コロナ禍によって生じた社員の健康課題を契機として、2021年に健康経営宣言を発出
2021年度より健康経営を強化している日本総合研究所。社員の健康管理には以前から取り組んでいましたが、本格的に注力するようになったきっかけはコロナ禍にありました。
「もともと当社では、健康診断やストレスチェック、復帰プログラムや外部カウンセリング、メンタルヘルス研修などの施策を実施していました。そこからさらに取り組みを強化することになったのは、コロナ禍を契機として在宅勤務が浸透したことが一つの要因として挙げられます。
通勤がなくなることによる運動機会の減少や、食事・睡眠と言った生活習慣の変化など、社員の健康について懸念が生じていたのです。また対面でのラインケアが難しくなり、セルフケアの重要性が一層増していました。
そこで、社員一人ひとりが生き生きと働き続けられるよう職場環境を整備するため、健康経営の強化に取り組むことになったのです」
そして2021年、健康経営推進のリーダーに就任した堀内。まずは社内への浸透を図ることから始めました。
「健康経営という言葉は、当時は社内でまったく認知されていませんでした。そこで、会社を挙げて健康経営に取り組む姿勢を表明するため、社長からのメッセージと共に『健康経営宣言』を発出。当社では健康を「単に病気でないことに留まらず、心身ともに満たされた状態」と位置づけた上で健康経営を推進する方針を明確に打ち出し、社員への浸透に取り組み始めました。
そして、取り組みを始めるにあたり、まずは健康経営で解決したい経営課題を明らかにしました。そして、課題解決のために何にどのように注力し、その取り組みをどう評価するのかなどを明確化した『健康経営戦略マップ』を作成し、目標値(KPI)を設定しました。さらに並行して、具体的な施策を検討、実施しています。
健康経営の取り組みを浸透させるには、社員自身が、健康に対して興味・関心を持ち、取り組み、効果や変化を実感し、取り組みを習慣に変化させることが重要です。
そこで、施策を考える上で大切にしたのは、社員のリアルな声です。社内のコンサルティング部門の協力を得て、健康に特化した社員アンケートを初めて実施しました。体の不調に関する困りごとが何かを調べることで、健康診断結果などのデータを基に会社が考える課題だけでなく、社員が日常で困っている健康課題の解決につながる施策を講じることを意識しています」
復帰時のケアに限らず事前の予防にも着目。会社として早くから社員の健康管理を支援
健康経営宣言を発出する以前から、社員の健康課題に取り組んできた日本総合研究所。堀内は2005年にメンタルヘルス対策の強化を、2010年にはEAPの導入を担当しました。
「厚生労働省がメンタルヘルスに関する指針を打ち出したことを契機に、当社としても対応を強化することになりました。そしてメンタルヘルス不調者の職場復帰・再発防止を支援するプログラムの充実化などに取り組んだのですが、その中で思ったのは、事後のケアと同時に事前の予防が大切だということです。
そこで社員の心身の不調をサポートするEAP(従業員支援プログラム)を導入し、社員が会社に知られることなくいつでも無料で困りごとを相談できる社外の専門家による相談窓口を設けました。また、当時はまだ法制化されていなかったストレスチェックもいち早く取り入れました。
これらの施策によって、社員が自身の不調の兆しを早期に把握し、必要に応じて専門家に相談できる体制が整いました。さらにストレスチェックの結果を基にした組織状態の把握が可能になり、これを組織運営改善の材料としてマネジメント層に還元するなど、より具体的な予防策を講じられるようになりました」
こうしてかねてより社員の健康課題に積極的に取り組み、現在はさらに健康経営を強化している日本総合研究所。その背景には、人材に対する企業としての変わらない思いがあります。
「当社は直接手に取れる商品を製造しているわけではないため、基本理念である『新たな顧客価値の共創』を実現する社員こそが、何より大切な経営の資本となります。それが、当社が健康経営に注力する最大の理由です。
ただ、会社がどれだけ施策を実施しても、それを活用してもらえなければ健康課題を解決することはできません。健康に関心を持ち、自分事として捉えて活用してもらうために、まず私たちが実施している取り組みそのものに興味を持ってもらうことが必要です。
そこで、通常の施策案内に加え、定期的なメールマガジンの発信、イベントやセミナーの告知、社内のデジタルサイネージでの情報発信など、目に触れる機会を増やし、興味を持ってもらえるきっかけづくりにも尽力しています」
社内外の専門家と共に施策を考案。継続的な情報発信により、健康経営の浸透を図る
社員の健康をケアするためのさまざまな施策を検討するなど、健康経営を推進してきた堀内。悩みとしての声が多い項目は生活習慣の影響を受けるものが多いことから、生活習慣改善のための体験型プログラムを中心に実施してきました。
