タイの中間投資会社にCOOとして出向。発電などのインフラ事業を開発・運営
三井物産100%子会社の中間投資会社、Mit-Power Capitals(Thailand)Limited(以下、MCT)に2019年から出向している金森。2021年以降、Director & COOとして活躍してきました。
「MCTは、現地の事業パートナーとの協働による、発電事業を中心としたインフラ事業の中間投資会社です。操業中と建設中の発電事業マネジメントに加えて、複合商業施設向け地域冷房・配電事業の建設管理・立上げや、新規の屋根置き太陽光発電事業開発も担っています。
いずれも三井物産本店と連携しながら推進するプロジェクトで、現地の事業パートナーとより密なコミュニケーションをとることをミッションに、現在は、私と上司、若手3人が本店から出向しています。私はDirector & COOとしてプロジェクトの推進に加えて、会社全体のマネジメントと、従業員の育成を担っています」
金森のポジションは、MCTで社長に次ぐナンバー2。一方家庭では、単身赴任で6歳と2歳の子どもを育てる母親でもあります。海外で重職も育児もこなす彼女ですが、日本と比べて恵まれた育児環境があると言います。
「現在、複数のベビーシッターさんにサポートしてもらいながら子育てしています。日本よりも第三者に育児サポートを依頼することに抵抗が少ないため、タイでは育児をしながら出産前と同じように働き続ける女性も珍しくありません。
タイのパートナー企業のマネージャーにも育児と両立している女性が何人もいて、着任直後はシッターさんや託児所の情報を教えてもらいましたし、子育てという共通項から深い関係性を築くのにも役立ちました」
限られた時間の中で育児と管理職を両立させる上で、金森には大切にしていることがあります。
「優先順位をつけて仕事に取り組むこと、責任を持ってやり遂げることを意識しています。最優先すべきは、『急ぎのレポートを見てください』『お客さんに今日中に回答が必要です』といった、組織として私の判断が必要な相談事の対応。チーム全体のスケジュールに影響が出ないようにマネージしています。
さらに、制約があっても環境に甘えずに、私の役割に責任を持つことで、チームメンバーと信頼して仕事ができる関係を築けていると思います」
3年目に修業生としてタイへ。独自のキャリアを形成した強みから、不安なく育休取得も
学生時代、商学部でコーポレートガバナンスやCSRを学んでいた金森。社会に貢献できる仕事に就きたいと考え、国際的な環境NGOでインターンシップも経験しました。
「環境NGOでのインターンシップを通して感じたのは、海外の開発支援において、大きな影響力を持って社会貢献できるのは、非営利団体よりも営利企業だということでした。中でも、商社であれば自分が前面に立って開発支援に関われると考え、三井物産を選びました」
入社後は、コーポレート部門を経て、現地で語学を学びながら仕事をする「修業生制度」を利用してタイへ。図らずも、女性初のタイ修業生でした。
「結婚・出産をする前に海外に行きたいという想いがありました。私がタイを選んだ理由は、急成長中の東南アジアに興味があり、中でもさまざまな経験が積めそうだと感じたからです。
2年間、タイ語を勉強した後、化学品の物流業務を担当しました。現地企業やお客さまとの関係を築きながら、ニーズに合わせて商品をお届けするという経験を通して、タイ語の基礎とビジネスの根幹を学ぶことができました」
本店に帰任後は、物流ソリューションや空港・港湾ターミナルの事業投資を担当。そして入社14年目に転機が訪れます。
「2015年に、プロジェクト本部でタイの発電プロジェクトが立ち上がり、タイの経験者として、私に声がかかったんです。私にとって発電事業は未経験でしたが、タイでの経験や語学力を活かしながら新しいことに挑戦できることに魅力を感じ、案件を担当することになりました」
発電事業の担当になって1年半後、金森は第1子を出産し、約1年の産休・育休を取得。休む際にキャリアへの不安はなかったと言います。
「入社から16年間、コーポレートやいくつかの事業領域で独自の経験を積み重ねた自負があったので、休むことでキャリアが遅れるという不安はなかったです。産後もキャリアアップする道はきっとあるだろうという感覚で産休に入りました」
育休復帰後は育児をしながらキャリアアップするため、子どもを連れてタイへ単身赴任
復職後、金森が配属されたのはプロジェクト本部の戦略策定などを行う戦略企画室。周囲の強力なサポートに助けられたと言います。
「復職後は、4時半までの時短勤務で思うように仕事が進まない上、家では子どもと満足に向き合うこともできず、想定以上にストレスを感じていました。そんな状況を助けてくれたのが、チームメンバー。正直に窮状を話したところ、私の稼働時間をどうしたら有効に使えるか、メンバーで話し合ってチーム編成を考えてくれました。
