「お客さまの声を第一に」の精神で─報告書を細かく読み解き、現場に情報を届ける
TCSX 品質保証部に所属する川又。品質保証部の中にはいくつかのグループがあり、川又が従事しているのは市場品質改善グループ。リコールやサービスキャンペーンの決定に関わる重要な役割を担っています。
「私たちのグループは、市場の不具合情報を収集し、対策を講じることが主な業務です。チームは車体や安全機能部品を中心に担当しており、日々市場から上がってくる品質報告書を細かく分析し、安全性や法規適合性、そして今後の発生傾向などを読み解いていきます。
そして、その中から安全性に関わるものやお客さまにご迷惑がかかる頻度が高いものなどを抽出し、優先順位をつけてチームの担当者に業務指示しています」
川又は課長補佐の立場として、チームメンバーと円滑なコミュニケーションをとりながら、効率的な業務遂行を心がけています。
「チームの風通しをよくすることを心がけ、会議室に籠もるのではなく、立ち話的に気軽に相談できる雰囲気づくりを意識しています。これにより、頻繁にコミュニケーションを取ることができ、チーム内の連携がスムーズになっています」
また、ものづくり部門(設計部門、生産部門)とも密接に連携を取ることを欠かしません。
「まず、販売会社から不具合部品を回収してわれわれが目視で確認します。しかし、内部の問題など目視ではわからないこともあるので、ものづくり部門、或いはサプライヤーに詳細調査を依頼することもあります。その過程で、たとえばCTスキャンを使って内部の破壊状況を確認したり、実際の車両に部品を取り付けて再現確認をしたり。サポートできることがあれば積極的に行います」
川又が仕事をする上で最も大切にしていることは、ものづくりの現場が必要とする情報を正確に提供すること。
「ある部品が壊れて交換された場合、その部品の調査だけでは解決できないこともあります。そういった時には、どういう状態で交換すれば調査や解決まで進むかをものづくり部門と一緒に話し合い、必要に応じて複数の部品をセットで回収するなどしています。
皆お客さまのクルマを早く直したいという気持ちが強いことから時にはものづくり部門、特に出身部署である設計部門に厳しい指摘をすることも。
或いは、難しい判断を迫られることもあります。しかし、自分がもしクルマを運転していてその不具合に遭遇したらどう思うかと常に考え、『お客さまの声を第一に』という信念をもってものづくり部門にも問題の重要性を理解してもらうように働きかけていますし、自分自身で不具合を読み解くことで説得力が増し、素早い対策立案に繋がっていると思います」
好きを仕事に。バランスの良い日産車に惹かれて転職、希望のサスペンション設計に従事
学生時代から自動車が好きだった川又。大学では機械工学を専攻し、サーキットに通ったりクルマをカスタムしたりするなどクルマに親しんでいました。
「田舎で育ったこともあり、クルマは身近な存在でした。サーキットに行ったり、違反にならない範囲でサスペンションやバネ、ショックアブソーバーの交換、ロールケージの取り付けなどを行ったりして楽しんでいましたね」
クルマ中心の生活を送っていた川又ですが、卒業後、就職先として選んだのは自動車メーカーではなく空調機器メーカーでした。
「当時は趣味を仕事にすると嫌いになってしまうのではないかと思い、自動車メーカーへの就職は考えていませんでした。それくらいクルマが好きだったんです」
しかし空調機器メーカーで働くなかで、しだいに気持ちは変わっていきました。
「社会人として初めて経験する仕事はとても忙しく、大変で、厳しいものでした。働くということがこんなに大変だとは学生のうちには想像もできていなかったですね。それでも仕事を通して得る新しい知識やプロジェクトをやり切った達成感は何にも代えがたいものがありました。
そうして社会人として経験を積んで今の自分なら“好きなもの”を仕事にしても、『苦労や努力』を前向きに考えることができるのではと考え直すようになりました」
このような想いで自動車メーカーへの転職を考えるようになった川又。数ある自動車メーカーの中から心惹かれたのは日産自動車でした。その理由として、「日産車のバランスの良さ」を挙げます。
「とくに友人が所有していた『P10(プリメーラ)』に乗った経験が大きかったですね。走りも乗り心地も良く、燃費も悪くなかった。当時、こんな良いセダンがあるのかと驚きましたね。他社と比べてもバランスが良く、日産自動車はおもしろいクルマをつくっているという印象があったんです」
空調機器メーカーから、未経験の自動車メーカーに転職することに戸惑いはなかったと言います。
「不安がなかったと言えば嘘になります。でも、自分の好きな分野に進めるという気持ちの方が強かったです。これまでに得た経験と粘り強さ、そして何よりも“クルマが好き”という気持ちがあれば、乗り切れるだろうという自信もありました」
こうして日産自動車に入社した川又。希望したのはサスペンションの設計でした。
「サーキットで走行を楽しむほどクルマが好きで、とくに直線が速いクルマよりもクイックに曲がるクルマの方が好きでした。サスペンションはカーブの走りや乗り心地を左右する重要な部品だと認識していたので、サスペンションの設計を希望しました」
希望がかなってサスペンションの設計に携わる中で、川又は部品が壊れないことを最優先に考えていたと言います。
「とくに印象に残っているのは、サスペンションの動きに連動して動くブレーキホース。最初に設計した部品でした。この時に先輩から『一つでも部品が壊れたら大変なことになる』と言われたことが強く印象に残り、これ以降、常に安全性を最優先に考えてサスペンションの設計を行うようになりました」
