より良い品質改善をめざして、グローバル全体の仕組み整備を推進
上村が所属するのは、TCSXの市場品質改善部。お客さまの声や不具合の報告をもとに調査や分析を実施し、その結果を開発・製造に関わる各部署にフィードバックすることで、さらなる調査や品質改善へとつなげる部署です。現在、上村はそのグローバル市場品質マネジメントグループで主担を務めています。
「品質改善業務の取りまとめ役として、年度ごとの方針や業務計画の策定、その進捗管理を行っています。また、時代の変化に応じて市場品質改善のルールや仕組みを構築し、これを国内外の拠点に展開して定着させることで品質改善業務をサポートしています」
品質改善に当たっては、同じ市場品質改善部内で新車の保証期間中の運用を担う保証グループとも連携してきました。
「お客さまに安心して自動車をご利用いただくために、無償修理を提供する保証期間を設定しています。保証グループから共有される保証修理などに関する情報も、積極的に品質改善に活用しています」
30年間以上にわたるキャリアを通じて、海外駐在を何度も経験してきた上村。品質改善業務において、グローバルで足並みを揃えることの難しさと醍醐味を実感していると言います。
「同じ日産自動車とはいえ、国ごとに文化も働く人の価値観はさまざまです。国が変われば販売の仕組みなども異なるため、日本と同じルールのもとで業務を進めるのは容易ではありません。
一部はローカライズして対応していますが、統一すべきことがあれば、その理由やメリットを根気強く説明し、現地の従業員に理解してもらう必要があります。合意形成を得るのは大変ですが、理解し合えたときには大きな喜びを感じます」
また、品質改善業務そのものにも大きな意義とやりがいを感じてきました。
「私たちは日産自動車の中でももっともお客さまから近いポジションにいる技術者であり、市場の代弁者であると思っています。日本のみならずグローバルレベルで品質改善の向上をサポートできていることは大きなやりがいです。
お客さまから届けられるご不満を前向きにまた誠実に受け止め、日産自動車にとってプラスに変えていくことが私たちの使命です。市場の声を技術的な言語に置き換え、関係各所へと伝える、日産自動車の製品改善サイクルの重要な部分を担ってきました。お客さまへの確かな貢献を実感しています」
海外出向を経験し異国間の架け橋に。日本人だからこそ気づき、伝えられる情報がある
上村が日産自動車に入社したのは1992年。当時から日産自動車のファンだったと言います。
「シルビア、スカイライン、そしてGT-Rといった若者から高く支持される自動車を次々に世に出す当社日産自動車の開発力に強く惹かれ、憧れを抱いていました。留学経験はありませんでしたが、グローバルビジネスに携われると感じたことも、入社を希望した理由のひとつです」
念願かなって入社を果たし、海外サービス部品質改善グループに配属された上村。実験部での約6カ月間にわたる実習を受けて業務の基礎を身につけ、入社して3年目を迎えるころには中近東やオセアニア担当として独り立ちしていきました。
「現地のディーラーを訪問し不具合調査を行う海外出張の機会が増えたことで、品質改善の流れや仕組みを深く理解できました。最初の海外出張先となったのは、サウジアラビアのジェッダ。当時、街中を歩いていて日本人に会うことはまずありませんでした(※1)。
文化や環境がまったく異なるサウジアラビアでもにおいてビジネスを成立させ、好調な売上を維持している現地の様子を目の当たりにし、日産自動車のグローバル企業としての存在感を実感したものでした」
もともと海外志向の強かった上村が、初めて本格的な海外出向を経験したのは2004年のこと。メキシコ日産TCSに、メキシコ&中南米市場品質改善担当として赴任しました。
仕事内容は日本にいたときと同じでしたが、メキシコ、中米、カリブ、ブラジルを除く南米と広範なエリアを担当。とくに印象に残っていることがあります。
「中南米には標高2000〜4000mの高地に位置する大都市があります。これらの地域では、空気密度の低さが原因でエンジンの不具合が発生することがあります(※2:日本国内で平均標高がもっとも高いのは長野県で1,132m)。
もちろん、こうした地域特有の条件は十分に考慮されていますが、新型エンジンを開発する際など、適切なセッティングが難しく、ときに不具合が生じることがあります。現地調査を行い、状況や使用状況など不具合の詳細を把握し、これを正確に伝えることで改善につなげていきました」
一方、現地の声を本国へと届ける品質改善の醍醐味を味わう中で、日本人としてこの業務を担う意義を深く実感したと振り返ります。
「現地の人々にとって自国特有の情報は日常的なものですから、それを報告する必要がないと感じることもあるでしょう。気候や地形・使い方がまったく異なる日本人としての視点があるからこそ、ニュートラルな目線で状況を捉え、必要な情報を見逃さずに伝えることができたと思います」
また、現地のメンバーとやり取りを重ねる中で、相手の文化や国民性を理解することの重要性に気づかされたと言います。
