品質保証課の業務と並行してERGに参加。差別、偏見、不公平のない世界をめざして
現在、私は株式会社 明治(以後、明治)の神奈川工場の品質保証課に所属しています。資材や原価、生産実行システム、ロス分析、新商品のリニューアル品の管理など、工場の品質に関わる業務全般を担当しています。
明治が取り扱う商品は実にさまざま。その中でも神奈川工場は、牛乳やヨーグルトを主に製造しています。
普段の業務に携わるかたわら、明治が取り組むERGのひとつ、LGBTQ+アライネットワーク“Marble”のメンバーとしても活動しています。これまでの人生の中でも、差別、偏見、不公平に対して課題意識を持ってきましたが、気づかないうちにそれらに加担しないためには知識が必要だと考え、参加することにしたんです。
ERGに参加するきっかけは、オリンピック・パラリンピック推進部主催のLGBTQ+に関するオンラインセミナーに参加したことです。それまでも“LGBTQ+”という言葉は知っていましたが、深く理解はしていませんでした。しかしセミナーを通じて勉強し、左利きの人やAB型の人と同じくらいの数だけ当事者がいること、身近にもたくさんいるであろうことを知りました。
無知でいると、悪気なく間違った行動をしてしまう可能性があります。想像していた以上に多くの人が当事者である現実に驚くと同時に、正しい認知を普及させることの重要性を痛感しました。
工場での勉強会開催、東京レインボープライドへの参加を通して得た手ごたえ
セミナーに参加した年の冬、社内でLGBTQ+アライネットワーク“Marble”が立ち上がり、すぐに参加を決めました。
同活動ではまず、メンバーが知識の幅を広げるための勉強会が行われました。LGBTQ+に関する基礎知識集のような資料をつくったり、アライとしての宣言をしたりしたのを覚えています。
そして2023年のバレンタインデーには、“明治ミルクチョコレートCUBIE”のDiversityパッケージが発売されました。これは、Marbleのメンバーたちの「多様な方の気持ちに寄り添う商品をつくりたい」との想いと行動から生まれた商品です。このチョコレートをきっかけに社内外にLGBTQ+アライの活動を広めていきたいという気持ちが強くなりました。
同商品の発売にあたって、私は神奈川工場で働いている社員にこのチョコレートを紹介し、配布しようと考えました。任意の場所に置いて自由に持っていってもらうこともできましたが、より良いかたちで社内に浸透させるために、工場に出勤している人が全員参加する唯一の場である月例会で勉強会を開催しようと思ったんです。
工場長に相談し快諾を得て、月例会の中でD&IやLGBTQ+アライ、Marbleの取り組みなどについて説明し、「この活動に対して賛同していただける方はチョコレートを取りに来てください」と伝えました。総勢160人ほどいる工場スタッフのうち、チョコレートを手にしてくれたのはおよそ8割。Marbleの活動をいままで意識していなかった人たちにも働きかけられたと手ごたえを感じています。
もうひとつ印象に残っている取り組みがあります。2023年の4月に東京の代々木公園で開催された“東京レインボープライド2023”で、CUBIEの配布や沿道応援に参加したことです。
レインボープライド自体はニュースなどで知っていて、北海道の事業所にいた当時、2022年にMarbleのメンバーが参加したときの活動報告にも目を通していました。2023年のイベント開催時には神奈川工場に異動していたので、今回は聞くだけ、見るだけではなく、実際に体験してみようと参加を決めました。
明治は現在、LGBTQ+を支援しているプライドハウス東京というNPO団体と協働しています。CUBIEもそのプライドハウス東京さんと共に開発していて、当日は同団体のブースをお借りし、立ち寄ってくださったお客さまにCUBIEを配布しました。
天気にも恵まれ、来場者の方々の誰もが良い表情だったことが記憶に残っています。報道によると、のべ24万人が参加したそうですが、これは私の故郷の人口より多い数字。これほど多くの人が多様な性に関心を持っていることにとても感動しました。
また、いろんな企業がブースを出している様子を見て、LGBTQ+の分野に社会の高い関心が集まっていることを実感しました。これから先、国内でもますます理解や取り組みが進み、世界の感覚に追いつくことを期待しています。
より良い社内環境構築をめざし、LGBTQ+の枠を超えたD&I推進事務局を発足
一連の活動に参加して、有志によるボトムアップの活動の力の大きさを実感しました。私は品質保証の領域にいるので、商品を開発することに高いハードルを感じてたんです。CUBIEのようにERGの活動が商品化につながることを知って、ERGの意義や可能性を再認識しているところです。
普段工場で働いていると、お客さまと直に接する機会があまり多くありません。東京レインボープライドで来場された方にCUBIEを手渡しし、直接説明したり喜んでいただいたりした経験も有意義なものでした。
2023年4月には、工場で新たにD&I推進事務局も発足しています。神奈川工場の工場長は、自身も社内のLGBTQ+の研修に参加した経験があるなど、同様の活動に理解があり多様性に関する取り組みにも展望を持っています。そこに、MarbleをはじめいろいろなERGの活動に参加している私が加わったことで、正式に事務局というかたちで工場内において活動を始めることになりました。これから先、このような自主的なD&I推進活動がいろいろな事業所にどんどん波及していってほしいと思っています。
明治ではLGBTQ+、チャレンジド、女性活躍、グローバル人財、シニアをD&Iの5大領域として、その活躍推進に力を入れています。その一環として、神奈川工場のD&I推進事務局では神奈川工場内で働いているチャレンジド、シニア、女性の方々に対象を絞り、支援活動を始めました。具体的には3人の事務局員が、神奈川工場内の対象者全員と面談を行い、課題感、困っていることなどのヒアリングを進めています。
面談を通して、私も多くの気づきが得られました。めざす方向性はおおむね見えていて、近いうちに工場の外に向けても周知していきたいと思っています。神奈川工場だけの問題ではなく、ほかの事業所にも応用できることがたくさんあると考えているからです。
当事者の心理的安全性を高めるため、活動をもっとオープンなものに
自分たちが思っていた以上にLGBTQ+の人は困っていて、そのほとんどが、「どうしようもないから」と割り切っているのが現状です。まずは当事者の周りの人々が中心になって、「居心地が良い」と当事者が実感できるような職場づくりをしていくことが大切だと思っています。
当事者の人がカミングアウトすべきとは考えていませんが、本人の意志で“しない”のと、“したくてもできない”のとではまったく違います。当事者らの心理的安全性を高めるためにも、周囲に知識や理解が浸透していることが一目でわかるような環境づくりが急務だと考えています。
とくに工場のような安心安全が第一の環境では、新しい理解が浸透しづらい面があるものです。私の個人的な印象かもしれませんが、相手への理解が足りないと、コミュニケーションが減るような気がしています。
上司や同僚と深い話をしたい人もいれば、そうでない人もいるのは理解できます。でも、正しい知識と相手を理解したいという気持ちがあれば、より安心感を与えることにつながり、ひいては、LGBTQ+に限らずすべての社員にとって働きやすい環境の構築につながると思っています。
いまも素晴らしい人がたくさんいますが、そうした知識や想いを備えた人がさらに増えていけば、さらに良い組織になれるはず。明治なら、それが必ず実現できると思っています。
※ 記載内容は2023年6月時点のものです

