自身が活きる場所を探して。富士通との出会いと選択
現在、CEO室に所属する松苗 竜太郎は、元アナウンサーという経歴を経て、2021年に富士通の広報IR室に中途入社しました。一見すると華やかに見える放送業界から富士通への転身には、どのような背景があったのでしょうか。
松苗:新卒で入った前職では、プロフェッショナルとしてキャリアを積むことを考えていたので、当初、転職はまったく考えていませんでした。一方で、放送業界は特殊な世界です。世間とのズレのようなものがあることはずっと気になっていました。
そんな中、世界中でコロナウイルスが蔓延し、先週まで当たり前であったものが急になくなったり、世の中の価値観がドラスティックに変わってしまいました。その天変地異ともいえる社会の変化を、現場の取材を通して目の当たりにしました。
ですが、放送局は、コロナ前となんら変わらない稼働をしており、「世界はこんなにも変わってしまいました」と伝える側は以前と同じまま。「このままでは、自分たちだけ置いてけぼりにされてしまうのでは」と、強い危機感を覚えました。
変化を求めた松苗は、広報職に絞って転職活動を開始します。
松苗:製品を売る経験も、数字を追う経験もない自分に、いったい何ができるのだろうかと考えたときに、めざすことができる職種は少ない実感がありました。
一方で、メディア側の立場や考えはよくわかっていました。そう考えた時に、自然と広報職に絞り転職活動をはじめたんですね。ただ、当時はコロナ禍で求人が少なく、コーポレート職、広報の求人ともなるとさらに厳しい状況でした。
その後、応募した中の1社である富士通へと入社します。
松苗:特定の業務における即戦力というよりは、ポテンシャルを評価してくれたんだと思います。富士通グループ11万人の従業員がいる中で、当時、私のようなキャリアを持っている人間はおそらくオンリーワンだったと思うんですね。
メディア出身者という希少性があり、取材から原稿作成、そして自分の言葉で伝えるという一連のスキルを広報に活かせるのではないかと期待してくれたと思っています。
一方、三木 菜月は2022年に新卒で富士通に入社。学生時代は、放送部に所属していたと言います。
三木:放送部には高校から大学までの7年間いましたが、まわりには才能あふれる仲間が多く、松苗さんのようなアナウンサーをめざす人も多かったですね。私自身はアナウンサーの道はめざしませんでしたが、得意とする「伝える力」を活かす仕事に就きたい、その得意を活かして人の役に立ちたいと考えていました。
では、それはなんだろうと考えた時、素晴らしい技術やサービス、伝えるべきものを持っているのに、その魅力が十分に伝わっていない企業や業界があることに気づきました。そこに行けば、自分を活かすことができるのではないかと考えました」
そんな中で富士通への入社を決めた理由とは。
三木:OB訪問などを通して、2020年から全社DXプロジェクト「フジトラ」がはじまり、「Fujitsu Transformation Now」という全社で行うDX活動の見本市のようなイベントが定期的に開催され、さらには、タウンホールミーティングなどの経営と現場が対話する機会もあると聞きました。
また当時、新たな事業モデル「Fujitsu Uvance」も立ち上げ、社内外に発信すべき情報とその機会が富士通にはたくさんあると知りました。まさに、私がやりたいことを、ここなら実現できるんじゃないかなと思ったんですね。
伝える力で、異なる立場をつなぐ。インターナルコミュニケーションの極意とは
三木:現在、Trusted Society事業部 Sustainable Cityグループで、Fujitsu Uvanceの新規事業企画・拡販を担当しています。具体的には、研究所の技術をベースに、新たなオファリング製品として、社会課題の解決を起点にお客様にどんな価値を提供できるのかを考え、さまざまな関係者とコミュニケーションを取りながら企画を詰めています。
Sustainable City=持続可能な街づくりということで、都市が抱える課題解決と新たな価値創出をめざした製品を開発しています。また、その企画・開発した製品が、具体的にどういったお客様に刺さるのかを検証していくのですが、その都市を構成するステークホルダーは非常に幅広いです。
