不確実性が高まるこれからの時代、地域の課題を解決できる存在であり続けるために
新型コロナウイルス感染症の流行によってライフスタイルや価値観が⼀変。社会に急速な変化がもたらされる中、地域に根差したビジネスを通じて社会課題の解決に取り組んできた農林中央金庫にとっても、新しい事業を切り拓いていくことが課題となっています。
高木 「社会が目まぐるしく変化し、先が見通しづらい時代を迎える中、JAやJAバンクが地域における存在価値をあらためて発揮する上で、画期的な施策の必要性を感じていました。JAの銀行業務の運営をサポートする立場から、収益の新たな柱となるような事業を提案しようと始まったのが今回のプロジェクトです」
福島支店では、プロジェクト立ち上げに際してメンバーを募集。部署や年次を超えて16人のメンバーが集まりました。
大内 「横断的に人を集めようという方針のもと、メンバーはそれぞれ専門部署から選出されていますが、中には自ら手を挙げて参加した人も。入庫1年目の新人から中堅職員まで、多彩な顔ぶれが集まりました。各メンバーが2班に分かれてワークショップを実施。あえて役職を設けず、フラットに議論を展開し、最終的に3つのテーマで6つの事業提案へと絞り込んでいきました」
農林中央金庫に中途で入庫し、余裕金運用や投資信託などを担当していた大内 徹。当時のことをこう振り返ります。
大内 「既存の事業にとらわれない施策を提案することがミッションだったこともあり、多様なメンバーから実にたくさんのアイデアが出されました。ただ、重要なのはそれをどうかたちにするか。具体的な戦略としてスキームに落とし込んでいくのは簡単なことではありませんでした」
大内と同年にやはり中途で入庫している桑折 拓諭。ローンを担当し、企画や推進活動を支援する業務に携わる中、上司から推挙されるかたちでプロジェクトに参加しました。
桑折 「最初は『何をするんだろう』という感覚でしたが、部署ごとに業務を行うことが多い農林中央金庫にあって、普段あまり関わることのない方と接し、触れることのないことを考える絶好の機会になりました。結果的にとても貴重な経験ができたと思っています」
トレーナーとして県内JAの融資推進・人材育成を担当している高木 枝里。普段からJAに足を運ぶ機会が多く、現場の実情をよく知ることから、プロジェクト参加当初から課題意識を持っていたと言います。
高木 「まず現場の意見をぶつけられる場ができたことがすごく良かったと思っています。同じ業務を担当している同僚と話していても、なかなか生産的な議論にならないもの。客観的な目線からのフィードバックがあることで、それまでマイナス要素だと思っていたことにも良い面があるとわかったり、違う取り組み方を提案してもらったり。大きな収穫がありました」
ビジネス表彰でチームワーク賞を受賞。多様性のあるメンバーが連携できたことが成果に
JAでは、営農事業だけでなく、高齢者施設などさまざまな事業を展開しています。そうしたJAのリソースを最大限に活かすことを考慮し、実現可能性と効果の観点で意見をまとめ絞り込んでいった結果、“若年層へのアプローチ”、“脱炭素”、“食品ロスの削減”の3つがテーマに選ばれました。
高木 「JAには強固な顧客基盤はあるものの、高齢化が進むとともに若年層のお客様の割合が減少傾向にあります。継続安定した顧客基盤を構築していくためには、どう若年層にアプローチしていくかが最重要課題でした。また、近年、SDGsへの関心が高まっていることを受けて、持続可能な開発目標の達成を意識したテーマが選出されています」
メンバーらはさらに検討を重ね、テーマをもとに6つの解決策へと落とし込んだ上でプレゼンテーションを実施。そこで大きな手応えを得ることになります。
大内 「JAの組合長をはじめとした県内JAグループのトップが集まる中、プレゼンテーションを行ったところ、県内に5つあるJAのうち、1つが事業提案に興味を示してくれたんです。その後、JAに出向いてスタッフと意見交換を進め、2023年3月現在は施策具体化に向けて検討を進めているフェーズです」
事業提案が実現に向けて動き出したのは、JAと農林中央金庫の両者がめざす方向性に親和性があったからでした。
大内 「実はJAでも、若手を中心に同じような事業にちょうど取り組みを始めていたようなんです。そこにわれわれの提案がうまくフィットしたことで、とんとん拍子で話が進んでいきました」
一連の取り組みが評価され、大内、桑折、高木をはじめとする5人は、2021年度ビジネス表彰において“チームワーク賞”を受賞。多様性に富むメンバーで構成される福島支店ならではの快挙でした。
