コンサルタントの枠組みを超える。自分は何者か
大きな転機は、静岡県職員の皆さんと仕事をさせていただいたことでした。静岡県はDXに積極的に取り組む自治体の一つで、デジタル庁が設置された2021年以降、デジタル戦略課を設けDXに取り組んでいます。LTSではデジタル戦略課設立時から静岡県職員を巻き込んだ研修を複数受注させていただいており、そこで多くの静岡県職員の皆さんと接する機会がありました。その過程で静岡県職員の皆さんの「地域にかける想い」を目の当たりにして、「自分は地域に何が貢献できるのだろうか」と問う機会が増えました。
直近ではDX推進リーダーの育成に向けたワークショップで採択いただき、座学で業務分析、改善計画づくりをお伝えするとともに、伴走しながら実践力を身につける機会に携わることができました。実践的なDXワークショップの研修事業は、県にとって初めての取り組みでしたから、失敗はできない、上手くいかなければ今後の静岡県の取り組みに関わるという責任も感じていました。
しかし、研修最後の報告会で受講した職員の皆さまが自分たちの言葉で改善計画をプレゼンしてくれた時、「少しは自分たちも地域に貢献できたかもしれない」と感じました。LTSが座学や伴走支援でお伝えしたこと以上に、皆さまが真摯に目の前の業務や課題と向き合っていただいたおかげで、改善の兆しが見えてきたからです。アンケートで自己認識をたずねたところ、スキル向上を感じた方・変革活動に自信を持てた方がいずれも85%を超えました。静岡県からも評価いただいたことで、翌年度の公募でも、自信を持って提案に臨むことができ、結果的に2年連続で採択いただき、徐々にLTSが得意とする領域で地域に貢献する手応えを感じることができています。
企業向けのご支援では、人材開発、BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)など、これまでの関係性やLTSの強みを生かした活動が多くなっています。また、静岡県事業を通じてスタートアップの支援、大学や研究機関との連携、スポーツチームの支援など、多様な方々を巻き込みながら多くのプロジェクトに関わる機会をいただいています。
多様な方々と関わることで、地域・社会そのものの課題を日常的に考えられる環境は、仕事と生活がつながっている感覚につながり、地域で働く面白さになっています。
自分の中で「コンサルタント」という職種の枠組みが少しずつ溶け、枠組みに捉われない、むしろ枠組みを超えていく必要性を感じています。それは「コンサルタント」という職種ではなく、「地域で課題解決を担う人材」という一人のビジネスパーソンとしての自認が強くなったからです。自分の仕事を「〇〇領域の担当」と区切らずに、地域や社会に対してLTSとして何ができるかを考える機会が増えてきたからかもしれません。
地域で何ができるか、その一つがビジネスアーキテクトの普及と実践です。
静岡をビジネスアーキテクトの領域で勝負できるチームにする
2026年春、経済産業省が策定する「デジタルスキル標準(DSS)」で、ビジネスアーキテクトという職能が再定義されました。生成AIなど急速な社会の変化に伴うDXのX(変革)をリードする人材です。LTSはこのビジネスアーキテクトの領域では国内有数のノウハウと実績を持っています。
目指すのは、先ず静岡のチームをビジネスアーキテクトの領域で勝負できるようにすること。数年前からLTSの上司、先輩が担当する企業研修に同行し、ひたすらメモを取り、自分でも話せるようにしてきました。また、私が担当した研修で得たリアクション、過去の支援での経験を付加するなど、よりわかりやすく伝えるにはどうしたらよいかを探求しています。先輩に倣っていくうちに自分なりの伝え方、知見が確立できている実感があります。私自身、講師やプロジェクトを経験するたびに毎回新しい気づきが得られており、日々成長痛を感じています。
こんなことを振り返りつつ、6年前、2020年の自分の言葉を読み返して、率直に「時間が経ったな」と感じています。
6年前は、部門の中の一人のメンバーでした。リーダーを任されることもありましたが、責任を負う立場ではありません。今は部門長として組織そのものに責任を持ち、立場としては180度変わりました。
当時の「自分がなんとかするんだ」という気概は、今も変わっていません。ただ、年を重ねるごとに、自分一人でできることの少なさを痛感するようになりました。チームに対してもそうですし、「力を貸してもらい、みんなでなんとかする」ことを強く意識するようになったと思います。
この意識は、地域に対して責任を負う機会を重ねていく中で明確になっていきました。一
例えば、静岡県から受託した「スタートアップ支援」の事業では、知見や経験豊富なメンバーが他エリアに多くいました。もちろん、静岡にもその領域に詳しいメンバーはいたものの、一定以上の規模が求められる中で、他エリアのメンバーとの連携は欠かせませんでした。実際に、LTS一丸となって支援していくことで、徐々に信頼が得られるようになり、事業の過程で関わった皆さまからいただいた「LTSの○○さん(静岡以外のエリアのメンバー)のおかげで助かりました!」というお声は、静岡の地域を任されている私にとってはとても有難いお言葉でした。
このように「自分一人では難しいけれど、LTSの知見を結集すれば力になれることがある」という実感を得られたことで、「LTSとして貢献する」ことを強く信じられるようになりました。
印象に残っているメンバーがいます。
そのメンバーは、配属されたばかりのころは周囲と大きな差はないメンバーでした。しかし、フィードバックしたことを一つひとつ愚直にこなし、自分で目標を立てては着実にクリアするプロセスを徹底的に繰り返していました。何より、ホウレンソウといった基本的なことを欠かさず行ってくれました。
