小さな振動子に込める想い。医療現場を支える器機の緻密な工程設計
──現在どんなお仕事をされているか教えてください。
日の出工場のサイトエンジニアリング部署に所属し、正社員と派遣社員の12人で構成されているチームで製造技術・生産維持を担当しています。入社7年目になりますが、超音波内視鏡の先端部分に組み込まれる振動子の製造工程にずっと携わり続けています。
振動子は1センチ角ほどの大きさで、超音波を発信・受信する重要な部分です。私は実際に製品を製造する側ではなく工程設計を担当しており、開発からの要求を踏まえ、品質・コスト・納期のバランスを考えながら最適な製造プロセスを構築するのがミッションです。
この工程の中でも、接着剤を薄く固めて圧電素子や基板などを接着し、板状にした部品を丸めて成形していく工程を設計しています。基本的に手作業での製造となるため、作業者の方々が安全かつ確実に製品を作れるような工程を考えることが重要です。
最も難しいのは、板状にした部品を丸める工程です。超音波内視鏡には振動子形状が円筒状の「ラジアル」と半円状の「コンベックス」という2種類の走査方式(※)があるのですが、どちらも曲げていく工程で素子が割れやすいという特徴があります。また、接着剤を多用する製品のため、接着剤メーカー側の製造ロットによって粘度や成分のバランスが変動し、不具合が発生することがあります。
どうすれば不具合のない製品をつくれるかを日々模索しつつ、不具合が発生した際は、原因追求のための調査をすることも重要な業務です。
※ 走査:対象物を点または線でなぞり、情報を取得する技術のこと
──オリンパスで働く魅力ややりがいを、どこに感じていらっしゃいますか?
人の健康や命を支える医療機器に直接関わり、貢献できることが魅力だと思います。私たちが扱う製品は、各国の医療法規制を遵守する必要があり大変な面もありますが、それも医療機器ならではの特徴だと感じています。
高い品質基準が求められる分、より良いものを届けたいという気持ちも強くなりますし、その厳しい基準をクリアできたときには、大きな達成感を得ることができます。人々の健康を支える製品を作っているという実感が、日々の仕事へのモチベーションにつながっています。
わからないことがわかっていく、解析業務の魅力
──学生時代の勉強内容と、入社までの経緯を教えてください。
もともと数学が得意で理系が向いていると思い、機械工学を学ぶため、地元北海道の高専に進みました。機械工学全般を学び、座学だけでなく旋盤や溶接といった機械加工の実習、引張試験などの実験も数多く経験しました。
就職活動では、精密機器メーカーを中心に検討していました。高専には多くの企業から求人が集まってきますが、医療機器メーカーの募集は限られています。とくに北海道となると、さらに選択肢は少なくなります。そんな中、オリンパスが数年ぶりに求人募集を出していたんです。精密機器を扱いながら、人に貢献できる仕事に強く惹かれ、応募を決めました。
──入社後はどのような業務を担当してきましたか。
現在と同じ部署で、基礎的な業務からスタートしました。最初は超音波振動子ユニットとコネクタ部分をつなぐケーブルを担当し、2年目の後半から現在の超音波内視鏡の先端部分にあたる振動子を担当するようになりました。
とくに苦労したのは、非常に小さな部品を扱うことでした。双眼実体顕微鏡をのぞきながらの作業が基本となるため、まずは顕微鏡の操作に慣れることが必要でした。1年ほどかけて徐々にスキルを習得し慣れていくことができました。
ケーブルから先端の振動子側を担当することになったときは、これまでとはまったく異なる工程だったため不安はありました。しかし、先輩たちが一緒に作業をしながら丁寧に教えてくれたおかげで、意欲的に学んでいくことができました。最初にケーブルの工程を経験していたため、製品全体の流れを理解しており、段階的にスムーズに学べたのは良かったと思います。
先端部分の業務でとくに魅力を感じたのは、不具合解析です。ケーブル側では不具合の原因が比較的わかりやすかったのですが、先端部では原因を特定するのが格段に難しくなりました。
解析のプロセスは、まず検査結果から不具合内容を確認し、原因の候補を絞り込みます。その後、製品を分解して内部を調査したり、分析部署にX線解析や顕微鏡観察を依頼したりして、可能性を検証していきます。実験的なアプローチが必要で、他部署とも連携しながら進めていく業務です。
当初は原因追求の難しさに戸惑いましたが、続けていくうちに「わからないことがわかっていく」過程に大きなやりがいを感じるようになりました。
──不具合解析の中で、とくに印象に残っていることはありますか?
