前例なき電池のプロセス研究に必要なのは、「自分事」として徹底的に追求すること
次世代のクルマに搭載する技術の研究開発を一手に担う、総合研究所。五島が所属する部署は、日産が力を注ぐ電気自動車に関する重要な役割を担っています。
「電動車に搭載される電池をどうやって作るかという“プロセス(製造工程)”を研究しています。
狙いは、既存の製造方法とはまったく違うアプローチで、同等以上の性能を持つ電池を生み出すこと。 これは同時に、製造過程でのCO2排出量削減や、車両コストの低減にも直結する、きわめて重要な挑戦です。
現在のチームは少数精鋭の部隊で、私はチームリーダーを務めています。さらに、実験や試作を行う部署とも連携しており、和気あいあいとしながらも、日々研究に没頭しています」
研究のパートナーは社内だけにとどまりません。大学と相互に提案を重ねながら共同研究を進めているほか、独自の設備や技術を持っている企業に声をかけ、意見を出し合いながら協業を行っています。
「社外の方と仕事をする難しさは、発言の責任の重さですね。私の発するひと言が、会社としての意見と捉えられますから、伝える内容に不備がないように留意しています。逆に、そういった点をきちんと伝え、ひとたび信頼関係が築けると、とてつもない推進力が生まれてくるのです」
前例のない方法で、どのような電池を作るべきか。研究段階では、明確な判断基準が存在しない場面も多く、むしろその基準自体を自分たちで創っていかなければならないと語る五島。まだ誰も正解を知らない領域で価値を判断するために、大切にしている信念を2つ挙げます。
「1つは、どんな時も『自分事』として捉え、主語を『私』にして考えることです。人のせいや物のせいにするのは簡単ですが、そうではなく『私はこう思う』『私が決める』と考える。上司に判断を仰ぐ時も、まずは自分の考えをしっかりと伝え、最終的な判断材料の1つにしてもらうことを心がけています。
もう1つは、どんな事象にも必ず原因があると考え、徹底的に追求することです。『よくわからないな』で終わらせずに、時間と体力の許す限り、諦めずに粘り強く考えて調べ尽くせば、100%とはいかなくても核心の70~80%には近づける。研究者として、この2つを常に意識しています」
ものづくりの上流から下流まで。すべての経験を日産のプロセス研究に活かす
大学時代から電池材料に携わってきた五島。そのキャリアの原点は、意外にも「セラミックス」への探究心だったと語ります。
「昔から化学が好きで得意でした。化学は大きく無機化学と有機化学に分けられるのですが、私はとくに、金属や石、焼き物(陶磁器)といった無機化学の分野に惹かれていました。中でも、金属酸化物などを焼き固めて作る『セラミックス』の性質におもしろさを感じ、大学ではセラミックスの合成ができる研究室に所属しました。
そこで教授から与えられたテーマが、電池の正極材料合成だったのです。電池の正極材料もセラミックスの一種。それが私のキャリアの始まりでした」
大学卒業後は、大手電機メーカーに就職。最初に配属されたのは、希望していた電池材料とは異なる、車載部品向けの樹脂成形材料を開発する部署でした。
「工場に隣接した部署で、常に現場・現物・現実を意識する『三現主義』を徹底的に叩き込まれました。この時のものづくりの経験が、今の私の原点になっています。
非常にやりがいはあったものの、大学時代に研究していた電池の仕事がしたいという想いはずっとありました。そこで、社内制度を活用して、次世代電気自動車用電池を扱う部署への異動にチャレンジすることに。そこから再び研究開発に没頭する日々が始まりました」
研究開発から設計、そして商品化を行う事業部、材料開発まで、上流から下流まで幅広い経験を積み重ねた五島の中では、新たな探求心が芽生えました。
「さまざまな経験をする中で、『プロセス開発』のおもしろさに目覚めました。しかし、電動車用電池の製造にあたっては、自動車メーカーから要求される厳しい品質やコスト、安全性基準を守る必要があり、確立されたプロセスを変更することに限界も感じていました。
本気でプロセス開発をやるなら、要求元である自動車メーカーに行くしかありません。そう考えて転職活動を始めましたね」
数ある自動車メーカーの中から日産を選んだ決め手は、面接で聞いた研究内容のおもしろさだったと五島は振り返ります。
「今の課長でもある面接官から聞いたプロセス開発の話が、今までの私の常識を覆すような、聞いたこともないユニークな考え方でした。『こんなものづくりをしているのか。おもしろい!』と思ったのです。今も、その印象はまったく変わりません。でもそれは私が、これまで電池開発一筋でやって来たわけではなかったからこそかもしれませんね。
