社員の強みを活かせる道筋をつくる──新たな人事制度の創造により広がる可能性
日本総合研究所で人事部次長を務める横内は、制度企画グループのリーダーとして人事制度全体の企画と社内での定着を担当しています。
「人事部は『多くの優秀な社員がエンゲージメントの高い状態で働いている』状態の実現を通じ、当社の成長に貢献することを目指しています。私が担当する制度企画グループでは、評価・処遇を軸とした人事制度の企画・運用が主な役割となっています」
2024年度、日本総研では大規模な人事制度改定を実施。新制度は「ミッショングレード制度」と名付けられました。
「当社の事業である、シンクタンク・コンサルティング・ITソリューションは、全て人が資本であると言えます。そのため当社では、各事業領域に応じた3種類の人事制度を運用しています。今回は、システム部門と本社部門の方を対象とした人事制度を改定しました。
従来のシステム部門・本社部門向け制度は、『能力発揮』のレベルに応じた等級体系となっていました。もちろん、専門性の高いエキスパートや管理職として成長していく道筋は示していましたが、社員からは、等級の階段を上がっていくこととキャリアを築いていくこととのつながりが見えにくいという声もありました。
そこで新制度では、『期待するミッション』のレベルに応じた等級体系に変更。一定レベル以上では、ミッションによって等級が複線化していく仕様にしました。システム部門の人材で言えば、熟練エンジニア・高度専門人材・組織マネジメント人材、それぞれの系列の中で、社員一人ひとりが成長し、より大きなミッションを担うことができるようになれば等級も上がっていく。
社員の専門能力や技術力の発揮による会社への貢献も、各系列に即した目線から細やかに評価し、処遇に反映できる仕組みとなっています」
新制度では等級体系の複線化によって、当社でのキャリアの可能性を示すことで、社員が自身の志向に合わせたキャリアを主体的に目指すことができる環境を整えています。
「当社の中で目指せることや、できる仕事のバリエーションを『見える化』することで、一人ひとりが自分自身のキャリアをどう構築していくか考えやすくなったと感じています。
加えて今回重視したのは、業務を進めていく上で欠かせない専門的なスキル。コミュニケーション力や組織的な立ち振る舞いも大切ですが、仮に組織マネジメント人材を目指すにしても、それだけでは仕事のレベルを上げていく際に限界があります。
等級体系の変更と並行して、システム開発・本社業務における多様な専門領域ごとに必要なスキルセットを各人が棚卸し、見つめなおす機会も改めて徹底しています。キャリアと、それを支えてくれる専門能力や技術力の重要性を、制度を通じて強く示すことができたと考えています」
共創の未来へ向かって変革する。制度企画担当者が語る、全社一丸での人事制度改定物語
日本総合研究所において、15年ぶりとなる人事制度の大規模改定。このプロジェクトは2022年の夏にスタートし、約2年の歳月をかけて検討が重ねられました。
「これまでも環境の変化を踏まえた制度のマイナーチェンジは常に行っていましたが、大規模な改定は2008年度以来となります。2023年度から新しい中期経営計画がスタートすることもあり、『次世代起点で知見・技術を追求し、顧客・社会と新たな価値を共創』していくというビジョンに向かって、人事制度を抜本的に見直すタイミングだと判断しました。
特にIT業界を取り巻く環境は非常にスピーディーに変化し続けており、生成AIの進展やセキュリティの重要性の高まりなど、数年前には想像もできなかった世界になってきています。この時代の流れに一層機動的に対応していけるよう、新しい人事制度が必要だと判断したんです」
プロジェクトの中心となったのは人事部内の制度企画担当メンバーです。加えて、コンサルティング部門の人事コンサルタントも参画。横内は全体の進捗管理と制度設計の中心的な実務を担当しました。
「制度設計の第一歩として従来制度の客観的な分析を行ったうえで、経営層や管理職、中堅・若手社員などさまざまな人にヒアリングを実施し、それぞれの立場で感じている課題意識を丁寧に把握していきました。やはり、経営層と社員とでは視点も考え方も全然違いますから、双方の想いに応えていけるような制度にするにはどうしたらよいか、構想を練りました。
新聞に載るような他社の取り組みももちろん参考にはしますが、業種業態、経営方針や置かれている環境もまったく異なるため、そのまま同じことをしても当社が良くなるわけではありません。真っ当に、当社はどうあるべきかを突き詰めていく日々でした。