高木 「2008年に旧JA福島信連が統合されたことで、福島支店にはJAと長年付き合いのあるメンバーが多く転籍してきています。そこに大内や桑折のような中堅クラスの中途職員の視点が加わったことで、これまでのJAグループにはなかったようなアイデアがたくさん生まれました。
また、JAと長く仕事を続けていると、『これは難しいかもしれない』と実際に行動する前から躊躇してしまうことがあるのですが、新卒職員の存在がそうした固定観念を覆すことにつながったと思います」
結果より過程。支店としてチームワークを発揮できたことが最大の収穫
今回のプロジェクトを経て、貴重な体験ができたと口を揃える3人。それぞれにとって大きく成長するきっかけになりました。
高木 「自分がアイデアを提供してそれをかたちにしていったり、大勢を前にプレゼンテーションしたりする機会は、普段の業務ではほとんどありません。それだけに、今回のプロジェクトに参加できたことには大きな意義がありました。
また、私は今も引き続きJA側とのワークショップに参加し、意見交換しながらこれからの政策などについて検討しています。プロジェクトをきっかけに新しいネットワークができたことも収穫だったと思っています」
桑折 「私はローン関係の業務をしているのですが、どうしても短期的に足元の数字を見ながら仕事をしないといけないところがあって。今回のプロジェクトに参加したことで、仮に時間がかかったとしても、収益に結びつくような大きな効果を得ることの大切さを学びました。普段の仕事にも中長期的な視点を取り入れられるようになったと思います」
大内 「普段まったく接点のない方々とさまざまな話ができたことが大いに刺激になりました。また、収益の柱をつくる取り組みに参加したのは今回が初めて。事業創出の難しさにあらためて気づかされました」
ビジネス表彰を受けたことに対して、素直に喜びを表現する3人。とくに、“チームワーク賞”を獲得したことが有意義だったと高木は話します。
高木 「同時に受賞したプロジェクトの多くが部店をまたいで表彰されている中、私たちだけは受賞者すべてが同じ支店のメンバーなんです。バックグラウンドがまったく異なるメンバーが大きく衝突することなくゴールを迎えられたのは、チームワークを発揮できたからこそ。福島支店として獲得できた賞だと思っています」
さらに桑折がこう続けます。
桑折 「高木が言う通り、結果よりも過程を評価してもらえました。メンバー全員の意見を切り捨てることなく、うまくエッセンスを取り入れながら集約していったことが評価につながったんだろうと思います」
人と食べ物、いのちをつなぐ。地域に根差したビジネスを通じて社会課題の解決を
さまざまな人と関わりを持てるところに今の仕事の醍醐味があるという高木と桑折。農林中央金庫で働く魅力についてこう話します。
高木 「入庫して最初の3年は内勤の仕事が多く、JA側とは電話での対応がほとんどでしたが、トレーナーになって実際にJAに出向くようになってからは、以前に電話でやりとりしていた方と直接会って一緒に仕事ができていることがすごく嬉しくて。
『あのときは、ありがとう』と言ってもらえることもあるなど、人とのつながりを身近に感じられることに喜びを感じています。JAの方と連れ立ってお客様を訪問することも多いのですが、相手の言葉や表情の一つひとつを脳裏に焼き付けるような気持ちで、新しい出会いを大切にしていきたいですね」
桑折 「総合事業体ということもあり、JAでは福島県内だけでも約1万人もの方が働いていています。JAごとにまったく違う考え方を持ち、違う動き方をしているたくさんの人と関われることが農林中央金庫で働く最大の魅力。これほど大規模で、しかもそれぞれ特色のある組織を相手に、課題に合わせた提案ができる仕事はそうないはずです。
JAがますます存在価値を発揮していけるためにも、今回のプロジェクトへの参加を機に、より中長期的なスパンで、より本質的な課題に取り組んでいけたらと思っています」
一方、農林中央金庫の一員として、日本の食を支えている自負があると話す大内。責任の重さと同時に、やりがいを感じていると言います。
大内 「JAは国内の農産物の重要なサプライヤーです。そのJAを金融の面から支えることは、すなわち日本の食を支えること。大きな使命を担えていることに、大きな手ごたえを感じています。
また、われわれは、県内のJAを取りまとめ、適切にサポートしていく立場。金融の専門家としての立場から提案したことをもとに組織が動いていく様子を間近で見ていると、重圧を感じる反面、やりがいを覚えます。今回のプロジェクトの成功で弾みをつけ、これらも大きな収益につながるような事業に進んで取り組んでいきたいですね」

