長く働いてもらえるように。詰め込みすぎず、時間をかけて教えていく
九州工場の製造課で課長を務めています。九州工場は、「明治おいしい牛乳」の西日本の一大製造拠点。そのほかヨーグルトなどの乳製品も手がけています。
九州工場では約200人が働いていて、そのうち製造課にはおよそ135人が在籍しています。課長としてもっとも気を配っているのは、24時間工場をフル稼働させる中で生産をいかに安定させるか。品質管理の面でリスクが生じないよう設備のメンテナンスを徹底しているほか、品質検査の結果に基づくすばやい意思決定を心がけています。
製造課の社員はベテランの方もいれば、入社したばかりの方など多様です。経験値の異なる人財が混在する中、決められた通りに作業を進められるよう日々奮闘しています。
これまでは人手不足に悩まされてきましたが、募集要項の改善を行ったことで、この春は予想を上回る応募がありました。工場の仕事では覚えるべきことが多く、煩雑な作業や責任の重い業務も。採用した方に定着していただくためにも、初めからあまり詰め込みすぎず、時間をかけて職場に慣れていただければと考えているところです。
九州という土地柄のためか、当工場には明るく朗らかな性格の方がとても多いと感じています。年齢や性別を問わず皆よく話しますね(笑)。これまでいくつもの工場で勤務した経験がありますが、これほど賑やかな職場は初めてです。誰もが集中して働けて、仕事が終われば皆が打ち解けて話せるような、メリハリのある職場にしていけたらいいですね。
長年働いて気づいたワークライフバランスの大切さ。健康と幸せを中心に据えた働き方
大学では農学を専攻し、卒業後は食品業界で働きたいと考えていました。私が就職活動をしていたのはインターネットがない時代。就職情報誌などを頼りに企業研究する中で、若手に裁量権を与え仕事を任せている印象を受けた明治に目が止まりました。また、乳製品を扱う会社でありながら医薬品にも手を広げるなど、さまざまな事業に積極的なところも惹かれた点です。
入社して最初に配属されたのは北海道の本別工場です。その後、愛知工場や北海道の十勝工場、埼玉県の戸田工場などを経て、2020年に今も在籍する九州工場へ。十勝工場では、建設から生産開始まで立ち上げのプロセスに関わり、現在に至っています。
入社して約27年の月日が経ちましたが、3年間の本社勤務を除く24年間が工場勤務です。工場で仕事をする上で一貫して大切にしてきたのは、働く方一人ひとりに徹底して向き合うこと。管理する立場にある者として、すべての方の背景には、家族や友人などその方のことを大切に思うたくさんの人がいることを、いつも意識しながら接するようにしています。
そう考えるに至った出来事がありました。親しい仲間が立て続けに病気を患ってしまったことがあったんです。仕事が忙しいときは身体のことが後回しになりがちですが、そうやって健康を害してしまってはなんの意味もありません。このことをきっかけに、いっしょに働く人を守ろうという、強い気持ちを持つようになりました。
1日のうち仕事をするのは8時間ほどですし、1年のうち3分の1は休日です。これだけ仕事以外の時間があることを考えれば、プライベートを充実させることが心身の健康を保つ上でいかに重要かがわかります。誰もが元気に働けるためにも、私生活を豊かにすることの大切さを伝えようとしてきました。
九州工場に来てからは、とくにワークライフバランスを自ら実践しようと努めています。たとえば、私は今単身赴任中なのですが、休日にソロキャンプを楽しむなどプライベートの時間を大事にしていることを積極的に周囲に話すようにしています。仕事一辺倒ではない働き方や生き方があることを、自ら手本となって伝えていけたらと考えています。
ボランティア活動に学ぶリーダーシップ。男性の育休取得や女性活躍の推進にも力を注ぐ
ワークライフバランスを重視するなかで、私自身、率先してプライベートの時間を充実させるべく、とくにスポーツボランティアの活動に力を入れてきました。
東京マラソン財団のオフィシャルボランティアクラブと、日本財団のボランティアセンターにリーダー登録していて、予定が合えば参加するようにしています。
毎年3月に開催される東京マラソンでは、さまざまなチームに分かれてボランティアが活動していますが、私が今まで担当したのは給水ポイントの中でも、スポーツドリンクを用意するチーム。スタートから約5kmの地点で、紙コップを補給する係、ドリンクを注ぐ係、ゴミをまとめる係、ランナーから渡されるゴミを回収する係など、約20人からなるチームのまとめ役を務めました。
