社会と企業の持続可能性を追求。環境・社会課題に立ち向かうプロフェッショナルの想い
シンクタンク・コンサルティング・ITソリューションの3つの機能を有する日本総合研究所。橋爪は、新しい事業やマーケットの創出を担う「創発戦略センター」でシニアマネジャーを務めています。
「私の専門であるサステナビリティの分野を中心に、お客さまへの支援や社会への情報発信を行っています。具体的には『サステナブル(持続可能)』な社会を実現するために現在世代のニーズを満たすだけでなく、次世代のニーズを満たすように配慮した意志決定が行われるように企業や個人に働きかけています。サステナビリティのトレンドは時代とともに変化していくことが面白いポイントでもあります。
例えば、当初私の仕事は機関投資家や金融機関向けに、環境や社会に配慮した取り組みを行っている企業を調査し、情報を提供することでした。2020年以降、米のBlack Lives Matter運動や、コロナ禍で経済が停滞したことも相まって、それまでなかなか関心が高まらなかった人権やダイバーシティなど、新たなイシューへの関心の高まりを業務を通じて感じることができました。
そしてこの数年は、財務的リターンと並行して社会や環境に良いインパクトを生み出すことを追求する『インパクト投資』に注目しています」
社会課題や環境問題などについて「学生時代から潜在的な興味があった」と語る橋爪。その背景には、父親の影響がありました。
「商社で働いていた父が政府開発援助(ODA)の仕事に関わっていたので、開発途上国の話を比較的身近に感じていました。そういった背景もあり、大学時代も異文化間のプロジェクトに関わるなど、グローバルな課題に興味を持って活動していました」
一方、就職活動時は当時から勢いのあったITに目を向け、大手IT企業へと就職。そこで改めて自身の興味・関心が浮き彫りになったと言います。
「私が新卒入社した2003年は『CSR元年』とも言われ、企業の社会的責任(※1)が注目された年。システムの業務とは直接関係のない話でしたが、社会インフラを担うお客さまと仕事をする上でCSRの勉強会に参加するなど、理解を深めていました。
また、中国でのオフショア開発案件を通じて、産業が経済や社会に与える影響に興味を持ちました。当時、中国のエンジニアの人件費は今よりも安く、日本人を雇った場合との差も大きかったのですが、その案件では、地方から技術を学ぶために集まった比較的人件費の安価な若手のエンジニアが活躍していることを聞きました。
若手のエンジニアにとっては、実案件に入って学べる貴重な体験なのだそうです。この件をきっかけに『アウトソーシングと経済発展』に興味を持ち、大学院でより深く学んでみようと思いました」
※1 企業活動において環境や次世代の配慮を実践し、ステークホルダーに対し責任のある行動を取ること
石炭火力発電から脱炭素へ──時代の変化とともに進化する「環境」への取り組み
IT企業を退職後、イギリスの大学院へ進んだ橋爪。先進国と開発途上国の間で行われるビジネスによって社会がどう変わるかを学び、アウトソーシングに対する理解を深めます。
「院生時代はインドにフォーカスし、ソーシャルアウトソーシングというテーマを調査しました。インドは多様な宗教や文化があり、中国とはまた違った側面で興味深かったですね。インドに関する修士論文を書いていたこともあり、独立行政法人のインド事務所でインターンを経験しました。
それをきっかけとして、大学院卒業後は対インド開発援助のお仕事に携わるために同法人へ入構するご縁を頂きました」
その独立行政法人ではODAに携わり、父親の背中を追うことに。
「父は商社時代にダムやプラントなどのODA事業に関わっていましたが、私はインフラや高等教育に関わっていました。インフラの文脈では、電力設備の敷設のために日本政府がインドに資金を貸し出す際の審査に関わったほか、高等教育の文脈では大学の建物を作る仕事や、日本とインドの先生同士の交流を促進する仕事など、幅広い経験をしました」
日本総合研究所との出会いも、インドに由来するものでした。
「2012年当時、日本総合研究所にインドでのビジネスにフォーカスしたチームがあったことから、インドをきっかけとして入社のご縁を頂きました。入社後はインドへの進出企業や政府の政策実行の支援など、これまでの経験を活かしつつ、時間が経つにつれて、企業のCSR活動の支援など、国内外のプロジェクトで活動の幅を広げてきました」
長年サステナビリティを考えてきた橋爪が、改めてこの分野に携わる魅力を語ります。
「トレンドが変化していく部分が、とくにおもしろいですね。例えば、独立行政法人にいた頃は、電力不足の地域への社会インフラ整備のため、石炭火力発電所の建設事業を案件化する立場にいたのですが、今では180度立場が変わり、環境問題の側面から石炭火力発電所を減らすべきであると発信する側にいます。
このように時代によってトレンドや世の中の価値観が大きく変わっていくことを体験できることが、この仕事の魅力の1つです。日頃何気なく生活していると気付けないことですが、私たちの生きる環境は少しずつ変わっています。
例えば、コロナ禍で人々の外出が極端に減った翌年、CO2の排出量が大きく減少しました。これは、いかに私たちの経済活動が地球環境に負担をかけているか、ということを示しています。このような環境の変化に合わせて、社会が求めているものが移り変わっていくのがおもしろいと感じています」
