グローバル視点で組織と人材の未来を育む。人と会社がともに成長できる土壌づくりを
──所属する部署やそこでの仕事の内容について教えてください。
私が所属する組織人材開発(以下、OD)は、グローバル規模で組織開発と人材開発を行う部署です。社内の活性化や人材育成などの役割を担っています。
現在、部署には約40名のメンバーが在籍しており、そのうち日本人は20名程度です。外国籍のメンバーが多く集まる国際色豊かなチームで、採用、タレント・サクセッション、パフォーマンス・マネジメント、L&D(研修)、そして私がメインで担当するカルチャーなど、各分野の専門家たちが活躍しています。
組織と人材の開発に携わるということもあり、オリンパスのコアバリューである「患者さん第一」「イノベーション」「実行実現」「共感」「誠実」に共感し、人と関わることや、チームで何かを成し遂げることが好きな従業員が集まっている印象です。
中でも私は、グローバルODのDeptyを中心に、Employee Experience(以下、EX)Global/Japan、Workstyle Reform Globalのポジションを兼務しています。
EXの重要な役割の1つは、社内カルチャーを醸成し、中長期的に成果を生み出すための良好な人間関係を築くことです。一方で、従業員は仕事を通じてさまざまな経験をしますが、大事なことはそのような従業員の職業人生を会社がしっかり応援すること。一人ひとりのキャリア全体を見つめ、どう設計すれば最良のカルチャーやチームワークが生まれるかを考え、施策へと落とし込むことが重要です。
──オリンパスで働くやりがいを、どんなところに感じていますか?
入社して20数年になりますが、「オリンパスが好き」という従業員が非常に多いんです。 私は、そうやってオリンパスに誇りと自信を持って働いている皆さんのことが大好きで、彼らと一緒に働くことに喜びを感じています。
企業のカルチャーは、そこに集う一人ひとりの従業員がつくり出すものだと考えているのですが、オリンパスの社内には5つのコアバリューが根づいており、その根幹には人を大切にする企業精神があると信じています。
その精神に則り、「世界の人々の健康と安心、心の豊かさを実現する」というOur Purposeの実現に向けてチャレンジを重ねる従業員が、誇りと自信を持ち続けられるように環境を整えることが、私の責務だと考えています。
そのためには、会社には良い時期も難しい局面もありますから、どのような状況でも、会社の方向性と人の関係性の両軸を俯瞰的に捉えることで、常に自分たちの置かれた状況を適切に見極めて対策することが大切です。
そのようにして、人と会社がともに成長できる土壌を築いていくことにやりがいを感じています。
組織風土診断から目標管理改革まで。挑戦と信念で切り拓いた組織変革の15年
──入社からこれまでどのような業務を経験してきましたか?
入社当初、人事システムの刷新に携わり、人材情報を統合管理するための要件定義を担当しました。数年後、人事部の企画グループに異動し、人事制度の設計や労使窓口など幅広い企画業務を担いました。
リーダーになってからは、現在ではすっかり重要機能となりましたが、当時はまだ一般的でなかった「組織開発」といった概念を、いち早く職務分掌として盛り込み、HRガバナンスの取り組みと並行して、人と組織を育む施策に力を入れてきました。
2008年には、Olympusジャパン初の組織風土診断を企画・実施。前例がなく承認を得るまでにかなり時間を要しましたが、「本質的なアプローチで組織は必ず良くなる」という信念を持って粘り強く取り組んだことが、実現につながりました。
その後、女性活躍推進や育児支援を目的とした在宅勤務制度の導入などにも取り組みましたが、個人的に印象に残っているのが、目標管理制度(MBO-S)改革です。
当時、目標管理制度は短期的なノルマ管理に傾倒していたため、中長期的な人と組織の成長強化に向けたセルフマネジメント重視の制度へシフトすることを提案したものの、なかなか周囲に理解してもらえませんでした。
しかし、人事部長が替わったことが転機に。「森くんの考えは間違っていないから、やってみなさい」と背中を押され、その後、社内の約30の事業企画部門長に直接説明して回って同意を得て、トライアル運用を経て本格導入へと至りました。
こうした一連の取り組みを通じて、本質的に正しいことであれば、すべての条件が整えば最後には必ず実現できること、そして論理的にわかりやすく伝えることの重要性を学びました。
──責任あるポジションを任されることをどう捉えていますか?リーダーとしての考え方、リーダーの醍醐味とあわせて教えてください。
経験を積むほど、より難しい課題に挑戦したくなるものです。そのためには、より大きな責任あるポジションに就く必要もあるでしょう。私自身も幾度かステップアップしてきましたが、従業員が幸せになるために必要なことを模索し、実行し続けてきた結果、気がつけばいまの立場にいた、というのが正直な気持ちです。
ただ、立場が変わり、多様なメンバーと関わりが増える中で、より真摯に彼らの人生に向き合いたいと考えるようになりました。私自身が過去に人事部長から影響を受けたのと同じように、リーダーがメンバーの職業人生にとっての転機となる可能性もあります。ですから、百人のメンバーがいれば百通りの人生があることを意識しながら、リーダーの責任を全うするようにしています。
リーダーの醍醐味は、一人ひとりが主役となれるような仕事を実現することだと思っています。たとえば、彼はあの仕事をやってくれた、彼女はこんなアイデアをくれた、彼女はあそこで試練を乗り越えてくれた……など、それぞれが自分の役割を担い、成功体験を積む。そんなプロジェクトが実現できたらすごく嬉しいし、ずっと記憶に残ります。
そして、その喜びをチーム全員で分かち合える瞬間にこそやりがいがあります。「みんな、やったな!」と声をかけられるのもリーダーだからこそ。また、節目でメンバーから受け取る言葉も、リーダーを経験した人の宝物になっていくと感じています。
私が考えるリーダーの姿とは、メンバーが活躍できる「舞台」をつくる存在です。一人ひとりが活躍できる舞台装置や脚本を用意し、彼らが自分の力を存分に発揮できる環境を整えることが、リーダーの使命だと捉えています。
中国駐在がリーダーシップ深化のきっかけに。マイノリティの視点で磨かれた異文化理解
──中国に駐在することになった経緯と、現地での取り組みについて教えてください。
2018〜2023年にかけて、中国リージョンのHRヘッドとして人事制度改革や働き方改革の推進に取り組みました。実はこの異動は私にとってまったく想定外のもの。上長から打診を受けたときは、驚きを隠せませんでした。
当時、私はすでに45歳。国内での経験と実績はあったものの、文化や仕事の進め方がまったく異なる現地で、それまで培った手法がそのまま通用するとは思えませんでした。
中国語はもちろん、英語にも自信がなかったため、オールドルーキーになった気持ちで、それまで身につけてきたリーダーシップや仕事のやり方を一つひとつ見直していきました。
──インクルージョンの観点で、どのような学びがありましたか?
