「未来のクルマ」を組み立てる──EV時代に挑む車両組立技術のプロフェッショナル
日産自動車の車両生産技術開発本部・車両組立技術部はおよそ200人規模の大所帯で、グローバルの車両組立工場で生産する新車生産準備を担当しています。
「私が所属する車両組立技術部は大きく3つに分かれており、CADを用いたデジタル車両開発を行う車両組立統括課、主に実車にて構造評価や設備検討を担う車両組立技術課、EVなどのバッテリーを担当するバッテリー技術課があります。
私は車両組立統括課にて、自動車の足回りなどを担当するシャシーグループに属しています。シャシーグループは約30名程度のチームで、エンジン・トランスミッション・サスペンション・ブレーキなど車の走る・止まる・曲がるなどの基本性能に対する新車生産準備・新構造の工程設計などを行います」
新車開発において組立技術を担当する田中。新型車開発段階より量産工場の車両組立工順(数百点にも及ぶ部品の組付け順序・工法)をCADのデジタルデータ上で検討し、最適な工程を設計していきます。
「現在私は新型EVのプロジェクトに携わっています。EVは従来のガソリン車と比較して新しい構造が多く、これまでの知見が通用しないことも少なくありません。
また価格も高額になりやすく、いかにガソリン車並みのコストを実現するかが課題。そこで私たちは人的工数の最適化に目を向け、より簡単で効率的な組立方法を模索することでコスト削減と利益率向上に貢献しています」
新しい技術や方法が多いEV開発において、田中は大きく2つのことを大切にしています。
「新しいことに挑戦しているので、できるだけさまざまな意見を取り入れるようにしています。社内のエキスパートはもちろん、海外拠点の現地スタッフ、サプライヤーなど、さまざまな立場の方と意見交換をしています。またEVのトレンドは変化が早いので、海外などの先進的な車両をベンチマーク調査し、参考にしています。
加えて、物事を判断する時はしっかりエビデンスをそろえて慎重に判断することを心がけています。車両のシャシー部品は数十年使用されることもあり、10年後、20年後も競争力があるかを客観的に見極めながら判断することが大切です。移り変わりが早いEVのトレンドをキャッチアップしながら大切にするべき事を守る。このスピード感がEV開発のおもしろさにもつながっています」
車両生産工場勤務で見つけた「信頼関係」の築き方。未来へとつながる経験を培う
もともとパイロット志望だった田中。しかし、狭き門であることから、興味のあった機械工学の道へ進みます。日産自動車との出会いは大学の研究室からの紹介でした。
「もともと家族もクルマ好きで、私も自然と自動車に興味を持っていました。業務内容にも魅力を感じましたし、関東で働ける完成車メーカーということで働きやすさにも惹かれ、入社を決めました」
こうして2019年4月に新卒入社。1年間の教育期間を経て、2年目から日産自動車九州への出向が決まります。
「九州へ行って最初の数カ月は既存ラインで発生する量産車の品質不具合解析など、現場に慣れるための業務を行いました。その後すぐに、新型エクストレイルのアメリカ向け車両の立ち上げプロジェクトに参加し、ドアシステムを担当。量産に向けた試作で検出された不具合を解析し、設計担当者と対策検討を行いました。
印象に残っているのは、車両の水漏れ不具合解析で部品サプライヤーを訪問した事です。部品溶接着工程を確認し原因となる不具合に対する改善提案を行いました。
実物を直接見て測定できる環境での経験は、現在のデジタル業務で非常に重要な基礎となっています。デジタル業務では素材の質感や柔らかさ、硬さ、重さなどがわかりにくいですが、当時の経験があるおかげでイメージしやすいと感じます」
そんな田中が仕事をしていく中でとくに苦労したのは、コミュニケーションでした。
「仕事上、他の人にお願いをすることが多く、新人である私のお願いをメンバーに快く聞いてもらえるよう、初めのうちはコミュニケーションの取り方に悩みました。先輩に同行し、データや数字をもって説得力ある提案をする方法の習得・実践し、徐々に信頼関係を築いていきました」
3年間働いた後の異動は、名残惜しさを感じるほどだったと言います。
「九州へ出向する前は遠方ということもあり多少の不安もあったのですが、先輩方には『帰る頃には名残惜しくなるよ』と言われていて。実際、その通りでした。九州の方々は本当にあたたかい人ばかりで、若手のうちにこうした経験ができてよかったと感じました」
言葉の壁を乗り越える、イラスト活用術。アメリカで学んだチームマネジメント
