法規制に適切に対応し、既存製品の継続供給を通じて患者さんの利益を守る
──所属する部署やそこでの仕事の内容について教えてください。
法規制対応チームの一員として生産維持活動を統括しています。私たちのミッションは、市場投入済み製品の品質(安全性・有効性)を担保しつつ、生産出荷の継続を確保するための変更管理プロセスを実行することです。とくに内視鏡処置具の効率的かつ安定的な生産をめざし、設計図面の作成、製造手順書や品質基準の策定などを通じて製造部門へのサポートを行っています。
業務フローとしては、まずRegulatory Affairs(RA)部門から最新の法規制情報と変更事案の通知を受けます。次に、その影響範囲を特定するためのスクリーニングを実施し、関連部署への連絡と招集を行います。その後、法規制対応策の立案、製品の機能性能検証、製品切り替えの管理、そして一連の活動の文書化を行います。
とくに私たちが注力しているのが、影響範囲の大きい法改正への対応です。EUや米国の規制変更、あるいはISOなど国際規格の改定に際し、具体的な対策を立案し、プロジェクトを推進する役割を果たしています。
現在は、EU向けの大規模な規制変更に対応中です。従来、欧州市場ではメーカーの自主性に委ねられる部分が多かったのですが、近年は既存製品を含めた規制遵守の審査が厳格化されています。オリンパスでは20〜30年前の製品も継続して販売しているため、過去の基準で設計された当時の製品を、制約が追加された新しい基準に適合させる作業に取り組んでいるところです。
法規制の要求は、具体的な状況に柔軟に対応できるように、抽象的な表現を用いていることが多いです。そのため、保守的にとらえると過剰な品質となるケースもあります。人的、経済的コストを最小限に抑えるため、規制の詳細を精査し、材料変更を最小限に抑えつつ、論理的根拠に基づいて安全性を立証しながら、製品の安定供給と安全性の両立を目指しています。
──仕事する上で、どんなことを大切にしていますか?
製品を継続的に提供することが患者さんの利益につながると信じ、この信念に基づいて、すべてのステークホルダーにとって最適な解決策を見出すよう努めています。日々の業務に追われることもありますが、そんなときこそ、私たちの仕事が患者さんの健康と生活の質の向上に寄与していることを思い起こすようにしています。
社会貢献とワークライフバランスを両立できる環境を求め、オリンパスへ
──入社の経緯について教えてください。
以前、精密機器部品メーカーの技術研究所で、テレビカメラのズーム機能を操作するモーターに付属する小型ギヤヘッドの設計や、次世代半導体材料の研究開発を担当していました。オリンパスへの転職を考えるきっかけとなったのは、社会貢献度の高さです。
民生機器は製品のライフサイクルが短いのが特徴です。自身が開発に関与した製品が市場に出ることに喜びを感じる一方で、急速な製品サイクルに追われる状況に違和感を覚えていました。
それとは対照的に、医療機器は長期にわたって使用され、人命に関わる重要な役割を果たすことができます。自身の仕事の社会的意義をより明確に実感できると考えていました。
また、研究開発職では仕事に没頭してしまうことが多く、家族ができたことを機に働き方を見直したことも転職を決めた理由です。結果として、入社後はワークライフバランスを取ることができています。
──入社後に携わった仕事について教えてください。
手技開発部に配属され、電動マニピュレータのモータユニットや手動マニピュレータの設計を担当し、製品化に向けた検証業務を担当しました。
入社当初に苦労をしたのは、業務プロセスの違いや、多数の関係者とのコミュニケーションです。前職では特定のパーツに特化し、既定の規格内でのサイズと出力の最適化をめざしていたのに対し、オリンパスでは製品全体を俯瞰し、臨床ニーズの把握から具体的な設計仕様まで、一貫して取り組んでいました。会社の規模が大きくなった分、関係者の数も増え、これまでとの違いに苦戦をしましたね。
ただ、そうした点を周囲に相談したところ、よりキャッチアップがしやすいチームへと異動をさせてくれたんです。おかげで、新たな業務フローや方法論を体系的に学ぶことができ、コミュニケーションも円滑に取れるようになりました。
製品化に向けて設計の根拠を明確に示し、エビデンスを構築していく中で、技術者としてスキルアップしただけでなく、ビジネスパーソンとして視野が大きく広がったと感じています。
コミュニケーション力と社内ネットワークが開いた新たなキャリアの広がり
──青森オリンパスに出向後は、どのような役割を担っていましたか?
