全方位的アプローチでアッパーボディ開発に挑む。広い視野が革新的な自動車設計の鍵に
宮地が所属するのは、車体技術開発部 アッパーボディ技術開発グループ。現在、チャージポートリッド(充電ポートリッド)の設計を担当しています。
「アッパーボディとは、ドアやボンネット、フェンダーなど自動車の外観を形成する車体の上部構造のことを指します。とくに私が設計に携わるチャージポートリッドは、車体外側に位置し、給電口を保護する開閉可能なカバーの部分です。
通常は車種ごとに担当が分かれていますが、私は将来的な給電システムの在り方を見据え、チャージポートリッド全体の戦略を策定する役割を担っています」
入社以来、同グループで車体外板部品を担当してきた宮地。プロジェクトの初期から後期段階まで一貫して経験を積んできました。
「入社後、小型SUVのボンネットの設計からスタートしました。これは、エンジンルームを保護すると同時にアクセスを提供する重要な部品です。同時に、フロントフェンダー、つまりタイヤの上部を覆う鉄板部品の設計も担当しました。
自動車開発は通常3〜4年を要する長期プロジェクトです。しかし、私は幸運にも入社後すぐプロジェクトの初期フェーズに参画することができ、構想段階から実際の製造まで、開発プロセス全体に携わる機会を得て、包括的な経験を積むことができました」
お客さまが直接目にし、実際に触れる部品の設計に携わることにやりがいを感じていると話す宮地。仕事をする上で、全体的な視点を持つことを大切にしてきました。
「私たちは部品設計を担当していますが、個別の部品に特化することで専門性が高まる一方、視野が狭くなるリスクもあります。日産自動車が提供しているのは単なる部品ではなく、完成車です。常に『車として考える』ことを心がけてきました。
最終的にお客さまに届ける製品が自動車である以上、自分の仕事がどのような価値につながるかを常に考えなくてはなりません。広い視野を持ち続けることが、革新的で魅力的な自動車設計につながると信じています」
GCPが開くキャリアの新たな地平。グローバルを舞台に育む自主性とリーダーシップ
大学院で機械工学を専攻し、機械力学や材料力学など四力学の素地を身につけた宮地。自動車業界の中でも日産自動車を選んだのは、グローバルな可能性に惹かれたからでした。
「エンジニアとしてものづくりに携わる道を模索する中で、自分にとって身近な選択肢だったのが自動車業界でした。就職活動中、完成車メーカーから大手サプライヤーまで、さまざまな企業のインターンシップに参加しましたが、中でも日産自動車の商品企画部によるセッションがもっとも印象的でした。
その時のセッションは当社のグローバルな企業文化を如実に反映するもので、全編が英語。参加者の多くがスピーカーの話す冗談に笑いながら真剣に耳を傾ける中、私は内容の大半を理解することができませんでした。
それまで想像すらしていなかった国際的なビジネス環境を目の当たりにして強い憧れを抱くと同時に、その場に居合わせたほかの学生たちに遅れを取りたくないという競争心が私のモチベーションに火をつけ、日産自動車にチャレンジする決意を固めました」
入社後、宮地にとって転機が訪れたのは6年目のこと。Global Challenge Program(以下、GCP)を通じて、念願だった長期海外出張への切符を手にしました。
「GCPは、グローバルに活躍するリーダーとして欠かせないスキルや経験の獲得をめざすもので、若手社員が海外事業所に長期出張し、難易度の高いタスクに挑戦する選抜プログラムです。私はインターンシップ時代にこのプログラムの存在を知り、それ以来、参加を強く希望していました。
GCPの選考プロセスでは、まずTOEICスコアなど客観的な基準を満たす必要があります。小論文審査では明確な目的意識が問われ、面接を通過後、提示されたプロジェクトの中から希望するものに応募するというのが大まかな流れです」
宮地が参加したのは北米でのプロジェクト。現地でのアクションプランを自ら策定し、フロントラインで貴重な経験を積みました。
「私が滞在したのはミシガン州ファーミントンヒルズにあるテクニカルセンターですが、多様な経験をしたいと考えていたため、ここを拠点として積極的に他地域も訪問しました。電気自動車の導入が進んでいるロサンゼルスやサンフランシスコ、シカゴとその周辺地域、日産自動車のテストコースがあるアリゾナ州のほか、新規サプライヤーの開拓を目的として五大湖周辺を巡回し、カナダやメキシコにまで足を延ばしています。
GCPの特徴は、詳細な計画立案から実行まですべて自己主導で行える点です。サプライヤーの視察やお客さまの使用実態調査といった大枠のみが提示されており、安全性が確保され、予算の範囲内である限りにおいて、具体的な活動内容を自由に決定することができました。
たとえば、カリフォルニアでの現地消費者への直接インタビューや、実際の充電体験など、すべての活動を自ら企画し、現地関係者との調整も独自に敢行。こうして自主性を発揮することも、プログラムの教育的側面として位置づけられています」