現地では常に「学ぶ姿勢」を大切にし、すべての出来事に感謝の気持ちを持って深く理解しようと努めました。思うようにいかない場面もありましたが、違いを受け入れることで、少しずつ柔軟な考え方ができるようになりました。
また、必ず守るべき価値観や原則を明確にした上で、多様な意見を尊重し吸収することが、結果としてチーム全体の成長につながることを実感しました。
初めて自分がマイノリティの立場に立ったことで異文化理解がいっそう深まり、インクルージョンへの感覚も研ぎ澄まされたと思います。最終的に学んだのは、すべての人を尊重し、感謝を忘れず、互いを理解し合おうとする姿勢こそが、組織を理想的な状態へと導くということです。
──インクルージョンに取り組む上で、どのような考え方が必要だと思いますか?
まず、現実を正しく認識することが大切です。たとえば、日本には世界各国と比較した時に、大きなジェンダーギャップがありますが、まずはその事実を受け止めるところからスタートする必要があります。
また、インクルージョンを推進する重要性を理解している人ばかりではありません。なぜインクルージョンが必要かを論理的に理解できて初めて「違い」に気づき、お互いを尊重し合うマインドセットや実践的なスキルを身につけるステージへと進めると考えています。
働くすべての人が、自身の夢や目標に挑戦し実現しながら、仲間と共に働く喜びを感じられる──最終的にはそんな組織をめざしたいですね。
共感と分担で築く組織力。個の志を尊重する環境づくりに向けて
──今後の展望を教えてください。
会社にはOur Purposeがありますが、それと同時に、個人個人の"MyPurpose"も大切にしたいと考えています。なぜなら、会社の戦略を進める中で、一人ひとりが自らの志にも思いを傾けられることが、強い組織になるためには必要だと考えているからです。
言い方を変えれば、個人がいかに活躍できるかは、その人の志を尊重し、その芽を見つけて伸ばせる環境があるかどうかにかかっています。会社がそうした環境づくりに取り組めば、個々の力はより大きく発揮されるはずです。
私が若手だったころ、思うようにいかないことがあっても、必ず誰かが私の心に灯る小さな火に気づき、手を差し伸べてくれました。ODの一員としてそのような環境を整え、個々の志が花開く場をつくり出していくこと、一言で言うと“Power to the People”が、私の“MyPurpose”です。
──次世代を担うリーダーにメッセージをお願いいたします。
ひと昔前の時代では、これをやればうまくいくという方向性があり、トップダウンでそこに向かって引っ張っていくリーダーが求められていました。
しかし、正解がないVUCA時代と言われるいま、求められているのはみんなで最も良い解を導きだすことのできる「共感されるリーダー」だと考えています。必ずしもエネルギッシュで強力なリーダーが先導に立つことだけではありません。大切なのは、自分に正直であること、そして常に前向きな姿勢でメンバーに勇気を与えることなんです。
また、事業のスピードが速くリーダーが担う役割が多様化した現代において、リーダーシップはチームで共有・分担されるべきものでもあります。「全部自分でやらなくていい」という考え方も忘れないようにしてください。
みんなが育って活躍していけるように役割を任せて、一人で抱え込まないこと。リーダーが疲れているとメンバーが不安になってしまうので、自分が元気でいられるように調整することも、リーダーの重要な役割なんだと思っています。
私自身、いたって普通の人間だと思っています。「ついてこい!」と言うタイプではないからこそ、自分がどんな立場でどう動いたら「最高のチーム」になるかを考えるようにしています。世の中が動いている限り、リーダー像も変わっていくのではないかと思います。
リーダーシップは、リーダーだけではなく、一人ひとりが体現していくこと。みなさん自身がいつでも影響力を発揮するリーダーになれると思っています。ぜひ、ためらうことなく挑戦してもらいたいですね。
※ 記載内容は2024年12月時点のものです

