その先のお客さま満足度向上をめざして──徹底的なヒアリングでシステムを開発
トータルカスタマーサティスファクション本部(以後、TCSX)は、日産自動車株式会社(以後、日産自動車)の品質保証を手がけるセクションです。市場に出た自動車の不具合を減らし、顧客満足度を高めることがミッション。角田はその企画・監理部で品質領域のグローバルシステムの開発に従事しています。
角田 「企画・監理部のメンバーは約40人。TCSXの中期計画の策定や全社的な品質KPIの設定など、部門全体を統括・サポートする役割を担っています。その中でも私が所属するシステム企画グループのミッションは、品質領域のグローバルシステムの開発やDX推進、全社的なデジタル戦略の立案。
TCSXの各部署はもちろん、R&D(研究開発部門) などの他部門や海外のTCSチーム、ITベンダーなどさまざまなステークホルダーと連携しながら業務を遂行しています」
現在、角田は社内の品質領域に関わるメインシステムの責任者を務めています。
角田 「私の役割は、システムオーナーとして各部の業務課題や困り事に対し、システム開発やデジタルツールなどを活用して最適なアプローチで解決することです 。
システム開発の際はまずシステム企画を行いますが、現状の業務やプロセスを適切に理解しないと根本的な課題解決にはつながらないため、ユーザーがどういう業務をしているか、どこが課題になっているかをクリアにすべく、徹底的にヒアリングすることから始めます。
またヒアリングだけでなく、実際にユーザー目線に立ってユースケースを自ら再現検証したり、社内のBIツール(データを分析および可視化するためのツール)を活用して定量的にデータを収集&分析して仮説検証したりすることで、課題の精度を高めて効率的にシステム企画を進めるようにしています」
仕事をする上で大切にしていることは、最適な改善案を提供すること。角田はこう続けます。
角田 「たとえばユーザーからシステム開発を依頼されたときは、上述したようにまずシステム開発に至る背景や理由を明確にします。そうした視点で依頼部署の課題や業務内容をヒアリングしていくと、システム開発をしなくても、そもそもの業務プロセスを変えた方がよかったり、または既存システムの機能で代替できたり、RPAを導入することで解決できるケースがあったりします。
WhatとHowを区別すること、つまり何でもシステム開発するのではなく、システム開発はあくまで手段の1つであり、それが目的にならないように要件を整理するよう心がけています。そうすることでさまざまなユーザー課題を低コストかつ迅速に解決することができ、その分の工数をより大きなプロジェクトに還元できるので、お互いに大きなメリットが生まれますよね」
目的を明確にして、その部署にとってベストな改善案を検討するという角田。さらに、仕事で大切にしていることがもうひとつあると言います。
角田 「仕事をするときは、エンドユーザーであるお客さまの存在を常に意識するよう努めています。私の担当は社内システムの開発なので、お客さまと直接関わる機会はありませんが、私が開発するシステムで各部署の品質分析業務がより改善されれば、市場の不具合や不満の件数が減少し、結果的にクルマの品質も向上すると思います 。
『間接的であっても、自分のしている仕事がお客さまの満足度向上につながる』といつもイメージしながら仕事をするようにしています」
もっとユーザーに近いところで仕事がしたい。グローバルな環境に惹かれ、日産へ
学生時代、情報工学科でプログラミングや統計学、画像処理などを学んだ角田。新卒で入社したのは、大手SIer企業でした。
角田 「『ITで課題解決をしたい』という想いで就職先を選び、SEとしてシステム開発や保守・運用に約2年間従事しました。ひと通り仕事を覚えたところで、よりユーザーに近い上流フェーズの仕事がしたいと思い、転職を考えるようになりました」
2020年に角田は日産自動車に入社。グローバルに働けるところに惹かれたと言います。
角田 「もともと海外で働きたいというキャリアビジョンが強かったのですが、日産自動車にはさまざまな国の方と働ける環境があり、とてもグローバルな企業であると感じています。
たとえば、私が担当するシステムは、ヨーロッパやアメリカ、アジアや南米など、全海外拠点でも使用するグローバルシステムなので、要望や問い合わせが海外から頻繁に寄せられ、英語でコミュニケーションする毎日です。また、海外TCS への出張や転勤の機会が多くありますし、同じフロアのすぐ隣にはINFINITIのグローバル本部もあり海外出身の人がたくさん働いているため、日頃からグローバルな環境を身近で感じています。
関われるのは海外だけではありません。このインタビューの直前もR&Dの方々と打ち合わせしたばかりですし、商品企画やR&D 、海外TCSなど、他の部門の方と横断的に関わりながら働けるところにも、前職との違いを感じています」
思い描いた通りのキャリアが築けているという角田ですが、入社当時は苦労も多かったと言います。
角田 「新たな分野の専門知識を習得するのは大変でした。最初の壁は、自動車の専門用語。膨大な車種のバリエーション、車種ごとのスペックやクルマの構成部品などを習得するのに苦労し、先輩や上司にひたすら聞いたり、自分で調べたり勉強したりして基礎知識を身につけたのを覚えています。一般的な専門用語に追加して、社内特有の3レターの専門用語も多く、これらを覚えるのも大変でした。