そのような当たり前が積み重なると、こちらも一段上の依頼をしやすくなり、徐々に難しい仕事も任せられるようになりました。最初から完璧な人はいません。ただ、積極的にコミュニケーションを取ってくれることで、どこで悩んでいるのか、どう仕事を渡せばやりやすいのか、その人の特徴も見えてきて、一緒に成長していく道のりを歩みやすくなりました。
このことからコミュニケーションの量は本当に重要だと感じられたため、さまざまなメンバーと関わる際に、些細なことでも情報伝達しあうことを意識するようになりました。
今では、そのメンバーの方から私が気づいていない視点で相談を持ちかけてくれることや、社内の(私がまだ知らない)情報を共有してくれる機会が増え、メンバーの存在そのものが、私自身の成長の源泉にもなっています。
「変人」が集まる静岡から、日本の地域を変えていく
自分が成果を出すことと、責任者として誰かが成果を出せるようにすること。どちらが難しいかと聞かれたら、同じくらい難しい、というのが今の実感です。
私自身が一人のビジネスパーソンとしてもっと成長しなければと思うと同時に、部門長としてチームが持てる力を発揮できる環境を整えることなど、まだやるべきことに終わりは見えません。
だからこそ、お客様から次の相談をいただいたり、「また野田さんと仕事をしたい」と言われたり、メンバーが活き活き働いている姿を見たときには、「自分も少しは周りに貢献できたかもしれない」と思えるようになりました。
AIが急速に進化する時代だからこそ、お客様ならではの事情に応じて課題をどう解釈するか、外れ値をどう捉えるかということの重要性が、以前にも増して大きくなっています。「人にしかできないことは何か」と聞かれたら、今時点では、余白を感じる/つくること、強いストーリーテリング、ではないかと考えています。人が明確に言語化できていない想いや、語気やニュアンス、周囲の反応、そうした蓄積を引き出し、仮説や提案の中に織り込んでいくことを通じて、AIが得意とする王道/標準的なアウトプットを、一般的な“人”ではなく情報を届けたい“個人”が強く共感できるストーリーにしていくことは、人だからこそ価値を発揮できることであり、私自身も感覚を磨いていかなければならないと感じています。
このような時代だからこそ「この人と一緒に仕事をしたい」と思ってもらうために必要なのは、自分自身の感情やスタンスを持ったうえで、他者の感情やスタンスを受容して意思決定に繋げていけることだと考えています。そのため若手コンサルタントには、AIを使いこなしながらも“人の感情”や“熱量”に直接触れる機会をたくさん持ってほしいです。
静岡のエリアを考えると、根底とするLTSのミッション、ビジョン、バリューは共有しつつも、まったく同じ価値観を持つ人の集団は目指していません。今いるメンバーはひとりひとり個性があり、それぞれが別の目標を持った、いい意味での“変人“が集まっていると認識しています。今後も多様な“変人”、自分や今いるメンバーとは異なる目標を持つ人と働きたいと思っています。
例えば、静岡が心の底から好きで盛り上げたい人、別の地域を盛り上げるために修行として静岡に来る人、社会課題に本気で向き合いたくて現場に触れたい人、成長のために組織が未成熟な地方をあえて選ぶ人、家族との生活を見据えて静岡を選ぶ人。多様なタイプの人が今のLTS静岡にはいます。これからも、まだ言葉にできていない理由や目標を持って静岡に来てくれる“変人”たちと働けたら、私自身も新しい価値観に触れることができ、それほど面白いことはありません。
LTSの多様なプロフェッショナルのハブとなり地域事業を拡げていく
先日、静岡勤務確約で、他地域出身の方が内定承諾してくれました。「地元の地域を盛り上げるため、先ずは静岡で仕事をしたい 」ということでした。私は地域部門の在り方として、地域に人を囲い込むのではなく、地域に人を循環させることを一つのテーマとしているため、このような他地域に思い入れのある人を仲間に迎え入れることに対して肯定的に捉えています。
先輩の言葉を借りると、ドイツ・ブンデスリーガのボルシア・ドルトムントが一つのモデルです。若手選手の登竜門的なチームであり、このクラブを経て次のステージに挑戦する選手も数多く存在します。そのクラブ出身であること自体が価値になるようなモデルです。LTS静岡出身であることが価値となり、OB・OGが自分の目標とする場所で活躍する、ひいては他の地域へ広がることで、日本全国にポジティブな循環を起こせると信じています。
また、LTSには、データやAI、DX、人材育成…とプロフェッショナルが多くいます。こうした先輩、同僚たちと、地域やお客様をつなぐハブのような存在になることが地域で事業を持つ意義だと考えています。地方での仕事は、目先のことだけではなくブランドづくりでもあります。「課題解決といえばLTS」という認知を、静岡につくっていけると信じています。
静岡はとても恵まれた場所です。都市機能が充実していて、東京へのアクセスも良い。一方、多くの地方と同じく、人口減などの課題はシビアです。静岡での取り組みを、札幌・仙台・広島・福岡…といった他の同規模程度の都市でも仕掛けていけると面白いと個人的な考えとして思っています。そうすることで、地方で働きたい人のキャリアに新しい選択肢をつくるとともに、その地域に根ざしたプロフェッショナルの地産地消が実現できます。時間はかかるかもしれませんが、自分たちがひとつひとつの仕事に向き合う中で、地方での雇用という観点から社会課題とも向き合っていきたいと考えています。
6年後、この記事を読み返すとしたら——そのときの自分には、まったく違う景色を見ていてほしい。今とあまり変わっていなかったら、それは停滞です。答え合わせが楽しみです。

