「楽しい仕事をやめる選択肢はなかった」育休を越えて築いたキャリアの道
現在、私はものづくり推進部の人財育成・情報グループに所属しています。この部署では建物・生産ライン・設備の設計・導入や保全、工場での立ち上げや生産系の人財育成など、ものづくりの基盤を支える業務を行っています。私個人としては、工場のデジタル化推進や、社内の製品・原料などを管理するシステムの構築等に携わっています。
皆さん日々の業務で多忙なため、製品や・原料を管理するシステムの利用にあたっては、単なる作業と捉えている方もいるのですが、万が一重大な事故が発生した際のトレーサビリティの確保や、5年後、10年後に技術情報を引き継ぐ際の参照など、このシステムが果たす重要な役割があります。
そのため、なぜ情報管理が必要なのかという目的をしっかりと伝えることを心がけています。システム化により、従来のやり方を変えることで発生するミスを逆に懸念されることもありますが、メリットをきちんと説明することで、理解を示してくれる傾向にあります。
振り返ると、私のキャリアは、2001年の入社以来、さまざまな経験を重ねてきました。元々食べることが大好きで、学生時代は食物科学を専攻し、将来はパティシエか、食品会社で働きたいと考えていました。
当時はまだ通販が発展していない時代で、洋菓子店のケーキはその地域の方にしか届けられませんでした。しかし食品会社であれば、日本全国の方に自分が作った商品を届けられると考え、明治製菓(現・明治)への入社を決めました。
入社後は11年間、研究所でチョコレートとチョコレートスナックの開発を担当。「メルティーキッス」のイチゴフレーバーの初代担当として、検討を重ね、ものづくりの本質を学びました。自分が開発に関わった商品が北海道から沖縄まで店頭に並ぶことに大きなやりがいを感じ、「ものづくりっておもしろい」と思いましたね。
その後、2012年に当時の本社フードクリエイト部門に異動し、業務用商品の開発を担当。お客さまのオーダーに応じてチョコレートの生地など、最終商品の材料となる製品の開発に携わりました。この時期に最も印象に残っているのは、通常は固形で配送するチョコレートを、融けた状態で輸送するというプロジェクト。関係部署に協力いただき、短期間でこれを成し遂げたことで、大きな山を越えたような達成感を得ました。
2015年には社内結婚。ちょうどその少し前のタイミングで、夫が転勤となりました。昔は、夫の転勤に妻が同行して退職されるケースも多かったのですが、私は仕事が楽しく、やめるという選択肢はなかったですね。顧客訪問の出張も多かったため、東京を拠点に働き続けることに。その結果、5年間の週末婚を経験しました。
仕事を続けていくのであれば管理職になった方が仕事の範囲が広がり、楽しさややりがいが増えていくのではないかと、試験を受けて2016年には係長格に昇格しました。2018年には当時の本社技術部へ異動。その後、2021年に出産・育児休業を経て、翌年に復職しました。
先輩の涙から学んだ伝えることの大切さ。暮らしを見直し、「無理をしない」働き方に
今の職場では、週4日ほど在宅勤務で、週1~2日はオフィスに出社する働き方を実践しています。また、勤務時間も息子の保育園へのお迎え時間に合わせるなど柔軟に運用しています。現在4歳の息子は3歳くらいまでよく熱を出し、大事な会議の時に限って休まなければならないこともありました。そのため、チームメンバーとの情報共有を徹底し、目的やゴールを明確にして、できるだけ後戻りしないよう工夫しています。
最初は情報共有をたくさんすることに抵抗がありましたが、今ではこちらから積極的に情報を発信するようにしています。すると、メンバーも必要なタイミングで情報を共有してくれるようになって。2~3週間に1回のチームミーティングでは、業務の話だけでなく、子育ての状況なども共有するようにしています。
私の働き方に大きな影響を与えた出来事があります。研究所時代、尊敬する先輩が妊娠され、つわりがひどくてしばらくお休みされました。お休みされた分、私の仕事が増えてしまい……疲れからその先輩にやさしくすることができなかったんです。
それでも送別のちょっとしたプレゼントを渡したところ、普段は涙を見せない先輩が泣いてしまって。それまでつらかったことを周囲に伝えられなかったんだと悟ったんです。この経験から、妊娠・出産(その後の育児期)は、自分ではどうにもできない大きな変化をもたらすことがあり、サポートの依頼やその感謝を、周囲に伝えることがなにより大事なんだと、学びましたね。
今の私の生きがいは、子どもの成長と家族が仲良く暮らしていくことです。5年間の週末婚を経て、夫と子どもと3人でしばらく一緒に暮らしたのですが、夫が再び転勤となり、平日は育児を1人で担うようになりました。その状況がつらくなってきて、道を歩いていたら涙が出てきてしまって。
そこで夫婦がともに通勤できる場所に転居し、家族で一緒に暮らすようになりました。やはりお母さんが無理しすぎるとうまくいかないことが多いんです。そこで、無理をしないで、夜もできるだけ早く寝るようにしたら、心身ともに健康な状態で働けるようになりました。また、息子も年齢とともに体力がついてきて、以前ほど保育園を休むことも減ってきました。
