「入浴剤」と「ERP」の意外な共通点
毎日、ほぼ欠かさない「ひそかな楽しみ」があります。入浴剤を、その日の体調やお湯の肌感に合わせて独自の比率でブレンドすることです。いまのお気に入りは、柑橘系をベースに、リラックス効果の高いミルク系のものを2割くらい混ぜることです。
実はこれ、私のERP構築に対する考え方とまったく同じです。
入浴剤のブレンドに正解はありません。同じように、ERPシステムの構築にも、「唯一絶対の正解」はありません。ERPは会計・人事・製造・販売など企業の業務プロセスを一元管理する基盤です。無数の方法があり、利害関係者の全員が納得してつくり上げたのであれば、それがその時の正解だと私は思っています。
最近、主流の「Fit to Standard(標準機能に合わせる)」という考え方も、ただ業務を製品に合わせればいいというわけではありません。既存のものをどう組み合わせれば、そのお客さまにとって新しい価値が生まれるのか。そのためには、業務の背景や現場の声、関係者それぞれの立場を丁寧に受け止めながら、時には考え方を変え、時には間に立って合意点を探っていく必要があります。そうした場面で、私の強みである「適応力」や「人間関係力」を活かし、最適な『配合』を見つけ出すことに、何よりのやりがいを感じています。
広島での原点と30代での決断
キャリアのスタートは、故郷・広島の地場IT企業でした。当初は主婦などの再就職を支援するオフィス系アプリケーションなどのIT教育に携わっていました。時代の流れとともに中小企業向けのパッケージシステム導入が拡大し、私もその現場へ配置換えになったのが20代半ばの頃です。
そこから30代半ばまで、現場でのソリューション導入支援から、社内では部長として部門管理、最終的には役員まで、数十人規模の会社だからこそあらゆる役割を経験することができました。転機となったのは、友人から東京のコンサルティング会社を紹介されたことです。
自分にとって仕事の何が一番楽しいのか、自問自答する機会になりました。そして浮かんできたのは「システムを導入すること」そのものではなく、「システムを使って何を実現するか、どう業務を作るかをクライアントととことん話し合い、一緒につくり上げること」でした。それはまさにコンサルタントの仕事だと気づき、視野を広げたいという一心で転職を決意しました。
外から見えていた活気と、面接で確信した人への向き合い方
前職で8年ほどERPコンサルタントとして経験を積み、キャリアの集大成を考えていた時に出会ったのがLTSでした。
同業なので存在はよく知っていました。外から見ていた印象は、「社員がものすごく活気を持って、自ら文化を作っている会社」でした。実際にオフィスに足を運んだ際、若手社員たちがワイワイと活発に意見交換をしている姿を見て、「ここだ」と直感しました。
ただ、入社を決めた理由は、活気のある雰囲気だけではありません。私がこれまでERP導入に関わるなかで感じ続けてきたのは、プロジェクトの成否を分けるのは、最後はシステムそのものよりも、人や組織がどう変われるかだということでした。
面接で髙橋矢(常務執行役員 Enterprise Transformation 事業本部長)は、システムや技術のことより「ERPと人や組織がどう関わるべきか」ということを語りました。私が現場で感じてきた問題意識を、LTSでは当たり前のように大切にしている。そのことが、印象に残っています。LTSの「人の可能性を解き放つ」というミッションにも強く共感したことをよく覚えています。
ERPを単なるシステム導入ではなく、組織変革として扱う。ITというシステム、デジタル技術ではなく、実はそれを使う「人」に徹底的にフォーカスする。その温かくもプロフェッショナルな姿勢が、私の求めていた環境そのものでした。
現在、大手製造業をクライアントに、プロジェクトマネージャーを務めています。このプロジェクトで感銘を受けたのは、クライアントの役職者の方々が「自分たちが決めるシステムなのだから、自分たちが責任を持つ」という強い覚悟を持ち、自ら打ち合わせに参加し、積極的に協議されている姿勢です。
未来への「配合」 チェンジマネジメントと広島への想い
残念ながら、世の中のERPプロジェクトでは失敗するケースもあります。その多くは、技術的な問題ではなく、小さな「想定外」を全員で見て見ぬふりをしてしまう、人間関係やプロジェクト体制の欠如にあると私は考えています。もう後に戻れない段階で「できません」や「予算の膨張」が発生したりします。実は、小さなアラートはそれ以前から出ています。背景には、問題を議題にする人間関係ができていなかった、認識違いを放置していた、チーム内で検討・協議する時間がつくれなかったなどさまざまな原因があります。
だからこそ私は、クライアントは「大きな船に乗った仲間」だと考えています。小さなプロジェクトでも現場メンバーとは頻繁にミーティングを重ね、ネガティブな情報こそ隠さず出し合える環境をつくります。若手だろうとクライアントであろうと尊重し合い、「これどう思いますか?」と問いを重ね、一緒に協議する中で築いた信頼関係が、プロジェクトを成功へと導くのです。
さらに現在、LTSの新しいサービス構想を練っているところです。実際にERPプロジェクトを始める前に、体制や意識を整えるための「チェンジマネジメント支援」です。
「Fit to Standard」「標準機能に合わせればコスト減になる」という言葉の裏で、実際のユーザーに重くのしかかる役割に対し、プロジェクト開始前の疑似体験や階層別インプットを通じて正しく理解し、プロジェクト推進において必要な体制づくりや意識改革を進めたいと考えています。ERPプロジェクトの準備段階から伴走することで、より多くの企業の変化を支えられるのではないかと考えています。
LTSは広島にも拠点があります。いつか、広島にこの経験を持ち帰ることができないか、とも夢見ています。地方には、DXや人手不足に悩む中小企業がたくさんあります。LTSが大切にしている「人に寄り添うコンサルティング」を展開することで、地域経済の活性化に貢献できると考えています。
イノベーションは、何かの大発見や大発明だけではありません。既存の技術やツール、思考を組み合わせることで、想像以上の新しい価値を生み出すことができます。これからもLTSの仲間やクライアントとともに、一社一社にとって最適な「配合」を考えながら、変化を前に進める仕事に向き合っていきたいです。