その中で、世界で先進的と言われている評価の枠組みを、当社は従来制度の頃から既に導入していることに改めて気づくなど、新制度においても大切にしていくべき当社ならではの普遍的な価値観と伝統を捉えなおす機会にもなりました」
キャリアへの気づきを促す。新人事制度導入で見えてきた社員の前向きな変化の兆し
2024年4月の新制度導入に先立ち、2024年2月に全社員に向けた改定内容の説明動画を配信。新制度の全体像について、詳しい説明を行いました。
「社内の反響は概ね好意的で、前向きな感想をいただけることが多くホッとしました。とくに人事制度改定によって『社員が専門性高く成長していけるよう、今まで以上にアプローチしてくれる会社になったのではないか』『成果に対し、評価と処遇でより納得のいく形で報いてくれるのではないか』といった期待に満ちた声が多く、多くの社員に制度改定の意図に共感してもらえてありがたかったですね。
とはいえ、動画や資料を見ただけで制度を深く理解をするのは誰にとっても難しいことだと思います。この制度によって実際のところ自分自身はどうなっていくのかがつかみきれず、不安を抱える社員も多かったはずです。
私たちとしてもその気持ちに寄り添い、社員向けポータルサイトを通じたFAQの発信や、制度運用の主軸となる管理職向けワークショップ実施など、フォローを重ねてきました」
新制度移行にあたっては、社員一人ひとりの等級を従来制度に基づくものから新制度へと読み替え。少しずつ社員の意識にも変化が見られてきたと、横内も実感を強めたと言います。
「前年度評価のフィードバックがひと段落した2024年の夏に、新制度への読み替え対応が行われました。社員それぞれが、新しい人事制度における自分の等級を確認したことになります。
フレッシュな目線で自分の等級で期待されるミッションに向き合い、『今の自分はどれぐらいこのミッションに応えられているかな?』と自問するきっかけになった方もいたようです。
そして、今後のキャリアを自ら選びとっていくために『どのような専門能力・技術力が必要なのか』『そのためにどのような努力をしていったらいいのか』を考え行動している社員の姿に、制度改定の手ごたえを感じました」
「完成形のない挑戦」に向き合う。全社員の活躍を支える人事制度改革の現在地と未来図
人事制度の改定から半年が経過し、社内の変化は少しずつ広がっています。
「さまざまな取り組みの総合的な成果もありますが、新しい人事制度が社員のエンゲージメントやキャリア採用に好インパクトを与えているのではないかと推察しています。定期的に実施しているエンゲージメント調査では、人事制度改定以来、特に若い社員を中心として上昇傾向が見られています。
また、キャリア採用候補者の方に人事制度についてご説明すると、好意的な反応を寄せてくださることが多く嬉しく感じます。当社では制度上で専門能力・技術力の重要性を明示するだけではなく、自ら成長しようとする社員に応えるため幅広い研修ラインナップやサポート策も用意しているので、一端をご紹介するととても驚いていただけます」
一方で、社内での新制度理解・浸透は道半ばです。
「新しい人事制度になってから年度も一巡していませんから、社員は手探りで過ごしているのではないでしょうか。 先ほど、制度改定の中で等級体系を『能力発揮』基軸から『期待するミッション』基軸に変更したことをお話ししましたが、これは天動説から地動説になったぐらいのインパクトがある変更です。
それが人事制度細部の見直しにどのようにつながっているか、私たちには全体感が見えていても、社員一人ひとりにしてみれば自分の身に影響が及んで初めて『今まで慣れ親しんできた従来制度と違う』と実感を持つわけです。人によっては『これなら以前のほうが良かった』と思うこともあるかもしれません。
今はまず時間をかけて社員自身に新制度を経験してみてもらうと同時に、社員の戸惑いには人事部が機を捉え一つずつ誠実に向き合っていくことしか、新人事制度の本質を浸透させていく方法はないと考えています」
人事制度は枠組みを作って終わりではなく、人に関するすべての取り組みの足並みを揃えて初めて強いメッセージを発するもの。横内は今回の改定を経て、これまで以上の進化を目指します。
「今回の改定では、定年後社員の処遇や評価のあり方なども定年前と同様のかたちに見直しました。人事制度は、決して完成形があるものではありません。社員一人ひとりが専門能力・技術力に裏打ちされた自律的なプロフェッショナルとして活躍することで、当社自体も大きな発展を遂げていく。
そのような未来に向けた道標として、これからも人事制度は進化を続けていきます」
※ 記載内容は2024年12月時点のものです