入社当初はとくにビジョンを持たず、ひたむきに働いていたという田中。日産自動車九州では、同じ車両を生産するアメリカの工場メンバーとリモートで一緒に仕事をするようになったことから、海外で働いてみたいと思うようになり、上司にもそれを伝えていたところ、チャンスが訪れました。
「年間数名ですが生産部門若手メンバーが海外業務経験できるプログラムがあり、そこにエントリーして晴れてアメリカに4カ月間いくことになりました。若手の人財育成が目的のプログラムで、海外での異文化交流や海外の人々とスムーズに仕事を進める方法を学ぶ機会となりました」
シャシー担当として田中は、現地の技術部門と製造部門の間を取り持つ窓口的な役割を担います。
「現地では生産ラインの工程情報が不足していて、作業範囲のマッピングなどから行いました。また、日本からの案件について皆で検討する際には積極的にリードする立場も務めました」
海外での経験を通じて、コミュニケーションの重要性を再認識します。
「英語でコミュニケーションは取れても、理解度には個人差があることを実感しました。そのため、イラストなど視覚的な資料を使用して説明したり、パワーポイントを活用したりするなど、全員が同じ認識を持てるよう工夫。
この海外出張を通じて語学力も高まりましたし、チームメンバーのモチベーションを高めるためにどうしたらよいか考えるようになりました」
帰国後、田中は新たな挑戦としてEVプロジェクトに携わっています。とくに印象深いのは、組立作業の自動化に向けた取り組みです。
「昨年は自動化に向けた取り組みを推進し、デジタル上で自動化しやすい構造提案を行いました。過去の失敗事例から学びつつ、設備担当者と協力して新しい要件定義を作っていきました。
この仕事の一番の醍醐味はデータを用いた設計から実物確認までの一連のサイクルを体験できるところです。とくに組立工程では車両構造自体を自らの考えで変更できる機会が多く、他の工程では経験できない大きなやりがいを感じています。実際自分が提案した設計が採用された時は大きな喜びを感じますね。
また一緒に働くメンバーたちが楽しそうに働いている姿を見られることも、この仕事のやりがいの1つです」
やりたいことを伝えれば可能な限り応えてくれる。挑戦者を育てる企業文化の魅力
日産自動車で7年間働いてきた田中に、日産自動車の魅力を聞きました。
「若手に多くのチャンスを与えてくれる会社だと思います。やりたいことを伝えれば、それに可能な限り機会を与えてくれたり、成果を出せば認めてもらえたり。挑戦したい人にはうってつけの環境だと思います。
また社風としては『尖った人材』が多く、多種多様な意見が飛び交うところが魅力。自由な発想で発言するメンバーが多いので、どんな意見でも言葉にしやすく、多様な意見に揉まれることでよりよい意見が生まれることもあります」
加えて車両生産技術開発本部の魅力について、田中は2つの事柄を挙げます。
「1つめは車両の実物が見られることです。クルマ好きにはたまりませんし、自分が作っているものを『見たい』『触りたい』という人にはおすすめですね。
2つめは、車全体を見ながら仕事ができること。私は今シャシー担当ですが、外装や内装、ドアにも関わっているので、車両全体を見られるところがおもしろいと思っています」
また車両生産技術開発本部で輝ける人については、こう答えます。
「さまざまな人と臆せずにコミュニケーションが取れる人が活躍できると思います。どうしても人にお願いしたり、相談したり、依頼したりして、周りを動かしていく力が必要になるからです。
ただ、仕事をしていく中でそういった力が身につく部分も大きいですね。私も学生時代は1人で淡々と研究するタイプでしたが、九州工場でがむしゃらに働いているうちに徐々にできるようになってきました」
環境に適応しながらたくましく成長する田中がめざすビジョンとは。
「やはりまた海外で働きたいなという気持ちがあります。直近ですと今私が取り組んでいるプロジェクトをアメリカでも立ち上げる予定があるので、また一緒に仕事がしたいです。
さらに今後はアメリカ以外の拠点にも足を伸ばし、海外のメンバーにも名前を覚えてもらえるような存在になりたいですね。
また私自身好奇心旺盛なので、違った仕事をしてみたいという思いもあります。たとえば、全工程をまとめて管理する仕事やプロジェクトのスケジュールを管理する仕事、設計の仕事など、さまざまな仕事があるので、ぜひ機会があれば挑戦してみたいですね」
※ 記載内容は2025年7月時点のものです
