工場の設備設計の最前線。めざすのは、使う人のことを考えた設備づくり
私は現在、ものづくり推進部 東日本センターエンジニアリング 2グループに所属しています。同部門のメンバーは約50名。若手からベテランまでさまざまな社員が活躍しています。
中でも私の主な業務は、新設備の導入検討、設備設計、工場設備の立ち上げ支援、海外拠点での設備導入支援、そして設備基準の作成です。業務範囲は東日本だけに留まらず、大阪や北海道、さらにはインドネシアやシンガポール、上海といった海外にも及んでいます。
設備には必ずそれを操作する担い手がいます。設備設計を手がける上で、作業導線や扱いやすさ、設備のメンテナンスのしやすさなど、実際に設備を動かす方にとっての使い勝手の良さを第一に考えてきました。
使いやすい設備をつくる上で非常に役に立っているのが、15年にわたる製造現場での経験です。現在も、実地で培った知見をもとに設備設計の大枠を定めています。
とはいえ、導入工場や設置場所の違いによって同じ設備でも仕様を変えるケースがあり、それぞれの工場にとって最適な設備を設計するために、実際に設備を使用する方々からのフィードバックを取り入れ、めざす方向性に間違いがないかを確認しながら、詳細を詰めるようにしています。
また意外に思うかもしれませんが、設備設計する上で、デザイン性の高さも重視しています。見た目が美しいものほど、人はきれいに使いたくなるもの。設備の外観が作業者のモチベーションに与える影響は決して小さくありません。さらに清潔に保つことで危険な箇所が見えやすくなるというメリットもあります。
より安全で、使い勝手の良い設備に。新たなミキサーの設備設計で得た手ごたえ
これまでさまざまな設備設計を担当してきましたが、中でもとくに印象に残っているのが、チョコレートと副原料を攪拌するためのミキサー設備の設計をした時のことです。
20年ほど前まで、500リットルの大容量のミキサーが使われていました。ところが、深さがあり底まで手が届かないため、製品の切り替えを行うたびに、体格の小さい女性社員がミキサーの中に入って掃除する必要があったんです。
その後、遊休機であった背の低いミキサーと交換することで作業負担の軽減を図りましたが、扱いやすさは向上したものの、依然として中に社員が入って切替え掃除をする必要がありました。
ずっと課題を感じていたところ、大規模な合理化工事の実施が追い風になりました。プロジェクトの一環として、新しいチョコレート成型プラントとその付帯設備を導入する絶好の機会が訪れたのです。
さっそくミキサーメーカーを訪問し、技術課の女性社員の意見を取り入れながら、新しいミキサーの構想を練り上げていきました。ラボミキサーを借りて仕込みテストを繰り返した結果、導き出されたのが、縦型2軸の300リットルミキサー。容量を確保しながら、高さを抑えることで、仕込み作業の負担を大幅に軽減することに成功しました。
また、従来のミキサーは、階段でデッキに登って原料を投入する必要がありましたが、その手間も解消されました。製品の切り替え時にボウルを取り外して丸洗いが可能など、メンテナンスのしやすさにもこだわった特注品です。
この取り組みを通じてもっとも苦労したのが生産性の確保でした。女性でも扱ったり運んだりしやすいミキサーの設計をめざしましたが、小型化すれば使い勝手が良くなる反面、生産性は落ちてしまいます。生産性の確保と使い勝手の向上、この相反する要素を両立させるにはどうすればいいか。
試行錯誤の上、ミキサーを2台並列配置させてそれらを交互に用いて仕込む方法を考案しました。これによって作業者の仕込みサイクルが改善。攪拌性が大幅に高まり、仕込み時間の短縮化にも成功しました。ダマが生じなくなったことで、品質向上にもつながっています。
さらに、従来型の縦型ミキサーではボウルの移動が困難でしたが、今回の改良によって普段使用しているハンドリフトを使って簡単に移動することが可能になり、安全に運搬しやすくなりました。
作業者の皆さんからは、「仕込み作業がスムーズにできるようになった」「安全性が向上した」と好評を得ています。
小柄な方や体力に自信がない方など、誰もが働きやすい職場づくりに向けて