言語の壁を越えて。現地での経験を通じて手にした成果が大きな自信に
約3カ月間にわたって北米に滞在した宮地。現地でしか得られない貴重な経験を通じて、多くの学びを得ました。
「日本での想定や基準とは異なり、北米のユーザーは車両をより過酷に、時には私たちの想定を超えるような方法で使用しているケースがあることを知れたことはとても意義あることでした。日本では修理や廃車の対象となるような状態の車両でも、北米では日常的に使用されています。
『お客さまがこのように使用することはないだろう』という従来の前提が覆され、より現状に沿った使用シナリオを想定する必要性を認識しました。お客さまの車両の使用実態に関する認識を、設計思想に正しく反映できるようになったと感じています。
さらに、サプライヤーと直接的に交流できたことも非常に有益でした。対面でのコミュニケーションを通じて、オンライン会議ではカバーしきれない深い技術的議論ができたことで、実際に顔を合わせることが緊密な関係性を構築し、より実質的で生産的な対話が可能になると実感しています」
出張中、時には宮地が単独で現地のサプライヤーを訪問する場面も。言語の壁に直面しながらも、宮地は確かな成果を上げ、大きな手ごたえを得ました。
「サプライヤーの複数のスタッフに対して私が日本人ひとりで対応するような状況もありましたが、いかなる場面でも結果を出すことが求められます。図解を使って視覚的に説明したり、相手の話す内容が理解できない場合は率直に説明の反復を求めたりと、毎日が挑戦の連続でした。
私に課せられたミッションは、候補サプライヤーまとめとお客さまの使用実態調査でしたが、前者については、品質管理や購買部門も巻き込んだ多角的な議論を展開し、当初の期待を上回る成果を達成できたと自負しています。
後者についても、複数の部門のメンバーと対話と議論を重ねることで多様な意見を集約し、『ワンボイス化』することに成功しました。自ら立案した計画を最後まで遂行し、具体的な成果として結実させた経験は、大きな自信につながっています」
一方、異文化との接触は、宮地にとって仕事との向き合い方にも大きな変化をもたらしました。
「北米のビジネス環境では、論理的整合性に欠ける提案や説明に対して、『理解できない』と率直に反応することが一般的です。事前準備により多くの時間を割くようになり、自身の考えや提案を論理的かつ体系的に説明するスキルが身につきました。
さらに、帰国後はすべてのタスクの目的をより明確化するよう心がけるようになりました。たとえば会議に参加する際、単なる情報交換に終始しないよう、具体的なアクションにつなげることを常に意識するようになりました」
実力主義と学び合う文化が導く未来。世界を舞台に活躍するグローバル人材をめざして
日産自動車の組織風土、とりわけグローバルな活躍の機会を存分に享受してきた宮地。当社で働く魅力を次のように語ります。
「年功序列のような伝統的な制度に縛られることなく、実力主義に基づいた公正な評価システムがあることが、日産自動車の最大の魅力です。
また、アッパーボディ技術開発グループには、共に学び教え合う文化が根づいています。数年前の組織再編でそれまで車種別に分かれていた開発部隊が統合され、さまざまな専門知識を持つベテラン技術者がひとつの組織に集結しました。
この再編により、組織内の知識の集約と共有が促進されただけでなく、若手エンジニアにとって、多様な経験を持つロールモデルとなりうる先輩技術者の数が大幅に増加しています。同時に、若手育成に対する組織的な取り組みがさらに強化されました。個人の成長を重視するエンジニアにとって、理想的な環境だと感じています」
宮地のグローバル人材としてのキャリアはまだ始まったばかり。技術者として、またビジネスパーソンとして描く明確な将来像があります。
「北米市場での経験を通じて、より多くのお客さまに訴求力のある自動車を作りたいという意志を強めました。この目標を達成するためには国際的な協働が不可欠です。今回の出張を通じて構築した米国やメキシコの同僚らとの関係を基盤に、互いの強みを最大限に活用した車両開発の実現をめざしたいと考えています。
当社では、技術者が長期的に海外赴任するケースが少なくありませんが、そのためには車体部品全体に関する包括的な知識と経験が要求されます。通常、その水準に達するには15〜20年程度のキャリアが必要とされるため、赴任の機会が訪れるのは、多くの場合、30代後半から40代前半です。
現在30歳の私にとって、この基準に到達するまでにはまだ10年近いギャップがあります。現時点では、私のキャリアはまだ十分な深さに達していないと判断される可能性が高いでしょう。いかにして早く海外赴任の機会を獲得するかが私自身の当面の課題。効率的なスキル獲得と経験の蓄積を通じて、自身の価値を積極的に提示していくつもりです」
※ 記載内容は2024年10月時点のものです
