プロジェクトの発端——お客様からの相談がM&Aにつながるまで
2021年度、農林中央金庫のM&Aアドバイザリー機能を活用し、ある農業生産法人が他県への規模拡大を実現したことを評し、ビジネス表彰本部賞を送られたプロジェクトがありました。
このプロジェクトの始まりは、大阪支店で法人融資の担当をしていた廣岡が、とある事業法人の資金対応をする中で相談を受けたこと。その後、廣岡からM&Aチームの安藤に話がつながっていきました。
廣岡 「農業事業を担う子会社の売却を検討しているというお話で、農林中央金庫が持つネットワークの中から、買い手となる企業様を見つけられないかというご相談でした。農業領域への参入ニーズのある企業様数社のご紹介を検討したのですが、なかなかうまくいきませんでした。そんなとき、営業企画部にM&Aチームがあることを思い出し相談したんです」
廣岡から相談を受けたM&Aチームの安藤はまず、農業領域に参入している複数の取引先をリストアップ。フィナンシャルアドバイザーとして、1社ずつ丁寧に提案していきました。
安藤 「条件に合う企業はなかなか見つかりませんでした。事業として難しい面もあったことから、売り手企業様のポテンシャルに価値を見出してくださる企業様を見つけるのに苦労しました。たとえば、取引先様には農業を行っているスーパー様もいらっしゃるのですが、生産にとくに強みを持っているわけではないので、低迷している生産を立て直せるかというと不透明なところがあります。興味は持っていただいても、踏み出すまでに至らないケースが多々ありました」
ポテンシャルに価値を見出す、双方の想いがマッチングする瞬間
試行錯誤を続けること、約4カ月。ついに買い手企業が見つかります。
安藤 「香川県にある農業法人が、ポテンシャルを見出してくれたのです。『これだけ多くの土地をまとめて確保できているのはすごい』と、広大な土地で生産を続けてきたことを高く評価をしていました」
買い手となった農業法人の担当である高松支店の門脇は、当時の様子をこう振り返ります。
門脇 「かねてより生産規模の拡大をめざしている農業法人だったのですが、まとまった農地を確保することに苦労されていたようなんです。他県での生産にも着手していたのですが、県外での土地集積や必要設備の確保にも苦戦していたそうで。そうした背景もあって、売り手様が広大な土地を管理されていることに、魅力を感じられたのではないかと思います」
各支店のメンバーが総力を合わせて成し遂げたプロジェクト。中心人物となった安藤は、その成果をこのように振り返ります。
安藤 「売り手企業様からは、取引銀行のひとつであり、食農に力を入れているということで、農林中央金庫へとご相談をいただきました。その信頼に応えることができたことに喜びを感じています。大手の事業法人と農業法人という、本来であれば接点のない法人同士をつなぐことができたことは、当金庫の強みを活かせた部分といえるのではないかと思います」
お客様の要望に真摯に応える。その積み重ねが、“食農に強い”農林中央金庫の土台に
今回のプロジェクトを経て、自社の新たな価値に気づいたと言う3人。次のように続けます。
門脇 「私は前任から案件を引き継いでいるため、当時のことは語れないのですが、このプロジェクトを通じ、当金庫内にM&Aアドバイザリーサービスを提供できるチームがあり、法人様同士をおつなぎする機能があることを知りました。また、今回は大阪支店と、香川の高松支店、営業企画部のM&Aチームが連携して成約につながっています。社内連携をこんなにもスムーズに進められることに価値を感じています」
廣岡 「組織横断のしやすさについては、私も強く実感しています。今回のプロジェクトを主導してくれた営業企画部の安藤をはじめとするそのほかのメンバーとは、これまでほとんどつながりがなかったのですが、収益機会を見出すとともに、取り組み意義にも共感し、真摯に相談に乗ってくれたこと、背中を押してもらえたことはとてもありがたかったです。
もちろん、お客様のご要望に真摯に向き合うカルチャーは以前からあります。われわれも、『輸出したいのですが、何かいい商材がありませんか』『冷凍野菜をつくりたい。どこかにいい工場はありませんか』といった融資以外のご相談にも、これまでも損得勘定抜きで応えていました。そうした積み重ねが『農林中央金庫は食農に強い』という信頼につながってきたのではないかと思います」
安藤 「われわれ自身は、“食農に強い”との自負を持っていますが、廣岡が話してくれたように、お客様からもそう見ていただけていることを、今回のプロジェクトであらためて感じることができました。
また、当金庫がこれまでに築き上げてきたネットワークとM&Aという手段を以てすれば、事業法人様と農業法人様をおつなぎして、お客様の期待に応えられると実感できたことも、自信につながりましたね。当プロジェクトは社内でも表彰されましたが、表彰されたこともさることながら、お客様から『農林中央金庫にお願いして良かった』と言っていただけたことが励みになりました。
農業関連のM&Aはまだまだ取り組みが限られているのが現状です。今回の取り組みを機に当金庫外に認知を広め、M&Aアドバイザリー事業でお取引先様のお役に立てればと思っています」
食農のバリューチェーンのすべてをカバーし、海外進出もサポート
プロジェクトを通じて浮き彫りになった新たな一面。農林中央金庫で働くことの魅力が“農林水産業の成長に携われる喜び”にあることを、あらためて感じていると話す廣岡と安藤。
廣岡 「農林水産業を支えるために、一丸となって取り組めることに魅力を感じています。農林水産業は日本の食を支えていると同時に、地域の雇用の受け皿ともなるとても重要な存在です。そうした存在に対してコミットできることは、私にとって大きな喜びです」
安藤 「当金庫の社員はどの部署にいてどんな業務にあたっていても、『農林水産業のために何かできないか』とそれぞれ共通した想いを持ち、その実現のために前向きに取り組んでいます。同じ目標を共有したメンバーとの一体感・連帯感を感じながら働けるのは、農林中央金庫の非常に良いところだと思いますね」
そして今回のプロジェクトの大きな成果は、3人にとって、業務への意欲をさらに高めることにつながっていると言います。
門脇 「当金庫には融資以外にも提供できる解決策があることがわかったことで、以前にも増して、幅広いニーズを拾ってこようと前向きな気持ちになりました。今回の案件は、前任がお客様からの信頼を得ていたからこそかたちになったもの。私自身も信頼を積み重ねて、仮にこの部署を離れることがあったとしても、いいかたちで後任にバトンを渡せるようにしたいと思っています」
廣岡 「当金庫のどの部署で働いていても、農林水産業の成長に携われることには変わりありません。JAの組合員様や農業者様、利用者様といった方々が安心して農業生産に関われるために、その一助となれるような仕事を引き続きしていけたらと思っています」
安藤 「M&Aチームでは、たとえば、食品関連企業様の海外進出を支援すべく、海外企業の買収案件にも取り組んでいます。お取引先様は、食農のバリューチェーンにおける生産から販売までに幅広く携わられるので、どんな案件にも対応できるよう、日々、知見やノウハウを積み重ねることを大事にしてきたいですね」

