職種も個性も異なる一人ひとりの社員が等しく成長できるための環境づくりを
前田道路の社員研修を担当する人事部の研修チームに所属するのは5名のメンバー。その舵取り役を務めるのが、人事部 専門部長の本多です。
本多:われわれ研修チームは、茨城県土浦市の「つくばテクノセンター」の中にある研修センターに常駐しています。事務職2名、土木職2名、試験職1名が同チームのメンバーです。
研修センターでは毎年4月、研修を受ける新卒社員を受け入れてきました。
本多:土木職、機械職、試験職、事務職などの職種が当社にはありますが、事務職のメンバーは2カ月間の研修を受けて、6月から各地に配属されます。それ以外の技術職のメンバーは、資格取得や技術的な知識を習得するため、9月末まで研修を受けてから配属されるのが一般的です。高卒の社員は、そこからさらに2カ月間の研修を受けてから配属されます。
前田道路では、2019年から長期新入社員研修を実施。本多はそれに伴って同年に研修の専任責任者として着任しました。
本多:新入社員はもちろん、研修を受ける社員全員に対して、スキルアップの機会を平等に提供することと、そのための環境を用意することがわれわれ研修チームのミッションです。技術職に求められる職種ごとの技術力を身につけてもらいながら、人としても成長してもらいたいと考えています。性格も価値観も異なる一人ひとりが等しく成長できるような機会を提供することをめざしてきました。
スキルの習得だけでなく、人間的成長にも重きを置いた研修プログラムへ
2019年から研修プログラムの見直しに取り組んできた前田道路の研修チームがとくに力を入れ2022年に導入されたのが、階層別研修です。
本多:階層別研修は5段階構造で、新入社員研修、2年目社員研修、 5年目社員研修、指導職研修、新任管理職研修から構成されます。新入社員研修では、ビジネスマナーなどの社会人としての基礎知識やコンプライアンスを最初の1カ月間で学び、その後は職種別に分かれて技術を学びます。
2年目研修では、同期が集まって1年間を振り返る場を設定。5年目研修では後輩との接し方を学び、事業所の課長や係長クラスのメンバーが集まる指導者研修では、部下の指導方法や会社の方針を、5階層目の新任管理職研修では組織運営の方法を学びます。
こうして段階的な研修を提供することで、人を育成し組織をリードできる社員の育成をめざしています。
階層別研修には、全国のメンバーが参加。階層ごとの研修が活発化している背景には、人材育成に対する考え方への変化があると本多は言います。
本多:階層ごとに習得すべき考え方やスキルは多岐にわたるため、3泊4日から4泊5日程度の合宿プログラムを組んで研修を実施します。2〜3日間は外部講師による講義やグループワークが中心です。それ以外の座学では、学んだことの定着度合いを確認する目的でテストなどを実施しています。
従来の研修プログラムでは、技術力の習得が主な焦点でした。しかし、技術面だけでなく人間性の育成を重視する考えが高まってきたことを踏まえて内容を見直し、現在のような階層別研修のプログラムの策定に至っています。
一方、人事部 人事課の係長として、本多と同じく研修チームの一員を務める加治木。現在は土木職の新入社員研修を担当しています。
加治木:土木職については、現地での計測や、材料の計算、現場監督をする上で必要な原価管理などに関する教育を行っています。また、資格の取得や現場に必要な特別教育だけでなく、実践の場も提供しており、研修センター内のスペースを利用し、現場を想定した工事にも取り組んでもらっています。実際に作業や施工に取り組み、原価管理なども行うことで、現場監督業務に就くための基礎力を習得してもらうことが目的です。
土木職の新入社員は、毎年40名ほど。全員で座学を受けた後、実践業務では3~4チームに分かれ、ローテーションでさまざまな役割を経験します。
加治木:グループ同士の連携も重視しています。たとえば、同じ材料を使う場合、他グループと協力して同じ日に工事の計画を立てたり、「この日は材料を多く運び入れるので、ルートを確保し安全に配慮してほしい」とコミュニケーションを取りながら作業を進めたりという具合です。また、専門業者に材料を発注する業務など、外部とやりとりする経験も積んでもらっています。
2023年4月に配属され、現在は新入社員研修や階層別研修のサポート役を務めながら、研修業務への理解を深めてきた佐藤。新入社員研修の大きな進化を実感していると言います。
佐藤:私が入社した当時は、研修センターで1カ月間の新入社員研修を受けて、5月の連休明けには現場に配属されたと記憶しています。職種ごとに最低限必要な知識を習得することが研修の目的で、品質管理などを担う試験職の私は、同期とともに業務手順などを学びましたが、当時、他職種のメンバーとの交流はありませんでした。
