「安定と挑戦」を両輪に。400名規模の基盤技術集団が描く事業の全貌
私が統括するソリューション事業本部のプラットフォームドメインは、大きく2つのビジネスモデルを軸に事業を展開しています。一つは「人月モデル」、もう一つは「脱人月モデル」です。
人月モデルとは、エンジニアの技術力をお客様へ提供する従来型のSI(システムインテグレーション)事業のことです。こちらは「安定と拡大」をコンセプトに、既存の顧客基盤をしっかりと守りながら、さらなる成長を目指しています。一方の脱人月モデルは、生成AI(人工知能が文章・画像・コードなどを自動生成する技術)を活用したソリューションを構築し、エンドユーザーへ直接提供していくビジネスです。こちらのコンセプトは「挑戦と創出」。従来の枠を超えた新たな価値を生み出すことに挑んでいます。
この事業部のパーパスは、「多様に進化するインフラ技術を先進的に捉え、人財のクオリティとバリューを高めながら、お客様と共に有益なシステムの構築・運用を実現すること」です。そのために、クラウド、プラットフォーム、ミドルウェア(アプリとOSの間で動くソフトウェア基盤)、セキュリティ、生成AIという5つの提供価値を軸に据え、「生成AIへの技術転換」と「クラウドリフト&シフト(既存システムをクラウド環境へ移行・最適化すること)への技術転換」という戦略で事業を推進しています。
このドメインには現在、社員150名、協力会社250名の計約400名が在籍しています。2007年に基盤専門の新規部署として立ち上げた当初から「基盤技術を伸ばす」ことをコンセプトに掲げてきたこともあり、技術に特化したメンバーが全体の約9割、350名ほどを占めています。そのうち著しく技術力に優れたメンバーは約20名(全体の約5%)と決して多くはありませんが、若手・中堅社員の成長も目覚ましく、次の世代を担う候補者が数多く育ってきていることは、この組織の大きな強みだと感じています。
メンバーの雰囲気としては、個性的な人物が多い半面、互いの関係は良好で、衝突することなく上手く融合できているという印象です。特に印象的なのは「お客様への提案」の場面です。アプリ部門と基盤部門が一体となって提案を行う際も、各メンバーがしっかりと意見を出し合いながらプロジェクトを推進できています。独力で自走する局面と、他のメンバーや部門と協力する局面を自然に使い分けられるメンバーが多く、それがこの組織の推進力につながっていると思っています。
基盤事業との出会いと、20年の歩みを引き継ぐ覚悟
私たちの基盤事業部が発足したのは2007年のことです。今年度、2026年度でちょうど20周年という節目を迎えます。発足のきっかけは、キャリア入社のメンバーが強い意志を持って立ち上げたことにあります。当社はもともとアプリケーション開発を主軸としていましたが、「アプリと基盤が一体となってお客様のニーズに応えることで、事業をさらに拡大できる」という信念のもと、基盤専属の部隊が生まれました。その想いが積み重なって今の組織があると思うと、歴史の重さを感じます。
私がこの事業部に部長職に任命されたのは、入社15年目にあたる2020年のことです。それまでの私はアプリケーション開発一筋で、技術力と業務理解の両面を磨いてきました。その中で基盤領域を管轄する役割を任命されましたが、基盤技術という新しい領域に携わることへの不安はほとんどなく、むしろ「新たな技術を身に付けられる」という前向きな気持ちの方が強かったです。
ただ、実際にジョインしてみると、アプリケーションと基盤の違いは想像以上に大きいものでした。アプリケーション開発では業務(お客様の実務)意識しながら「機能」を設計・製造するのが中心です。一方、基盤構築(サーバーやネットワークなどのシステムの土台を整える仕事)は、業務の意識は希薄で、「非機能」—つまり性能・可用性・セキュリティといった要素を中心に設計・構築することが求められます。考え方の軸がまったく異なるため、そのギャップを肌で感じた瞬間は少なくありませんでした。
2020年に部長職として現場を管轄し、2021年からは事業部長職も兼務する立場となりました。私が意識してきたのは、プロジェクトを第三者の視点で監視・コントロールしながら、お客様との折衝を担うことで、現場のメンバーが働きやすい環境を整えることです。具体的には、現場では調整しにくい相談をお客様の幹部社員へ直接持ちかけ、その結果を噛み砕いて現場へ落とし込むといった取り組みを続けてきました。また、定期的にお客様を訪問して先方のご意見を丁寧に拝聴し、現場との橋渡し役を担うことも大切にしてきました。
こうした積み重ねの中で特に印象に残っているのが、ある契約交渉のエピソードです。SIer(システムの企画から構築・運用まで一括して受託する企業)の原資の都合で、契約金額の80%での契約を求められ、残りの20%は後続工程の契約に乗せてほしいという相談を受けたことがありました。私はお客様に後続工程の証跡を依頼したうえで社内稟議を進め、案件の重要性を説明して決裁を得ました。文章にすると簡潔に見えますが、実際には数十日間にわたってお客様先を訪問し、折衝を繰り返す根気のいる作業でした。最終的にお客様と社内双方が納得できる着地点を見つけられたことで、お客様との関係性はより強固になり、現在では競合に対する優位性を確立するまでに至っています。この経験は、マネジメントとしての私の原点の一つになっています。
「現場で汗を流す社員が主役」。現場主義が生んだマネジメントへの誠実な向き合い方
