原子核工学専攻から金融業界へ。農林水産業を支え日本の食を支えたいという理念に共感
理系分野から金融の世界に足を踏み入れた山口。次のように経緯を振り返ります。
「学部時代は化学やプラントエンジニアリングを学び、学士論文の研究テーマはプラズマを使った滅菌・殺菌でした。その中で、生物に関わる研究におもしろさを感じるようになり、大学院では放射線生物学の中の一分野である放射線治療の研究をしていました。
生物系の経験を生かせるところと考え、就職活動では食関連の企業を中心にエントリーしていたのですが、就職エージェントからたまたま農林中央金庫を紹介されて。『日本の農林水産業を支援して食を支える』というコンセプトに惹かれたことが、入社の一番の決め手ですね。さらに、面接時に『リスク管理や投資の分野で理系出身者が活躍している』と知ったことで自分が働くイメージを持つことができました」
入社後、山口は子会社の農中信託銀行に出向。トレーディング部に配属となり、主に資金調達業務を担当しました。
「具体的には、信託銀行として農林中央金庫から債券などを信託で預かり、それを他の証券会社と取引し外貨に交換するという業務に2年間携わりました。
入社時点では金利の概念やマーケットに関してなど、基本的な金融知識がまったくない状態。先輩に教わりながら独学でも勉強する必要があり、最初はとても苦労しましたね。英語が必要となる場面もあり、TOEICの勉強もしました。
また、資金調達の仕事で扱うのは何百億円規模というとても大きな金額。約定利率が0.01%違うだけでも大きなインパクトにつながるため、ミスが許されず、常に緊張感を持って業務に取り組んでいました」
トレーディング部門で日々の業務をこなしながら金融について体系的に学んだ山口。その後、運用部門へ異動後には証券アナリストの資格を取得。学生時代にはなかった、大きな学びを得ました。
「最大の学びは、『仕事は1人では終わらない』ということ。学生時代の研究は個人で黙々と進めることが多かったのですが、仕事となると多くの人が関わります。お金を預かる段階からディールの実行、そして最後の送金事務まで、さまざまな部署や人々が連携することで成り立っています。周りに感謝しながら、自分の役割をしっかり果たすことが大切だと感じました」
自らの成長を求めて運用部門へ。顧客との信頼関係を築き、感謝の言葉を糧に活躍
トレーディング部門での経験を積んだ山口は、自身のキャリアに新たな挑戦を求めていました。そんな折、運用部門への異動の機会が訪れます。
「農中信託銀行のトレーディング部の業務は、指示を受けてトレード業務を行う部署で、投資の資金を調達することがメイン業務でした。
一方運用部は、顧客から預かった資金を実際に投資して利益を上げることが求められます。トレーディング部で市場運用に携わる中で、自分も運用や投資を経験してみたいという気持ちが強くなり、運よく異動がかなった形ですね」
実際の運用業務を担当する上では、さらなる知識やスキルの習得が必要だったという山口。主に携わったプライベートエクイティファンド投資の分野のキャッチアップには、とくに苦労したと語ります。
「非公開企業や不動産に投資するファンドへ投資をする分野で、プライベートな分、情報がとても少ないのが特徴です。そのためファンドマネージャーから直接情報を得るなど、情報収集の方法が他と大きく異なりました。
幸い、同部にはこの投資に関して経験・知識が豊富な方が多くいたので、先輩方からアドバイスをもらいながら現場で覚えていきました」
トレーディング部に約2年、運用部に約4年所属した山口。指示のもと行う業務がメインだったトレーディング部に対して、運用部では「自分で考え、行動すること」が求められたと言います。
「運用部時代は、商品化と顧客対応の業務がとくに印象に残っています。商品化とは、投資商品をお客様に紹介するためのプロセスで、ファンドとのやり取り、資料作成、上司や社長への説明など、3〜4カ月かけて行う大変な作業でした。また、お客様へのパフォーマンス報告も重要な業務で、出張して直接報告することもありました。
その中で一番大切にしていたのは、お客様との信頼関係を構築することです。お客様から『いいファンドだったね』『紹介してくれてありがとう』といった言葉をいただいた時には大きなやりがいを感じましたね」
学び続ける姿勢を大切に、尊敬するスペシャリストたちの背中を追いかける