入社してすぐに大阪工場製造部に配属されたことは、とても貴重な経験になりました。そこでは、「きのこの山」「たけのこの里」「マカダミアチョコレート」「板チョコ」などの主力商品に携わり、チョコレートを型に充填し製品化するまでの成型工程を主に担当していました。大阪工場で身につけたことは、設備設計を担当するようになった現在も大いに生きていると感じます。
当時、徹底して心がけていたのは、お客さまの立場になって商品と向き合うこと。「後工程はお客さま」をスローガンに、自分の仕事がお客さまに対してどう影響を及ぼすかを常に念頭に置いて作業していたのを思い出します。
そもそも私が現場の改善に取り組むようになったのは、工場に勤務する多くの女性たちが、設備を思うように扱えずに困っている様子を目の当たりにしたことがきっかけでした。女性たちが作業しやすくなるよう、簡単な装置を自作し、それを使ってもらったのが始まりです。
複雑な操作が必要な設備について、具体的な改善を提案したこともありました。困り事を一つひとつ解決するたびに、現場で作業する女性たちから感謝の言葉をもらうことが励みになっていたのを覚えています。当時といまとでは規模は大きくなりましたが、やっていることは本質的に変わっていません。
その後、同じ大阪工場の工務環境室に異動になりました。当時は製造現場こそが自分の居場所だと信じ、ずっとそこに骨を埋めるつもりでいたので、初めのころはあまり前向きではなかったんです。
ところが、それまで現場でやりづらいと感じていた設備を、すべて自分で変えていけると気づいてからは、工務環境室の仕事を天職だと思うようになりました。自分が思い描いた通りに設備をかたちにしていけるのは、とても楽しい作業です。導入した設備に対してフィードバックをもらいながら、次から次へと改善に取り組みました。
そして工務環境室で13年勤務した後、現在の部署に異動になりました。国内だけでなく海外も守備範囲となるため、視野を広げる必要がありましたが、設備を設計し導入するという基本動作に大きな違いはありません。
女性だけでなく、小柄な方や体力に自信がない方など、さまざまな方にとって働きやすい環境を整える上で大切なのは、実際の作業者の視点にどれだけ寄り添えるかです。設備設計を担当する社員の中には、現場経験のない若手社員が少なくありません。そのため、設計基準書に使い勝手の良さを盛り込むなど、誰もが働きやすい職場づくりをめざして、知識と経験を確実に継承していく必要があると考えています。
すべての社員の活躍を支えるために。作業者に寄り添う考え方を継承していく
機能や生産性はもちろん、使い勝手の良さ、デザイン性など、あらゆる要素を兼ね備えた設備を提供したいと考えています。そのためには日々の改善が欠かせません。
すでに完成した設備と同じものをつくってほしいと依頼された場合でも、まったく同じものを提供することは決してしません。環境とそれを使うすべての方に合わせた改善を図り、常により良いものをめざして取り組んでいますし、職場環境の向上に貢献できることこそが、この仕事の醍醐味だと思っています。
この仕事をしていて、とくに楽しさを感じるのが設備の導入後の試運転の時。先日も、埼玉の事業所に導入した全自動で材料を仕込む新しいミキサーの試運転を実施しました。設備が想定通りに動作してくれると、これまでの努力が報われる思いがします。
仕事に精を出す一方、趣味にも同じくらい情熱を注いできました。自動車によるスポーツ走行、バイクツーリング、お酒、キャンプ、旅行、山登り、ゴルフ、釣りなど枚挙にいとまがありません。さらに、筋トレも行っていて、2016〜2019年にかけてボディビル大会に出場しました。2024年の1月には南極旅行も敢行しています。
今後は、作業性に関する設備基準書の策定に取り組みたいと考えています。若い担当者が設計した設備を見て、「こうすればもっと良いものになったのに」と思うことがたまにあって。設備基準書がさらに充実したものになれば、職場環境の大幅な改善につながると信じています。作業者に寄り添う考え方を世代を超えて継承することが、設備設計担当としての使命だと思うからです。
※ 記載内容は2024年5月時点のものです