「たとえば、日本では、クルマに対し、安全性や燃費の良さ・環境への配慮を求める傾向にあります。自分が気になることを相手に伝えても『なぜそこまで細かいことにこだわるのか』と言われるなど、日本で当たり前だと思っていたやり方だとうまくいきませんでした。
そのためとくに意識したのは、彼ら・彼女らの考え方を受け入れ、評価すること。そうやって相手の目線に立ったコミュニケーションを通じて関係性を構築していくことの大切さを学びました」
メキシコでの4年間の出向経験を経て、2008年にTCSX市場品質改善部に帰任した上村。現地での勤務を通じて相手の立場や考え方を理解する力を身につけたことは、その後も引き続き海外のTCSメンバーをサポートする上で大いに役立っています。
再び海外へ。組織の立ち上げや目標達成に向けて組織をリードするポジションを経験
2013年に再び海外出向を経験している上村。日産アジアパシフィックTCS GMで、アセアン、オセアニアTCSの立ち上げメンバーとして業務プロセスの構築に携わりました。
「タイやインドネシア、フィリピン、オーストラリアにはTCSの組織が存在していて、アセアン、オセアニアTCSはそれらを統括する新しい組織です。各拠点のメンバーからの厳しい見方がある中、立ち上げを進めるのは簡単ではありませんでした。
新たに加入したメンバーへの不満の声が上がったときは、以前から各拠点のメンバーと交流があった私が代わって対応し、根気強く新設組織の必要性を説いたことも。常にお互いを尊重し合う姿勢を保ちながら業務を進めていきました」
地域を統括する組織が立ち上がった結果、開発部門とのコミュニケーションがスムーズになるだけでなく、思わぬ副産物もありました。
「以前は各拠点が個別に開発部門に改善要望を伝えていましたが、窓口を一元化することで、市場ごとの特性がより明確に見えるようになりました。開発の方向性を定めやすくなるなど、業務プロセスが劇的に改善されています」
2014年からは、タイ日産TCSのTCS GMとしてタイ市場やタイ生産車のTCS業務全般を担当。メキシコ時代と同様、不具合調査のためにディーラーを訪れたり、ディーラー会議に参加したりする機会が多く、市場の声や顧客を良く知るディーラーと連携し、そこで得た情報を社内へとフィードバックしていくことの重要性をあらためて実感したと言います。
そして2019年からは以前出張で訪れたサウジアラビア日産TCSにGMとして出向しています。
「サウジアラビアのビジネスの大幅な成長予測があったことを受け、私の出向が決まりました。初めて出張で訪れたころと比べると、サウジアラビアはずいぶんオープンな国に雰囲気が変わっていました。また、メキシコ、タイで相手の文化や国民性を尊重する姿勢を学んだおかげで、仕事はもちろん現地での生活も楽しむことができました(※3)。
折悪しくコロナ禍に見舞われ、当初想定していた事業成長は果たせませんでしたが、品質改善のための仕組みを構築することができました。相応の成果はあったと思っています」
グローバルが同じ方向を向いて、より高い水準の品質改善を実現するために
サウジアラビアから帰任した後、2022年にはTCSX市場品質改善部 ボディグループの、2023年からはグローバル市場品質マネジメントグループの主担を務めてきた上村。海外と日本それぞれで働くやりがいについて次のように述べます。
「海外で仕事をしていると、多様な価値観を持つ方と接する機会が多く、とても刺激的でさまざまな学びがありました。
一方、グローバルの本社機能を担う国内の重要なポジションに就くことにも大きなやりがいを感じています。共通理解を得やすいルールや運用しやすい仕組みづくりを通じ、グローバルが同じ方向に向かって前進するための基盤を構築できることが、現在の仕事の醍醐味です」
入社以来、品質改善部門一筋でキャリアを築いてきた上村。市場と開発・製造部門のあいだに立つ架け橋としての役割に、その存在意義を感じていると言います。
「カスタマーセントリックを掲げる日産自動車において、私たちは非常に重要な役割を果たしています。お客さまの意見を理解し、現場での不具合の詳細を正しく把握した上で技術的な言葉へと変換し、開発・製造部門に正確にわかりやすく伝えることが、真の意味での品質改善につながるからです。
グローバルな視点を持ち、より高い水準の品質改善を実現する組織や仕組みをつくり、組織とお客さまに貢献できる存在でありたいと願っています」
自分自身と同じように日産自動車を愛する世界中の人々が、安心して同社の自動車を運転できるように。豊富な海外経験を活かし、上村はこれからも妥協のない品質改善を追求し続けます。
※ 記載内容は2023年12月時点のものです
【参考資料】
※1 外務省:海外渡航・滞在 統計表一覧(過去のデータ)
国立国会図書館のインターネット資料収集保存事業(Web Archiving Project:WARP)ページ
海外在留邦人数統計 (1997年度版)
※2 国土交通省:国土地理院都道府県別平均標高(日本)整飾画像
※3 外務省:国・地域
日・サウジアラビア首脳会談(令和5年7月16日)
