味、パッケージ、商品の世界観がアメリカで受け入れられ、明治ブランドの人気が急上昇
私は現在、アメリカ、ペンシルベニア州にある「メイジ・アメリカ」に駐在し、明治ブランドの営業マーケティングに携わっています。主な仕事は戦略立案と日本の本社とのコミュニケーション。シニアディレクターとして、本社の意向やアメリカ側の要望を考慮しながら方向性を決めています。
アメリカと日本では、お菓子に対する嗜好に大きな違いがあります。アメリカでは味が非常に甘かったり濃かったりするものが好まれる傾向にあります。また量をたくさん食べるため、お菓子のパッケージは大容量のパックが多く、日本で広く流通している商品とは異なります。このような違いを考慮しながら、アメリカ市場向けの戦略を立案しています。
とくに最近、力を入れているのは「ハローパンダ」というチョコレートビスケットの商品。毎年110%~120%ほど売上が伸び、アメリカ事業の成長を支える人気の高い商品となっています。人気の理由は味のおいしさはもちろん、アメリカの小売業者が取り扱いやすいパッケージの形態、そして商品のユニークさ(多様なパンダキャラクターのプリント、ビスケットに閉じ込めたチョコレートクリームなど)が挙げられます。大手小売チェーンに採用されたことがきっかけとなり、販売を通じて認知度が高まり、他の店舗・小売企業にも波及していきました。
メイジ・アメリカでは大きく分けて明治ブランドと、明治グループとなったスタウファーブランドという老舗ビスケットブランドの2つを扱っているのですが、東海岸と西海岸に工場があり、東海岸ではスタウファーブランドのみ、西海岸では明治ブランドと一部スタウファーブランドを生産しています。生産キャパシティが限られているため、販売物量が急上昇するに伴って調整が難しく苦労しました。今、十分な生産体制を整えるために投資を進めており、今後は本格的な広告活動にも力を入れていく予定です。
長年の希望がかなって海外駐在が実現。不安よりも、アメリカでの経験に期待が膨らむ
海外で仕事をしたいという想いは、実はずっと前から持ち続けていたんです。父が商社勤めで海外出張が多かったこともあり、幼い頃から海外に対する壁をあまり感じていませんでした。高校時代にオーストラリアのパースへ短期留学をし、大学では語学学校に通うなど、自然と海外に興味を持つ環境で育ちました。2007年に明治に入社した際も、主に海外から商品を輸入し、販売する職種で採用されたため、入社してからずっと何かしら海外と関わってきました。
そういった経験から、2016年に海外事業部へ異動することになりました。入社時から一貫して海外関連の仕事をしていたので楽しかったのですが、それまでは自社製品ではない商材を扱っていたため、「自社ブランドを世界に広めていくことができる」というまた違った喜びがありました。
そして2022年、ついに初めての海外駐在が決まりました。もちろんビジネスで使用する英語に関して不安もありましたが、それ以上にワクワクと心躍る、喜びの方が大きかったですね。ただ、家族のことを考えると複雑な気持ちもありました。駐在が発表された日の2週間後に妻が出産予定日を控えていたものですから……。家族への負担はあったと思います。周りの反応はというと、「良かったね」「頑張って!」という言葉をたくさんもらい、応援してくれました。
とくに私の前任の方や海外事業部の先輩方が、自身の経験を踏まえてアドバイスをくれたり、海外の情報を教えてくれたりと、とても心強かったです。不安がなかったわけではありません。言葉の壁や文化の違い、仕事のやり方の違いなど、想像もつかないことがたくさんあるだろうと思っていました。でも、そういった不安よりも新しい環境で学べることへの期待の方が大きかったんです。
会議はディベートに近い形で進行。十分な準備と論理的な説明の重要性を実感
赴任後、住居の手配をはじめとして会社が全面的にサポートしてくれたので、生活を始めるにあたっての支障はありませんでした。一方、仕事面では日本との違いに戸惑うことが多々ありました。
とくに印象深かったのは議論の仕方の違い。アメリカでは自分の意見を主張することが当たり前で、意見を言わないことはむしろ不自然に感じるんです。日本ではその場の空気を読むことが重視されますが、アメリカではそういったことがありません。会議は基本的にディベートに近い形で進行し、上下関係や職務権限はありますが、役職や年齢に関係なく意見を交わすことが普通なんです。