社会的価値を全社員の心に。2000人規模のウェビナーから見えた企業変革への道のり
入社以来さまざまな業務に携わってきた橋爪は、2023年から始動した「中期経営計画」では、経営企画部と社内に向けたビジョン浸透に向けた取り組みを開始しました。
「当社は、10年後の目指す姿として『社会的価値共創のリーディングカンパニー』というビジョンを掲げました。一方で明確に10年後の自分の姿を思い描ける人や、自分の業務が生み出している社会的価値を理解している人はそう多くありません。自身の業務の社会的価値を認識している人とそうでない人とでは、仕事にかける思いやモチベーションも変わってくるはず。
そう考え、社員向けに、自分の業務から創出できる社会的価値は何か、皆で考え、議論してもらうためのウェビナーとワークショップを開催しました」
同じ会社の中でも、社会的価値は業務内容や人によって全く異なると語る橋爪。これまで有償のコンサルティング・研修として、他社向けに行ってきたウェビナーやワークショップの経験を活かし、準備を進めていきました。
「ウェビナーは2000人を超える社員が視聴し、アンケートにも答えてもらいました。その中で印象的だったのが、『社会的価値の創出という会社の方針に共感している』という問いにはおよそ約85%が共感していたのに対し、『自身の業務が社会的価値につながっている』という問いに賛同したのは半数に満たなかったことです。
社会的価値の創出には共感していながらも、自分の業務の社会的価値が十分理解できていないという方が少なくない、ということが分かりました」
続くワークショップでは、自身の業務と社会的価値を結びつけるためのアクティビティを実施しました。
「こちらも同じチームにいる同僚のファシリテーションに基づき、1回30人ほど、計2回のワークショップを通じて、将来目指す姿と今いる位置を明確にし、そのギャップをどのように埋めていくか、ロジックモデルを使って考えていきました。
実際に模造紙に書き、手を動かしながら考えてもらい、どのような業務でもどこかで何らかの社会的価値とつながっていることを多くの人に感じていただけたのではないかと思っています」
これらの取り組みを経て、橋爪自身も社内の現状がよく分かったと言います。
「全体を通じて感じたのは、このような取り組みを続けていかなければならないということです。ウェビナーやワークショップを通じて、『社会的価値について理解が深まった』などうれしい声も聞こえてきましたが、一方で『やっぱりまだよく分からなかった』という人もいました。
とくに、ワークショップでは合計60人くらいの人にしかリーチできていないので、これからもこのような取り組みを続け、多くの社員が社会的価値を意識しながら働ける状態にしていきたいと思っています」
部署の垣根を超えて広がる「価値共創」の輪。入社12年目で見えてきた「新たな視野」
社員一人ひとりに自身の業務の社会的価値を認識しながら働いてほしい──この取り組みに励む中で、橋爪が見据える未来とは。
「前述のように、ウェビナーなどの取り組みを継続することはもちろん、それが通常の業務でどのような効果を発揮するか測定を行ない、その結果を開示していきたいです。私たちは上場企業ではないので、情報開示の義務はありません。
しかし、『会社がこんなことに取り組んでいて、こんな成果を出した』というインパクトはどんどん社外に開示して行った方が社内も活気付きますし、社外にも当社のよさが伝わっていくと思います」
また昨今社内向けの取り組みとしてもう1つ、橋爪が注力している案件があります。
「アメリカの非営利団体による国際認証制度『B Corp』を実際に取得し、社外に広める活動をしています。B Corpとは環境や社会に配慮した公益性の高い企業を認証する制度。当社では3つの柱を掲げ、活動しています。
1つめはB Corpの取得。当初は当社の社会的価値を測ることを目的に始めたものが、昨年からは認証取得に向けたプロジェクトに大きく育ちました。ESGに関する200ほどの設問に答える必要があるため、全社のあらゆる部門のメンバーに協力して頂き、取得に向けて取り組んでいます。
2つめは情報発信。シンクタンクとしてメディアを通じてのB Corpムーブメントの記事を執筆したり、イベントに登壇したりしています。
3つめは『ドゥタンク』としての活動。当社では、自分たちのことを『シンクタンク』であり『ドゥタンク』であると表現し、発信に加え、実践的な活動に力を入れています。昨年は国内大学のビジネススクールとともにB Corpを学ぶ講座を作り、少しずつムーブメントの拡大に寄与するような活動をしています」
改めて自社への理解が高まったと語る橋爪が、今後のビジョンを語ります。
「日本総合研究所に入社して12年になりますが、社会的価値の創出をキーワードとして社内の人とこんなにも関わったのは初めての経験になりました。日頃関わる頻度の少ない他部署の方々と交流ができ、会社のことをより深く理解できました。
これまでは自分が関わるプロジェクトの範疇で物事を考えてきましたが、今後は今回の経験を活かし、社内外の方々と一緒にムーブメントをつくるなどより大きな視野で物事を考え、リーダーシップをとっていきたいですね」
※ 記載内容は2024年12月時点のものです