ボランティアメンバーは初対面の人たちばかり。最初は戸惑いながらですが、少しずつコツを掴むにしたがって自分で動けるようになったり、協力し合えるようになったり。たった5時間ほどの短い間に目に見えてチームが成長し、最後には大きな達成感を得ることができます。
そうやってチームが成長する過程は、仕事とまったく同じ。職場に新しい方が入ったり、リーダーが変わったり、チームの成熟度によって、「この段階では、これをやるべきだな」「この部分の人手が足りないから、こうフォローしよう」という具合に、ボランティア活動でやっていることをそのまま部下のマネジメントや育成に活かすことができています。
たとえば男性の育休取得については、この1年で当工場の製造課で働く男性のうち7人が育休を取得しました。他の工場に比べても多い取得数です。職場のリーダーたちが男性の育休取得を前向きに捉え、「遠慮せず取得するように」としきりに働きかけてくれた結果だと思っています。
当然、周囲には負担がかかっているはずですが、育休取得後に復帰した方々もそれを知っていて、「仕事で恩返ししよう」という気持ちで懸命に働いてくれています。「おかげさまで戻ることができました」という育休取得者の思いと、「おたがいさま」という周囲の気持ち。みんなの気持ちがうまく噛み合って、良い空気が醸成されつつあるのを感じます。
また、2022年から女性活躍推進プロジェクトにも取り組んできました。当工場では女性社員が少なく、女性社員ならではの困り事が埋もれがちになっていました。女性活躍推進プロジェクトでは女性特有の悩みなどについて提案してくれるので、少しずつですが改善につながっています。プロジェクトチーム自体は昨年いっぱいで解散しましたが、それを引き継ぐかたちでミーティングは継続しています。
ボランティアリーダーの楽しさに目覚めて。一人ひとりが輝けるチームづくりをめざす
そもそも、私がボランティアに参加するきっかけは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)のためのボランティアの募集でした。そしてボランティアの参加にあたり開催された社内研修では、ボランティアやコミュニケーションの基礎知識、チームの形成などについて講義があり、その後学んだことを実践するワークが行われました。
講義では、「傾聴」の姿勢が大切であることや、相手の気持ちを尊重しながら自分の感情や思考を伝える「アサーティブ」が、組織の中に心の安全や居心地の良い雰囲気をもたらすことを教わりました。リーダーとは「立場・役割」にすぎず、リーダーシップは「コトとヒトを動かす力」。
このリーダーシップを発揮する魅力に気が付き、最初から思い切って、自らリーダー役を買ってでました。研修でのリーダーの経験や、その後の東京2020大会のボランティアがあまりに楽しくて。初めて出会う方同士で構成されるチームをまとめる難しさを実感すると同時に、チームの力を最大限に発揮する楽しさに魅せられました。最近では福岡で行われる世界水泳選手権にもボランティアで参加する予定です。
この東京2020大会がいろいろな意味でターニングポイントになり、多様性について考える日々を送るようになりました。仕事とはまた違った充実感を味わうことができるボランティア活動は、いまや私の心身の健康を保つ上で欠かせない存在。またとないリフレッシュの機会になってもいます。
自分がやりたいことや興味のあることを見つけるのは素敵なこと。各々が自分と向き合って、やりたいことにチャレンジし続けられるような環境づくりをしていきたいと思っています。今の私の仕事の大部分を占めているのが、一人ひとりとの面談の時間。製造課の全員が自分らしい働き方、生き方への関心と理解を深めるために、できる限りのことをしていきたいですね。
実業家として有名な稲盛和夫氏は生前、天台宗の開祖、最澄が唱えた言葉を用いて、より良い仕事をするためには、“利他の心”に立って判断すべきだと教えていました。相手の心を思いやる気持ちがなければ、チームはうまく機能しません。仕事でも仕事以外でも、思いやりに満ちた存在でありたいと考えていますし、社内の皆にもそうあってほしいと願っています。
※取材内容は2023年7月時点のものです。

