店舗に積極的に足を運び、現場の声を聞く。商品本来の魅力を伝える販売戦略とは
2021年からタイのバンコクに赴任し、日本で製造された粉ミルクと、粉末美容コラーゲン「アミノコラーゲン」の輸入販売を担当しています。広告代理店や販売代理店と協力し、費用を管理しながら、年間を通して店頭やECサイトでの販促方法や商品の販売戦略を考えることが主な仕事。日本人駐在員は社長と先輩と私の3人で、これにタイの現地社員12名を合わせた15名体制で運営しています。
私の1日の仕事は、バンコク北部に位置するオフィスに出勤するところから始まります。社内や本社とのミーティングや、広告代理店や販売代理店などと打ち合わせすることが多く、その合間に今後の戦略や販促方法を考えていると、1日が終わるのがあっという間。
内勤中心ですが、月に数日程度は商品が販売されているスーパーマーケットやドラッグストアなど、積極的に現場に出るようにしています。というのも、店舗ではさまざまな販促やイベントを実施しているのですが、そこでいろいろなお客さまと実際に会話しているのは、PCと呼ばれる販売員さんたち。販売員さんを配置しているタイミングは商品に対するお客さまの声を聞くことができる貴重な機会となっています。
また現場では、陳列の仕方や位置、品切れの有無のほか、商品の販促が正しく実施されているかどうかもチェック。販売員さんを配置している店舗を訪ねるときは、皆さんがお客さまにきちんと呼びかけをしているか、お客さまからの質問への応対がきちんとできているかを確認しています。
販促業務を担当する上で意識しているのは、商品価値を正しく伝えること。タイの広告物やイベントには、現地の方の趣向に合わせた楽しいものや賑やかなものが少なくありません。ところが、私たちが販売している粉ミルクや粉末美容コラーゲンに求められるのは、商品の機能性の高さを説明する“説明型”の販促です。
少し前までは、“メイド・イン・ジャパン”は良いものというイメージがあったのですが、それに便乗して、パッケージに日本の国旗がついたり、カタカナがデザインに取り入れられたり、日本ぽさをアピールした商品が増えました。それにタイの消費者が気づいて、最近では本当に商品として評価できるのか、シビアな目で商品を選ぶようになってきています。
そのため日本の商品というだけでは美容や健康への関心が高い層にはリーチできません。「本来の商品価値を伝えるにはどうしたらいいか」、できるだけ現地の人の好みやタイらしい要素を残しつつも、試行錯誤しながら販売戦略を展開しています。
「日本の食の素晴らしさを海外に伝えたい」という長年の夢がかなって、タイへ
大学時代はリベラルアーツ(※)を専攻。国際教養を学びました。国際的な場にふさわしいコミュニケーション・スキルを身につけることがテーマとなっていて、留学が必須。そのためオーストラリアに1年ほど留学しました。
オーストラリアで感じたのは、日常的に食べる食事が、あまり口に合わなかったこと。日本では100円でおいしいものを見つけることができますし、コンビニはおいしい食べ物で溢れています。日本で生まれ育ったために当たり前になっていましたが、日本の食文化がいかに素晴らしいかを海外に出て初めて思い知らされました。
それ以来、「海外に日本の食文化の素晴らしさを伝えたい」という想いから、日本の食品メーカーに入社したいと考えるように。そんな想いを軸にして就職活動を行い、当社と縁があって現在に至っています。
入社してからこれまで、たくさんの部署を経験することができました。粉ミルクや栄養食品のマーケティングを担う部署に半年間ほど在籍した後、関東支社の営業部へ。そこで2年ほど働いてから、関西支社と関東支社のそれぞれで病院や介護施設向けの流動食の営業を担当しました。
さまざまな部署を経験する中でも、入社以来一貫して「日本の食を世界に発信する側に行きたい」と希望を出し続けてきました。
その熱い願いがかなうかたちで、2017年、海外事業部輸出営業グループへ配属。ここでは、日本からタイ向けの商品の輸出や、タイの粉ミルク事業の立ち上げ準備、海外OEM生産拠点の調整業務といった経験を積みました。
そして海外事業部での3年半の勤務を経て、いよいよ2021年、念願の海外駐在であるタイ明治フードへの赴任が決まりました。
海外駐在のチャンスはなかなか回ってこないと考えていたので、タイに行けることが決まったときはとても嬉しかったです。年に1度会社に希望を出す際は必ず、海外で働きたいと伝えてきました。異動が決まったときは、現地でやっていけるかどうかという不安よりも、海外で挑戦できるという期待で胸がいっぱいに。心躍る瞬間でした。