また、品質領域のシステム構成を理解するのもひと苦労でした。私の担当システムは補償の査定システムや工場の生産システム、海外特有のローカルシステムなど、さまざまなシステムと複雑に絡み合っていて、入社したころはよく混乱したものです。各システムの用途や利用ユーザー、システムの構造や連携されるデータなど、気になることやわからないことは直接担当者に聞いたり自分で実際にシステムを使ってみたりして肌で理解するよう努めました」
入社当時、各システムの解説書や業務手順書が十分に整備されていないことを不便に感じた角田は自らそれらを作成。これが意外な展開を呼ぶことになります。
角田 「自分でも学んだことを忘れないようにと、誰が見ても分かるようゼロから体系的にまとめていきました。チーム内向けの資料として始めたことでしたが、上司の目にとまって全社のeラーニング教材として正式に採用されたんです。自分の学びが他の人の役に立てていることは、とても喜ばしいことだと思っています」
システム改修に対する反響が、ユーザーの声を積極的にピックアップするきっかけに
努力が報われたことで、ますますモチベーションが高まったという角田。仕事に大きな手ごたえを感じたこんな経験もありました。
角田 「2年ほど前、私の担当する品質分析システムで『不具合発生情報を出力するのに時間がかかりすぎて業務が回らない』という指摘を受けたことがあったんです。クルマの不具合発生情報の分析結果は役員報告にも使われ、品質に関わる全部署に取って非常に重要な機能であり、早急にシステムを改修する必要があると考えました。
私が主体となってプロジェクトチームを結成し、内部の処理ロジックを抜本的に変更する改修を行った結果、わずか数秒で分析結果を出力できるようになり、大幅な改善を達成することができました。
その後、国内外の各拠点から、『とても使いやすくなった。ありがとう』と感謝の声がたくさん届いたんです。これほど多くの人に貢献できたと実感できたのは初めてのこと。本当にやってよかったと感じました」
このプロジェクトを境に、角田はユーザーの声を積極的に調査するようになったと言います。
角田 「たくさんの方から感謝されたということは、裏を返せば、困っている方が多くいたということ。それ以来、システムをより良いものに改善すべくユーザーの声をこちらから積極的にピックアップしに行くようになりました」
影響範囲が広く、大きな責任が伴うポジションに立つ角田。やりがいを感じながら業務に取り組めていると話します。
角田 「私が主に担当しているのは、システム開発の中でも最上流の企画フェーズ、各部の課題やシステムユーザーの困りごとを徹底的にヒアリングし、どういうシステムをつくればいいかを検討するポジション。まさに転職時に希望していた業務に従事できていて、確かな充実感を得ています」
大変革期を迎える自動車業界。ITの知見があるデジタル人財にこそ来ていただきたい
今後はさらに大規模なプロジェクトのシステム開発を担当したいと意欲を見せる角田。自らの将来をこう展望します。
角田 「いずれはより大規模なシステムの企画~リリースまでを一貫して担当し、成功させたいというビジョンがあります。そうやって個人としてステップアップすることが、会社への貢献にもつながればうれしいですね。
そのためにも、さらに知識やスキルに磨きをかけ、品質領域にとどまらず、幅広くシステムとビジネス両方に精通したプロとして信頼される存在になりたいです。絶対的な信頼を集める先輩がチームにいるのですが、その人のように『この人に聞けば大丈夫』と言われるような人財になることがいまの目標です」
目標に前向きなのは、日産自動車だからこそ。同社にはシステム開発者にとって魅力的な環境があると角田は話します。
角田 「自動車業界におけるシステム開発は、商品企画から始まりR&Dや生産管理、品質保証といった各部門、海外拠点やITベンダーなど多種多様なステークホルダーが関わっており、開発規模もグローバルと非常にスケールが大きいです。このような大規模システムのプロジェクトを主導できるということは、それだけ成長できるチャンスが豊富にあるということ。開発者には願ってもない環境だと思います」
100年に一度の大変革期を迎えている自動車業界。日産自動車が新たなフェーズへと向かうにあたって、求める人財について角田は次のように話します。
角田 「自動車業界といえば、以前は機械系、電気系のエンジニアが中心でしたが、現在はIT人財の需要も高まっています。 “MaaS(Mobility as a Service)”や“CASE——Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動化)、Shared & Services (シェアリング)、Electric(電動化)”と呼ばれる新しい領域の技術革新が進み、自動車自体もネットワークとつながり、自動運転や電動化の方向へと進んでいます。
今はまさに、そのCASEへと移行する変革期。システムやデジタルの知見があるIT人財の方々にも積極的に来ていただきたいと思っています」
システム開発者の人知れない努力が、世界で愛される日産車の高い品質を陰で支えてきました。あくなき探求心を強みに、徹底したヒアリングやニーズ発掘で、角田はこれからも業務課題に挑み続けます。
※ 記載内容は2023年5月時点のものです