「肩や首のこりなどの体の痛みや睡眠の問題、目の疲れ、疲労感、女性の健康などが主な課題として挙がりました。こうした健康課題を解決するための施策を実施するのは、当社として初めての試みでした。そこで、最初は社内のコンサルティング部門に在籍するヘルスケアの専門家にも協力してもらい、アドバイスをもらいながら目的の設定やプログラムの選定を行いました。
体の痛みに関しては、理学療法士などの医療専門職とのオンライン面談を通じ、自分に合ったストレッチを学び実践する3カ月間のプログラムを導入しました。また、目の健康については、月に2回の動画・コラム視聴や、アプリによるセルフチェックを通じて正しい目のセルフケアを学ぶプログラムも展開しました。睡眠に関しては、睡眠コンテンツによる学習と、特定機能性食品を活用した1カ月間の睡眠習慣改善プログラムの提供を開始しました。
さらに、メンタルセルフケア策としてAIとのチャット会話を通じて認知行動療法に基づいたセルフケアを学ぶプログラムや最近ではマインドフルネスレッスンが好きな時に好きなだけ受講できるプログラムも行っています。
これらのプログラムを開始した際、社長をはじめ役員には率先して参加していただき、参加の感想を社内報で書いてもらうことにしました。この取り組みが人事部だけでなく、全社を挙げて取り組んでいることを社員に伝えるためです」
日本総研では、体験型プログラムの他にも、健康に関するリテラシーアップのためのセミナーや動画を提供するなど、定期的な情報発信に取り組んでいます。
「専門家による当社独自のセミナーや、好きな時間に自由に視聴できる動画などを用意しました。また、産業医や保健師の全面的な協力を得て、すぐに実践できる食事、運動、睡眠、からだのケアなどに関する健康情報をイラスト入りで紹介するコラムを定期的に発行しています。それらの情報にいつでもアクセスできるよう、健康に関する専用サイトを社内に作成し、発信を続けています」
こうした継続的な取り組みの結果、堀内は健康経営に対して社内の関心が高まってきているのを感じていると言います。
「従業員の代表組織が社員に対してアンケートを取る機会があり、興味がある社内の施策は何かを尋ねる項目がありました。数多くの選択肢があったのですが、その中から『健康経営』を選んだ社員は、全体の半数近くにも上ったのです。取り組みを始めた当初は言葉自体が認知されていなかったので、健康経営への理解が社内で高まってきているのを感じます」
将来のため今から健康への自己投資を。一人一人の仕事と私生活が生き生きするように
健康経営の取り組みが強化されてから約3年半。これまで実施した施策の成果は、KPIの進捗状況にも表れ始めています。
「コーポレートサイトに掲出のとおり、KPIの達成に向けて少しずつですが着実に数値が改善されつつあります。特に生活習慣の改善に取り組む社員や、体調の改善を実感している社員が増えてきているのはうれしいです。
また数値上に表れない変化を実感する場面もありました。当社では2020年より、社内の文化・マインドや行動、業務効率を変革するためのアイデアを社内公募する『イノベーションコンテスト』を実施しています。
その2023年度最優秀賞として、健康をテーマとした水の摂取量が把握できるウォーターサーバー設置のアイデアが選ばれました。この他にも健康をテーマにした応募が年々増えており、社員の意識の変化を感じています」
変化を実感する一方、健康経営推進の効果を高めるには、まだ健康への関心が高まっていない社員への働きかけが重要になると堀内は語ります。
「社員の健康保持・増進のための環境を整備し、体験型プログラムやセミナーの提供に注力してきましたが、これらに参加していない社員も多くいます。
不参加の主な理由は、時間やテーマのほか、認知度も課題でした。そこで、一人でも多くの社員に施策を知ってもらうため、今年度は、AIによる姿勢診断や、手のひらによる野菜摂取量の計測、マインドフルネスの体験会、社内のつながりを楽しむランチ会など、手軽に参加できる健康イベントの定期的な実施に力をいれています。この他、健康保険組合やSMBCグループ主催の様々な健康イベントも積極的に活用しています。
これらのイベントをきっかけに健康に関心をもち、毎日の目標歩数を設定して意識的に歩いたり、カロリーや塩分を意識した食生活を心がけたり、姿勢に気をつけたりなど、小さなステップから、今できることを習慣化してほしいと思います。
今後も、健康に関する社内アンケートの回答などを基に、産業医・保健師、従業員代表組織、衛生委員会、社内のコンサルティング部門、健康保険組合、SMBCグループ、といった社内外の多くの力を借りながら施策を展開していく予定です。社員の皆さんには、健康に関する発信に関心を持ち、健康保持・増進に取り組んでもらえればと思っています。
例えば、毎月5分、健康コラム(Health Navi)に目を通すなど、わずかな時間でも今時間を投資すれば、今と未来の自分にきっと良い影響があると思います。社員の皆さんが生き生きと働き安心して能力が発揮できるとともに、プライベートも生き生きと過ごせることを願っています」
※ 記載内容は2024年11月時点のものです
