カカオ生産地の現状を救うために。カカオの新しい価値を創出し、利益の還元をめざす
私が現在所属しているのは、グローバルカカオ事業本部カカオマーケティング部CXSグループ。CXSはCacao transformation with sustainabilityを意味します。ここではカカオをフルーツとして捉え直し、新しい価値を生み出すプロジェクトを行っています。
もともと明治は、よりおいしいチョコレートを作るため、原料へのこだわりを追求してきました。原料のカカオは主に赤道付近の国々で栽培され、収穫後に現地で発酵・乾燥し、日本に輸出されます。この工程はチョコレートの味を左右する重要な鍵となっています。カカオ豆の品質調査のため、明治の社員が現地に赴いた際に実感したのは、カカオ農家の決して豊かな暮らしとは言えない現状でした。水道や電気、ガス、道路などの基本的なインフラも整っておらず、品質の良いカカオ豆を安定的に作れる状況ではなかったそうです。
このような現状を「なんとかしなくては」という思いからスタートした「メイジ・カカオ・サポート」というカカオ農家への支援活動。生活支援だけではなく、カカオ生産の技術支援もしながら、一緒においしいチョコレートを作るための取組を長年地道に進めています。
このような課題解決への取組を進化させたのが、「ひらけ、カカオ。」をスローガンにした取り組みです。私たちはカカオの新しい価値を創造し、そこから得られた利益をカカオ農家へ還元することで、サステナブルな循環型社会の実現をめざしています。
一般的にチョコレートのイメージが強いカカオですが、実はカカオはフルーツ。私はマーケティング担当として、明治の独自素材を活用した、カカフル(ドリンク、アイス、チョコレート)という商品の発売に関わりました。明治の独自の取組によって、カカオ豆からポリフェノールの一群である「カカオフラバノール」を高濃度で抽出。このエキスにカカオの果汁を加え、健康的なおいしさの商品に仕立てています。
味のイメージは、グレープフルーツに近いかもしれません。甘酸っぱくフルーティーな味わいに、ほのかな苦味がある。購入者の7割以上の方から「おいしい」「また買いたい」という感想をいただきました。ゆくゆくは商品改良を重ねて、幅広い方々のもとに届けていきたいです。
ダイバーシティパッケージのチョコレートを企画。メッセージを込めて想いを伝える
私がLGBTQ+アライ(※)ネットワーク「Marble」に入ったきっかけは、人事部が主催したセミナーへの参加でした。セミナーでは初めて当事者の方のお話を聞く機会があり、衝撃を受けましたね。
とくに心を揺さぶられたのは、LGBTQ+の方々の生きづらさです。子どもの頃は自分が何者なのかもわからないし、成長の過程で気づくまで、アイデンティティがわからないまま、誰にも打ち明けられず、つらい思いをした方が多いと伺いました。
そんな中でとくに印象的だったのが、「自分を肯定し、理解してくれる存在がいたから、救われた」という言葉です。過去を振り返ったら、気づかないうちに私も誰かを傷つけてしまっていたかもしれない。二度とそんなことにならないよう、学んでいこうと決意したのが、Marbleに入るきっかけでした。
活動の中で、バレンタインシーズンに多様な方々の気持ちに寄り添うダイバーシティパッケージのチョコレートを企画しました。進める上でとくに気をつけたのは当事者の方々の意見をしっかり聞くことです。LGBTQ+などの多様性を推進する「プライドハウス東京」のご協力のもと、Web座談会を実施しました。
座談会で印象的だったのが「私たちは特別扱いしてほしいわけじゃない。いろいろな人がいるのが当たり前で、それが認められる世の中になってほしい」という言葉でした。また、LGBTQ+に寄り過ぎないように配慮し、“さりげなさ”を追求しました。2023年に明治ミルクチョコレート「CUBIE」で第一弾となるダイバーシティパッケージを発売したところ、ポジティブなコメントが多数寄せられたため、2024年はマーブルチョコレートで第2弾を実施しました。
第2弾では、当事者の方から「自分自身に向けたメッセージも欲しい」という声を参考に、「Just Love Yourself」という、ありのままの自分を愛するメッセージを新たに加えました。他にも「Million Colors」など、無数の個性があるという思いを込めたコピーも追加。
