「一つひとつ丁寧に」が信条。航空システムを守るテストエンジニアの仕事観
現在、航空機の運航を支えるシステムの保守運用や開発を担当しています。航空機の安全運航を支える重要なシステムを扱うため、高い品質が求められる仕事です。そのなかで私が担当しているのは、既存システムの刷新プロジェクトにおけるシステムテストです。テスト実施だけでなく、開発パートナーとの仕様調整や成果物レビュー、スケジュール管理なども担当し、品質を維持するための調整や進行管理にも携わっています。
航空機の運航に直接かかわるシステムである以上、ミスは絶対に許されません。そのため、私が仕事をする上で何よりも大切にしているのは、「一つひとつ丁寧に確認すること」です。小さな見落としが、想定外の大きな影響につながりかねない環境で働いているからこそ、どんなに慣れた作業であっても手を抜かず、確認を怠らないことを自分に課しています。
もう一つ大切にしているのが、「目的や背景を理解しながら業務を進めること」です。たとえばリリース作業(開発したシステムを本番環境に適用する作業)を担当する中で、手順書に書かれた手順をただ順番にこなすだけでは不十分だと気づきました。それぞれの作業がなぜ必要で、どんな影響をシステムに与えるのかを理解していると、想定外の事象が起きたときにいち早く気づくことができます。そしてそれが、ミスの防止にも直結するのです。
この考え方は、成果物を作成する場面でも生きています。依頼された内容だけを表面的に追うのではなく、その背景や目的まで掘り下げて理解することで、より質の高い提案や成果物を生み出せると感じています。「なぜこの作業が必要なのか」という問いを常に自分に投げかけながら仕事をすること——それが、今の私のスタンスです。
「手順書を開き間違えていた」初めての本番リリースで犯したミスと、その後
入社後、最も大きな失敗として今でも記憶に残っているのが、初めて本番環境でのリリース作業を担当したときのことです。リリース作業はミスが許されない緊張感のある場面です。その作業中、本来であれば手順書Aを実施した後に手順書Bを実施しなければならないところを、誤って手順書Bから先に実施してしまったのです。
ミスが発覚したのは、作業の最終確認を担当するチェッカーが2名ついていたことがきっかけでした。そのうちの1名が「実施している手順書が正しいのか?」と疑問を持ち、確認してくださったことで、私が手順書を開き間違えていたことが判明しました。チェッカーの方がいなければ、そのまま作業が進んでしまっていたかもしれないと思うと、今でもひやりとします。
そのときは正直、かなり落ち込みました。初めての本番作業ということもあり、自分自身のプレッシャーも大きかったのですが、それ以上に強く感じたのは「お客さまからの信頼を失ってしまうのではないか」という不安でした。これまでチームの先輩や上司たちが長い時間をかけて築き上げてきたお客さまとの信頼関係に、自分のミスが影響してしまうかもしれない——そのことの責任の重さを、強く感じました。
落ち込む気持ちを抱えながらも、乗り越えるきっかけになったのは、上司やチームメンバーからの言葉でした。「作業内容をしっかり理解しながら進めよう」というアドバイスをもらうとともに、「初めての経験なので、必要以上に気にしなくて大丈夫」と励ましてもらいました。その言葉のおかげで、失敗を引きずるのではなく、次に活かそうという前向きな気持ちに切り替えることができました。
また、チームで発生した問題に対して、なぜそのミスが起きたのかを掘り下げて整理し、再発を防ぐための対策を検討しました。原因を突き詰めることで気持ちの整理もでき、同じミスを繰り返さないための具体的な行動につなげることができたと思っています。この経験を通じて、ただ手を動かして作業をこなすのではなく、目的や背景を理解しながら業務を進めることの大切さを、改めて強く意識するようになりました。
「手順をこなすだけ」から脱却して気づいた、作業の目的を知ることの大切さ
あの失敗を振り返ったとき、原因として真っ先に思い浮かぶのは、自分自身の作業理解が不十分だったということです。当時の私は、決められた手順を漏れなく実施することにばかり意識が向いていました。「この手順書の通りにやり切ること」が目標になってしまっていて、そもそもなぜその作業をするのか、どのような目的があるのかを深く考えられていなかったのです。
