住友重機械グループ全体のDXを推進するための新たな組織として、ICT本部が発足
住友重機械工業では、2021年1月にICT本部を設立し、住友重機械グループ全体にDXを推進してきました。ICT本部は、住友重機械工業の企画本部情報戦略グループ、関係会社である住友重機械ビジネスアソシエイツ情報システム部、そして技術本部技術研究所情報通信技術グループの一部の機能を統合するかたちで構成されており、現在は180名ほどが所属する組織となっています。
N.T.はその立ち上げメンバーのひとり。DX推進グループ グランドデザイン統括チームのリーダーとして住友重機械グループ全体のDXを推進するメンバーのひとりです。
N.T.:ICT本部DX推進グループの前身は、2020年ごろに7~8名でスタートしたワーキンググループです。私は当時、技術本部技術研究所 情報通信技術グループのリーダーとして情報通信技術の研究開発をリードしていましたが、住友重機械グループ全体のDXを推進するためには新たな機能が必要だと考え、有志と共に全社DX推進組織立上げワーキンググループを立ち上げました。そして、ICT本部の立上げと共にICT本部に異動しました。
DX推進グループ グランドデザイン統括チームは、住友重機械グループのDXを推進する中心的な存在として、2022年4月に発足。DXの長期グランドデザインや中期戦略の企画提案、住友重機械グループのDX人材育成の企画や推進、DXプロジェクトの企画やPoCフェーズの伴走などを手がけています。
一方のN.S.も、ワーキンググループに参画していた立ち上げメンバーのひとりです。
N.S.:私が当時所属していたのは、技術本部 開発戦略統括グループ。そこで開発設計の業務プロセス変革や技術人材の育成を担当し、専門技術教育講座のなかでプログラミング言語や機械学習の基礎、データ分析や多変量解析といったDX実践系の学習機会を提供していました。
しかし、DXのテクニカルスキルの人材を育成すると同時に、企業価値や顧客価値を生み出し企画立案できるDX人材育成のためには、住友重機械グループ全社員向けのDXリテラシー教育が必要との考えもあり、人事本部と協業体制へ。現在は人事本部人材開発グループのリーダーとしてDX人材の育成に携わっています。
社内の業務効率化、顧客への価値提供の面で抱いていた課題意識
N.T.やN.S.ら立ち上げメンバーが声を挙げたのは、社内に複数の課題があるのを感じていたからでした。
N.T.:当時、私は技術研究所でICT活用推進プロジェクトに取り組んでいました。一例を挙げると住友重機械グループが扱うボイラーのような製品の稼働中のデータをIoTで収集し、運転状況や故障の有無を確かめるためのアルゴリズムを研究するものです。
このような研究所で扱う課題の取り組みは魅力的で有意義であった一方、社内には業務課題がたくさんあることに、気づいていました。DXは一部の技術者だけが進めるものではなく、会社全体で進めるべきものです。本社にDX推進組織をつくり、会社全体で社内業務DXもあわせて進めていきたいと感じていました。
N.S.:住友重機械グループには、技術力に長けた優秀な社員が多く在籍していますが、その一方で、性能の良い製品をつくることを追求する気風があります。お客様に選ばれるのは、優れた性能にプラスして、価値を提供できる商品です。既存の商品にITやデジタルを掛け合わせながら、お客様に独自の価値を提供できるようなDX人材を育成する必要性を感じていました。
こうして、業務変革を実施するためのプロジェクトを立ち上げること、DXを推進できる人材を育成すること、そして事業部門で活用できるデータプラットフォームをつくることなどを目的に立ち上げられたICT本部内のDX推進組織。その背景には、技術者に限らず住友重機械グループ全員の意識改革をする狙いもありました。
N.S.:一流の技術力があることが住友重機械グループの強み。それゆえ、「住友重機械グループなら、お客様のどんなリクエストに応える製品を提供します」という営業スタイルが主流でした。つまり、メーカー側からの価値創造・価値提案という観点が不足していたのです。
N.T.:お客様がイメージするものをつくって提供するようなスタイルのビジネスを長年続けてきましたが、デジタルの時代は、デジタル技術を学び、自ら新しい価値、新たなビジネスモデルを提案していけたらと思っていました。
しかも、事業部門では業務効率化やDXが進んでいないため、商品開発を行う余裕がなかったり、設計のプロセスに時間を割き過ぎたりしてしまっている状況でした。社内業務DX、顧客価値創出のDXに関わらず、デジタル技術を活用して課題を能動的に解決できる人材を一刻も早く育成すべきと考えていました。
公募型の企画ワークショップを実施。毎年5件のDXプロジェクトを推進中
2021年のICT本部発足後、新しく始めた取り組みのひとつが、公募型の企画ワークショップです。
