社員のキャリア自律をめざし、第三者の立場から客観的かつ専門的な観点から支援を提供
北國FHDでは、社員のキャリア自律を専門的な観点から支援する目的でキャリアサポートチームを2021年に発足。以来、各自の自己成長と主体的なキャリア開発をサポートする重要な役割を担ってきました。
田中:キャリア型人事制度の導入により、社員一人ひとりが自身のキャリアを主体的に考え、選択することが求められるようになりました。キャリアを山にたとえると、高さや難易度、登山ルート、ペースなど、すべてを自らの意思で決定し挑戦していくことになります。
しかしながら、すべての社員が必ずしも明確なキャリアビジョンを持っているわけではありません。そこでキャリアサポートチームは、キャリアに関する懸念や迷いを抱える社員に寄り添い、深い自己内省の促進を通じて、個々の社員が課題を自己解決し、キャリアを主体的に構築できるよう支援しています。
2024年9月現在、キャリアサポートチームは6名で構成されています。全員が社内副業制度「コラボレーション制度」を通じて参画したキャリアコンサルタント有資格者で、専門的な観点からキャリア支援を提供しています。
キャリアサポートチームでは、専用窓口を設置。これを通じて各社員のニーズに応じたきめ細やかな支援を行っています。
井上:当社では、キャリアについて重点的に考え行動する期間として2022年11月から「キャリア月間」を設けており、役職・部署にかかわらず社員を指名して1on1面談できる「オーダーメイドキャリア面談」や「キャリアに関する座談会」など多様なプログラムを実施してきました。
キャリアサポートチームの大きな特徴は、業務を離れた第三者の立場で相談に応じられる点にあります。より客観的な視点から相談者のキャリアに関する不安や悩みと向き合いながら、具体的な行動に移せるようなサポートを心がけています。
発足から数えて約3年が経過し、これまでキャリアサポートチームに寄せられた相談の内容は多岐にわたります。
田中:相談者が置かれている状況は実にさまざまです。キャリアに関する漠然とした不安を抱える方から、ある程度方向性を定めた上で背中を押してほしいという方まで、幅広い相談に対応しています。
井上:将来に向けたキャリアの相談、現在の業務における自身の立ち位置の確認のほか、会社の制度利用に関する相談が多い印象です。また、相談範囲は社内のキャリアにとどまらず、個人のライフスタイルや長期的なキャリアビジョンを含む広範な内容に及ぶこともあります。
社内事情に精通した社員による助言を求める方がいる一方で、より広い視野からの客観的な助言を求める方もいます。アドバイスするというより、対話を通じて相談者の真意を探り、それぞれが抱える課題に応じた柔軟なサポートの提供をめざしています。
それぞれの経験に導かれ、キャリアコンサルタントに。3人が見出した新たな使命
発足時からチームの中核として活躍してきた井上と田中。その原点となるキャリアコンサルタント資格取得の経緯を次のように振り返ります。
井上:入社以降、2度の出産や夫の転勤にともなう転居を経験する中で、思い通りに仕事に時間が割けなかったり、キャリアを転向することに漠然とした不安を感じたりすることがありました。そんな中、女性リーダー向けのセミナーで出会ったふたつの理論が、キャリアコンサルタントの資格取得をめざすきっかけになりました。
ひとつめは、ドナルド・E・スーパーの「キャリアレインボー理論」です。この理論は、キャリアを人生の各段階におけるさまざまな役割の組み合わせと定義し、社会や家庭で多様な役割を経験することで自身のキャリアが形成されるという考え方です。仕事と育児の両立が難しい時期があっても、ライフステージの変化とともに新たな役割を担える可能性があることに気づきました。
ふたつめは、ナンシー・K・シュロスバーグの「転機の理論」です。この理論は、人生の変化や転機への適応方法を理解するためのもので、状況・自己・支援・戦略の4つの要素(4S)の重要性を強調しています。この理論を知ったことで、転機を戦略的に捉え、成長の機会として活用する視点を得ることができました。
これらの理論との出会いや自身の経験を通じて、人生における様々な転機における不安も、心の持ち方次第で乗り越えられるのではないかと思い、同じようにキャリアに迷う人の力になりたいという想いが芽生えました。
田中:私は長年、個人営業の分野で活動してきました。マネープランやライフプランの提案を通じてお客さまのニーズに応えてきましたが、そこにキャリアの側面も加えることで、より包括的な提案ができるのではないかと考えるようになりました。これが資格取得をめざしたきっかけです。
資格取得の過程でもっとも影響を受けたのは、マーク・L・サビカスの「ナラティブアプローチ理論」です。この理論は、キャリアを単なる職業選択ではなく、個人の人生全体を通じた自己表現と成長のプロセスとして捉えます。人生にはストーリー性があるという考え方に、深く共感しました。
この理論と出会ったことで、お客さまのニーズや望みを深く理解するために、相手の話に注意深く耳を傾け、その人生物語を理解しようとすることが、私の仕事のやりがいとなっています。
また、相談者との面談では、自分の先入観や思い込み、押し付けを排除し、相手の言葉をありのまま受け入れる姿勢を心がけてきました。相談者自身が自分の考えを言語化し、整理できるよう支援することに重点を置いています。
一方、社内副業制度である社員組合の「コラボレーション制度」を通じて、チームの外側から、キャリアサポートチームの活性化に取り組んでいる向。実は向も、2023年にキャリアコンサルタントの資格を取得しています。その背景には、忘れられない経験がありました。