電池業界は専門性が非常に細分化されていて、各領域に特化した人材が研究開発を行うのが一般的です。一方で、私たちが取り組むプロセス開発は、材料から評価、検証までを広く知っていなくてはなりません。前職で経験したすべてが、今に活きていると実感しています」
これまでの知見を駆使し「なぜ」を突き詰めた先で、会社の未来に貢献できる喜び
今までの豊富な経験を携え、2024年に日産自動車に中途入社した五島。「すべてが印象的」だという入社後の出来事の中で、最も自身の知見を発揮できたエピソードについて、こう続けます。
「製造プロセスのスケールアップを行った際、試作した電池の性能に不可解な結果が出たことがありました。期待した数値がなかなか出ず、通常の解析では原因がまったくわからなかったのです」
八方塞がりの状況で、五島はこれまでとは違うアプローチを試みます。
「データの見方や分析方法を工夫し、これまでとは違う角度から粘り強く検証を重ねました。すると、これまで見えていなかったある変化を見つけることができました。そこからさらに細かく解析を進めた結果、根本的な原因を突き止めることができたのです。
前職で、設計した電池が正しくできているか検証していた時の経験を、まさに活かすことができた瞬間でした」
この成果は、五島の信念である「起こる事象には必ず原因がある。諦めずに粘り強く調べ尽くす」という姿勢がもたらしたもの。
「今までにないものを自分たちの手で見つけ、作り上げていく。研究者をめざしたのは、きっとこの作業が好きだからなんだろうなと思います。もちろん壁にぶち当たることも多々ありますが、それを乗り越えた時の達成感は格別です。
何より、原因を突き止めて、次の一手を打ち、さらに新たな課題を解決していくという過程そのものが、この仕事の最大の魅力であり、醍醐味ですね」
五島は、自身の仕事が日産の未来にもたらす大きな価値を確信しています。
「今、私たちが取り組んでいるプロセスの実現を考えるとワクワクします。まったく新しい方法で電池が作れるようになれば、日産のクルマの価値はさらに上がります。電池のコストが下がれば、より買いやすい価格で高性能な電気自動車を世の中に届けることができる。製造時のCO2が削減できれば、環境への貢献度はさらに高まります。
会社として非常に価値のある、挑戦的なテーマに携われていることに大きなやりがいを感じますね。まさに、日産のDNAである『他のやらぬことを、やる』『技術で未来を創る』を実践していると、日々感じています」
力強い組織にするために、「教える」のではなく、ロールモデルとして「見せる」
チームリーダーとして、五島はめざす組織のあり方をこう語ります。
「チームといっても、ただ集まっているだけでは個人の集団になってしまいます。理想は、メンバーが互いに協力し合い、一人ひとり成長していける力強い組織。そのために重要なのが、個人の成長と、誰もが気兼ねなく発言できる『心理的安全性』だと考えています。
私が若い頃もそうでしたが、立場が上の人と相対する時は、どうしても発言しにくいもの。それでは良いパフォーマンスは生まれません。誰もが思ったことを気兼ねなく発言でき、時には意見を戦わせながら、議論を通じて共に前に進んでいく。それが本当の意味で強い組織だと思っています」
メンバーに対する姿勢についても、独自の哲学とビジョンがあります。
「私は正解を『教える』ことはしません。教えるだけではメンバーが自分で考えなくなってしまいます。自分の働く姿をロールモデルとして『見せる』ことで、それぞれが自ら考えて成長してほしいのです。そのためには周りの『納得感』が不可欠。
この人はなぜそう考えるのか、なぜこの方向に進みたいのかを理解してもらえるよう、常にロジカルに説明することを意識しています。『この人についていきたい』と思ってもらえるような存在になりたいですね」
そこに加わる未来の仲間に求めるものはなにか。意外にも五島は、特別なスキルや経験は必要ないと話します。
「日産は、やる気さえあればなんでもできる環境です。さらに、社員を支える手厚い研修制度も整っています。だからこそ、入社時に特別なスキルは必要ありません。何よりも大切なのは、おもしろい製品や今までにない技術を自分の手で実現したい、というマインドです」
最後に、この記事を読む未来の仲間へ力強いメッセージを送ります。
「日産の総合研究所は、まだ世の中にない新しい技術を探し、提案し、具現化していける場所です。挑戦がしたいという熱い気持ちがある方にぜひ入社してほしいですね。未来のクルマづくりに貢献するために、一緒に仕事ができる日を楽しみにしています」
※ 記載内容は2025年7月時点のものです
