あって、約5カ月のあいだに予想を上回る96%の受講率を達成しました。
K:全社員向けに実施してきた従来のeラーニングでは、コンプライアンスやセキュリティといった、いわば「守り」のための学びが多かったのに対し、DXリテラシー教育は「攻め」のコンテンツ。しかも、6〜10時間の学習量に相当する大きなボリュームを用意していたため、なんの事前情報もないまま提供すると拒否反応が起こるおそれがありました。
トップだけでなく各事業部門の上司らからもメッセージを伝えてもらったのは、DX推進をすべての社員に自分事として受け止めてほしかったから。事前にマインドセットを整えられたことが、全体の96%という高い受講率につながったと思っています。
T:約8000名もの社員が学習に6〜10時間を費やすというのは、多額の投資をするのと同じこと。技術から離れたところで働く社員を含め、社内の隅々にまで必要な学習であることを伝えてくれた人事本部のみなさんには本当に助けられました。
とはいえ、DXリテラシー教育がその真価を発揮するのはもう少し先のこと。DX推進はこれからが正念場です。
T:デジタルに無関心な人をなくすことが私たちの最終目標ではありません。DXを推進していくためには、その原動力となるような人材を育成していく必要があります。めざすのは、DXプロジェクトが社内のさまざまなところで同時多発的に動き始めるような状態。目に見える効果を生んでいくことがこれからの課題だと思っています。
K:受講者にDXに関するアイデアを出してもらったら9000件以上が集まったとTから話がありましたが、それらをリテラシー教育のコンテンツに組み込むことで現場を変えていくためのヒントが得られるような内容にしていきたいですね。
「DXリテラシー教育」が社内の共通言語に。 見え始めた変革への道筋
タスクフォースのメンバーとしてプロジェクトの進捗状況を間近で見てきたKとT。社内に少しずつ変化が生まれつつあると言います。
T:各事業部門の幹部の方から、「これからはこうした学びが必要だ」と前向きな声が聞こえ始めています。また、事業部門の方とやりとりする際、以前は「DXとは何か」から説明する必要がありましたが、DXの前提知識ができたことでとても活動がしやすくなりました。社内にDXリテラシー教育という共通言語ができたことは大きな収穫だと思っています。
K:DXに対する関心度合いについて、DXリテラシー教育の受講前後でアンケートを実施したところ、受講前は「どちらかといえば関心がない」、「関心がない」というネガティブな回答が46%を占めていたのに対し、受講後は14%にまで大幅に減少していました。
また、優先的に変えていくべき点など、アイデアシートを通じて各事業部の困り事を可視化できたことも、今回の成果のひとつだと考えています。
住友重機械グループの DXの取り組みは始まったばかりですが、確かな手ごたえを得たふたり。少しずつ、DXの輪郭をつかみつつあると話します。
K:住友重機械グループが一体となってDX推進の風土づくりをすることが大切だと感じています。「DXを推進せよ」と上から一方的に命じられても社員は思うように動きませんし、逆に一部の社員だけが意欲的に行動していても会社はなかなか変わりません。組織を丸ごと巻き込みながら、DXに取り組むことを当たり前にしていけるかどうかが成功の鍵を握ると考えています。
T:Kが言うように、住友重機械グループ全体のプロジェクトとして進めることがまず大事な点です。また、今回人事本部とICT本部が協力しながら取り組んできたところにも成功の要因がありました。社内の各部門が組織の枠を超えて連携し、それぞれが当事者意識を持って挑むことが変革の力になると思っています。
「人」と「組織」の両輪でDXを推進。真の変革の実現に向けて
2022年の入社以来、住友重機械グループのDX推進に関わり、ガバナンス強化や社内浸透、対外発信、人材育成などに尽力してきたT。全社を挙げたプロジェクトを担う醍醐味についてこう話します。
T:DXリテラシー教育は、組織に対して大きな影響を与える取り組みですし、会社の規模を考えると社会全体に対するインパクトも小さくありません。プロジェクトに関われていること自体がやりがいになっています。
また、多様な人材がいる住友重機械グループには計り知れないポテンシャルがありますが、現時点ではその力を存分に発揮しきれていません。組織が持つ本来の力を引き出すいまの仕事に大きな意義を感じています。
各事業部門の幹部の方の話を直接聞く機会に恵まれました。社会人として成長できている実感があるのも、DX推進に携われているからこそだと思っています。
Tと同様、2022年からDX人材育成に関わってきたK。DXが発展の途上にあるからこそのおもしろみがあると言います。
K:当社のDXはこれからが本番。だからこそ可能性に満ちていて、それだけやりがいも大きいと感じています。裁量権を与えられ、自由な発想で進めさせてもらえているので、手つかずの荒れ地を開拓していくようなおもしろさがありますね。
DX推進に向け、今後も引き続きそれぞれの持ち場で取り組みを続けていきたいと話すKとT。社内のDXリテラシー教育が新たなフェーズを迎えるに当たって、次のように抱負を述べます。
T:DXリテラシーを定着させる上で重要なのは継続すること。DXリテラシー教育を受講することで芽生えたデジタルへの関心を持ち続けてもらうためにも、新たな施策を持続的に打ち出し、リテラシーの底上げを行っていきたいと考えています。
今回の取り組みで、社員からたくさんのアイデアが集められましたが、それを一つひとつかたちにしていくことが私たちのめざすDXではありません。いまは、攻めの戦略へと転じるときです。DXを推進する上で重要なことは何かを整理しながら明確な優先順位をつけ、経営視点で組織のあるべき姿を考え、議論していく必要があると思っています。
K:人材開発の観点から言えば、どのレベルのDX人材がどのくらい必要で、それをどうやって育成していくのか整備することが喫緊の課題です。その上で、公募型の専門技術教育やSHIオープンカレッジといった社内の既存の人材育成プログラムへとつなげていきたいと考えています。
また、これからは各事業部門が主体となって積極的にプロジェクトを立ち上げてもらいたいと考えているので、ボトムアップ的な支援である「プロジェクト支援」と並行して「エグゼクティブセミナー」という事業部長クラスの社員向けの教育体制の充実も重要な課題と捉えています。
住友重機械グループでは、これまでトップが主導するかたちで人的資本の価値向上に努めてきました。それに加えて、人材育成とTが言うような組織風土の醸成とを両輪で進めることでDXを成功へと導いていきます。
※ 記載内容は2023年7月時点のものです