メンバーの成長を実感できる瞬間は、現場から直接届く声のなかにあります。若手社員はプロジェクトの現場で先輩社員と一緒に仕事に取り組み、先輩の背中を見ながら自分でできることを少しずつ増やしていきます。そのプロセスのなかで、お客様から「●●さんの成長がプロジェクトに大きく寄与しており感謝しています」と直接言っていただけたとき、メンバーが確かに成長したと実感できます。そういった言葉が何より嬉しく、現場の先輩社員の存在がメンバーの成長に最も大きく貢献していると感じています。
一方で、課題も正直に受け止めています。当社は現場意識が強く、現場視点がしっかりと根付いている組織です。それ自体は強みなのですが、将来の幹部社員候補となるライン職(現場を支援・管理する管理職層)の育成においては、会社全体や経営の視点・視座を高めてもらうことに苦労しています。現場力は高いけれど、会社として組織を引っ張っていく人材をどう育てるか。ここが今の私にとっての大きな課題です。
その課題に対して現在取り組んでいるのが、裁量の範囲を広げるというアプローチです。戦略や戦術の道筋をすべてこちらから示すのではなく、UM(ユニットマネージャ)やGM(グループマネージャ)といった各管理職が自分の考えで判断し、能動的に動ける余地を意識的に残しています。事業戦略と大きく乖離しない限りは口を挟まないようにすることで、それぞれが自分の頭で考え、成果を出す力を身につけられるよう促しています。
チームをまとめるうえで私が一番大切にしているのは、現場主義という考え方です。私たちライン職は、実際の現場で直接売上を生み出しているわけではありません。現場で汗を流してくれている社員の皆さんが、事業を支える主役です。だからこそ、私の役割は現場社員が働きやすい環境を整えることであり、何かトラブルがあれば責任を負うのがライン職の在り方だと思っています。経営層や管理職は偉い立場にあるのではなく、現場を支えるために裁量を持っているにすぎない。そういう認識を常に持つようにしています。
もっとも難しいのは、経営層の方針を現場に伝えるときです。経営の視点からは理解できる内容であっても、現場の状況を考えると伝えにくい、お願いしにくいと感じる場面が少なくありません。そのときの言葉の選び方や伝え方には、今もなお苦労しています。同時に、もっと経営層に対しても現場の声を届けていかなければという思いもあります。現場と経営をつなぐ橋渡し役として、双方向の対話をより丁寧に重ねていくことが、私自身の今後の課題だと捉えています。
仕事のやりがいについて言えば、業績の達成ももちろん大切ですが、個人的にはお客様との関係構築に最も大きなやりがいを感じています。お客様の幹部の方との対話を通じて、経営戦略や金融・政治の動向といった、社内ではなかなか触れられないテーマについて深く語り合える瞬間があります。そうした対話を積み重ねることで関係性が深まっていくとき、経営層の立場ならではの仕事の醍醐味を強く感じます。
「挑戦・創出」と「安定・拡大」、攻めと守りの両面でIT業界をリードしていく
ソリューション事業本部として、今後とくに力を入れて取り組みたいことが二つあります。一つはアライアンス戦略、もう一つは当社のブランド力強化です。
まずアライアンスについてお話しすると、私たちのプラットフォームドメインでは「セキュリティ専門の部署」と「生成AI専門の部署」を新たに立ち上げることを挑戦の一つと位置づけています。その実現に向けて、生成AI関連企業やセキュリティ関連企業との連携が不可欠だと考えています。外部との協力関係をいかに築いていけるか——ここが現時点でもっとも挑戦したいことです。
二つ目のブランド強化は、事業部というよりも会社全体として取り組むべき課題です。正直に申し上げると、当社のブランド力は大手SIer(システムインテグレーター:企業の情報システム構築を一括して請け負う企業)と比べるとまだまだ希薄な状況にあります。将来、そういった企業と肩を並べるためにも、ブランディングへの投資は欠かせません。みなとみらい駅のデジタル広告など、地域に根ざした形での露出を増やしていきたいと考えています。また、社長のメディア露出を高めることで、経営層が会社をリードし、さらにはIT業界全体をリードしていく意思を投資家や社会に示すことも重要だと思っています。
めざす姿という観点では、「常に一歩先を行く組織」が私の理想です。政治や金融といったマクロな市場環境の変化をいち早くキャッチし、IT業界の先々の動向を見据えながら、顧客が気づく前にそのニーズを定義する。そして事業部全体が柔軟に技術転換できる体制を整えることで、常に先手でIT業界をリードしていきたいと考えています。
その中でも特に注力したいのが「Security for AI(AIを安全に使うためのセキュリティ)」と「AI for Security(AIを活用したセキュリティ強化)」という二つの考え方です。この両面を対応できる事業部へと成長することで、当社がその分野における「デファクトスタンダード(業界標準)」を生み出し、社会への最大の貢献になると確信しています。
一方で、正直な課題もあります。圧倒的に不足しているのは「マーケティング力」と「コンサルティング力」です。市場動向を正確に捉えるためのマーケティング、そして顧客の経営課題から提案を組み立てるコンサルティング——この二つの力なくして、デファクトスタンダードを目指すことは難しい。だからこそ、それを補ってくれる人材との出会いが今もっとも必要だと感じています。
私が一緒に働きたいのは、経営視点と市場感覚を持ちながら、忌憚なく意見を出してくれる方です。ソリューション事業本部は「挑戦・創出」をコンセプトに、新たなビジネスモデルを生み出す場でもあり、同時に「安定・拡大」という軸で当社のコアビジネスを支える場でもあります。攻めと守り、その両面を経験できる環境が、ここにはあります。志ある方と共に、IT業界の未来を切り拓いていけることを楽しみにしています。