パッケージのデザインにもこだわり、LGBTQ+のシンボルとなっている、11色のカラーで構成された「プログレスプライドフラッグ」を、パッケージに描かれた人の髪や肌、服の色に反映させました。裏面には第1弾と同じく「理想が日常になりますように」というメッセージを入れました。これがSNSでも好評で「すてきな言葉だ」と言ってくださる方が多かったんです。このメッセージは理想が日常になるまで、これからも継続して発信していきたいですね。
※ LGBTQ+のアライ…LGBTQは性的マイノリティの方を表す総称の1つ。アライ(ally)とは味方を意味する言葉で、そこからLGBTQ+を支援する人をさす
LGBTQ+アライとしてパレードに参加。自由に生きられる幸せを感じる
Marbleの活動の中でも、プライドハウス東京主催の「東京レインボープライド」のパレードに参加したことは、印象深い経験となりました。
今年は私たちMarbleのメンバーは、旗を持ってパレードを歩き、マーブルチョコレートダイバーシティパッケージも配布しながら、この活動の意義を伝えていきました。パレードに参加して驚いたのは、そこに満ちていた幸せのエネルギーの大きさです。ふだんは周囲の目を気にして、自分らしさを隠している人たちも、この日ばかりは同性のカップルが手をつないで自由に歩き、笑顔で「ハッピープライド!」と声をかけあいます。パレード全体から「みんな自由に生きていいんだよ」というメッセージが発信されているように感じました。
世の中には想像以上にいろいろな人がいて、多様な価値観が存在するということにあらためて気づかされました。自分の価値観を押し付けるのではなく、認め合うことの大切さ、仕事でもプライベートでも、多様性を尊重し、一人ひとりの良さを伸ばしていくことが何より大事だと感じるようになりました。友人関係や家族との関わりにおいても、この考えは通じるものがあると思います。
また、Marbleのメンバーたちはいつも主体的に動いていて、そこから良い刺激を受けていますね。自ら考え、発信することで、世の中を少しずつ変えていくことができる。そんな可能性を感じずにはいられません。
もちろん、当事者の方々の意見を丁寧に聞いて、価値観を押し付けないように気をつけることは、手間がかかります。しかしダイバーシティパッケージのチョコレートを発売後、SNSを通じてポジティブなメッセージが多数発信され、こうした言葉を目にすると、苦労なんてなんてことないと感じられます。私たちの活動が誰かの力になれた。明治だからこそ果たせる役割があると、感じましたね。
「普通」なんて存在しない。誰もが自分らしく笑顔で生きられる世界を夢みて
今後、LGBTQ+の方々が自分らしくいられる世界をつくっていく上で大切なのは、「みんな違って当たり前」という意識をたくさんの人が持つこと。Marbleの活動を通して痛感したのは、「普通」なんて存在しないことです。
LGBTQ+の方は人口の10%くらいいて、それは左利きの人と同じくらいの割合です。とはいえ、大多数の人は右利きが当たり前だと思っているので、左利きの人の気持ちはわからないかもしれません。
だからこそ、アライが積極的に活動することが重要なんです。明治には「アライ宣言」という仕組みがあり、セミナーを1つ以上受講するなどの条件がありますが、LGBTQ+を支援する気持ちを表明できます。
たとえば、アライのマークをロッカーやスマホなどに貼って、気持ちを示します。そういう取り組みによって、LGBTQ+の方が話しやすい雰囲気がつくられていく。誰もが自分の思いを言葉にできる。そういった風土を醸成していくことが、必要なのだと思います。
私たちMarbleの活動を、会社として後押ししてくれる雰囲気は確実にあると感じています。社長からも「こういった取り組みはどんどん発信していくべきだ」とコメントをいただきました。
今後の具体的な取り組みとしては、引き続き、商品を通じた情報発信を続けていきたいです。ただ難しいのは、売上を第一にせずにきちんと情報発信をしていくこと。一方で営利企業である以上、赤字を出すわけにはいきません。そのバランスを取るのは正直難しいです。情報発信や売り場への商品展開だけでなく、当事者に寄り添った活動も大切にしていきたいと思っています。
これから理想が日常になっていくために、私たちにできることは何か。一つは、当事者の方々の声に耳を傾け、寄り添い続けること。そしてもう一つは、社会の意識を少しずつ変えていくこと。一朝一夕にはいかないかもしれません。それでも、一人ひとりの小さな行動によって、いつか大きく変わっていくと信じています。
その日がくるまで、Marbleの仲間たちと力を合わせて、啓発活動を続けていきます。誰もが自分らしく、笑顔で生きられる世界を夢見て。
※ 記載内容は2024年6月時点のものです