向:私がキャリアコンサルタントの資格取得を決めたきっかけは、営業店時代に経験したふたりの後輩の退職です。後輩たちは転職を公にする前に私に相談してくれましたが、すでに退職を決意した後。「もっと早く向さんに相談すればよかった」という後輩たちの言葉が、私の心に強く刺さりました。
この経験から、社内には同様の悩みや不安を抱える社員が他にもいるのではないか、自分が話を聞いたり相談に乗ったりすることでより納得した形でキャリアの意思決定ができるのではないかと考え、そのサポートをしたく資格取得を決意しました。
キャリアサポートチーム活性化の取り組みに参加したのは、この支援の間口をさらに広げたいという想いからです。コラボレーション制度に参加してからは、キャリアサポートチームの存在を周知するための取り組みを積極的に提案しています。
今回の記事制作もその一環ですし、2024年のコラボレーション制度では、若手メンバーにチーム参加を呼びかけ、若い社員がより相談しやすい体制にしていきたいと思っています。
対話を通じて紡ぐ双方向の成長。キャリアサポートチームのこれまでとこれから
キャリアサポートチームにこれまで寄せられた相談累計は延べ100件弱。中には複数回相談に訪れるケースもあるなど、確かな手ごたえを感じていると言います。
井上:相談後の感想では、「キャリアに関する有益なヒントを得ることができた」「次に取るべき具体的なステップが明確になった」「自分や会社に対する固定観念に気づき、新たな視点を得ることができた」など、前向きなフィードバックを多くいただいています。
今後も、社員のキャリアに対し、ポジティブな影響の範囲を広げていけるよう、活動を充実させていく予定です。
田中:社内外を問わず、相談者のその後の活躍について、さまざまなメディアを通じて目にすることがあります。相談者たちが奮闘する姿を見ると、大きな充実感を覚えます。
また、キャリアサポートチームでの活動を通じて、こんな学びも。
井上:チーム内では、「相談に対してより効果的なアプローチがあったかもしれない」「会社の現状を踏まえ、どのような問いかけやアドバイスが最適か」といった議論を常に重ねてきました。社内のキャリア自律推進に貢献できているだけでなく、実践的な経験を通じて、私たち自身も継続的に成長している実感があります。
一方で、克服すべき課題もあります。
井上:当社の企業規模を考慮すると、現状の相談件数はまだ十分とは言えません。たとえば、産休明けの社員など、キャリアサポートチームの活動を認知していない層も多く存在します。今後は、社内全体にキャリア自律の重要性を訴えかけるとともに、私たちの活動を広く周知しながら、相談のハードルを下げる必要があると考えています。
正解のない時代を生き抜くために。キャリアサポートチームが描く組織変革の未来
キャリアサポートチームの挑戦はまだ始まったばかり。それぞれの立場から取り組みの可能性について次のように展望します。
向:現在のキャリアサポートチームは管理職中心の構成となっていますが、キャリア相談にはセンシティブな内容も多く、管理職相手では本音を話しづらい場合が少なくありません。若手や中堅社員が気軽に相談できる体制を整えることで、より多くの社員にキャリア支援を提供できると思っています。
キャリアサポートチームの強みは、全メンバーがキャリアコンサルタントの資格を有している点にあります。直属の上司との1on1も重要ですが、個人の知識や経験に左右される可能性があり、また業務中心の議論に終始しがちです。第三者の立場にあるキャリアサポートチームだからこそ提供できる価値があると信じています。
また、社内には無意識のうちに「キャリア」と「北國FHDでのキャリア」を同一視する傾向があると感じています。こうした根本的な認識から変革を始める必要があると考えています。
井上:働き方が大きく変化し、戦略的なキャリア形成の重要性がますます高まっています。キャリアコンサルティングを通じて、個々の社員の適性、能力、関心事への自己理解を促しながら、それぞれが主体的にキャリアを見出すためのヒントを提供していきたいです。
自身の強みと弱みの言語化がうまくいかない時は、他者との対話を通じて整理することで、新たな気づきが得られることがあります。自らのキャリアを主体的に考えるその土台づくりのためにも、キャリアサポートチームを積極的に活用していただきたいと考えています。
田中:社内の有資格者が増加したことで、1on1の質が向上している部分はあると思いますが、すべての社員に行き届いているところまでには至っていないと感じています。
キャリア自律の文化を組織全体に浸透させるためにも、いまこそキャリアサポートチームの社内における認知度を上げ、多くの方が気軽にキャリアに向き合える場所となるべきときだと考えています。
キャリア型人事制度のさらなる社内浸透に向けて、キャリアサポートチームの門戸は広く開かれています。
井上:たとえば将来のキャリアを見据えた40代や50代の方にもキャリアコンサルティングを通じて気づきを得てほしいと思っています。
田中:緩い段階の相談も歓迎します。そのためには、私たちとしても相談のハードルを下げなくてはいけません。2024年10月より、キャリアサポートチームは新たなメンバーが加わり12名体制となります。今後座談会やセミナーを企画したり、新しい有資格者の募集を通じて新しい視点を取り入れたりしながら、チーム活動の充実を図っていきたいです。
向:人間関係など些細な悩みの解決が、自分の価値観に気づくきっかけになると考えています。本人が悩んでいることの背後に課題の本質が隠れているケースが少なくないためです。それを引き出してくれるのが、キャリアサポートチーム。キャリアに直接関係ないような悩みも、ぜひ相談してみてほしいですね。
※ 記載内容は2024年9月時点のものです
