医療現場に届く最終工程を担う責任。2,000種類の製品に込める品質への想い
──現在の所属部署と業務内容について教えてください。
黒石にある青森オリンパスで製造された処置具製品の個装工程を担当する職場のスーパーバイザーを務めています。弘前サイトにある私の職場では、正社員だけでなく、派遣社員やアソシエイト社員など、さまざまな雇用形態のメンバーが約40名在籍しており、約2,300種類の製品を対象に、個装作業を行っています。
個装工程は、組み立てられた処置具を箱に入れ、取扱説明書や添付文書(使用上の注意・重要事項が記載された書類)を同梱し、お客さまである医療従事者に届く状態にする最終工程です。もし、私たちの作業に不備があった場合は、そのままお客さまに届いてしまうため、高い品質意識と正確な作業の徹底が求められます。
工程はすべて手作業で行われます。そのため、製品の種類・数量の入れ間違いや各書類の入れ忘れ、製品の破損が起こらないよう、ヒューマンエラーのリスクと常に向き合っています。医療の現場で使われる製品だからこそ、一つひとつの作業に細心の注意を払い、メンバー全員で品質を守り抜くことが私たちの使命です。
──オリンパスでの仕事に、どのようなやりがいを感じていますか?
人の役に立てる製品を製造することに、大きな魅力を感じています。
以前所属していた職場で、ある新製品の立ち上げに関わったときのことです。その製品は、従来のものよりも「針の穿刺性(刺さりやすさ)」が向上しており、患者さんへの負担を軽減できるという特長がありました。しかしその分、針先が非常に鋭くなっており、製造中に潰れやすく、不良が発生しやすいという課題も抱えていました。
この課題を解決するために、工程設計部門と何度も話し合いを重ね、どうすれば針先をつぶさずに安定して製造できるかを一緒に考えました。試行錯誤を繰り返しながら、協力して工程を立ち上げていったのです。
製品が完成した後、その製品を使用した医師の方々からの評価を見せてもらう機会がありました。その中に、「従来の製品よりも刺さりやすく、非常に使いやすい」というコメントともに、感謝の言葉が添えられていました。工場で日々製品を生産していると、実際にそれを使うユーザーの声を直接聞く機会はほとんどありませんが、自分たちの仕事が医療に貢献していると実感できた瞬間でした。
建築業界からの転身。標準を知り、改善の楽しさを学び、成長していく
──入社の経緯と、これまでのキャリアについて教えてください。
私はもともと建築業界で働いていたのですが、けがをきっかけに退職し、派遣社員として青森オリンパスに入社しました。異業種からの転職でしたが、工場内は寒暖差もなく快適な環境で、業務も標準化されていたため、非常に働きやすかったです。もともと几帳面な性格だったこともあり、自分に合った仕事だと感じました。
経歴としては、最初に滅菌工程のオペレーターとして、組み立てられた処置具を大きな装置でガス滅菌する作業を担当していました。その工程の次は、大量の製品をどのように効率よく滅菌していくかというスケジューリング作業を担当し、その後は組立工程へ。こうして後工程から前工程へと順番に覚えていくことで、製品製造の流れ全体を理解することができました。
この時期に、改善活動の楽しさも学びました。それを最初に教えてくれたのは「IE(インダストリアルエンジニアリング)実践研修」という各拠点からメンバーが集まって行う研修です。オリンパスの製造拠点である白河や、会津、長野など、普段は別の工場で働くメンバーたちと「製造ラインを改善する」という課題に取り組みました。3泊4日の泊まりがけの研修だったため、夜に旅館に帰ったあとも課題について話したり、各工場の話を聞いたりと、とても学びになりましたね。
しっかり分析して取り組めば、最終的に効果が出るという、改善のやりがいにも気づき、現場に戻ってからも改善活動を続けていきました。
──リーダーになった経緯と、マネジメントをする上で大切にしていることは?