さまざまなSales部門に声をかけながら、その価値検証に協力してくれるお客様を見つけることも大切な業務のひとつになっています。
三木の強みである「伝える力」は、いまの仕事で活かされているのかについて尋ねます。
三木:たとえば、開発、Sales、お客様……異なる相手に製品の価値を説明する場面。相手の立場やこれから話す内容の理解度を考慮し、相手が何を求めているのかを想像しながら、それに合わせた最適な言葉を選んでいます。
人は、ついつい自分が伝えたいことを自分目線で伝えてしまうもの。でも、相手に合わせて、情報も伝え方も変えないと伝わらないと思っています。それには、放送部時代に繰り返し行った、1時間の取材内容をはじめて聞く人でもわかるように1分半の原稿にまとめるというトレーニングがとても活きています」
一方、松苗は広報IR室を経て、2024年にポスティングを通じてCEO室に異動します。
松苗:広報には3年ほどいましたが、メディアでの経験を活かせる場面が多く、前職と近い感覚で仕事をしていました。一方で、広報とメディアは直面しているように見えても、取材し、発信するという点では同じ土俵で仕事をしているなと感じていたので、今後のキャリアのことも考え、新しいチャレンジをしたいと思ったんですね。
また、「自分の言葉で発信する」ことは前職で十分に経験したので、今度は「誰かの言葉を伝える後押しができる役になりたい」という気持ちも強くなっていました。
そんな松苗は、現在、経営層のメッセージ発信をサポートしていると言います。
松苗:社長の時田をはじめとする経営層のメッセージを社内外に発信、浸透させるための取り組みを行っています。また、社内サイトに掲載するコンテンツの企画や制作、プロモーションなどを全般的に担当しています。チャレンジしたかった、「誰かの言葉を伝える後押し」に取り組んでいます。
また、CEO室に来たからこそわかったこともあると続けます。
松苗:富士通の経営層が、どんなことに関心や課題意識を持ち、その課題をどう受け止めているかという経営のマインド、大局的なモノの見方というものを、まずはしっかりと理解しないといけないのだと実感しました。そうしないと、経営層が何を伝えたいのかの本質がわからなくなってしまいます。いままでの私には、その視点は足りなかったです。
一方で、その経営層から情報を受け取る一般社員の感覚も持ち合わせていないといけません。経営が発したい情報を現場が正しく受け取るとも限らず、その橋渡し役が非常に重要なんだなと感じています。
富士通のタウンホールミーティングの現在地とその舞台裏
富士通では、経営と現場の対話の機会として「タウンホールミーティング(以下、THM)」が数多く開催されています。その司会役を務める機会の多いという2人に、富士通のTHMの特徴を聞きます。
松苗:富士通に入って驚いたのは、10万人を超える大企業にも関わらず、部門の垣根を越えた活発なコミュニケーションやコラボレーションが至る所で行われていることです。それだけ、本気で考える、自分ゴトとして行動している社員が多いのだなと。
そういう富士通だからこそ、THMにおけるファシリテーションの役割はきわめて重要だと感じています。アジェンダに沿って上から下に進行をなぞっていく単なる司会ではなく、議論が円滑に進み、参加者の本音を引き出す力が求められているのだと感じました。
印象的だったのは、これまで3年ほど担当している新入社員向けのTHMですね。その年の4月に入社した新入社員と、多くの役員が一つの会場に一堂に集い、富士通のパーパスや事業について理解を深めてもらうために、カジュアルに対話を行う毎年恒例のイベントです。
2024年は、副社長5人がパネラーとして登壇し、私がファシリテーターを務めました。役員と新入社員が対話する貴重な機会ですので、新入社員には何か持って帰れるものがあるといいわけです。
ただ、両者が持っている知識や経験、関心事には大きな差があるため、新入社員に伝わる「おもしろい話」をうまく役員から引き出さないといけないんですね。また、台本通りにはいかない、生のコミュニケーションだからこその刺激もあり、非常におもしろかったです。