青森オリンパスでの4年間は、製品技術グループに所属し、新製品の立ち上げや既存品の品質不具合対応など、法規制以外のサステイニング業務を担当しました。この役割を務める上で、もっとも重要だったのがコミュニケーション能力です。製造部門、調達部門はもとより、海外の法規制対応チームなど、幅広い関係先との連携が求められました。
そのため私は、出向メンバーや青森の経験豊富なメンバーから、調整役としてどのようにコミュニケーションを取るべきかを学びつつ、社内のネットワークを広げていきました。その結果「誰に何を聞くべきか」「どう進めるのが一番スムーズなのか」など、俯瞰した視点で最適解を判断できるようになりました。
製品技術では既存製品全般に携わるため、研究開発と比較して貢献できる範囲が大幅に広がります。コミュニケーション範囲の拡大が直接的に成果の拡大につながる感触があり、新たなやりがいを感じることができました。
それをとくに実感したのが、新製品の立ち上げプロジェクトです。自分の手を動かして設計図面を書くのは全体の1割ほどですが、コミュニケーションの範囲は広い。開発者の想いをどう反映させていくか、量産するためには何が必要で、誰にどう考えを伝えていくべきかといった積み重ねを通して、製品が世界中に出荷されていったんです。一つひとつの歯車が組み合わさって、みんなで成果を出していく流れを経験し、オリンパスで働く魅力を実感できました。
オリンパスのように内視鏡に特化した医療機器を扱う大企業は世界的にも稀少です。大規模かつ複雑なシステムを効果的に運用する能力を養えたことは、貴重な経験になりました。
──本社に復帰後からこれまでの仕事について教えてください。
本社に復帰する際、手技開発部ではなく現在の部門を選びました。青森での4年間で培ったコミュニケーション力と人的ネットワークを最大限に活用することで、より会社に貢献できると感じたためです。
現在は、EU規制対応と並行して、既存製品の米国当局への再申請に向けたプロジェクトを担当しています。約150品目に及ぶ膨大な製品ポートフォリオを扱い、通常の半分という厳しい期限設定に苦労しながらも、社内のさまざまな部署との綿密なコミュニケーションを通じて、各プロセスにおける制約条件を体系的に整理し、責任範囲を明確に定義・分担することで、実現可能性の高い戦略的計画の策定を行っています。
プロジェクトはまだ実行段階にありますが、当初は困難と思われた目標が着実に実現に向かっていることに、手応えを感じています。
ポジティブなマインドがコミュニケーション成功の鍵。より建設的な組織づくりに向けて
──組織の中でコミュニケーションを取っていく上では、どんなことが大切だと想いますか?
コミュニケーションにおいてもっとも大切なのは、社内に敵対関係は存在しないとの認識を持つことです。私自身、情報を伝達すべき相手に対して意図を適切に伝えられず、「理解できない」という反応を受けた経験が何度もありました。しかし、このような指摘は否定からくるものでではなく、理解しようという前向きな反応から起きるものなんです。
社内のメンバーは競争相手ではなく、共通の目的に向かって協力する仲間。フィードバックを、自己改善の機会として捉えることで「どうすれば自分の考えをより効果的に伝達できるか」「どうすれば相手の理解を促進できるか」という建設的な思考につなげるようにしています。
──今後の展望を聞かせてください。
AI技術を活用して人の労力を最小化し、現在の業務プロセスの自動化と効率化を実現することが私の中長期的な目標です。そのためにまず、現在の業務内容を詳細に分析し、機械が理解しやすいかたちへと構造化していきたいと思っています。
同時に、チームマネジメントのスキルも磨いていくつもりです。機械学習と人間を教育するプロセスには多くの共通点があると考えているので、業務の自動化・効率化と人材育成の両方に携わることで、目標達成までの時間を大幅に短縮していきたいです。
※ 記載内容は2024年8月時点のものです