失敗体験を糧に、安全性に関わる部品にはとくに注意を払って、深く考え抜く
20年間サスペンションの設計に携わった後、川又は品質保証の部署に異動します。この異動は新たな挑戦の機会となりました。
「最初は戸惑いもありましたが、新しい分野にチャレンジすることは悪くないと思いました。これまでの設計経験を活かしながら、品質保証という新たな視点で仕事ができるのは魅力的でした」
品質保証の仕事をするうえで、過去の部品設計での経験が大いに役にたっていると川又は言います。
「今でも鮮明に覚えているのは入社から15年ほど経ったころ、新規開発のプラットフォームで、リアサスペンションのブレーキホースを固定するブラケットが外れてしまう問題が発生しました。ブレーキホースが破断しブレーキ性能へ影響するおそれのある安全に直結する重大な問題で、試作車の走行停止にまで至ったんです。深く考えていれば見抜けたはずの検討を漏らしてしまったことが原因でした。
幸い市場で事故に至るようなことはありませんでしたが、表面的な判断だけでなく、隠れた不具合や根本的な原因を深く考える必要性を改めて痛感しました。この失敗から、安全性に関わる部品にはとくに注意を払うようになりました」
この経験を糧として、現在も部品について多角的に考え抜くことの重要性を若手社員に伝えています。
そして、中堅社員となった今、自身の役割にも変化が訪れています。
「直接手を動かす機会は減りましたが、新人や中途入社の方々の成長をサポートすることを意識するようになりました。とくに、入社1年目から3年目の若手社員に対して、成長を実感できるようなサポートを心がけています。
具体的には、成長を可視化するために独自で業務を細分化して個々人のスキルレベルをマトリックス形式で表すの表を作成しています。できるようになったことをバツから丸、さらには二重丸へと変化させていきます。このビジュアル化された成長の記録が、若手社員の自信につながっているようです」
現在の仕事で川又がやりがいを感じているのは、安全性に直結する重要な部品の対応です。
「以前の開発部門では、異音や見た目の悪さなど比較的軽微な不具合が中心でした。しかし、今は走る、曲がる、止まるという自動車の基本機能に影響を与える不具合に対処することが多くなりました。お客さまへの影響を最小限に抑えるため、迅速な対応と関係者への的確な働きかけを心がけるなど、責任とやりがいを感じています」
不具合を未然に防ぐ──安全性を確保しつつ魅力を追求するバランスで
品質向上に向けた今後の取り組みについて、川又の言葉に熱が入ります。
「不具合を未然に防ぐ取り組みは、私たちの部署で最も重要視している活動の一つです。とくに重要度の高い部品については、不具合が発生した後に再発防止策の検討を徹底的に行っていきます。品質保証部門として、発生した不具合を二度と起こさないための“再発防止活動”に力を入れていきます。
ものづくり設計部門に対しても、起きてしまった不具合を次は絶対に起こさないという意識を持ってもらうよう働きかけています。この再発防止の取り組みは、部署内で共通認識として根付いています」
また、品質向上と新機能開発のバランスについて独自の見解を持っています。
「品質には二つの側面があると考えています。一つは“魅力品質”、つまりお客さまにとっての付加価値や魅力となる品質です。もう一つは“絶対的品質”、つまり安全性や基本機能など絶対に守らなければならない品質です。新機能開発を進める際には、この絶対的品質を決して損なってはいけません。
そのため、安全性を確保しつつ魅力を追求するバランスが重要。日産では品質担保の仕組みを構築し、開発プロセスに組み込んでいます」
この開発における「バランス」について、川又はさらにこう加えます。
「各部門が積極的に意見を出し合い、それをバランス良くまとめ上げていくのが日産自動車の強み。多様な意見を尊重しながら一つに昇華させていく日産自動車の文化が、バランスの取れた自動車づくりにつながっていると思います」
これから品質保証部に必要となる人材について、川又は意外にも「好奇心旺盛な人」と説明します。
「好奇心は不具合の原因を深く追究し、解決策を考える際にとても重要です。『なぜだろう』と考える源になり、解決のプロセスでより多くのアイデアを生み出せるからです。品質保証の仕事では、単に問題を報告するだけでなく、ものづくり部門と協力して解決策を提案できることが理想的です。
好奇心を持って現象の原因を追求し、正確な情報を収集できる人が品質向上に貢献できると信じています。ゆくゆくは品質保証部が豊富な知識で他部門をリードしていけるといいですね」
最後に、今後のビジョンについてこう話を締め括ります。
「現在の業務は不具合が発生した後の対応が中心ですが、今後はIT等も活用しながらいかに早く解決するかを重視していきたいと考えています。迅速な対応により、安全性へのリスクを最小限に抑えることができると確信しているからです。
また、一人では解決できない問題も多いため、チームメンバーのスキルアップにも注力したいと考えています。重要度や緊急性を正しく理解し、チーム全体で効果的に問題解決ができるよう努めていきたいです。これが自分自身の成長にも繋がると思います」
好きを理由に道を選んできた川又。現在においても「クルマが好きなことが仕事を続ける原動力」と語っています。好奇心を味方に、川又は原因追究や課題解決に挑み続け、自動車のさらなる品質向上をめざします。
※ 記載内容は2024年7月時点のものです
