医療機器の安全を守るリプロセス評価の現場。共に組織を取りまとめる2人の不思議な縁
──おふたりのご経歴と現在の業務内容について教えてください。
佐藤:もともと私は大学で食品化学を学んでいたことから、卒業後は食品の衛生検査をする一般財団法人で微生物試験を担当していました。そこでお客さまであるメーカーの方と接するうちに、自社製品を持つメーカーで働くことへの憧れが大きくなっていったんです。転職活動を進める中で、オリンパスなら微生物の知識を強みとして活かせると知り、2016年に入社し、リプロセス評価センターに配属されました。
オリンパスが製造する医療機器(内視鏡)の多くは、シングルユース(単回使用)ではなく、洗浄・消毒・滅菌といった「リプロセス」を経て、次の患者さんに使用されます。私たちの部署は、そのリプロセスの手順が科学的に正しく安全であることを、製品が世に出る前に評価・検証する役割を担っています。
具体的には、内視鏡が患者さんに使用された後の体液などが付着した状態を模擬的に作り出し、取扱説明書に記載された手順で洗浄や消毒、滅菌を行い、本当にきれいになっているかを科学的に評価します。医療の安全を守る、非常に重要な仕事です。
入社当初は試験責任者として、リプロセス効果確認試験の取りまとめや技術検討業務などに従事してきました。さらに、スーパーバイザー(SV)やアソシエイトマネジャーを経て、現在は、シニアマネジャーとして22名のメンバーが所属するグループの運営やマネジメントを担っています。また、ラボの品質を確保するために技術的な監督を行う技術管理者としての役割も務めています。
庄子:私は新卒で眼科領域の医療機器メーカーに入社し、研究開発職として生物学的安全性試験を担当していました。そこで経験を積むうちに「より広い領域で人の命を守れるような仕事がしたい」という想いが強くなり、2016年にオリンパスに転職しました。入社後は佐藤さんと同じく、リプロセス評価センターにて試験責任者を約5年間担当してきました。
2024年にはSVに就任し、現在は、佐藤さんが管轄するグループ内のユニットの1つで、ユニットの運営や9名のメンバーの育成などを担当しています。また、部署内プロジェクトのプロジェクトリーダーも務めています。
──同じ年に中途入社し、リプロセス評価センターに配属されたおふたりは、入社当初からつながりがあったのですか?
庄子:同じ部署にはいましたが、初めて一緒に仕事をしたのは入社して6年ほど経って、佐藤さんがSVを務めるユニットに私が配属された時でした。ただ意外なつながりがあって、私たちは東北生まれで、出身高校が同じだったんです。
佐藤:入社してその事実を知ったときは、とても驚きました。年齢は3歳違うので高校の在籍時期は重なっていないのですが、共通の知人がいたりして不思議な縁を感じましたね。
「くすぶっている自分をどうにかしたい」。暗黒時代を救った1on1と軸探し
──庄子さんが挑戦するきっかけとなった、キャリアを重ねる中で直面した壁について聞かせてください。
庄子:6年ほど前、ちょうど佐藤さんのユニットに異動した頃のことです。誰もが経験することかもしれませんが、30代になってある程度経験を積んで仕事はこなせるようになったものの、自分自身の成長を実感できなくなってしまったんです。
自分に自信がなかったこともあり、「この会社で、これから何をしていけばいいんだろう」と数年間ずっとその場で足踏みしている感覚で、本当に苦しかったですね。「なんとかしなければ、このままではつぶれてしまうかもしれない」ともどかしさを感じていました。
──佐藤さんから見て、当時の庄子さんはどのように映っていましたか?
佐藤:今では考えられないくらい、控えめで周りの陰に隠れてしまうようなタイプでした。庄子さんが私のユニットに配属されると聞いて、「チームを支えてもらうためにも、一皮むけてもらいたい。どう向き合っていくのがいいだろう?」と考えたことを覚えています。
庄子:自分でも、当時は受け身な姿勢が強く、うまくいかない理由を周囲に求めてしまいがちだったと思います。そんな状態がずっと続いていて、ある日ついに限界が来てしまったんです。
佐藤さんがすごく話しやすかったこともあり、大泣きしながら「くすぶっている自分をどうにかしたいんです。一緒に考えてもらえませんか」と助けを求めました。
──そこから、どのようにして壁を乗り越えていったのでしょうか?
佐藤:庄子さんの話を聞く中で自分に自信がなく、「軸」がないことが課題だと感じました。そこで、自分自身のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を言語化してみることを提案したんです。ちょうど2週間に1回、30分の1on1を行っていたので、その場を使ってさまざまなワークに取り組んでもらいました。
庄子:成長する人は「私はこれに向かって進むんだ」という明確な軸を持っていると思います。しかし、当時の私は目標もやりたいこともなく、そもそも自分がどんな人間なのかもわからない状態でした。だから、他者と自分を比較して自分はダメだと思ってしまうんだと。
まずは自分について理解するために、佐藤さんが用意してくれたワークに徹底的に取り組みました。生き方や働き方のロールモデルを探したり、仕事をする上での動機や大切にしている価値観を言語化したり。そうして少しずつ自分を分析し、理解を深めた上で、仕事におけるMVVを作成していきました。
佐藤:このワークは『コンセプチュアル思考』という本を参考にしていて、庄子さんだけでなく、他のメンバーとの1on1でも使っていました。せっかく1on1という定期的な場があるので、単なる進捗確認ではなく、メンバーそれぞれのモチベーションや強み、やりたいことを引き出し、それが将来のキャリアにつながればいいなと、私も方法を模索していたんです。その中でも庄子さんは、このワークが小さなきっかけとなり、深く響いたようでした。
受け身の姿勢が180度変わった。「軸」を行動に移し、周囲から信頼される存在へ
──MVVを作成したことで、どのような変化が生まれましたか?
