若手時代の挑戦──主体者意識の形成とプロフェッショナル軸の確立
2007年に入社した堀は物流本部に配属され、2年目には生産機械輸出業務で初めて自身の担当顧客を持ちました。
「最初は、お客様から頂く要望・時にはクレームを全部自分が中心となって解決しなければならない事態に不安ばかり感じていました」
しかし、その経験の中で当時の室長から学んだ「圧倒的主体者意識」が、彼女のキャリアの根底にあるといいます。
「就職活動中は、ライフステージが進んだ後のことを考えるより、仕事に打ち込めるであろう若手時代に思い切り任せてもらえる環境の会社がよいと思い、結果的に総合商社を志望しました。入社後、その期待を裏切られることはありませんでした」
2012年からは海外研修員として中国へ赴任し、急成長する中国のE-コマース向け物流倉庫開発にも取り組みました。
「20代から海外勤務の機会を得て、責任ある仕事を任されたことは本当に自分の財産になりました」
2014年に中国から帰国しプロジェクト本部へ着任後、管理職として組織マネジメントも任され、堀は自分なりの仕事の軸を確立していきました。
「20代の頃を思い出すと、とにかく自分の担当業務を無我夢中でやっていました。しかし30代になって管理職ポジションに就くと、どういう組織にしたいか、自身のマネジメントスタイルを言葉にして、部下・同僚に伝えることが極めて重要だと感じるようになりました。
それ以来、『プロフェッショナルな仕事をする』という軸を持って日々励んでいます。現在海外関係会社のCFOとしてチリで勤務していますが、スペイン企業とのジョイントベンチャーで、パートナー企業出身のCEOと2人で経営にあたっており、三井物産からの出向者は私を含めて2人のみです。チリ人・他南米地域の多様な社員にプロとして認めてもらう為には、経営者として、私がここにいることでどんな付加価値が自分に出せるかを常に考えて仕事をしています」
出産と産休・育休を経て──復職後のキャリアと新たな挑戦
堀は、2015年に第一子、2018年に第二子を出産し、それぞれで産休・育休を取得。2019年に復職後は国内再生エネルギー開発に取り組み、初めてプロジェクトマネージャーに任命されました。
復職後も変わらず『プロフェッショナルな仕事をする』という軸で日々業務を遂行してきましたが、特に効率的な仕事の進め方にも気を配るようになりました。
「復職後は育児と仕事の両立の大変さを感じながらも、社会と接点を持てることにも喜びを感じました。自分は仕事が好きなんだな、と改めて思う瞬間もありましたね。
また、子育てをしていると決まった時間に退勤する必要があり、業務時間がどうしても限られてしまうので、仕事を効率的に進めるようになりました。その為には目的・ゴールを明確化することが重要だと学びました」
育児と仕事との両立には困難も多くありましたが、周囲のサポートに支えられました。
「夫のチリ赴任が先に決まりました。家族一緒に暮らしたい思いで、難しいこととは分かりつつも上司に相談しました。ありがたいことに、すぐに皆さんが前向きに考えて下さり、私もチリ赴任の機会を頂くことが出来ました。
夫が先にチリに赴任した時期はいわゆるワンオペ育児で大変でした。本当に余裕がないことが周りに伝わったのか、なんと当時の上司とご家族のご厚意で、私の家まで来て子どもたちのサポートをして下さったこともありました。周囲から溢れるばかりの気遣い、支援が得られる環境に本当に支えられました」
赴任当初は、仕事と家庭の両立に苦労したといいます。
「子どもにとっても国境を越えた引っ越し、環境変化はストレスが大きいです。言語の壁も当然あり、現地の学校に慣れるまでは非常に大変でした。日本にいた時には考えられなかったですが、チリにいながらオンラインで日本の育児講座を受け、子育てについて考え直す時期もありました。