ところが、現在は研修期間が十分にあり、前田道路で働く一員として、必要な知識を職種を超えてみんなで学ぶことが可能です。同期の絆が深まることで、他職種の業務への理解も深まるところに大きな利点があると感じています。
同期との関係性の大切さについて、本多はさらに次のように続けます。
本多:同じ時期に新卒入社した同期はかけがえのない仲間です。組織で働き続けていく上での支えとなる、職種を超えて協力し合えるメンバーとの関係を育んでほしいと思っています。
研修に臨む社員の不安を払拭できるよう、生活環境の整備にも注力
自身の現場経験に基づいた研修を実施する中で、大きな手ごたえを感じていると話す加治木。
加治木:工事現場ごとに状況は異なるため、研修では基本的なことや頻出するパターンしか教えられないのが現状です。ただ、原価管理の考え方など、私が現場時代にもっとも苦労した点についてはしっかり伝えられようにプログラムを作りました。
研修を受けた新入社員の中には、「お金の仕組みがよく理解できました。早く見積もり業務を担当したいです」と話してくれたメンバーもいて、やって良かったと思いましたね。
一方、若手女性社員の相談窓口も兼ねている佐藤。現場時代の自身の経験を活かして業務に臨んできました。
佐藤:試験職の女性社員の中には、体力が足りないために指示された業務を思うようにこなせないことを気に病み、異動希望を出す人もいます。私自身も現場時代に同じことに悩んでいました。しかし、現在は自分ひとりで解決できない問題に直面したときは、上司や同僚の力を積極的に借りるよう心がけています。
助けてもらった分、他業務で役に立とうと、自分の役割を見つけて前向きに仕事に臨めるようになりました。社員から相談を受けたときは、そんな自身の経験も活かしながらアドバイスしたり、その社員の上司に連絡してフォローしてもらうよう伝えたりしています。
チーム一丸となって社員に寄り添った研修やサポートを提供してきた研修チーム。約半年間にわたって研修センターで生活を送る新入社員を支えるために、生活環境の整備にも努めてきました。
本多:男性社員には研修センターの敷地内にある寮はすべて個室で、女性社員には最寄り駅近くのワンルームマンションで研修期間を過ごしてもらっています。研修センターには食堂を併設しているので、朝昼晩いつでも、栄養のある食事を存分に摂ることができます。
社員からの要望を受けて、2023年からは棟内にトレーニングルームやバスケットコート、バレーボールコートも整えました。仕事終わりや休日にトレーニングルームで体を動かすことで気分転換を図り、研修に集中してほしいと思っています。
新入社員にも、階層別研修を受けに来た社員にも、楽しく充実した研修期間を送ってほしいというのが私たちの願いです。快適に過ごせる環境を整備することで、社員の研修内容への理解を深め、スキルアップにつながればと思っています。
研修を通じて、一人ひとりが働きがいを感じられる組織へ
研修プログラムはまだ発展途上だと話す3人。それぞれ、将来を次のように展望します。
加治木:土木職の新入社員研修では、自分たちで考え行動する自主管理を2023年は重視していました。しかし、自由度が高まりすぎても現場の緊張感が失われてしまうことがあると感じています。今後は規律を守りつつ、能動的に仕事に取り組む姿勢を養えるようなプログラムの整備を進めていきたいです。
佐藤:初めて新入社員研修をサポートしてみて、全員が同じモチベーションを共有しているわけではないことも実感しました。前田道路に入社した以上は、当社ならではの仕事の楽しさややりがいを感じてもらいたいと思っていますので、仕事の魅力を伝えながら、社員の意欲を高められるよう努めていくつもりです。
本多:業界を問わず、いま、若手社員の間では、「スキルアップが望めない」「自分のやりたい仕事じゃない」と感じると、すぐに転職を考えるケースが増えているようです。
しかし、もう少しだけ粘り強く取り組むことで仕事の達成感が得られることもありますし、自分が思い描いていた仕事にも就ける可能性も高くなります。そのチャンスに気づいてもらうきっかけを提供していきたいと考えています。
社員が仕事を通して自身の存在意義を感じられるような職場であることが理想的です。そのためにも、まずはわれわれが意識を変えて、会社を盛り上げていくことが不可欠だと思っています。
社員一人ひとりが、いきいきと働ける職場づくりをめざして。研修チームは、これからも社員ファーストで改善に取り組み、個の成長を通じた組織力強化に取り組み続けます。
※ 取材内容は2023年12月時点のものです