三木:私は、自身が所属する本部のキックオフイベント、その後に行ったアフターイベントですね。THMや期初に行われるキックオフイベントは、一方的なトップからのメッセージ発信とならないよう企画しているものの、限られた時間の中で伝えることも多く、どうしても形式的になりがちです。トップからのメッセージを聞いて、消化しきれない社員も多くいるはずです。
そこで、本部員から事前に質問を募り、本部長に「ぶっちゃけどうなの?」と切り込むラジオ形式のオンラインイベントを企画しました。ただ、集まった質問をそのまま本部長にぶつけてしまうと、質問者が本当に聞きたかったことではないことへの回答が来てしまうケースもあります。
本当に現場が知りたいことは何か、この質問の背景は何かを考え抜いた上で、質問の仕方含め、しっかりと事前に準備して臨みました。
三木が主催したこのイベントには、三木と同世代の若手社員も積極的に参加してくれたと言います。
三木:社内SNSを使ってイベントについて発信したところ、「自分たちでもやってみたい」「本部長に相談したいことがある」といった声が若手社員から上がるようになったんです。若手が自ら動き出すきっかけになれたのかなと嬉しくなりました。
トップと現場でコミュニケーションギャップは、どうしても発生してしまうと思うんです。伝える立場として、そのギャップをいかに埋めていけるか。その役割の必要性を強く感じるイベントとなりました。
自身の挑戦が誰かの道標となる。伝える力で拓く自身と富士通の未来とは
社内のコミュニケーション活性化に大きく貢献してきた2人。確かな実感がある一方で、まだまだ課題もあるという松苗。
松苗:繰り返しになりますが、富士通の魅力は、規模が大きいのにも関わらず、コミュニケーションが活発なこと。経営層からのメッセージも積極的に発信されますし、社内SNSやTHMでも役員と社員のカジュアルでフラットなコミュニケーションは頻繁に行われています。富士通は、本気で変革しようとしているということの現れだと思います。
ただ、積極的に情報を得ようとする人、コミュニケーションを取ろうとする人は、全体からすると多くはありません。フジトラが始まって約5年となりますが、より多くの人を変革に巻き込むためにはどうすればいいか、ということは考え続けなくてはならないですし、彼らの声も拾い上げ、変革に反映させていく必要があると私は思っています。
最後に、自身が持つ「伝える力」を今後どんなところに活用しいきたいかを聞きます。
三木:これまで培ってきた「伝える力」に加え、ビジネスや自社サービスの知識をより深めることで、Fujitsu Uvanceを自分の言葉で語れる人材になりたいと思っています。
また同時に、Fujitsu Uvanceを語れるSalesを増やす、そんな仕組みや機会も作っていけたらいいなと思っています。これまでのSIビジネスで、お客様の要望を聞き、適切な製品を見つけてくる、またはSEと連携し機能実装するという「聞く力」があるSalesの方はたくさんいると思います。
その「聞く力」に加え、Fujitsu Uvanceの価値を、お客様に合わせて言葉を選び、説明できるようになると、ビジネスとしても広がりますし、Fujitsu Uvanceがめざす世界の実現に近づくのではと思っています。
松苗:やりたかった仕事ができていると、非常に充実感、やりがいを感じています。また、今後ということですと、少し個人的なお話しになりますが、アナウンサーからのセカンドキャリアの可能性をかつての仲間に示したいと思っています。ロールモデルと呼ぶには大げさですが、「こういう道もある」と選択肢の一つとして伝えたいですね。
三木:ロールモデル、いいですね。私もさまざまな場で活躍する自身の姿を周囲に見せることで、「自分も何かできるかも」と思ってくれる人が増えたら嬉しいなと思います。
松苗:三木さんもそうだと思うんですが、私はよく社内の方から「話し方を教えてほしい」と声をかけられます。それだけ、コミュニケーションに苦手意識、不安感を持つ人は意外と多いんだろうなと。できるだけ時間を見つけて、1on1で相談に乗ったり、イベントでお話しする機会をいただいたりしています。
皆さんの日々のコミュニケーションの質の向上など、何かしらの役に立てると嬉しいですね」
※ 記載内容は2025年7月時点のものです
