目標は「失点をなくすこと」。試行錯誤を繰り返し不具合の原因を解明
T.W.が所属しているマテリアル事業部は、「特殊鋼」という金属材料を作っている事業部です。
「特殊鋼は、たとえば自動車の部品づくりに使われる金型を削るドリルなど、ものづくりのための道具になるような素材です。
私がメインで扱っているのは、一般的に『ハイス(高速度鋼)』と呼ばれている素材。ドリルなどの切削工具に使われるもので、ホームセンターのドリルコーナーに行くとパッケージになって並んでいますね。他の金属を削るために、いろいろな混ぜ物を入れて硬くしているのが特徴です」
いくつかある製造工程のうち、T.W.の部署は最初のステップである「溶解」と、その直後の「鍛造」を担当。指示通り手を動かすというよりも、技術改善をしたり、新しい製造方法を生み出すエンジニアとして立ち回っています。
「ハイスは通常の鉄と比較すると、作るのにかなり技術が必要で、難しい材料だと言われています。実際、現場で作っていても、結構な頻度でトラブルが発生するんです。不二越は歴史のある会社で、現在私がいる工場も始まってそろそろ90年ほどになりますが、以前から作っていた素材であっても製造工程でトラブルは多々発生するものです。なぜうまくいかないのか原因が未解明なことも多く、不具合を解決しようと試行錯誤を重ねています」
不具合があると売上に響くのはもちろん、買っていただくはずだったお客さまにも迷惑がかかります。営業がてんやわんやになるなど、精神的にも負担をかけてしまいます。そのため「可能な限り失点をなくすこと」を目標に、技術の見直しをしていくのです。
「不具合の改善というと、地味だし少し格好悪く聞こえるかもしれませんが、ものづくりの世界では当たり前のこと。99.9%の技術者が常に不具合に悩まされながらものづくりをしています。だから不具合というもの自体は悪いことではないのですが、やはりできるだけ少なくしていきたいですよね」
トラブル対応役として期待され入社。役割をまっとうできている実感がある
入社前も同業の会社で十数年間の経験を持っていたT.W.。家族で富山県にUターンしようと考えたことが、不二越に入るきっかけになりました。
「私も妻も、実家は石川県にあります。学生時代に富山県で出会って結婚しました。いったん北陸を離れていたのですが、子どもが生まれて成長してきた時に、妻が体調を崩してしまって……。当時の仕事環境だと周囲には頼れる親戚がおらず不安だったので、北陸に戻ろうかと考え始めました。 仕事でもちょうどやるべきことをやりきっていたタイミングだったので、北陸の企業に転職しようかな、と。
そんな時に不二越の求人を見つけたんです。これまで身につけてきた技術を活かせそうということで、奮起して富山に戻ってきたかたちです」
不二越の面接では、ものづくりの不具合を迅速に解消する必要があり、トラブルを解決できる人を探している旨を伝えられました。
「営業職の方がいくら仕事を取ってきても、その通りに製品を出せなくて困っている……と赤裸々にお話ししてくれたのが印象的でした。最初にその話を聞いた時は、ハイスで有名な不二越が、そんな悩みを抱えているというのが意外でしたね。でも実際、工場にいるエンジニアは減っていて、技術がわかる人もいなくなってきている。そういう話を聞くうちに、自分のスキルがここでとても役立つかもしれないと感じられたんです」
こうして2023年に入社。培ってきた技術を活用し、品質不良の改善にあたっています。
「何か問題があった時は『今こんなことが起きています。どうにかならないでしょうか』と聞かれたり、『実は前々からこういうトラブルがあって……』と相談されたりします。立ち話や現場で実情を聞くところから業務がスタートしていくんです。不具合の改善について知見が少ない環境に入った分、自分がやってきたことをそのまま活かせている実感がありますね」
迷宮入りしていた不具合の原因を、データを駆使して割り出した
入社から1年ほどの間にも、T.W.には忘れられないエピソードがあります。