入社して8年目で、約10名のメンバーをもつラインリーダーを任されることになりました。製造現場のキャリアパスには、「専門性を極める技能者の道」と、「現場や組織の生産性向上を担うマネジメントの道」がありますが、私は全体像を見た上で改善していく活動に興味があったため、上司とも相談の上、マネジメントの道を選ぶことにしました。
初めてのリーダー業務は苦労の連続でした。何をすればいいかわからず、メンバーとの接し方や要望への対応に悩み、うまくいかない時期もありました。そこで、ひとつずつ課題を整理しながら、メンバーの意見にしっかり耳を傾け、関係性を築いていきました。
マネジメントで大切なのは、メンバー一人ひとりと向き合い、しっかり話をする時間を確保することだと考えています。業務は忙しいですが、メンバーと話をする時間と自分の業務をやる時間をしっかり分けることを心がけています。
現在は40名のメンバーと2カ月に1回、1人30分から1時間の対話の時間を設けています。話をしただけでは解決が難しい内容もありますが、「話をすることでスッキリした」という声もあり、まずは思っていることを発散してもらうことも含めて、この時間を大切にしています。
8倍の生産増に向き合う。「巧遅拙速」の精神で挑み、大きな壁を乗り越える
──キャリアの中で、とくに印象に残っている出来事を教えてください。
現在の職場に配属する前に、新製品のラインリーダーを担当した経験が印象に残っています。量産前提で立ち上げた製品でしたが、想定以上の困難に直面しました。量産開始後、販売予測の急激な変更などが重なり、生産数は3年半で300本から2,500本へと約8倍に増加したのです。
それに対応するため、ラインを増やし、人を増やし、設備を変更するなど、大規模な改革が必要でした。従来は「1日の稼働時間460分で目標の生産数を仕上げる」という大まかな管理でしたが、1本作るために必要な時間を正確に測定し、リアルタイムで進捗が見えるようにしました。そしてそれをすべての工程に落とし込んで行うことで、目標とする生産数まで上げていく活動を進めていきました。
何が課題なのか、どういったところをゴールにするべきかを決めるために、「あるべき姿」をしっかり描いて、そこに向かって地道な改善を積み重ねる。その結果、状況は改善され、生産調査部門による工場診断では、全社でもトップクラスの評価をいただくことができました。
──こうした課題を乗り越えられた背景にはどんなことがあったと考えますか
この時期の私を支えてくれたのは、人材育成講習で講師の方からいただいた「巧遅拙速(こうちせっそく)」という言葉でした。「遅くてうまいよりも、下手でも速いほうがよい」という考え方で、「完璧な対応をめざして遅れるよりも、まずは早く反応することが大切だ」と教えてくれたんです。
取り組みを始めた当初の私は、仕事の進め方や改善の仕方に悩み、目の前の業務に追われ、仕事が山積みの状態が慢性化していました。しかしこの言葉が、仕事のやり方を見つめ直すきっかけになりました。問い合わせを受けたとき、完璧な回答を準備するまで時間をかけるよりも、まずは進捗や状況を伝えることが信頼につながると気づいたのです。
たとえ対応が完了していなくても、「こういう状況です」と伝えるだけで、相手の安心感や信頼感は大きく変わります。これはメンバーとの関係でも同じです。相談に対してなんの反応もなければ「相談しても意味がない」と思われてしまいます。スーパーバイザーとなった現在でも、この言葉は大切にし続けています。そのおかげで、大きな課題に対しても、冷静に対応できているのではないかなと考えています。
DXの波を現場で捉え、変化を楽しみながら最適解をめざす
──直近の目標を教えてください。
新しいポジションに配属されたばかりなので、まずはしっかり自分の職場の業務を覚えて、今の課題を解決していくことが目標です。現在の個装職場の業務は、数年前まで外部業者に業務委託されていたため、1人あたりに求められる仕事の能力やスピードなどの基準がまだ十分に整っていません。組立工程のようにラインを最適化して、能率や実績の見える化を進めていきたいです。
これまで培った改善のノウハウを、新しい職場でも活かしつつ「どうすれば解決できるか」をみんなで一緒に考えたいですね。
──中長期的なキャリアイメージについても聞かせください。
将来的には、自職場だけではなく、青森オリンパスの製造現場全体にまで視野を広げ、全体のプロセスを俯瞰で見ながら最適化していく活動に取り組んでいきたいと思っています。
たとえば、全体最適の観点から「どのような仕組みが最も効率的で、かつ品質の高い製造につながるのか」といったことに強い関心を持って普段から仕事に臨んでいます。そうした業務を任せてもらえるよう、今は新しい職場やこれまで経験のなかった業務にも積極的に関わり、自分の知識や経験としてしっかりと吸収していきたいと思っています。
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)にも注目しています。製造現場でもIoTやAI、データ活用といった技術が急速に導入されています。このような変化に対応するためには、単に与えられた技術を使えるようになるだけではなく、その必要性や活用機会をしっかりと自分の頭で整理して、活かしていくことが求められていると思います。だからこそ、時代に置いていかれないように日頃からアンテナを張っておくことが大切だと考えています。
オリンパスは今まさに変革期を迎えており、私たちの身の回りの業務も日々変化しています。変化を恐れるのではなく、変化を楽しみながら、自分自身もアップデートしていけるような姿勢を持ち続けたいです。
※ 記載内容は2025年8月時点のものです