N.T.:公募で採用した企画について、提案してくれた事業部門のメンバーに加え、ICT本部のメンバーと外部のコンサルタントを交えた3者でブラッシュアップするというもので、毎年5件ずつ実施しています。
10名ほどでひとつの企画を考えることが多いのです。2023年に公募し、エントリーは20件ほど。ワークショップで取り組むべきテーマを慎重に選考したほか、選考されなかった課題についても、エントリーした部門と丁寧に協議し、ICT本部としての対応策を決定していきました。
人事本部のN.S.もまた、この企画ワークショップを社内へ周知し、一方でDX人材育成の教育機会を提供するなど、社内のDXを加速させる役割を果たしてきました。
N.S.:事業部門のマネジメント層からは、「DXに取り組むべきとわかっているが、何から手をつけていいのか、どのように進めればいいのかがわからない」といった漠然とした課題意識が聞こえてくることが少なくありません。そんなときは、この企画ワークショップを案内するようにしています。
また、企画ワークショップと並行して、社員全体のDXに関するスキル向上を図るためにDXリテラシー教育を提供することで、社内の意識の底上げにも取り組んでいます。
中には、企画ワークショップを経てPoC段階まで進んでいるプロジェクトもありますが、システム開発に取りかかるのはこれから。また、企画ワークショップを実施する過程で見えてきた課題もあることから、今後はさらにバリエーションを増やしながらDXを推進していく予定です。
N.T.:モチベーションの高い社員がプロジェクトに携われる点が公募型の利点である一方、その企画が事業部門内では必ずしも優先順位の高い課題とは限らないのが実態です。そのため、今後はマネジメント層に課題をヒアリングした上で、「企画ワークショップで解決に向けて取り組みませんか」と能動的に提案することも検討しています。
住友重機械グループの主要関係会社は約20社。毎年5件ずつの取り組みなので、まだまだ道半ばですが、着実にDXを進めている手ごたえを得ています。
世界中の現場を快適に、携わる人々を幸せに──創業時からいまも変わらぬ想い
ICT本部と人事本部が一体となって進めている住友重機械グループ全体のDX推進プロジェクト。住友重機械グループ全体でのDXリテラシー教育受講後には、事業部門別にマネジメント層向けの報告会なども実施しています。
N.T.:受講者のアンケートの結果を見る限り、受講者のほとんどはDXへの理解が深まり、関心が高まっている印象です。一方で、「業務が多忙のため、DXに取り組む時間がない」といった回答も見られるなど、必要性を感じながらも進められていない状況があることも明らかになりました。
「業務に追われ、ひっ迫する状況があるからこそ、優先的にDXに取り組まなければならない」という意識に変えていきたいと思っています。
N.S.:当初は、DXを活用して新商品開発や開発設計プロセスの変革につなげたいと考えていました。しかし、DXリテラシー教育の実施後、「社内のどんな業務においてDXを活用すべきと思うか」と社員に聞いたところ、「日々の伝票処理や煩雑な入力業務に応用したい」という声が多く見受けられました。
身近な業務にデジタル化の必要性を感じている社員が増えていることがわかったので、継続的に働きかけることで、長期目線でもDXに取り組もうとする事業部門を増やしていければと考えています。
機械・電気・制御の技術を融合させたメカトロニクス技術や最先端医療関連機器の分野でも高い技術力を誇り、グローバルに展開している住友重機械グループ。こうした魅力あるインフラを活かして顧客価値を提供し続ける上で鍵となるのがDXの推進です。これから新たな仲間を迎え、ますますDXを加速していきたいと、N.T.とN.S.は話します。
N.T.:DXグランドデザインのビジョンとして、「デジタルの力で、世界中の現場を快適に、携わる人々を幸せに」を掲げています。住友重機械グループは、別子銅山で使用する機械や器具の工作方から創業し、新技術を取り入れることによって、働く人を負担や苦労から解放してきましたが、今後はデータやデジタル技術を活用して生産性向上に貢献していくことをめざしています。
登り始めた山の頂はまだ遠い先。事業部門の変革に粘り強く取り組むことができる方に仲間として加わっていただきたいと考えています。
N.S.:住友重機械グループでは、エネルギー環境系の設備や船舶、あるいは小さな電気電子部品まで、大小さまざまな商品を扱っています。DX推進の成果があらゆる領域で見えることは、きっとやりがいにつながるはずです。
また、課題が山積しているということは、それだけ伸びしろが大きく、挑戦できることの幅も広いということ。そんなところに魅力を感じていただける方に入社していただきたいですね。
創業当時の想いを受け継ぎながら、あらゆる事業領域でデータとデジタル技術を積極的に活用することで、現場の生産性向上や人々の豊かな生活を支えるために、住友重機械グループはいま、大きな変化のときを迎えています。
※ 取材内容は2023年7月時点のものです