2023年から農林中央金庫に戻った山口は、リスク統括部データ&テクノロジーグループ金融技術班に所属。同班は、山口を含めた担当者4人、部長代理2人、グループ長1人の計7人で構成され、多くが理系大学院卒という高度な専門性を持つチームです。
「金融技術班では、金融商品の理論価格算定・リスク計測等を行うモデルの企画・開発・管理や、モデルを活用した評価・分析をもとに投資運用や経営をモニタリングする業務のサポートを担っています。金融技術の面からリスク管理を高度化することが主なミッションであり、最近ではAIを活用したモデル開発・研究にも力を入れています。
その中で私は、既存モデルの保守や機能改善を担当。異動してまだ1年ほどなので、まずは金融工学やリスク管理に関する知識や理論を吸収することに注力しています」
商品のリスクを計測し、理論価格を算出するという業務においては、大量のデータを取り扱うという観点で、時流的なトレンドでもあるAIとの親和性が高いという山口。同部でも、その活用に積極的に取り組んでいます。
「為替トレーディングにAIを活用したり、企業の信用関連情報の収集にテキストマイニングを使ったり。現在いくつかのAI活用プロジェクトが進んでいて、今後さまざまな業務に取り入れられていくでしょう。
金融技術という分野では、数学や統計学、さらにプログラミングの知識を総動員して、目の前のモデルを理解し、実装していく必要があります。AIという最新技術も含め、さまざまな理論をしっかり学んでいかないと仕事が成り立たない、という難しさを感じますね。
一方で、この難しさこそがおもしろみでもあり、学生時代も含めこれまで積み上げてきた知識や経験を活かせることがモチベーションにもなっています」
どの部門でどんな仕事を任されても、一貫して学び続ける姿勢を大事にしている山口。金融技術の専門性を高め、先輩や上司のようなスペシャリストになりたいと意気込みます。
「金融商品のモデルを理解する上では、大学で学んだ数学や統計学が重要になるので、今でも積極的に勉強しています。その知識をもとに仕事で実践を繰り返すと、少しずつスキルが養われていくのを実感しますね。
金融技術というとかなりディープな分野ではありますが、今のチームの上司たちはさらに専門性の高い知見を持つ、まさにスペシャリストなんです。その姿を見ると『ああいう風になれたらかっこいいな』と憧れますし、ロールモデルとして追いかけたいと思っています」
農林中央金庫には、理系出身者が活躍できる場がある
出向期間も含め、農林中央金庫での7年間を振り返り、山口はこの組織で働く魅力について次のように語ります。
「農林中央金庫の最大の魅力は、先輩方の存在です。とくに私は上司に恵まれたなと感じていて、『将来自分もこんな風になりたいな』と思える方ばかりでしたし、優秀なだけでなく部下としっかり向き合ってくれる方たちでした。私が自分の希望するキャリアを歩めたのは、タイミングや会社の方針などの要因ももちろんありますが、上司たちのおかげだと思っています。
また、現在の仕事では直接的に農林水産業を支援することはありませんが、JAや信用農業協同組合連合会などのお客様の利益を生み出すお手伝いをすることで、間接的にではありますが食農に貢献できていると思っています。そうした社会貢献性が高い仕事に取り組めるのも、当庫で働く魅力ですね」
そんな山口が思い描く、今後のキャリアプランとは。
「直近では、現在の金融技術班で専門性を磨きたいと考えています。国内の大学院で金融工学を学ぶプログラムがあるのでそこに参加し、その後はリスク管理か投資のどちらかのスペシャリストをめざしたいですね。リスク管理に関しては、金融商品の理解を進めた上でのモデルの高度化やAIの活用、投資の方向であれば市場運用部等でのIT活用やAI×為替などの専門部隊の一員として活躍したいと思っています」
未来の農林中央金庫を担う人材について、山口はとくに理系の学生にもっともっと入庫してほしいと力を込めます。
「当庫を含め、金融業界には理系の知識を活かせる場や職種が実は数多くあります。私が今担っているリスク管理にもITは欠かせませんし、さらに今後はAIやロボットなどの活用が進むと思うので、そうした分野で活躍できる専門人材が必要です。
また、この業界には優秀な人材が集まっていて、留学経験者やMBA取得者が周りにたくさんいるという環境。周囲から刺激を受け、切磋琢磨し、ステップアップしていきたい、自分の可能性を試したいという人にはおすすめの業界です。チャレンジ精神旺盛で自己成長を求める人にぜひ入庫してほしいですね」
※ 記載内容は2024年10月時点のものです