※ グローバルリーダーの育成を目的として、現実社会で直面する特定の分野の視点だけでは解決し得ない複雑な問題に対し、種々の学問分野を架橋する力を養うこと
タイで直面した異文化の壁。互いの理解があれば、シナジーを生み出せる
タイでは事業の立ち上げに携わるということで、なんとかして軌道に乗せようと気持ちを掻き立てながら海を渡ったのですが、いざ蓋を開けてみると、事業を取り巻く状況は厳しいものでした。
商品の品質自体は胸を張れるものなのですが、その価値をうまく伝えきれておらず、なかなか現地の人に商品を手に取ってもらえません。想定外の課題に直面し、思い描いた販売戦略の通りにはいきませんでした。
タイでは、“楽しそう”や、“おもしろそう”といった印象がお客さまの関心を引いて商品を手に取る傾向があります。お菓子のように嗜好性が高い商品には、そうした販促方法が馴染むのですが、粉ミルクとなるとそうはいきません。赤ちゃんが飲むものなので、ターゲットが絞られており必要な人しか手に取らないからです。
商品イメージが非常に大事になるので、タイでマルチに活躍する女優さんをアンバサダーに起用したりしましたが、もっと商品価値がちゃんと伝わる内容にブラッシュアップしていかなければいけないと模索しています。
また、タイにはおおらかな性格の方が多く、将来に備えたり早めに対策を練ったりするのではなく、事が起きてからその場で対応すればいいと考える傾向にあります。そのため、売上予測や需給予測、数カ月先の販促の検討といった事前準備はどちらかというと不得意。とはいえ、それらは事業運営にとても重要な業務であり、そもそも文化の違いがあることを私たちが認識し、気を配らなければいけないと考えています。
文化的背景の違いや考え方のギャップへの適応には今も苦戦していますが、タイで販売戦略に取り組むおもしろさも、まさにそこにあると感じています。日本で行ってきたことをタイでも横展開するのではなく、異文化ならではの要素をうまく組み合わせることができれば、シナジーを生み出せると考えているからです。
しかし、それを実現するのは簡単なことではありません。根本的な考え方の違いを理解し合えないまま日本式のやり方で進めてしまえば、現地社員の不満が募るだけ。タイの文化や商慣習を勉強しつつ、何をするときもまずこちらの考えを丁寧に説明して理解を得るよう心がけています。
厳しい状況の中での試行錯誤が続いているものの、小さな変化でも起こすことができれば、それを突破口として大きな力に変えていけると信じています。販売代理店との交渉の成果なり、自分が携わった広告物なりをきっかけに商品を手に取る方が増えるなど、目に見える成果につなげられるよう、これからも励んでいきます。
希望や期待を胸に、迷いなく海外へ。海外赴任での経験が成長のきっかけに
異文化に対する高い関心は今も変わりません。これからも海外に携わる仕事を続けていきたいと思っています。経験もスキルもまだまだ発展途上ですが、この駐在生活で得たものを次の仕事につなげていけるようなキャリアを積んでいきたいですね。
実際に海外赴任を経験して感じているのは、環境が大きく変化する海外での生活は、自分の考え方やキャリア、人生を見つめ直す絶好の機会だということ。日本にずっといたらきっと知ることさえなかった、さまざま業種の方や働き方をしている方との出会いはとても刺激的です。
ただ、海外駐在の期間は限られているため、密度の濃い時間を過ごすためには、そこで自分が何を得たいかを事前に明確にしておくこと、優先順位を付けて行動することが大切です。
また、海外赴任を経験して、明治の海外におけるネームバリューの大きさをあらためて思い知りました。当社の社員というだけで、バックグラウンドのある人として信用してもらえて、仕事がしやすいのが大きな魅力だと感じています。
海外移住するとなると、生活面や給与、制度、家族との暮らしなどの面で不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、私は不安よりも希望がかなう喜びや期待のほうがずっと大きかったですし、迷いはありませんでした。実際に赴任してから、つらいこともありますが同時にとても楽しく、充実した生活ができています。
新しい挑戦に大事なのは自分の想いをあきらめずに周囲に伝えていくこと。そして希望や期待に目を向けて、一歩踏み出していってほしいですね。
※ 記載内容は2023年5月時点のものです