庄子:受け身の姿勢が180度変わったことです。以前は言われた業務だけをこなしていましたが、MVVを作り上げてからは、仕事に対して「何を求められているのか」「どう期待されているのか」を自分で考え、行動に落とし込めるようになりました。SVになれたのも、この経験があったからこそだと思っています。
最終的にたどり着いたMVVは、「誰もが安心して使える安全な製品を提供し続けたい」というミッションを掲げ、それを達成するためのビジョンとして「お互いの違いを認め合って周囲と助け合いながら成長し続ける組織をつくる」「目標を達成し続ける」。
そしてバリューとして「感謝・称賛」「調和」「成長」「使命」「達成」という5つを盛り込みました。実際にこれらを意識しながら仕事を進めることで、あらためてその大切さを確信し、現在も自身の仕事観として深く根付いています。
佐藤:MVV作成と並行して、庄子さんにはユニット内のメンバー数名の取りまとめ役も任せていました。庄子さん自身の軸が明確になるにつれて、任されたチームの中でも、自発的に課題を出し合ったり、お互いの成長のために何ができるかを話し合ったりするようになったんです。その姿を見て大きな変化を感じましたね。
また、MVV完成後には「この想いをどう仕事につなげるか」というアクションに移りました。そこで庄子さんは、当時部署として課題だった業務について、MVVを活かして企画書を作成し、当時のマネジャーに提案したんです。その提案が認められ、今では他部署からも高く評価される重要な業務になっています。マインドを変えるだけでなく、それを具体的な仕事につなげられたことが、その後の庄子さんの大きな飛躍のきっかけになったと思います。
今では、部署内で何か新しい業務を任せるとき、「この仕事は庄子さんしかいないよね」と名前が挙がるようになり、周囲からも大きな信頼を得ています。
──今回の挑戦と支援を通じて、それぞれどのような気づきがありましたか?
庄子:待っていても何も始まらないと痛感しました。日々の忙しさを言い訳にせず、意識的に自分と向き合う時間を作り、自分から一歩踏み出すことが大切です。
そして、数年間独りで悩み続けても何も打開できませんでしたが、他者に話して自分と違う視点をもらうだけで、視界がぱっと開ける感覚がありました。自分だけでどうにもならない時は、素直に他者に助けを求めることの重要性も学びました。
また、近くで寄り添ってくれる人がいることのありがたさを感じ、周りへの感謝の気持ちもいっそう強くなりました。佐藤さんをはじめ、話を聞いて寄り添ってくださったみなさんには、感謝を伝えたいです。
佐藤:私自身、1on1のやり方は手探り状態でしたが、庄子さんのように「変われて良かった」という人がいたことは、大きな成功体験になりました。メンバーに寄り添うアプローチが自分の引き出しとして加わり、自信にもつながりました。
独りで抱え込まないで。苦しみの先にある光と「小さな一歩」を信じることが大切
──今回の経験を踏まえ、これからの展望を教えてください。
庄子:今の目標は「自他共に成長し、高め合える組織づくり」です。SVとして、自分だけでなくメンバーの成長も支えられる存在になりたい。私が経験したことを活かして、自ら考える力を養えるようなサポートをしていきたいと、1on1などを通して日々メンバーに伝えています。
また、個人的な展望としては、何歳になっても夢を持ち続けたいと思っています。以前ある講演会で、自分よりずっと年上のドクターが楽しそうに「僕の夢はね」と語っているのを聞いて深く感銘を受けました。そうやって人間としても成長し続けていきたいですね。
佐藤:メンバーがそれぞれの「Will(やりたいこと)」を活かして力を発揮できる土台を作っていくことが、今の私の役割だと考えています。仕事というと、どうしても「Can(できること)」や「Must(すべきこと)」に注力しがちですが、たとえ与えられた業務であってもその中でどう「Will」を見出すか、またはどう生み出すかをサポートしながら、誰もが活躍できる組織をつくっていきたいと思います。
──最後に、キャリアに悩んでいる方、そしてメンバーの育成に向き合っている方へメッセージをお願いします。
庄子:私と同じように、多くの人がキャリアで悩んだり苦しんだりしていると思います。だから、どうか独りで抱え込まないでください。周囲の人に「今こういうことで悩んでいるんだけど、どうしたら打破できるんだろう?」と素直に伝えて、客観的な視点をもらうことで、必ず道は開けます。
私の「暗黒時代」は本当に苦しかったですが、この経験を通して人の痛みがわかるようになったことは大きな糧になりました。苦しみの先には光があると信じて、負けずに挑戦してほしいです。自身の軸が明確になれば、視野も広く、視座も高くなり、やりたいことが次々と生まれて可能性が大きく広がります。ぜひ諦めずに、自分と向き合う時間を大切にしてほしいです。
佐藤:メンバーの育成に正解はありません。私も手探りでしたし、まだまだ勉強中の身です。ですが、大切なのは、まずは相手のもがいている気持ちに寄り添いながら理解を示し、「相手のために何かできることはないかな」という気持ちで向き合うこと。そして、その人の得意なことや強みといった「小さな一歩」を大事にしてあげること。
その小さな「できること」を見つめながら進んでいくことが、お互いの成長にもつながり、より良い組織をつくっていくと思います。
※ 記載内容は2025年10月時点のものです