会社では小さな案件でもプロジェクト化され、開発・購買・物流・マーケティング・経理・営業の各担当が集まりプロジェクトミーティングが行われます。全員の合意形成が必要なため、最初のうちは自分の意見が通らないこともあり、その都度気持ちが折れそうになりました。でも、この文化の違いを乗り越えるために、私なりに工夫を重ねました。アメリカ人の論理的・合理的な思考方式に適応するため、自分もロジカルに考えることを心がけるようにしたんです。
日本である「とりあえず・まずはやってみて」といった曖昧なアプローチは通用しないことが多いので、明確な理由や得られるメリットを示すことが重要だと気づきました。自分の考えを相手に伝える際は、ストーリーを組み立て、タイムラインを設定し、十分に準備してから説明するように。また、反対意見を持つ人々にも一つひとつ丁寧に説明し、納得してもらいながら合意形成を図る必要があると学びました。
この学びを活かして、実際に意見を通すことができた経験もあります。ある商品パッケージの変更プロジェクトがあり、私が赴任する前からある程度デザインが固まっていました。ただ、私としてはそのままのデザインでは商品の優位性を消費者に伝えることはできないと考え、まだ手を加えるべきだと思い提案したところ、多くの人が今からの変更に反対しました。また、本社からも新たに別の変更要請もあり三者三様の意見がある状態に。私は市場分析や競合他社との比較表を作成し、視覚的に訴える資料を準備。現状の商品と市場のギャップを示し、新しいデザインがどのように競合と差別化できるか、ブランドの将来に好影響をもたらすかを本社とも調整しながら論理的に説明したんです。その結果、当初は反対だった人々も最終的に新しいデザインを受け入れ、パッケージの刷新が実現。この経験を通じて、論理的な説明の重要性を実感しました。
日本ではすでに組織が確立されているため自分の職務領域が限られているかもしれませんが、海外事業では営業やマーケティング以外にも、商品開発、生産技術、品質保証など多岐にわたる領域に関わることができます。またアメリカでの仕事を通じて、新たな価値観や働き方を学ぶことができ、とくに時間管理の重要性は身に染みて感じています。
ここでは仕事と私生活のバランスを重視し、効率的に働く文化があります。相手への依頼やセッティングした会議、雑談などは相手の限られた時間を消費するもの。限られた時間内で最大の成果を出すために、他人の時間を使う際の配慮や期限を守ることの大切さを実感しています。これらの経験は日本にいては得られなかったものであり、自身の成長につながっていると感じています。
想いを周囲に伝えていくことが大切。希望に目を向け、海外へ踏み出していってほしい
赴任から半年後には家族を呼び寄せて、現在一緒にアメリカで暮らしています。赴任発表時に出産を控えていた子どもは、今2歳になりました。ペンシルベニアは自然が多いですし、広大なので、のんびりと過ごしています。駐在している日本の仲間とも野球を見に行ったりすることもあります。海外にいる者同士、同じ悩みを持つので話をして共感したり、情報交換をしたりして、心強い仲間となっています。
ときには日本が恋しくなることもありますが、基本的には今後も海外事業の最前線でキャリアを積んでいきたいと考えています。グローバルな事業に挑戦したいと考えている社員の皆さんには、ぜひ自分の意見をしっかりと持ち、相手にしっかり伝えて議論できるようにしておくことをお勧めします。
グローバル事業に挑戦したい方へのアドバイスとしては、まず自分の想いをあきらめずに周囲に伝えていくことが大切だと思います。そして希望や期待に目を向けて、一歩踏み出していってほしいですね。実際に経験して感じたのは、環境が大きく変化する海外での生活は、自分の考え方やキャリア、人生を見つめ直す絶好の機会になりました。日本にずっといたら出会えなかったさまざまな業種の方や、多様な働き方をしている方々との出会いはとても刺激的です。
海外での経験は、自分自身の成長だけでなく、会社全体の発展にも貢献できる貴重な機会。これからも、明治のグローバル事業に携わる一員として、新しい挑戦を続けていきたいと思っています。
※ 記載内容は2024年6月時点のものです