管理職に。背中を押してくれた先輩たちの存在とチームへの想い
2023年には管理職に昇進しました。その電話をもらった時、夫が体調不良で寝込み、息子も高熱が出て病院に検査しに行った帰り道で、看病疲れもあって不安しかなかったのを覚えています。
思い返すと、若い頃の私は、認められたい気持ちが空回りし、気分の浮き沈みも激しかったのですが、上司や同僚に支えられて成長することができました。そのため困っている人や悩んでいる人に対して、どうすれば課題を乗り越えられるか、どうすれば楽しく仕事ができるかを、一緒になって考えることが私にはできるかもしれないと思ったんです。
また出産前に大きなプロジェクトを経験し、達成感を得た後、個人の成果よりもチーム作りや人財育成に喜びを見出すようになったことも大きかったです。とくに当社には私が尊敬する女性管理職の先輩がいて、管理職としての立ち振る舞いや仕事への向き合い方を学ぶ機会が多くあり、それらが背中を押してくれました。
現在は限られた時間の中で管理職としての責任を果たすよう心がけています。すべてを完璧にこなすことは難しいため、とくに意識しているのは、優先順位の判断と問題の予兆に対するアンテナを高く持つこと。メールやTeamsをチェックする際も、管理職として今すぐ対応が必要な案件かどうかの判断を素早く行うようにしています。
自身の終業後はすぐに折り返しができない場合があることを周りに事前に伝え、会議や打ち合わせも、息子を迎えに行く時間までに終わるようスケジュールを調整しています。ただし、緊急事態が発生した場合は終業後でも対応し、メールチェックもできるだけ行い、管理職として対応すべきことは行うようにしています。
でも、以前、仕事のメールをしながら子どもの手を引いて歩く母親の姿を見かけた時、その子どもが寂しそうな表情をしていたのを見たため、子どもと一緒にいる時間は、緊急時以外は、なるべく仕事の電話やメールは控えるように心がけています。
息子は私のことを「あかたん」と呼んでいます。「お母さん」が言えなくて「あかたん」と言っていたのが、お母さんと言えるようになってもまだ「あかたん」と呼んでいて、かわいいなと思っています。
その呼び方も含めて、子育ての時間は意外と短いことを実感しており、息子が嬉しそうにしている姿を見ることが今の私自身の喜びです。一緒にさまざまな経験ができるこの時期を大切にしたいと思っています。
ライフステージによって考え方も変わっていく。柔軟な働き方を選べる時代へ
現在、工場のDX推進を進め、生産性を向上させていくことをめざしています。過去の経験から、新しい取り組みと生産性の両立の難しさを実感していています。それは工場からすれば、新しいことを導入することで作業が煩雑になったり、ミスが発生したりする可能性が高まるためです。
そこで、DXを活用して作業効率の向上やミス防止の仕組みづくりに取り組んでいきたいと考えています。私自身、工場勤務の経験がないため、工場の方々の本当の気持ちや作業の実態を完全には理解できていない部分もあり、もっと現場を知る努力が必要だと思っています。
私の原点は、自分の作ったもので誰かが喜んでくれたり、元気になったり、幸せになったりすることです。家で作ったお菓子を家族や友達が「おいしい」と言ってもらえた時の喜びが、今の仕事につながっているのかもしれません。現在は間接的な立場での関わりが多いのですが、将来的にはより直接的なものづくりに携われる場所で働きたいと考えています。
私は大阪生まれ大阪育ちで、根底には「大阪のおばちゃん」的な要素があります。おせっかいな面もあり、周りの人にお菓子を配ったり、話をしているうちに「元気が出た」と感じてもらえるような存在でありたいと思っています。
これから出産や育児を控えている女性の方々に伝えたいことがあります。私が入社した頃は、女性が結婚や出産を機に退職することが一般的でした。その後、育休を取得する人が増えてきましたが、当時は今よりも制度が整っておらず、社会全体でも、当社でも、多くの先輩方が苦労しながら時代を切り開いてくださったと思います。
そんな中で私ができることは、普通のお母さんでも管理職になれることを示すことだと考えています。必要以上に頑張りすぎなくても大丈夫なのです。私のような大阪のおばちゃんでも管理職を任せてもらえるのですから。ライフステージによって考え方も環境も変わっていくので、その時々で自分にとって何が一番大事なのかを考えることを大切にしてほしいと思います。
そして、その答えに対して嘘をつかないことが大事。出産・育児の時期に昇格試験の受験を見送った方もいますが、もし、そういった方々が、チャレンジしたいと思うタイミングが来たら、その気持ちを後押しできる環境づくりが必要だと考えています。
将来に不安を感じすぎることなく、今の自分にとって大切なことを大事にしてください。自分にとっての優先順位やウエイトが変わった時に、新しいチャレンジへの気持ちを応援する環境は、徐々に整ってきています。これからの時代は、もっと柔軟な働き方が可能になっていくはず。女性管理職の存在が当たり前になり、いつか「女性」を付ける必要がなくなる日がくることを、心から願っています。
※ 記載内容は2025年7月時点のものです