たとえば、比較的時間がフレキシブルな若手を私の補佐としてペアにしてくれたり、別の業務では経験ある先輩と組んでバックアップしてもらったりと、組織全体としてうまく仕事が回る体制を整えてくれました。私自身、それを機に人を頼れるようになり、私にしかできない業務に集中できるようになったと思います」
周囲に支えられながらキャリアを続けられたものの、キャリアを「アップ」することに限界を感じていたと言う金森。タイ駐在の打診が来たのは、まさにそんなタイミングでした。
「当時、子どもがいるため海外出張に行けないことや前線での仕事ができなことにもどかしさを感じていました。タイでの生活経験から、子育てや働き方のイメージを持つことができたので、勝手を知っているタイであれば仕事と育児の両面で新しいチャレンジができるのではないかと考えたんです。当社でも女性社員が子連れで海外赴任する前例は少なく、周囲には心配する声もありましたが、夫も私の決断を応援してくれました」
こうして、2019年に2歳の子どもを連れて金森はタイへ。翌年、第2子を現地で出産し、復帰翌年に現職に就任してキャリアアップも実現しました。
「現在のポジションへの昇進は、前任者が帰任したことで巡ってきたチャンスでした。私は管理職より個人として成果を出す方が向いていると思っていましたが、いま振り返ってみると、変化と成長の機会になったと感じています。
たとえば、組織のマネジメントの仕方もさまざまで、私の経験や個性が活かせるやり方もあるということ。私は、チームメンバーからの相談に対してじっくりと話を聞いた上で、アドバイスするようにしています。そして、それぞれが持ち場に戻ってアクションするというサイクルを繰り返すことで、多くのプロジェクトを同時に進めることができています。ケースによっては、チームメンバーでアイデアを出しあった提案に沿って、私がCOOとしてパートナー企業やお客さまと話をすることもありますが、すべてをひとりでやるのではなく、任せられることは役職にとらわれずやってもらっています。
一連の対応は、質も量もひとりでできるものではなく、チームだからこそ達成できること。自分の経験を活かしながら、チームとしてより大きな成果を出せたことに手ごたえを感じます。こういう経験の積み重ねから、管理職という役割を通じて、チームに、そして社会に貢献していきたいと感じるようになってきました」
自分らしく活躍できるスタイルは、人それぞれ。周囲に相談しながら探していけばいい
仕事と育児を両立する極意として、金森は「人を信頼して任せること」を挙げます。
「タイ着任直後、シッターさんに多くのことを頼むことにためらいがあって、定時になると自分で保育園に子どもを迎えに行っていました。でも、このままでは日本にいたときと変わらない。仕事にも育児にもストレスを感じる悪循環に陥ってしまうと感じ、自分のできることや時間には限界があることをあらためて認識し、もっと人に頼ろうと意識を切り替えました。
子どもとの接し方を見て信頼できるシッターだと感じたので、保育園の送迎はすべて任せることにしました。その後も様子を見ながら、絶対に自分がやらなきゃいけないこと以外は、どんどん任せていった結果、いまではシッターさんが複数人体制に。日によってはシッターさん同士で引き継いで、子どもが寝た後に帰宅することもあります。
育児はシッターさんとのチームプレー。お互いを信頼して価値観を共有することができれば、信頼の相互関係が生まれます。チームプレーという点では、仕事も育児も通じるところがあると感じます」
タイに来たことで、育児をしながらより自分らしく仕事ができるようになったと話す金森。でも、「これが誰にでも当てはまるモデルケースではない」と金森は強調します。
「私は、自分のキャリアや年齢、子どもの年齢など、いいタイミングで赴任できたからこそいまのスタイルを築けましたが、活躍できる場やスタイルは人それぞれ違うはずです。いろいろな人と相談しながら自分に合うスタイルを探していけばいいと考えています。
誰でも、育児に限らず、ライフステージで仕事の仕方に悩む時があると思いますが、強い志を持って誠実に仕事に向き合っていれば、信頼の相互関係が生まれ活躍できる場も巡ってくると思います」
そして、自身のこれからについても、金森はポジティブな将来を展望しています。
「8年前にインフラ事業という新しい領域に挑戦し、キャリアを積み上げられてきたと実感しているところです。また、インフラ開発の中でもサステイナビリティに配慮した事業活動の重要性を再認識しています。世の中の流れ、また次世代のためにもESGを自分事として捉えて、より良い未来作りに貢献したいと考えています。
管理職というポジションについては、信頼関係を構築して組織としての成果を最大化することや、メンバーを育て成長する姿を見ることにやりがいを感じています。まだまだ発展途上ですが、自分らしい受容力のあるマネジメントスタイルを追求していけたらと思っています」
最初から正解がわかる人生なんてない──そんな信念のもと、分岐点であえて前例のない方角を選び、唯一無二のキャリアを築いてきた金森。仕事も育児も自分らしく、最適解を探し続けます。
※ 記載内容は2023年7月時点のものです