3年ほど前に実施した解析と対策が印象に残っています。当時、素子の静電容量が規格値の半分ほどしか出ない不具合が多発していました。1日に数台の生産数の中ですべて規格値を満たせないこともあり、作業者の間では、「いくつ作っても、どうせまた不具合が起きてしまうんだろう」といった不安な気持ちが広がっている状況でした。
今までの経験から、部品を丸めた際のつなぎ目部分に触れる作業が原因と考え、複数人の作業者の手順を比較しながら、ハイスピードカメラを使って力のかかり方を解析しました。その結果、1ニュートン(約0.102キログラム重)の力で割れてしまうことが判明したため、作業時の力を測定できる設備を使用し、対策を進めました。
とくに注力をしたのは、作業者の方々との擦り合わせです。「この作業の、この部分が影響しているようだ」という認識合わせは難しかったのですが、ハイスピードカメラで映像やピンセットの当て方による力量の違いなど、データをたくさん収集して作業者に見せながら説明することで、理解を得ていきました。不具合をなくしたいという気持ちはみんな一緒だったため、最終的には全員で前向きに対策に取り組むことができたと感じています。
医療機器の安全を支えるために。ゼロから挑んだ初めてのプロセスバリデーション
──直近で取り組んでいた、プロセスバリデーション活動についても教えてください。
私たちは、医療機器の会社として、高いレベルでの品質を確保するために、品質保証や法規制対応に注力していて、その一環でプロセスバリデーション活動に取り組んできています。プロセスバリデーションとは、製造プロセスにおいて、要求された品質基準に適合した製品を一貫して製造できることを、科学的根拠に基づいたデータで証明して文書化する活動です。
まず、製品の要求仕様をあらためて確認するところから始め、工程での検査項目の中でどれが製品にとって重要なのかを整理していきました。患者さんを第一に考える私たちの使命として、もともとの工程設計を見直し、それらをすべて論理的にレポートに記録する必要がありました。
大変だったのは、工程パラメータの管理方法を定めるプロセスバリデーション。接着部分のプロセスバリデーションにおいては、要求される引張強度の確認から始まり、破壊試験用のサンプル作成方法まで考える必要がありました。
ここまで徹底的にプロセスバリデーションに取り組んだことはなかったのですが、これらの経験を通じて、自分のスキルが大幅に向上したと感じています。レポートの作り方1つとっても、背景や目的、結論をどう論理的に書いていくか、安全性を証明するための根拠をどう伝えるかなどのノウハウが身につきました。
また、バリデーション実務の内容に対する理解も深まりました。医療機器だからこそ品質にこだわって良いものを届けたいという気持ちが、この経験でもっと強くなりました。苦労はしましたが、それがプラスの力になったと思っています。
品質への誠実さと医療機器に向き合う覚悟を持って、チームで支える製造体制へ
──仕事をする上で大切にしている姿勢やポリシーを教えてください。
医療機器に携わる者として、患者さんに対する想いと責任を持って仕事に取り組むことを基本としています。これはオリンパスで働く上で、全員が共通して持っている価値観だと思っています。医療機器の製造だからこそ、品質を最優先に考えることは絶対に譲れません。
また、会社のコアバリューである「誠実さ」も大切にしています。仕事を進めていると、自分が間違うことだってあります。他者から指摘を受けたときは、誠実に受け止め、素直に認めて修正することを心がけています。
──今後の展望について、考えていることはありますか?
業務面では、現在の部署で製造ラインの担当体制改善に取り組んでいます。今までは1ラインに対して有識者が1人という状態で、何かトラブルがあった時にその人だけに負荷がかかってしまうのが課題でした。専門知識が必要な製品ではありますが、2人体制にするなど、全員でカバーできるような体制の構築に着手しています。
また、世間でDX化が進む中、オリンパスのものづくりの現場でも、これまで手書きで記録していた製造来歴表の電子化の検討が進んでいます。まずは、接着剤の混合工程において、デジタルでデータを吸い上げて管理する取り組みが進んでいます。超音波振動子の組み立て工程の自動化はまだ難しそうですが、一部の検査工程には自動機がすでに活用されています。こうした技術をうまく取り入れ、質の高い製品を提供し続けられるようにしていきたいと思っています。
将来の方向性について、他の製品や部署を経験して幅広いスキルを習得することも重要だと考えています。これに対する興味もある一方で、今担当している超音波振動子の製造工程にはまだまだ改善したい部分がたくさんあるため、こちらも深めていきたいと考えています。
また、多くの職場で女性が活躍する機会が増えているものの、キャリア形成にはまだまだ課題があると感じています。これまで積み上げてきた知識や経験が、ライフステージの変化によって無駄になってしまうのはとてももったいないことです。
これからも安心してキャリアを積み重ねていける方法を見つけるためにも、自身のスキルを貪欲に磨き高めていく意識で、さまざまな業務にチャレンジしていきたいと思っています。
※ 記載内容は2025年9月時点のものです