手順を「こなす」ことと、手順の「意味を理解する」こととは、まったく異なります。その違いに気づかないまま作業を続けていたことが、ミスを生んだ根本的な原因だったと今では思っています。
この経験を通じて学んだのは、作業の目的や背景を理解することが、ミスの防止に直結するということです。手順書に書かれているステップをなぞるだけでは、想定外の状況が発生したときに適切な判断ができません。「なぜこの作業が必要なのか」を理解していてこそ、異変に気づいたり、柔軟に対応したりすることができると実感しました。
この学びを受けて、私が具体的に変えたのは「人と話す」という習慣です。作業を依頼してくれた方や、その領域に詳しい有識者と積極的に会話するようにしました。作業の背景にある意図や、何を達成するための工程なのかを自分の言葉で理解できるまで確認するようにしたのです。最初は少し勇気が要りましたが、質問することで見えてくる情報の豊かさに、すぐに手ごたえを感じるようになりました。
この意識の変化は、リリース作業にとどまらず、日々の成果物づくりにも好影響をもたらしました。依頼の背景にある「本当に求められていること」を正しく理解しながら進められるようになったことで、成果物の品質が以前より高まったと感じています。ただ求められたものを形にするのではなく、目的に照らして「これで合っているか」を自分で問いながら動けるようになったのは、大きな変化でした。
さらに、この学びは自分だけのものにはしませんでした。失敗の根本原因を分析した結果を、チームメンバーを含む関係者全員に共有したのです。同じミスが繰り返されないようにするためには、気づきを個人の中にとどめておくのではなく、チーム全体の財産にしなければならないと考えました。また、後輩や新しいメンバーに作業を教える際にも、手順の説明と合わせて「この作業は何のためにあるのか」をセットで伝えるように意識しています。目的を知って動くことと、知らずに動くことでは、仕事の質もやりがいも変わってくると感じているからです。
「失敗もすべて糧になる」後輩を支える存在へ、これからの挑戦
今後挑戦してみたいことのひとつが、後輩の育成やサポートです。私自身、これまでのキャリアの中で先輩や上司にたくさん支えてもらいながら成長してきました。困ったときに気軽に相談できる環境があったからこそ、壁にぶつかっても前に進み続けることができたと感じています。だからこそ、今度は自分がそういう存在になりたいという気持ちが強くあります。
後輩が悩んでいるときに一緒に考えられるような先輩でありたいですし、分からないことがあれば気軽に声をかけてもらえるような関係を築いていきたいです。サポートする側に回ることで、自分自身もさらに成長できると思っています。
それと同時に、周囲から信頼される存在になることも、これからの大切な目標です。信頼というのは、日々の仕事の積み重ねによってしか得られないものだと思っています。今よりも品質の高い成果物をつくること、より丁寧に仕事に向き合うこと、その積み上げの先に信頼があると信じています。
失敗や挫折を経験しながらも挑戦を続けてこられたのは、失敗がすべて無駄にならないという確信があるからです。うまくいかないことがあっても、その経験は必ず次の仕事に活きてきます。失敗したときはもちろん落ち込みますが、「この経験が最終的にはより良い仕事につながる」と考えることで、また一歩踏み出すことができました。これからも、そうやって前に進み続けていきたいと思っています。
最後に、新たな挑戦を考えている方に伝えたいことがあります。不安なときや壁にぶつかったときは、ひとりで抱え込まずに周りを頼ってください。私自身も周囲の支えがあったからこそ、失敗を乗り越えながら成長してくることができました。支えてくれる人への感謝を忘れずに持ち続けてほしいです。そして何より、挑戦しようとしている自分自身をぜひ褒めてあげてください。一歩踏み出すこと自体、それだけで十分すごいことだと思います。
私自身、入社当初は分からないことばかりでしたが、そのたびに上司や先輩、同僚が親身になってサポートしてくれました。だからこそ今の自分があると思っています。これから入社する方にとっても、安心して成長できる環境であり続けられるよう、自分も支える側として力になりたいと思っています。