「とあるハイスの慢性的な不良を解決できたことでしょうか。私が入ってきた当初は、酷い時には鍛造したものの半分くらいが駄目になってしまうという状況でした。表面や見た目はいいけれど、切ってみたら中身が割れていて商品として使い物にならず、捨てざるを得ないという事態が慢性的に起こっていたのです。早いうちに改善しないと、さらに大きな損失になってしまいますよね。『普通に作っているのに、なぜ割れるのか』と、みんな頭を抱えていました。
そこで私の経験を活用。おそらく溶解のフェーズで出る不具合ではなさそうだと感じ、鍛造工程の見直しを実施しました」
最初にT.W.は「鍛造工程に何か変化があるのではないか」と周囲に聞いてみました。しかし、「前から同じ方法でやっているし、昔は不具合が出なかった。鍛造が悪いわけではないと思う」とのこと。それでもデータを取って、不具合の原因を探ったところ、傾向が見えてきたんです。
「これまでに身につけてきたコンピュータシミュレーションのスキルを活かし、鍛造の進み方をデータで見ていきました。鋼塊1本1本のログを取って分析してみたところ、割れてしまうパターンと、そうではないパターンが明確に把握できたんです。結局原因は、鍛造中の中身の温度。最初の加熱の段階で焼く温度を少し変えればいいのではと考え設定温度を変えてみたところ、不具合はその後まったく出なくなりました」
100個作ったら100個全部が「合格」で出ていくように。「また駄目になるのではないか」とびくびくして製造していたところを一気に改善できたのです。これはT.W.にとって、大きな貢献実感があった経験でした。
「他にも現象としては近い不具合があり、数種類にわたっての要因を突き止めることができました。こうして不二越の中で知見を活用できているのがうれしいですね。もちろん専門的な話なので相手を選びますが、嫌がられない範囲で考え方やアイデアをシェアするようにしています」
いきいきと活躍する日々。転職してきたことで、プライベートにおいてもプラスの変化がありました。
「妻の体調も快方に向かいました。また、子どもにとってもおじいちゃんおばあちゃんの家が近いので、会いに行こうと思えばすぐに行ける距離。家族にとっても良い選択ができたなと思います」
中途入社2年目だが、何年も一緒にいたかのような居心地のいい環境
そんなT.W.がめざす、今後のビジョンは?
「まずは工場として不良を減らすことが最大の目標です。現状、他社では導入できている最新技術などを導入していくべき箇所が明らかになってきています。現場の負荷が高くなってしまい若い人にプレッシャーがかかっている側面もあるので、設備や技術を外部の力も借りて導入するなど、できることを早急に進めようとしています。当社はもともと独自の強みを持っている会社ですから、地道な積み重ねをして、競合にも遜色ないものづくりを今後も展開していきたいです」
電子化、ペーパーレス化などの業務改善に取り組む必要も感じています。最新のIoTやDXなども絡めながら、最先端の知見とともに技術を磨いていく所存と話します。
「お客さまに『不二越に頼めば、難しいことでもやってもらえる』と確信していただけるよう、これからも進んでいきたいですね。当社には、専門性を持ち合おうというカルチャーがあります。悪い意味での衝突はほとんどなく、建設的な衝突を重ねる文化です。一致団結しながらいいものをつくっていきたいと思います」
中途でも新卒でも、入ったらみんな分け隔てなく付き合っていく文化。心地いい場で成長し、キャリアを描くことができます。
「マテリアル事業部の製造部門がひとつの大きめのフロアにいるので、風通しがいいのが特長です。皆さん、かなりフレンドリーに対応してくれるんですよ。私は入ってまだ1年くらいですが、おかげで、まるでずっと前からいるかのような気分で働けています。入社して1~2カ月目の時点ですでにそう感じていたので、会社自体が、すごく温かい場所なんだと思います。
持っている技術を活かしてさらに仕事を進めたい方には、最適な環境のはず。
マテリアルの面で独自の強みを持っていて、かつ雰囲気もいい。長く働きやすい会社だなと感じます。自分の力を発揮してみたいという方は、ぜひ仲間になってください」
中途入社ながら、キーパーソンとして大きな貢献をしているT.W.。確かな専門性で、これからの不二越を頼もしく導いていきます。
※ 記載内容は2024年2月時点のものです