子どもとの時間をとにかく大切にし、本人と向き合い、仕事よりも家庭を優先することもありました。今では子どももチリ生活も楽しんでいるようで親としても安心です。
こちらに来て、チリ人、スペイン人、ベネズエラ人など多様な文化の中で働いていますが、皆さん共通して家族の話をするのが大好きです。子どもだけでなく両親や配偶者を大切にする人が多いと感じます。仕事と家庭の両立は、世界共通の人生のテーマの1つだと思いました」
チリでの挑戦──文化の違いとコミュニケーションの重要性
2022年にチリに赴任し、2023年には海水淡水化プラント運営会社のCFOに就任した堀。新たな環境での挑戦ですが、特に文化の違いを理解したうえで接することやコミュニケーションの重要性を強く実感する日々を過ごしています。
「一概には言えませんが、海外ではスタッフが会社への忠誠心を持つケースは多くありません。一方で、信頼関係を築けた場合は上司への忠誠心を持ち、従って高いモチベーションで働いてくれるケースは存在すると感じます。
一例として、転職する上司に誘われて、部下が一緒に転職する等も珍しくありません。管理職の役割としては、社員のキャリア志向を丁寧に吸い上げ、新しい業務や資格取得支援等適切な機会を継続的に提供し、且つメリハリのある人事評価・フィードバックを行い頑張りを認め、成長を支援することが重要だと実感しています。
私も周囲に応援してもらったからこそ、可能な限り各人のキャリアにしっかりと寄り添いたいと心の底から思っています。
コミュニケーションの観点では、何よりこまめなコミュニケーションが非常に大切です。上の子が小学生になりましたが、まだまだ小さいので、チリでも帰宅時間はしっかり決めています。日中は非常に忙しく同僚とゆっくりランチ等が取れないことも多いのですが、その分、朝会ったときやコーヒータイム等のちょっとした会話を大切にしています。同僚の子どもの名前を覚えたり、誕生日を祝ったり、家族の体調を気にかけたりして、コミュニケーションの機会も意識的に増やしていますね。
さらには現場の話を聞くことも大切にしています。基本的に隔週でプラントに出張するようにしていますが、現場に行ったからこそ分かることがあるので、プラントでは1日中歩き回って、社員それぞれの仕事の進捗や困り事等を聞いて回っています。朝から夕までずっと誰かと話していますね」
チリでは英語だけでなくスペイン語の理解も求められます。
「スペイン語圏で働くことは私にとっては言語の壁が高く、会議やコミュニケーションで苦労することも多々あります。やはり言葉が通じる上司の方が私よりも話しやすいでしょうし、情報収集能力も違います。
それでも『Yukoにレポートすると的確なアドバイスがもらえる』と思ってもらいたいんです、小さな相談でも真摯に応じるようにしています」
チリでの仕事には苦労もありますが、多様な文化の中での経験が彼女の成長に繋がっています。
今後のキャリアビジョン──目の前の仕事に懸命に取り組む
堀はこれまで常に目の前の仕事に全力を尽くしてきました。長期的なキャリア計画を持つことも重要ですが、何よりも現業務に集中し、そこで成果を出すことが次のチャンスに繋がると考えています。
「常に目の前の仕事に面白さを感じ取り組んできた結果として今があるのだと。プロジェクト本部の仕事は常に新しいチャレンジが待ち受けているので、飽きずに取り組んでこられたのだと感じています!」
最後に、仕事への向き合い方について、堀は自身の経験をもとにこう結論づけています。
「結局はプロフェッショナルな仕事をすることに尽きると思います。経験のない分野であっても、きちんと勉強して、プロとして認められる仕事をすることが重要です。
育児と仕事の両立は難しい課題ですが、それでも『自分はプロフェッショナルな仕事をするんだ』というところは絶対に諦めずに、目の前のことをコツコツ頑張っていくことで道は必ず拓けてくると信じています」
※ 記載内容は2024年7月時点のものです

